著者
兼児 敏浩 石橋 美紀 日比 美由紀
出版者
Japan Society for Health Care Management
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.399-403, 2009

患者ハラスメントを 「医療提供者に対する患者や患者家族による不当な要求や暴言、暴力 (セクシャルハラスメントも含む)」 と定義し、全国16の医療施設に協力を求め、実態調査を行った。116事例について把握できたが、想定よりも事例数が少なかった原因は患者ハラスメントに対する認識不足や収集システムの不備にあると推測された。患者ハラスメントはすべての部署・時間帯に発生しており、40代の男性が加害者となることが多かった。患者ハラスメントはまったくの言いがかりである場合は半分以下で患者の病状や些細な医療上のミスが誘引となる事例などが多く、半分以上が医療特有の原因に起因していると考えられた。被害者は女性看護師をはじめとして多くの職種に渡り、恐怖心や不快感のみならず厭世的な気分になることも多く、早急な対策が必要であると考えられた。
著者
平川 周作 中島 淳 松木 昌也 古賀 敬興 秦 弘一郎 柏原 学 古閑 豊和 石間 妙子 宮脇 崇 金子 洋平 志水 信弘 松本 源生 石橋 融子
出版者
一般社団法人 日本環境化学会
雑誌
環境化学 (ISSN:09172408)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.125-132, 2020 (Released:2020-09-18)
参考文献数
28
被引用文献数
1

In this study, we examined a fish survey method using environmental DNA (eDNA) metabarcoding in a river, and the relationship between the fish survey results and water quality detected in eDNA was analyzed. eDNA surveys and fishing surveys were conducted in summer and winter, targeting three sites on three rivers in Fukuoka prefecture. Our comparison of riffles and pools and our examination of the appropriate places to collect eDNA samples revealed that the detected fish species were not completely consistent between the two kinds of surveys and there was no ecological features common to detected fish species. Therefore, sampling at multiple locations is expected to reduce detectable fish dropouts. More fish species were detected in the eDNA survey than in the collection survey at all times. However, the results also suggested that the DNA of fish species living upstream may remain at sampling site, and benthic fish species tend to be difficult to detect by eDNA surveys. In addition, the influence of water quality on the characteristics of the survey site were analyzed, since marine species were detected in some river eDNA surveys. The results suggested that domestic drainage is likely to affect the characteristics in winter, when the amount of water is small, and the change in concentration of linear alkylbenzene sulfonic acid and its salts and the change of the ratio of chloride ions may be used as an index of domestic drainage.
著者
日高 佑紀 森 大樹 中道 隆弘 石橋 康弘 篠原 亮太 有薗 幸司
出版者
大学等環境安全協議会
雑誌
環境と安全 (ISSN:18844375)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.35-39, 2014-03-31 (Released:2014-05-16)
参考文献数
13

増大する有機廃棄物を資源としてリサイクルし、農地などへ還元・活用するシステムとして堆肥化(コンポスト)が注目されている。そのなかで下水汚泥のコンポスト化は今後、ますます増加すると考えられる。 一方で、パーソナルケア製品に頻用されている合成香料が下水汚泥に高濃度で検出されることが報告されている。そのため、下水汚泥由来のコンポスト肥料中の合成香料の残留性が懸念される。今回、合成香料である6-acetyl-1,1,2,4,4,7-hexamethyl tetraline(AHTN)、1,3,4,6,7,8-hexahydoro-4,6,6,7,8-hexamethyl cyclopenta-γ2-benzopyran(HHCB)、HHCB の代謝物HHCB-lactone並びに[1,2,3,4,5,6,7,8-octahydro-2,3,8,8,- tetramethyl naphtalen-2yl]ethan-1-one (OTNE) の下水汚泥由来コンポスト肥料における残留性を調査した。その結果、 コンポスト肥料から、N.D.~5.3 mg AHTN /kg、N.D.~4.2mg HHCB /kg、N.D.~14.2 mg HHCB-lactone /kg、 N.D.~2.1 mg OTNE /kgで検出された。このことから、下水汚泥に高濃度で蓄積した合成香料は下水汚泥を原料としたコンポスト肥料に高濃度で残留することが示された。この結果よりコンポストの製造過程においてもこれらの合成香料等が除去されず、下水汚泥の再利用による土壌環境汚染が憂慮された。
著者
石橋 亜友
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌B(電力・エネルギー部門誌) (ISSN:03854213)
巻号頁・発行日
vol.135, no.3, pp.NL3_3-NL3_6, 2015 (Released:2015-03-01)
参考文献数
3

I am the chemistry girl. I discussed and took local issue as a big theme. And I focused on problem of solved in Lake Shinji. Discussing how to use solved.  I took it as a electric batteries.  From now I am going to explain the experiment I did.
著者
佐藤 翔 石橋 柚香 南谷 涼香 奥田 麻友 保志 育世 吉田 光男
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
pp.2019_035, (Released:2019-07-19)
参考文献数
25

本研究では非専門家にとっての論文タイトルの「面白さ」を得点化し,Twitterからの言及数が多い論文と言及されたことのない論文でこの得点に差があるかを検証した.Twitterからの言及数データはCeek.jp Altmetricsから収集し,2008年に出版された論文の中でTwitterからの言及回数が特に多い論文103本と,言及回数が0の論文の中からランダムに選択した100本を分析対象とした.4名の非専門家が各論文タイトルの「面白さ」を7段階で評価し,その点数の合計を「面白さ」得点と定義した.分析の結果,Twitterからの言及数が多い論文グループと,言及数が0の論文グループで「面白さ」得点には有意な差が存在し,Twitterからの言及数が多い論文の方がタイトルが「面白い」傾向が確認された.さらに,この差は分野別に分析しても確認された.
著者
鑪迫 典久 寺崎 正紀 山岸 隆博 堀江 好文 山室 真澄 石橋 弘志 山本 裕史
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

化学物質の新たな存在形態となりうる、マイクロカプセルを介した化学物質の環境中動態、野生生物の蓄積および生態影響について明らかにする。マイクロカプセルとは、芯材に様々な化学物質を封入した微細な粒子状物質を指す。カプセルに封入された化学物質は、化学物質本来の化学構造から推定される環境動態とは異なる動きを示す。よってその動態解明は新たな研究分野として重要である。本研究ではマイクロカプセルの水環境中での拡散・環境動態および水生生物に与える影響を明らかにし、さらに揮発性・難水溶性の化学物質を内包したマイクロカプセルを合成し、カプセル化した場合としない場合とでの生物影響の差を調べる。
著者
石橋 登 谷口 汎邦
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.74, no.635, pp.41-50, 2009-01-30 (Released:2009-11-02)
参考文献数
6
被引用文献数
1

The Study clarified how neighbourhood amenities are located following their spontaneous emergence in a suburban residential area developed through land readjustment projects. The main findings of the Study are listed below.1) The scope of the development of neighbourhood amenities by a private developer is limited as the emphasis is placed on profit-making amenities.2) In a situation where the locationing of neighbourhood amenities is left to spontaneous emergence, there is a tendency for such amenities to be clustered around a railway station.3) The unit number of neighbourhood amenities shows secular changes while reflecting the characteristics of individual zones.
著者
渡壁 奈央 河野 知歩 石橋 ちなみ 岡田 玄也 杉山 寿美
出版者
一般社団法人 日本家政学会 食文化研究部会
雑誌
会誌食文化研究 (ISSN:18804403)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.27-38, 2022-12-25 (Released:2023-07-25)
参考文献数
48

本研究は、『元就公山口御下向之節饗応次第』に記された饗応献立の再現の過程と、再現した饗応献立の活用事例を報告するものである。『元就公山口御下向之節饗応次第』には、1549年に毛利元就が大内義隆を訪問した際の6回分の饗応献立が、用いた食器具とともに記されている。6回の饗応献立の料理は類似しており、料理の提供順序に規則性が認められた。料理の再現は、毛利氏の家臣、玉木吉保が記した『身自鏡』や、同時期の史料の調理法に従った。調味料は、醤油、砂糖は用いず、味噌、塩、酢、酒、蜂蜜、水飴を用いた。獺(かわうそ)、白鳥等の入手が不可能な食材は、類似した食材で代用した。再現した饗応献立は“サムライゴゼン~毛利食~”として商品化され、また、COVID-19感染症拡大により中止となったが、学校給食での提供が予定されていた。今後、観光面、教育面での活用が期待される。
著者
酒井 章吾 石橋 敏朗 浦辺 幸夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0609, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】様々なスポーツにおいて,運動中に声を発する場面をしばしば目にすることがある。これはシャウト効果(Shout effect)を期待しており,自ら発声することによって最大努力時の筋力が増加するというものである。シャウト効果については様々な先行研究があるが,筋出力時の言葉の種類について言及したものは少ない。筆者らは,もし言葉の種類によってシャウト効果に差が生じるのであれば,スポーツ場面で選手が発する言葉を選択することで,より高い筋力発揮ができると考えた。本研究では,母音の種類によるシャウト効果に違いがあるか検証を試みた。【方法】一般成人男性30名(平均年齢21.6±1.1歳)を対象に無発声,「あ」「い」「う」「え」「お」の各母音の最大発声をランダムに行い,各母音発声中の等尺性膝伸展筋力を測定した。筋力の測定には,Cybex 6000(メディカ株式会社)を使用し,1条件に対し2回測定を行い(筋出力時間は5秒間),測定間の休息時間は60秒間とした。また,各条件間の休息時間は10分間とした。測定肢位は,膝関節は60°屈曲位,背もたれ角度は110°(座面が基本軸)とした。統計処理には,PASW statistics 18を使用し,1元配置分散分析を行い,事後検定には,Bonferroniの方法を用いた。危険率5%未満を有意とした。【結果】無発声および各母音の発声時の筋力測定値の平均値を示す。無発声で2.70±0.53(Nm/kg),「あ」で2.97±0.63,「い」で3.01±0.52,「う」で2.88±0.66,「え」で3.00±0.47,「お」で2.90±0.57だった。「え」では無発声に対して有意に筋力が増加した(p<0.05)。「あ」「い」「う」「お」では無発声に対して,全て筋力が大きくなったが,有意な増加ではなかった(NS)。【結論】シャウト効果が生じる要因について,先行研究では,音刺激による心理的影響や脊髄前角細胞の興奮順位の増強により,筋力発揮が増加すると考えられている。また,「い」「え」を選択すると運動能力が向上したという報告もある。本研究結果では,「え」の発声時のみ,無発声時よりも筋力が増加した。先行研究では「い」「う」「え」の発声時に,精神的緊張が高まるとされており。この緊張と筋出力のタイミングが合致することで運動に対し有効に働くとされている。今回,「え」のみで筋力の増加が認められたが,発声に関与する筋や頸部周囲筋の特性を含めて検討を進めたい。
著者
遠藤 史郎 徳田 浩一 八田 益充 國島 広之 猪俣 真也 石橋 令臣 新井 和明 具 芳明 青柳 哲史 山田 充啓 矢野 寿一 北川 美穂 平潟 洋一 賀来 満夫
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.50-56, 2012 (Released:2012-03-23)
参考文献数
16
被引用文献数
3

2011年3月11日の東日本大震災に伴う宮城県名取市館腰避難所においてインフルエンザアウトブレイクが発生した.同避難所では200名の避難者が共同生活を営んでおり,40%が65歳以上の高齢者であった.初発例発生から5日目の4月8日当避難所の巡回診療を行っていた名取市医師会会長よりインフルエンザアウトブレイクに対する介入要請があり,対応策構築のために同避難所へ介入した.介入時既に,non-pharmaceutical interventions: NPIとして,発症者全員の隔離が行われていたが,隔離以外の手指衛生をはじめとするNPIは十分には行われていなかった.一方で,計22名への予防投与が行われていた.したがって,NPIを中心とした基本的対策の強化(ⅰ:マスク着用率の向上,ⅱ:手指衛生の適切な実施の啓発,ⅲ:換気の実施,ⅳ:有症状者の探知および発症者家族のモニタリング強化,ⅴ:発症者の隔離)を現場スタッフと確認し,一方,現場医師と予防投与は基本的対策を徹底したうえで,なお,感染が拡大した場合のみ考慮すべき対策であること,また,その範囲・適応などに関して協議した.4月13日,2度目の介入を行い新規発症者は18日の1人を最後に終息した.避難所におけるインフルエンザアウトブレイクは過去にも報告が少なく,初めての経験であった.予防投与はあくまで補助的な方策であり,アウトブレイクの規模や感染リスクを考慮し,さらにNPIの強化徹底を行った上で行うことが必要であると考えられた.
著者
小栗 朋子 石橋 由梨 吉永 淳
出版者
一般社団法人 日本環境化学会
雑誌
環境化学 (ISSN:09172408)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.43-47, 2013 (Released:2013-09-25)
参考文献数
26
被引用文献数
2 3

Total and inorganic arsenic (tAs and iAs) analysis of soils and house dust samples, collected pair-wise from 41 residences of general public in Japan, was carried out to estimate contributions of these non-dietary oral sources to total daily exposure level of iAs, an established human carcinogen. Total As concentration in the samples was determined after mixed acid digestion followed by ICP mass spectrometric (ICPMS) determination. Non-spectroscopic interference arising from residual carbon in the digest was successfully compensated by addition of 3% acetic acid to sample digest and standard solution. Concentration of iAs in soil and house dust samples (n=20 each) was measured by liquid chromatography- ICPMS after extraction with synthetic gastric juice. Median tAs concentration in soil (n=38) and house dust (n=40) was 10 and 2.5 mg/kg, respectively. Median iAs (AsIII+AsV) concentration was <0.01 and 0.24 mg/kg, respectively. Assuming that adult unintentionally ingest 50 mg each of soil and house dust, daily exposure level was estimated to be 0.0005 and 0.012 μg/day, respectively. When recently reported daily dietary iAs intake (mean of two estimates: 15.4 μg/day) is considered, contributions from soil and house dust to total daily oral exposure was estimated to be 0.003 and 0.08%, respectively. Soil and house dust ingestion, as well as inhalation exposure (estimated to be 0.02 μg/day), was found to be insignificant for total daily iAs exposure of Japanese.
著者
石橋 憲明 岡島 重伸 吉原 福全 西脇 一宇 平岡 正勝
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.17-26, 2003-01-31 (Released:2010-05-31)
参考文献数
15
被引用文献数
2 1

本研究では, 流動床式小型実験炉を用いた模擬RDFの燃焼実験, ならびにその燃焼排ガスを用いた流動反応管による飛灰加熱実験を行い, 廃棄物燃焼ガスの冷却過程におけるPCDDs/DFsの生成 (二次生成) について, ガス温度や内壁温度, 飛灰の付着性の観点から検討を行った。その結果, PCDDs/DFsの二次生成は燃焼ガス中に浮遊する飛灰ではなく, 壁面に付着した飛灰が関与した反応であり, 慣性や熱泳動により飛灰付着量が多くなる場所からのPCDDs/DFs生成量が多いことを確認した。また, 二次生成に起因したPCDDs/DFsの生成量は燃焼ガス中のHCl濃度に比例し, ポリ塩化ビニル (PVC) やポリ塩化ビニリデン (PVdC) のような塩素系プラスチックのみならず, NaClもPCDDs/DFsの塩素源になることを明らかにした。さらに, Cu含有量が少ない飛灰では, 飛灰堆積部温度が約200℃でPCDDs/DFsの生成はほとんど認められないのに対し, 約300℃ではPCDDs/DFs濃度が増加した。一方, 飛灰中にCu含有量が多い場合は, Cu含有量が少ない場合に比べ著しくPCDDs/DFs濃度が増加し, 約200℃の温度域でもPCDDs/DFs濃度の増加が認あられた。
著者
松尾 琢也 福嶋 慶繁 石橋 豊
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.J434-J443, 2012 (Released:2012-10-25)
参考文献数
19

In this paper, we propose a refinement filter for depth maps. The filter convolutes an image and a depth map with a cross-computed kernel. We call the filter a weighted cross bilateral filter. The main advantages of the proposed method are the filter fits outlines of objects in the depth map to silhouettes in the image, while the filter reduces Gaussian noise in other areas. Additionally, its computational cost is independent of depth ranges. Thus, we can obtain accurate depth maps at the lower cost than the conventional approaches, which require Markov random field-based optimization methods. Experimental results show that the accuracy of the depth map in edge areas goes up and its running time is low.
著者
後藤 崇志 石橋 優也 梶村 昇吾 岡 隆之介 楠見 孝
出版者
The Japanese Psychological Association
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
2015
被引用文献数
7

We developed a free will and determinism scale in Japanese (FAD-J) to assess lay beliefs in free will, scientific determinism, fatalistic determinism, and unpredictability. In Study 1, we translated a free will and determinism scale (FAD-Plus) into Japanese and verified its reliability and validity. In Study 2, we examined the relationship between the FAD-J and eight other scales. Results suggested that lay beliefs in free will and determinism were related to self-regulation, critical thinking, other-oriented empathy, self-esteem, and regret and maximization in decision makings. We discuss the usefulness of the FAD-J for studying the psychological functions of lay beliefs in free will and determinism.
著者
石橋 鼓太郎
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.87, no.3, pp.421-440, 2022-12-31 (Released:2023-04-21)
参考文献数
43

本論文は、現代日本における行政を主催とした市民参加型の音楽実践〈千住だじゃれ音楽祭〉を研究対象とし、そこで探究される「だじゃれ音楽」なる新たな音楽の形態と、行政が期待する「つながり」との相互関係を明らかにするものである。それによって、現代日本において制度的に規範化された関係としての「つながり」やそれに基づく音楽観を相対化するとともに、その只中において別様の関係や音楽のありようを模索する「ポスト関係論」的な音楽研究の可能性を提示することを目指す。 だじゃれ音楽において見られる「だじゃれ的」な関係とは、思いついただじゃれをつい言ってしまうように、内的な必然性にしたがってふるまうことで、外的な規範から「浮いた」ままの状態を保つような関係である。一方このような関係は、「つながっているか、いないか」を問う行政的なつながりの規範に基づくと、「つながっているような、いないような」ものとして映り、それによって両者の関係は「浮いた」ままにされ、音楽実践の制度的な基盤は保たれ続けている。 以上の記述を通じて、人類学者にとっての関係概念や音楽概念を対象に即して組み直していく戦略としての「ポスト関係論」を、あらゆる関係へと開かれているがそれ自体は関係に満たない「プロト関係論」によって実行することを試みる。
著者
石橋 克彦
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.108, no.4, pp.399-423, 1999-08-25 (Released:2009-11-12)
参考文献数
75
被引用文献数
12 18

A large volume of historical documents in Japan show that great subduction earthquakes have repeatedly occurred along the Suruga-Nankai trough off southwest Japan since A.D. 684 with an interval of 100-200 years. They occurred as pairs of M8 events, one in the eastern half (Tokai earthquake) and another in the western half (Nankai earthquake), as was the case for the 1854 Ansei earthquakes, while sometimes occurring as single giant events like the 1707 Ho'ei earthquake. Although the space-time pattern of their recurrence is the best-known in the world, we should study more past events in order to understand the tectonophysical bases of their recurrence. In this respect I review the present understanding of historic Tokai and Nankai earthquakes and discuss related problems from the viewpoint of historical seismology. In this paper, the first of the three in all, I review the events until the early half of the 14th century. The keys to identifying older events are strong ground motion and damage in Kyoto, Nara, and Osaka, those in wider area of southwest Japan, tsunamis along the Pacific coasts of southwest Japan, typical coseismic vertical crustal movements of the Kochi plain, the Muroto and Oma'ezaki points, and the Ise and Suruga Bay coasts, temporal inactivity of specific hot springs, and aftershock activities recorded in Kyoto. The 684 Hakuho earthquake was definitely a Nankai event, and possibly included a Tokai event simultaneously (possibly Ho'ei type). The 887 Nin'na earthquake was also a definite Nankai event and was probably a Tokai event as well (Ho'ei type). The 1096 Eicho earthquake was clearly a Tokai event, but the following 1099 Kowa earthquake has some discrepancies that prevent it from being regarded as a M8 Nankai event. It is not clear yet whether great earthquakes occurred or not in the ca. 200 year intervals of 684-887 and 887-1096. It seems probable that great Tokai and Nankai earthquakes took place in the mid-13th century, but a more detailed investigation of historical seismology is required to discover the missing event.