著者
山本 晃輔 野村 幸正
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.127-135, 2010-02-28 (Released:2010-11-25)
参考文献数
24
被引用文献数
3 1

本研究の目的は,におい手がかりの命名,感情喚起度,および快-不快度が自伝的記憶の想起にどのように影響を及ぼすのかを検証することであった.実験では,118名の参加者に30種類のにおい刺激について,熟知度,感情喚起度,快-不快度の評定と命名を求め,さらに,それらを手がかりとして自伝的記憶の想起が可能であるかどうかを報告させた.記憶が想起された場合には,それについて鮮明度,感情喚起度,快-不快度を評定させた.実験の結果,正しく命名されたにおいは,そうではないにおいよりも熟知度が高く,かつ情動的であった.加えて,感情一致効果がみられた.また,正しく命名されたにおい手がかりによって想起された自伝的記憶は,命名されなかったにおい手がかりによって想起されたそれよりも鮮明でありかつ情動的であった.これらの結果はにおい手がかりによる自伝的記憶の想起において,命名と感情が重要な役割を果たしていることを示唆している.
著者
野村 伸一
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

東アジアのうち、東シナ海を中心にした祭祀と芸能について、40余りのウエブサイトを公開した(後掲一覧参照)。そして、その具体的な資料に基づいて、野村伸一編著『東アジアの祭祀伝承と女性救済』(風響社、2007年)を刊行し、さらに野村伸一著『東シナ海祭祀芸能史論序説』(2009年、7月刊行予定) をまとめた。これらにより、中国、朝鮮半島、日本につづく基層文化のいくつかの基軸を明確に示すことができた。そうした基軸の提示は従来の縦割りの研究組織からはなされていない。このことが最も大きな成果といえる。
著者
野村 幸正
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.130-139, 1974-08-10 (Released:2010-07-16)
参考文献数
36

The principal purpose of the present study was to examine the adequacy of the interference theory in accounting for the so-called spacing effect in short-term memory tasks. A series of the 4 experiments were designed to investigate this problem by using the continuous paired-associate format and the Brown-Peterson format. The results indicated that the determinant of the effects of the spacing interval and the retention interval was the number of intervening items or tasks and this might be interpreted by the interference theory. Further, the relation between the spacing effect and the interference theory may be explained by assuming that the function of the spacing interval was mainly to provide the opportunity for the first encoded cue to forget rather than the stored information to forget by the interference.
著者
野村 久子
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、国の制度や公的資金による農業文化遺産維持継承の支援の取組と、市場メカニズムを用いた支援の取り組みについて日英における制度比較を行い、支援体制について整理を行った。具体的には、農業環境制度の中に組み込んだ形で歴史的構築物、石垣やフットパスといった農業文化遺産保全の維持継承を行っている英国を事例として、特に、伝統的風景や歴史的農業構築物の維持を目的とした制度の仕組みや運用手順、事例について明らかにした。また、国内においては、福岡県朝倉市の三連水車を事例として、市場メカニズムを用いた市民参加型の支援の可能性があることを示した。
著者
岡 好良 加藤 豊明 野村 紘一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.147-153,A10, 1966-02-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
17
被引用文献数
3

鉄,コバルトおよびニッケルに日本原子力研究所の電子線型加速器で得られる最大エネルギー20MeV,約9×104r/minのγ線を照射し,光核反応残留核に関する基礎検討を行ない,多量の鉄に含まれるコバルトおよびニッケルを非破壊定量する方法を確立した。本照射で起る主反応として54Fe(γ,n)54Fe,57Fe(γ,p)56Mn,58Co(γ,n)58Co,58Ni(γ,n)58Niおよび58Ni(γ,p)57Coを確認し,時間の照射よる生成量を求め,それぞれ,1.3μc57Fe/mg Ni Fe, 8.1×10-2μc56Mn/mg Fe, 6.3×10-2μc58Co/mg Co,1.3μc57Ni/mg Ni および1.5×10-2μc57Co/mg Ni を得た。照射後の試料を約1日冷却すれば主成分の鉄から生じる53Fe(半減期,8.9分)および56Mn(半減期,2.58時間)は減衰し去り,コバルトは58Co(半減期,71日)の0.803MeVのγ線,ニッケルは57Ni(半減期,37時間)の1.37MeVのγ線の光電ピークの示す面積計数率を求め,それぞれを定量できる。このとき鉄をγ線束強度の内部モニターとし,あらかじめ56Mnの1.81MeVあるいは0.845MeVの光電ピーク面積を求めた。酸化鉄(III)100mgに種々の量の酸化コバルト(II)あるいは酸化ニッケル(II)を添加,混合した試料をそれぞれ1時間照射し,照射終了時に換算した放射能計数率比,RA0=cpm(58Co,0.803MeV)/cpm(56Mn,1.81MeV)あるいはRA0=cpm(57Ni,1.37MeV)/cpm(56M,0.845MeV)と混合重量比,Rwとの関係を求め,両者の間によい比例関係を得た。実試料の分析にあたっては照射および測定の条件を混合物のものと同一にしてRA0を求めればRwを知ることができる。本法は,鉄中のコバルト約100ppmニッケル約50ppmまでの非破壊分析法となる。多量のマンガンおよび銅の共存は支障となる。
著者
赤間 清 野村 祐士 宮本 衛市
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.12, no.5, pp.447-464, 1995-09-18
被引用文献数
25

文の意味は,それが発話された状況や,話題の領域の背景知識などを柔軟に用いて適切に解釈する必要がある.しかし,多様な状況を適切に分類して,正しいアルゴリズムを書き下すことは多くの場合非常にコストがかかる.また,文の意味を解釈する場合に,あらかじめ定めた計算順序にしたがって処理を進めると,無駄な計算をたくさん行なうことになり高速な処理が期待できない.これらの問題を解決するために本論文では,いろいろな場合にわけてアルゴリズムを書くことを避け,対象領域の基本的な知識や状況を宣言的なプログラムとしてモジュール性高く記述し,正当性の証明された変換ルール群を用いてプログラム変換によって意味解釈を行なう方法を提案する.この方法は,計算の正当性,対象とルールの表現力,計算順序の柔軟性などの点で著しい特長を備えており,自然言語の意味解釈を正当性を保証しながら効率的に実現するために有用であると考えられる.
著者
安藤 真次郎 野村 竜仁 岡本 信照 立岩 礼子
出版者
龍谷大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、ルネサンス思想という観点から、一般にいう「スペイン黄金世紀」という時代の文化事象を捉え直すことにより、15・16世紀のスペインの独自性を明らかにするとともに、当時のスペインが直面していた問題をヨーロッパおよび新大陸との関係性において考察することで、ヨーロッパ思想史とラテンアメリカ思想史におけるスペイン・ルネサンス思想の位置づけを再検証している。
著者
大平 雅子 須栗 一路 野村 収作
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.798-804, 2011-12-10 (Released:2012-04-10)
参考文献数
32
被引用文献数
1

(OBJECTIVE) The change in the secretion of stress-related bio-chemical substances, which are cortisol, immunoglobulin A (sIgA), and alpha-amylase, while asleep was regarded. As for the sample collection, we developed and proposed a saliva collection technique as a non-invasive and non-disturbing manner of sample collection while asleep, whereas the blood collection should impose greater psycho-physiological stresses to subjects. (METHOD) Subjects, 10 male university students, were instructed to take a 6-hour of sleep from 0:00 of the midnight to 6:00 in the morning at the environmental controlled room, where electrocardiogram (ECG) and blood pressure (BP) were measured, and saliva collection was made continuously in the time series. (RESULT) Salivary sIgA and alpha-amylase concentration obtained by saliva samples depicted a similar profile in the time series, i. e. gradually increase while subjects were asleep, and dropped to the initial level right after awakening. Meanwhile cortisol remained the same level while asleep and got started to increase right after awakening and reached at a peak around 40 minutes later. (CONCLUSION) We developed and proposed our own saliva collection technique for the purpose of non-invasive sample collection while asleep. As a developing result, the distinctive difference in the secretion of stress-related substances was illustrated;which might be derived from the difference in the stress-reaction pathways in our body.

1 0 0 0 OA 『吉野葛』論

著者
野村 圭介
出版者
早稲田商学同攻会
雑誌
早稲田商学=The Waseda commercial review (ISSN:03873404)
巻号頁・発行日
vol.298号, pp.105-138, 1982-10
著者
増田 研 波佐間 逸博 宮地 歌織 山本 秀樹 野村 亜由美 宮本 真二 田川 玄 田宮 奈菜子 佐藤 廉也 野口 真理子 林 玲子
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究課題は日本のアフリカ研究者による初めての高齢者研究であり、かつ、人類学と公衆衛生学・保健学を組み合わせた方法論を採用したため、期間を通じてそのアプローチのあり方について模索を続けた。成果として書籍(編著)を公刊したほか、日本アフリカ学会におけるフォーラムの開催、日本アフリカ学会の学術誌『アフリカ研究』に特集を組んだことがあげられる。検討を通じて、都市部貧困層高齢者の課題、アフリカにおける高齢者イメージの解体、生業基盤によるケアのあり方の違いといった探求課題を整理できたことも成果である。
著者
石原 昌江 野村 梨香
出版者
岡山大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岡山大学教育実践総合センター紀要 (ISSN:13463705)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.89-98, 2001

本研究では、岡山大学における養護実習の現状とその効果について、実習生及び指導養護教諭に対する調査結果を分析することにより、これからの養護教諭養成における実習のあり方について検討することを目的とした。現状では、健康診断、保健指導、救急処置等の基本的職務については学ぶことができているが、養護教諭の新たな役割とされる健康相談活動については、子どもの心の状態を探る段階にとどまっている。また、学校保健委員会活動等の企画運営への参画など、他の教職員との連携のあり方や学校保健活動、養護活動の進め方について十分に学び得ることは、短期間の実習だけでは困難な事項もある。今後の課題としては、「養護実習が養護教諭養成カリキュラム全体を推し進める要の位置にある」ことを明確にし、関係者が協力して、実習の事前・事後における指導内容・方法の改善を図っていくことが必要である。This study is aimed to consider the problems of training practice for school nurse-teachers by analyzing the research about the current evaluation and effect of the training in Okayama University. In the present situation it is possible to learn fundamental duties such as physical examination and health guidance. However some issues which include cooperation with other teaching staff, participation in management of the school health committee and organizing school health activities are still left to argue.
著者
森 敬 梶川 嘉延 野村 康雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.101-110, 2003-02-01
被引用文献数
15

本論文では,摂動の大きさを自動制御する新たな周波数領域同時摂動法(FDSP法)を用いたアクティブノイズコントロール(ANC)システムを提案する.提案法は摂動の大きさを自動制御させることにより,従来の摂動の大きさを固定した場合より収束速度を大幅に改善できる.具体的には,誤差信号が大きいときは摂動の大きさを大きくし,誤差信号が小さくなるに従い摂動の大きさを小さくするという制御を行うことで達成される.その結果,本システムはブロック処理に起因する不安定性の問題を解決するとともにステップサイズを大きな値に設定できる.本制御は摂動の大きさを小さく設定する必要がある場合に効果的であり,特に摂動の大きさを0.08としたときには収束速度は50倍以上高速化される.また本制御は,摂勘付加に起因して発生する雑音の抑制にも有効である.
著者
角田 美紀子 野村 希代子 淺井 智子 杉山 寿美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成26年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.9, 2014 (Released:2014-08-29)

【目的】和食の美味しさは汁や菜を白飯と組み合わせることで成立し,汁は欠かせない。一方,生活習慣病の増加により食事全体,特に汁の塩分量の減少が求められている。しかし,飯と組み合わせた時の汁の塩味の嗜好性,すなわち食事の美味しさを保つ塩味の範囲に関する検討はなく,実際の食事における「減塩」の許容範囲は明らかでない。我々は,これまでに汁と飯の食べ方や汁の具により,汁物の塩味の嗜好性が影響されることを報告している。本報告では,レモン外皮を加えた汁物の塩味の嗜好性について報告する。【方法】官能評価は,レモン外皮を加えた塩分濃度0.4-0.9%のみそ汁,すまし汁について行った。汁に白飯あるいは桜飯(0.6%塩分)を組み合わせ,「汁の次に飯を食す(汁→飯)」「飯の次に汁を食す(飯→汁)」の場合について,汁物として最も好ましい塩分濃度,汁物として許容できる塩分濃度を選択させた。【結果】レモン外皮を加えた汁の最も好ましい塩分濃度は,レモン外皮を含まない場合と比較して,みそ汁では低濃度側に,すまし汁では高濃度側に移行した。また,すまし汁では,幅広い塩分濃度の汁が許容された。飯と組み合わせて食べた場合は,すまし汁と白飯の組み合わせを除き,最も好ましい塩分濃度は低濃度側にシフトし,低濃度(0.5-0.6%)の汁を許容できるとした者が増加した。これらのことから,レモン外皮を加えた汁物では,汁単独では低い塩分濃度の汁の嗜好性が低くなる場合がある一方で,飯と組み合わせて食べた場合では低い塩分濃度の汁物が許容され,実際の食事における「減塩」へのレモン外皮の活用の可能性が示唆された。
著者
久保木 富房 野村 忍 熊野 宏昭 末松 弘行
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.107-113, 1996-02-01
被引用文献数
1 1

摂食障害における死亡率の検討は現在までにいくつか報告されている。欧米および本邦でのそれらの報告では1〜10%とあり, 多数例による報告では4%とほぼ一致している。当科の23年間の外来患者中の摂食障害患者は724名である。これら全例についてその予後を調べ, どれほどの患者がどのような状況, 状態で死亡しているのかを調べてみた。当科の外来カルテ, 台帳およびデータベース, さらに担当医への質問紙などより資料を集め, 724名中データの得られた434名について該当者のリストをつくり, それぞれ担当医に直接依頼して, 症例サマリーと以下の項目についての回答を得た。全症例の中で死亡を確認できた症例数は9例あり, 全例女性で, 死亡時の年齢は17〜48歳(平均28歳)であった。発症時年端は14〜21歳(平均17歳)で, ANのみの症例は4例, AN+BNの症例が5例であった。また, 死亡時の体重は17〜66kg(平均35kg)で, 肝障害が確認されていた症例が6例, 浮腫が4例.低K血症が5例, 低血糖発作が4例であった。そして, 死因としては衰弱死3例, 飛び降り自殺2例.服薬自殺未遂後の心不全1例, 突然死2例, 癌死1例であった。さらに心理社会的な面では, やせ願望(肥満恐怖)は全例に強く認められ, 自殺企図4例, 人格障害4例, 母子共生6例, 強迫性5例, Hy傾向3例であった。また, 治療者側の反省点としては以下のことが挙げられた。(1)AN3例(No.1,3,9)→衰弱死この3例に共通する治療者側の反省点は, 治療関係の確立と治療動機づけができなかったことである。No.9の症例においては父親の単身赴任によって母親の負担が増加し, 母親が治療者へ陰性の転移を強く示し, 治療上の問題点とされていた。(2)AN+BN2例(No.5.8)→飛び降り自殺不安定な精神状態への対応が十分でなかったこと, 慢性的なうつ状態に対する評価と対策がとれなかったこと, さらに自殺の予知と対応が不十分であったこと。(3)AN+BN(No.6), AN(No.7)→突然死身体状況の的確な評価ができなかったこと。(4)AN+BN(No.4)→薬物自殺→心不全bulimia症例とのつき合い方, 治療者と患者との距甦の問題, identity crisisや大学への不適応などの問題が十分扱えなかったこと。(5)AN+BN(No.2)→癌死引きこもり(schizoid)への対応が不十分であったこと。両親への対応が十分でなかったこと。摂食障害における死亡は最悪のことであり, 今後さらなる検討が必要と考える。また, 長期化しsocial abilityの低下している症例も多く, Garfinkelらは25%と報告しているが, これらの症例についての今後の検討も重要な問題と考えている。