著者
畑中 雅昭 中保 仁 岡 信恵 亀淵 興紀 笠井 保志 白川 理恵 富田 晃子 長 和彦 古川 宇一
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.79-90, 1998-02-10

本報告では,旭川市内にある小学校特殊学級の自閉的傾向と診断された男児へのIEP(個別教育計画),TEACCHプログラムの考え方を取り入れた関わりについて述べたものである。朝起きてから家を出るまでの特に歯みがきと洗顔を中心とした行動の習慣化をめざし家庭での指導とその支援を工夫した。少しずつだが自発的に行動がみられるようになってきた。個別学習ではコミュニケーション能力の向上をめざして課題や指導の工夫を続けた。課題が終わると,「まるをつけてください」と言葉で要求したり,動作を表す言葉を理解したりすることができるようになってきている。
著者
駒井 三千夫 白川 仁 後藤 知子
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

これまでの報告では、苦味レセプターTAS2R遺伝子中のSNP(一塩基多型)は苦味感受性に大きな影響を与えていることが判明している。ブロッコリー等のアブラナ科植物の苦味を敏感に感じ取ることが可能な人では、発癌リスクが高いと推定される疫学的データがあるため、その苦味感受性とその物質の代謝酵素の活性も違う可能性も類推される。苦味レセプターの多型と苦味感受性の相関関係を明らかにしていくことは、苦味受容機構の解明につながるほかに、個人の遺伝的素因と疾病発症の関係を解明する糸口になるものと考えられる。よって本研究では、被験者個々人のTAS2R遺伝子のSNP検出と官能検査を行い、苦味感受性に関与するSNPを同定することを目的とした。今の段階では研究結果の詳細を公開することはできないが、以下に成果の概略を記す。平成21年度の研究では、TAS2R44とTAS2R45におけるSNPの組み合わせに規則性がみられ、これらの遺伝子型はカフェインの閾値とは関連が見られなかったものの、カフェインの苦味強度との関連が見られた。これらのSNPの組み合わせは苦味感受性に影響を及ぼしていることが示唆された。TAS2R44、TAS2R45のハプロタイプを解析した結果、TAS2R44では3つのハプロタイプ、TAS2R45では2つのハプロタイプが観察された。これらのハプロタイプの組み合わせにより、被験者48人は3種類、官能検査を行った38人は2種類の遺伝子型に分類することができた。これらの成果は、今後の研究の進展に極めて重要である。
著者
白石 太一郎 酒井 龍一 植野 浩三 千田 嘉博 碓井 照子 岸本 直文 福永 伸哉
出版者
奈良大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

大阪府南部には、日本列島内で最大規模の大仙陵古墳(現仁徳天皇陵)を含む堺市の百舌鳥古墳群、それに次ぐ規模をもつ誉田御廟山古墳(現応神天皇陵)を含む羽曳野市・藤井寺市の古市古墳群など、5世紀前後の倭国王墓と想定される巨大前方後円墳からなる大型古墳群が展開している。本研究は、これらの古墳群周辺が都市化される以前め航空写真に基づいて、開発以前の大縮尺の旧地形図を作成し、古墳詳研究の基礎資料を整備し、学界の共有財産として多くの研究者の利用に供するとともに、あわせてこれら近畿の大型古墳群の形成過程やそれら相互の関係、さらにその歴史的意味を追求したものである。3年計画の最終年度にあたる本年度は、(1)前年度までに中心部の図化を終えている古市、百舌鳥両古墳群の周辺部の図化作業を完成した。また(2)古市古墳群に続いて6世紀後半から7世紀代の倭国王墓と想定されるいくつかの古墳を含む太子町磯長谷古墳群周辺について、大阪府が1961年に作成した地形図をもとに、古市、百舌烏古墳群と同縮尺・同仕様で2,500分の1の開発以前の地形図を作成した。さらに(3)この地域で、古墳や同時代の遣跡の調査・研究を進めている地域の研究者や宮内庁書陵部の研究者の参加協力をえて、古市、百舌鳥古墳群り既往の発掘調査のデータ集成を行い、GISを利用してそのデータベース化を進めるとともに、(4)出土埴輪の実測図等の資料集成を行うとともにその編年作業を進め、(5)作成した旧地形図をも利用してこれら古墳群の形成過程の復元的研究を行った。(5)また本年度が最終年度にあたるため、研究報告書を作成した。
著者
白岩 広行 シライワ ヒロユキ
出版者
大阪大学大学院文学研究科社会言語学研究室
雑誌
阪大社会言語学研究ノート
巻号頁・発行日
vol.9, pp.14-29, 2011-01

本稿では、福島方言の問い返し疑問文が2種類のイントネーションパターンをとることを示し、音声的な特徴をふまえたうえで、イントネーションによる発話意図の違いを記述した。2つのパターンのうち、(問い返し以外の)疑問文一般でも使用されるものを「疑問汎用型」、問い返しの場合にのみ使われるものを「問い返し専用型」とすると、両パターンの音声的特徴(2節)基本的意味(3 .2節)は次のようにまとめられる。a.)疑問汎用型(-↘↗) 音声的特徴 : 一語文の場合は文頭、複数の語からなる文の場合は述語部の開始点から始まって文末の手前までの間に高くなり、そのあと文末で一度下がってから上昇調をとる。基本的意味 : 相手の発話そのものは理解したうえで、事実(現実世界のことがら)について改めて問い返していることを示す b.) 問い返し専用型(_↗) 音声的特徴 : 一語文の場合は文頭、複数の語からなる文の場合は述語部の開始点から、音が低いまま推移し、文末で上昇調をとる 基本的意味 : 相手の発話がそのままでは理解できず、相手の発した言語表現そのものについての、メタ言語的なレベルでの問い返しをおこなっていることを示す 上記の基本的意味に関連して、基本的に疑問汎用型の問い返し疑問文が間接話法的な性格を示すのに対し、問い返し専用型の問い返し疑問文は直接話法的な性格を示す(3.3 節)。
著者
白倉 幸男
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.57-70, 1986-11-20 (Released:2009-03-01)
参考文献数
36

数理社会学の古典としてのSimon-Homansモデルは、本質的部分は図形による質的推論を用いる。Simonの方法では、より一般的な定式化を進めると2つの難点に直面する。「(1)システムは、2つの内生変数のみ限られる.(2)測定単位の影響を被る。」この難点は、Simon=Homansモデルに一貫した解析性がないことに起因する。 Simonの方法では、調整速度の概念により、多変数システムを2変数システムへ帰着させ、位相図を用いる。かつては、これ以外に、質的な推論を行う方法がなかった。この桎梏からSimon=Homansモデルを解放し、新たな解析的展開の方法を提示する。このために、Jeffries(1974)の二色点法と質的比較静学が用いられる。二色点法は、サイクルテスト、彩色テスト、マッチングテストからなり、質的安定性を識別する。Simonの定式化は、Homansのいう内部体系を充分に把握しない。それゆえSimon=Homansモデルは、質的安定でない。Homansの下位モデルである南洋諸島の呪術と不安の相互連関は、飽和性の想定により集団の安定を保証する。Homansの小集団論の一般化の可能性をあわせて指摘する。
著者
岩崎 陽一 白柳 龍一 中村 京子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.5, pp.1-4, 2014-10-11

放送局の保有するラジオ番組の録音には,音楽史を知るための貴重な資料が含まれているにも関わらず,わが国ではそのほとんどが一般には公開されていない.本稿は,NHK アーカイブスの放送音源の一部をデジタル配信および高品位 CD で提供する,NHK エンタープライズとナクソスの共同事業を紹介する.そのなかで,人気ではなく資料価値を重視した場合のデジタル配信の優位性を明らかにし,また実演家の許諾取得に伴う法的および 「道義的」 課題とを論じる.Each broadcasting station has broadcast archives, which contain audio recordings that may be valuable materials for research in music history. Nevertheless, in our country, most of such archives are not available to the third party people. This paper introduces the joint projects of NHK Enterprises and Naxos for distributing a part of NHK radio broadcast archive digitally and physically. We will focus on the advantage of digital distribution as a means for spreading valuable but less popular materials, and legal and moral issues concerning rights handling.
著者
白倉 一由
出版者
山梨英和大学
雑誌
山梨英和短期大学紀要 (ISSN:02862360)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.15-28, 1995-12-10

近松世話浄瑠璃のこの期の作品の特色は内容の複雑化と人物の性格・思考・行動の現実化である。主人公善人、副主人公悪人の構想ではなく、主人公副主人公共に実存的・現実的になっているのである。この作品は主人公中心でなく、副主人の貞法・由兵衛が重要の人物であり、特に貞法の見解はテーマの構成に大きく関わっている。貞法の考えは個人的な愛より、家を存続させ維持させる事であった。主人としての世俗的の発想であった。二郎兵衛おきさの愛は初めは自己中心的なエロスの愛であった。二郎兵衛のおきさへの愛は男の一分であり、人間として誇りを持って菱屋に居る事であった。このおきさへの愛は貞法の考えと対立するようになっていく。家の存続と維持は大切な事であったが、人間性の立場に立てば、限界があり、全面的に肯定する事は出来なくなる。二郎兵衛おきさの愛は次第に罪の意識と共に献身的な他者への愛に生きるようになり、宗教の発想と共に死の通行となるのである。自己を罪の意識において他者への献身的愛と家の存続と維持のモラルとの葛藤が主題である。
著者
彦坂健太郎 谷口 徹 誉田 雅彰 白井 克彦州
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.133, pp.19-24, 2006-12-15
被引用文献数
2 1

本研究では,ユーザに煩わしい操作を要求することなく,ユーザの好みに合わせた自動的に選曲を行うシステムの開発を目指し,主観的な好みと楽音の音響的特徴との関連性を基にユーザの気分に適合する楽曲を楽曲再生時のオンライン学習により適応的に選択する手法を提案する.具体的にはユーザがある楽曲を「聴きたくない」としたときに特徴量空間においてそれらの楽曲からの距離が遠い楽曲を選曲するアルゴリズムを適用する.今回実験によって従来のランダム再生と比較しこの手法が有効であることが確認された.In this research, we are aiming for development of a music selection system adapted for user's feeling without disturbing operation. We propose an adaptive automatic music se lection method based on the relationship between the acoustic features of music and the subjective user feeling. Concretely, when a user makes a decision that they don't want to lis ten some music, we apply an algorithm that choose a music which is furthest from the music. In this paper, we could confirm efficacy of this means compare with random selection.
著者
白川 充 福島 玲子 久島 和代
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.130-146, 1984-03-20

著者らは1978年以来,桜島の爆発により,鹿児島市内に落下した火山灰を採取し,ラットおよび家兎を用いての動物実験により,火山灰粉塵の気管内注入ならびに,粉塵吸入による呼吸器への影響について研究を行なった.火山灰の化学的分析によれば,SiO_2の含有量が極めて多くて約58%を占め,次いでAl_2O_3,Fe_2O_3,CaO,TiO_2,MnO,P_2O_5,MgOなどの成分を有しており,silicosis発生の可能性が十分認められる.火山灰吸入家兎に,X線所見として粒状陰影も認められた.次に火山灰粉塵の粒度分布をみるに,10μm以下の粒子が,270mesh以下で93.25%,325mesh以下で99.05%を占めており,肺内深く侵入するこれらの粉塵は,気管内注入によっても,また吸入実験によっても,呼吸器に対する病変は著明で,粉塵は肺胞内に密に沈着し,一部はリンパ流にのって血管周囲に,あるいは気管支周囲に沈着し,喰細胞に貧食され,粉塵細胞を形成し,相隣接した肺胞に粉塵細胞が密在して,粉塵結節を形成する.この粉塵細胞の壊死や空胞形成により,線維細胞や小円形細胞等の細胞反応が現われ,これと同時に肺胞壁にガラス様変性が出現し,膠原物質の沈着がみられる.細胞反応はまた線維細胞増殖の増加となり,膠原線維が認められ,網状となってくる.そして粉塵結節がみられるにいたる.著者らは,火山灰の呼吸器に対する作用として,病理組織学的に,気管支炎,肺気腫や無気肺,血管変化,粉塵結節や粉塵性線維化巣等を伴う塵肺症を発生することを実証することができた.したがって,火山灰吸入の有害性について,十分認識することが必要であるとともに,これに対する予防対策,あるいは解決策を真剣に考えなければならない.
著者
山本 晴彦 岩谷 潔 高山 成 白水 隆之 土谷 安司 兼石 篤志 原田 陽子 東山 真理子
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.291-306, 2008-11-29
被引用文献数
1

Typhoon No. 0613 (SHANSHAN) went north up the west coast of Kyushu on September 17, 2006. After the typhoon landed near Sasebo city, Nagasaki past 18:00, it escaped from northern Kyushu into the Sea of Japan. As the typhoon passed through, it triggered a tornado in Nobeoka City of Miyazaki Prefecture, with the peak gust speed recorded at 46.0m/s (14:06) at Asahi Kasei Corporation. The length of the tornado path was estimated as 7.5km and the maximum width 300m based on the damage investigation. The tornado caused 3 fatalities, and around 1,300 damaged homes. The Fujita and Pearson scales were estimated to be F2 and P2, based on the extent of the tornado damage, and the length and width of the damage, respectively.
著者
織田 三郎 内海 誓一郎 白井 俊明
出版者
社団法人日本化学会
雑誌
化学教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.360-362, 1964-09-20
著者
山地 久美子 室崎 益輝 陳 來幸 近藤 民代 相川 康子 松岡 悦子 田間 泰子 山中 茂樹 磯辺 康子 小針 進 小林 郁雄 長 志珠絵 アンベッケン エルスマリー 金 千秋 垂水 英司 津久井 進 野呂 雅之 林 勲男 山崎 栄一 白 〓浩 韓 栄恵 陳 亮全 邵 珮君 LAURIE Johnson
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は日本、韓国、台湾、米国の自然災害被災地(阪神淡路大震災、中越地震、東日本大震災、江原道、ソウル市、台中市、高雄市、台北市、ニューオーリンズ市、サンフランシスコ市等)において主に被災者と支援者、行政、メディアを対象としたインタビュー及び資料収集調査を実施し、災害復興・防災体制におけるジェンダー課題を国際比較調査から明らかにした。さらに、研究成果を基に東日本大震災直後から政策提言・意見書を提出し、法制度・政策の改善につなげた。調査概要はジェンダーと災害復興ホームページ(http://genderdisaster.net/)において確認できる。
著者
白峰 旬
出版者
別府大学会
雑誌
別府大学紀要 (ISSN:02864983)
巻号頁・発行日
no.53, pp.65-77, 2012-02

慶長5年9月15日の関ヶ原の戦いに至る政治的・軍事的動向を把握するうえで、同年6月~9月における徳川家康の軍事行動について検討することは重要であり、必要不可欠な考察であると言えよう。本稿では、当該期に家康が発給した多くの書状を中心にその内容分析をおこない、昨年(2011年)3月に刊行された『愛知県史』資料編13、織豊3の所収史料など新出史料の分析もおこない、新知見を得ることを目指すものである。
著者
白石 孝
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.12-28, 1972-08-30

発展途上国の中でも,ブラジルは最近とみに注目をひき,その発展の過程に関して,さまざまな角度からの検討がなされてきた。事実,これまでの研究文献も多種多様にのぼり,いわゆる中南米やブラジル専門家とみられる人も決して少なくはない。それにもかかわらず,ブラジルは常に興味深い研究題材をあたえてくれるし,殊に,経済発展のプロセスやそこに生ずる経済制度やメカニズムとのコンフリクションを見極めようと思うものには,たしかに恰好なケース・スタディーの対象を提供してくれるといってよかろう。本稿はKeio Business Forumに筆者が発表した1970年のブラジル視察の覚書に統くものであって,主として,ブラジルの経済発展のパターンとその特徴を明らかにすることからはじめ,工業化,と貿易・為替政策,工業化のブラジルにおける条件と輸入代替の特質更に経済発展のコンフリクションを検討して,輸出多様化への発展プロセスを提示したいと思う。
著者
平澤 一浩 大塚 康司 伊藤 博之 上田 百合 白井 杏湖 鈴木 衞 永井 義幸 加藤 紀和 櫻井 衛
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.107, no.7, pp.529-533, 2014 (Released:2014-07-01)
参考文献数
20
被引用文献数
3

Intranasal steroids are widely used to treat olfactory disorder, and are known to have fewer side effects than systemic steroids. However, there are some reports that intranasal steroids have induced adrenal insufficiency, even when the steroid dosage is appropriate. We encountered a case of secondary adrenal insufficiency after using intranasal betamethasone for olfactory disorder within the usual dosage. In this case, we were not aware of instructing the patient not to swallow the steroid which had dripped into her pharynx. Thus, a large amount of steroids which had passed through her nasal cavity might have been absorbed in the oropharyngeal mucosa and also ingested. That is possibly the main cause of developing adrenal insufficiency. Recently, Toki-shakuyaku-san, a traditional Chinese medicine, has started to be used for olfactory disorder after a cold. Because of its minimum side effects, it may be safely used for patients with the risk associated with steroid use.