著者
後藤 崇志 石橋 優也 後藤 大樹
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S44080, (Released:2020-06-26)
参考文献数
8

本研究では,小・中学生とその親を対象とした調査を行い,親の学習観と子どもの学習への取り組みとの間に関連が見られるかを検討した.具体的には,親が持つ学習観(経験的で深い学習観,学校依存で浅い学習観)と,子どもの達成目標(マスタリー目標,パフォーマンス接近目標,パフォーマンス回避目標)と学習アプローチ(深いアプローチ,浅いアプローチ)の間に関連が見られるかを検討した.その結果,親が経験的で深い学習観を持つほど,子どもは学習内容を知識と結びつけるような学習アプローチを取りやすいなど,親の学習観と子どもの学習への取り組みとの間には一定の関連が示された.
著者
岡田 猛 横地 早和子 難波 久美子 石橋 健太郎 植田 一博
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.303-321, 2007 (Released:2009-04-24)
参考文献数
46
被引用文献数
14

The goal of this case study was to describe creation processes of contemporary artists from the perspective of Cognitive Science. We focused on the interaction among activities that affect long term processes of expertise and those that affect shorter term processes as the artist creates a series of work. We conducted retrospective interviews with two contemporary artists in their 40's using the portfolios of their past works so that they could recall their creation processes in detail. We found that the artists used an analogical modification process to produce a new series of artwork. Analogical modification is a cognitive process similar to analogical mapping, but modifies major features of the source structure while mapping it to the target. Artistic vision, which is formed through many years of creative activities and consists of main themes and goals for creation, plays an important role in guiding the usage of analogical modification. Analogical modification correspondingly appeared to deepen artistic vision.
著者
森 幹彦 池田 心 上原 哲太郎 喜多 一 竹尾 賢一 植木 徹 石橋 由子 石井 良和 小澤 義明
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.1961-1973, 2010-10-15

平成15年度に必履修科目として導入された高等学校普通教科「情報」を履修した学生が平成18年度から大学に入学してきている.これに対して,大学における情報教育も種々の対応が求められているが,そのためには新入生の状況把握が必要となっている.本論文では,平成18年度から京都大学で継続的に実施している情報教育についての新入生アンケートから大学新入生の状況の変化を調査し分析する.その結果,高等学校における教科「情報」の履修状況が多様で,十分に実質化していない可能性も残っていること,アプリケーションソフトの利用に関するスキルの向上などが見られること,情報セキュリティに関するリテラシは改善傾向にあるが不十分であること,大学における学習への希望としてプログラミングをあげる学生が多いことなどが明らかになった."Information Studies" are the new subjects for information/computer literacy which were introduced into high school as compulsory subjects from 2003. Students who took these subjects have entered in universities since 2006, and education in university has to deal with the change of students. For that, it has been necessary to know what and how much these students have knowledge, skills and practice about information/computer literacy. Since 2006, the authors have conducted questionnaire surveys of the literacy to freshmen in Kyoto University. This paper reports the results of the surveys from the view point of information/computer education. The results show the learning experience about Information Studies in high school has wide variety, and suggests Information Studies may not well implemented in some high schools. Skills to use application software are improved gradually. Literacy about information security still remains insufficient while it is also improved. Many freshmen listed computer programming as a matter that they want to learn in university.
著者
松本 悠実 野口 貴文 石橋 亮 高田 遼 高村 正彦 長縄 肇志 木村 智
出版者
日本建築仕上学会
雑誌
日本建築仕上学会 大会学術講演会研究発表論文集 2015年大会学術講演会
巻号頁・発行日
pp.37, 2015 (Released:2016-03-31)

窓サッシへの応用が期待されている塩化ビニル樹脂に促進耐候性試験を行い、紫外線による劣化について検討をした。添加剤条件の異なる4種類の塩ビ樹脂において、色差測定、衝撃試験、引張試験、化学分析を行った。そして、樹脂の劣化に伴う色変化の分析評価、添加する顔料及び耐候助剤の比率と劣化挙動の相関性の評価、またそれぞれの試験と化学分析との関係を評価し、窓サッシ用樹脂の耐久性能の評価と検討をした。性能評価の結果、強度低下よりも色変化の方が著しく、窓サッシとして使用していく際に大きな課題であるといえる。
著者
佐藤 智文 平野 智紀 山本 良太 石橋 純一郎 山内 祐平
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S46094, (Released:2022-09-27)
参考文献数
7

本研究の目的は,GIGA スクール構想による1人1台端末整備直後におけるICT 活用の促進要因を明らかにすることである.川崎市内の小学校教員(N=997)を対象として,教員の年代,GIGAスクール構想推進講師(GSL)担当,ICT 活用歴,GIGA 以前からICT を活用していたこと,ICT活用に対する自信,がGIGA 後のICT 活用に対する認識に及ぼす影響を検討した.分析の結果から,GIGA 後のICT 活用には,「年次の若さ」「GIGA 以前のICT 活用」「自信」が有効であること,ICT 活用歴の長さだけではGIGA 後のICT 活用には寄与しないこと,年代の高い教員においてICT活用への自信を持つことの効果が高いこと,が示唆された.
著者
石橋 春奈
出版者
長崎大学多文化社会学部
雑誌
多文化社会研究 = Journal of Global Humanities and Social Sciences, Nagasaki University (ISSN:21891486)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.285-299, 2022-03-22

ガレオン貿易は当時最も広域で行われた貿易であり、その開始はグローバル化のはじまりともいえる。本稿では、スペインのガレオン船の沈没船を集成し、沈没地点から航路を分類することによって、貿易の特徴について考察を行った。さらに沈没船の保護に関して、盗掘に伴う遺跡の破壊といった水中遺産の現状について明らかにした。
著者
酒井 章吾 石橋 敏朗 浦辺 幸夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】様々なスポーツにおいて,運動中に声を発する場面をしばしば目にすることがある。これはシャウト効果(Shout effect)を期待しており,自ら発声することによって最大努力時の筋力が増加するというものである。シャウト効果については様々な先行研究があるが,筋出力時の言葉の種類について言及したものは少ない。筆者らは,もし言葉の種類によってシャウト効果に差が生じるのであれば,スポーツ場面で選手が発する言葉を選択することで,より高い筋力発揮ができると考えた。本研究では,母音の種類によるシャウト効果に違いがあるか検証を試みた。【方法】一般成人男性30名(平均年齢21.6±1.1歳)を対象に無発声,「あ」「い」「う」「え」「お」の各母音の最大発声をランダムに行い,各母音発声中の等尺性膝伸展筋力を測定した。筋力の測定には,Cybex 6000(メディカ株式会社)を使用し,1条件に対し2回測定を行い(筋出力時間は5秒間),測定間の休息時間は60秒間とした。また,各条件間の休息時間は10分間とした。測定肢位は,膝関節は60°屈曲位,背もたれ角度は110°(座面が基本軸)とした。統計処理には,PASW statistics 18を使用し,1元配置分散分析を行い,事後検定には,Bonferroniの方法を用いた。危険率5%未満を有意とした。【結果】無発声および各母音の発声時の筋力測定値の平均値を示す。無発声で2.70±0.53(Nm/kg),「あ」で2.97±0.63,「い」で3.01±0.52,「う」で2.88±0.66,「え」で3.00±0.47,「お」で2.90±0.57だった。「え」では無発声に対して有意に筋力が増加した(p<0.05)。「あ」「い」「う」「お」では無発声に対して,全て筋力が大きくなったが,有意な増加ではなかった(NS)。【結論】シャウト効果が生じる要因について,先行研究では,音刺激による心理的影響や脊髄前角細胞の興奮順位の増強により,筋力発揮が増加すると考えられている。また,「い」「え」を選択すると運動能力が向上したという報告もある。本研究結果では,「え」の発声時のみ,無発声時よりも筋力が増加した。先行研究では「い」「う」「え」の発声時に,精神的緊張が高まるとされており。この緊張と筋出力のタイミングが合致することで運動に対し有効に働くとされている。今回,「え」のみで筋力の増加が認められたが,発声に関与する筋や頸部周囲筋の特性を含めて検討を進めたい。
著者
石橋 功至
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.16-24, 2021-07-01 (Released:2021-07-01)
参考文献数
53

数十億を超えるセンサが環境中のあらゆる情報を収集し,これを機械学習によって活用することで,災害の予測や,これまでにない公共サービスを提供する社会の実現が期待されている.しかし膨大な数のセンサを長期的に稼働させる上で,電池切れに伴うメンテナンスコストは無視できない.この問題に対して,光や熱,振動,化学反応,浮遊電磁波といった様々な物理現象から電力を得る環境発電 (EH: energy harvesting) が注目されている.EH電源を用いることで,センサはメンテナンスなしで半永久的に電源供給を受け,情報を伝送することができるが,周囲の状況によって通信に使える電力量が変動してしまうため,従来の安定的な電源供給を前提とした無線通信設計とは異なる設計が必要となる.本稿ではEH電源の原理を紹介した上で,様々なネットワークトポロジにおけるEH電源を用いた無線通信の研究動向,また残された問題について解説する.
著者
石橋 克彦
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

●徳島県海陽町宍喰の大日寺に伝わる「円頓寺開山住持宥慶之旧記」(猪井・他,1982)の中の「当浦成来旧記書之写」(A)は,永正九年(1512)八月に洪浪が同地を襲い,浦中流失して約2200人が死亡したと記す.これは,石橋(2014,2015),Baba et al.(2017),馬場・他(2017)などが引用した『震潮記』中の記事(B)や,『大日本史料』『増訂大日本地震史料』『宍喰村誌』『海部郡誌』などが掲載する『宍喰浦旧記』(『徴古雑抄続編』所収,C)の元だと考えられる.BとCには大きな誤写があるが,Aについても幾つかの疑問がある.猪井・他(1982)が紹介した翻刻に拠って問題点を指摘する.●まず,「当浦成来旧記書之写/永正十一年正月に書記すとこれあり候」以下の中核部分に,以下のような内容的疑問がある:(1)橋より南の町は残らず流失したが死者は少なく,橋より北の町家は痛みは多くなかったが死人多く,「両町の人老若男女とも三千七百余人の相助し人一千五百余人也」という大被害のもとで,二人の城主が翌年十二月中旬までに諸寺諸社13を含む家数1805軒を再建したというが,被災地にそれほどの財的・人的・物的資源があったのか.(2)生存者1500余人に対して「町家千七百家」の再建は多すぎるだろう(しかも北町の損家は少数!).(3)北町で死者が多かったのは不自然.(4)海辺の大松原や集落周囲の山林を皆伐して建材を調達したというが,その後の高潮・豪雨災害を懸念せずに本当にやったのか.(5)「御取立(建築)の諸寺諸社」の中に祇園拝殿も記されているが,大永六年(1526)の再建棟札があるから(宍喰村誌),矛盾している.(6)城主「藤原朝臣下野守元信公 同宍喰村城主藤原朝臣孫六郎殿」と記すが,『阿波志』『宍喰町誌』によれば,愛宕山城主は藤原孫六郎元信,祇園山城主は藤原下野守持共で,名前が混乱している.●中核部分に続いて,「新寺駅路山一寺円頓寺宥慶/時に慶長十年三月四日書記す也」と末尾に記された「九ケ所寺々名附所付」などがあるが,その中の「御当代蜂須賀阿波守茂成公の御先祖蓬庵公」という記述にも次の疑問がある:(7)茂成(本名,家政)は天正十三~慶長五年(1585-1600)の藩主,以後元和六年(1620)までの藩主は子の至鎮,しかも蓬庵は家政の号だから,二重におかしい.●永正九年洪浪の記録全般に関する疑問:(8)宍喰は戦国期より前は高野山蓮華乗院の荘園だったが,文安二年(1445)の「兵庫北関入舩納帳」(林屋,1981)に木材運搬の宍喰船の記録が20件あり,その後も堺などとの交易や海部刀の輸出などが盛んだったというから(宍喰町誌),舟運被害が記されていないのは不自然ではないか.(9)宍喰の壊滅は畿内などにも影響を与えた可能性があり,他の記録があってもよいのではないか.●Aは「円頓寺開山住持宥慶之旧記」の一部だが,全体についての疑問:(10)冒頭に「元文四己未年の春駅路山円頓寺開山住持宥慶の旧記等円頓寺の二階の上鼡の巣の中より取出し候其の時々拝見の僧円頓寺住持嘉明真福寺住持大雲也旧記の本紙は円頓寺にこれあり候旧記本紙の通相違なく写取るもの也/時に元文四己未年三月十四日」とあるが,慶長十年(1605)頃の膨大な古記録(慶長九年津波のものも含む)が元文四年(1739)まで鼠の巣の中にあって,鼠害に遭わずに詳しく読めたのは不自然ではないか(後のほうの一部には「鼡喰い云々」とあるが).(11)「円頓寺開山住持宥慶」というが,同寺(大正元年<1912>大日寺に合併)の「御建立成来旧記之事」(宍喰町誌)は,「駅路山円頓寺住侶 法印快厳(花押)/慶長四己亥年正月二十八日書記之」として「当時開山住侶 <中略> 久米田寺多門院一代法印快尊弟子快厳時代也」と記すから,宥慶は開山住持ではないだろう.●以上の問題点は,書記や書写の各段階での思い違いや写し間違いの所為にされるかもしれない(翻刻ミスもありうるが,そのレベルではない).だが,不自然な記述が多く,Aの信憑性は低いのではないだろうか.ただし,Aの内容がすべて事実無根と言えるわけではなく,地元の記憶・伝承が融合されて架空の記録が作られたのかもしれず,生起年代は別として,個別的な歴史的事実は含まれているかもしれない.しかし「永正九年八月の宍喰浦洪浪災害」の実在に関しては,現段階では疑問と言わざるをえない.今後Aの記述内容を,史料学と地学的・考古学的現地調査によってさらに検討することが重要であろう.なお「宥慶之旧記」全体の精査は,慶長九年十二月十六日(1605.2.3)の宍喰の地震動・津波という歴史地震学の大問題に直結している.
著者
岡田 猛 横地 早和子 難波 久美子 石橋 健太郎 植田 一博
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.303-321, 2007

The goal of this case study was to describe creation processes of contemporary artists from the perspective of Cognitive Science. We focused on the interaction among activities that affect long term processes of expertise and those that affect shorter term processes as the artist creates a series of work. We conducted retrospective interviews with two contemporary artists in their 40's using the portfolios of their past works so that they could recall their creation processes in detail. We found that the artists used an analogical modification process to produce a new series of artwork. Analogical modification is a cognitive process similar to analogical mapping, but modifies major features of the source structure while mapping it to the target. Artistic vision, which is formed through many years of creative activities and consists of main themes and goals for creation, plays an important role in guiding the usage of analogical modification. Analogical modification correspondingly appeared to deepen artistic vision.
著者
新田 敏勝 川崎 浩資 芥川 寛 江頭 由太郎 石橋 孝嗣
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.3034-3039, 2011 (Released:2011-11-07)
参考文献数
14

症例は76歳,女性.突然の心窩部痛,嘔吐を主訴に当院救急外来を受診された.上部消化管内視鏡検査所見では,胃穹窿部から索状物が認められ,幽門洞へ引き込まれていた.また腹部造影CT検査では,十二指腸球部に占有する5cm大の腫瘤陰影を認めた.まず,術前に用手圧迫を併用し内視鏡下に整復を行い,胃穹窿部から発生したGISTと診断し,小切開による胃部分切除術を施行した.病理組織学的にもKIT(+)CD34(+)でGISTであった.ball valve syndromeをきたした症例に対し,内視鏡下に嵌頓を解除し,適切な加療を行えた1例を経験したので報告する.