著者
福盛 貴弘 金濱 茉由
出版者
日本実験言語学会
雑誌
実験音声学・言語学研究 (ISSN:18836763)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.1-24, 2019-03-24 (Released:2023-06-15)
参考文献数
21

本稿では、エセ大阪弁の音声学的特徴について記述することを目的としている。エセ大阪弁とは、日常的に使われていない語形や音調によって、大阪弁話者が違和感を覚える言葉を指す。大阪弁話者がエセ大阪弁を受けつけない理由として、音調における社会的機能が挙げられる。こういった背景をふまえて、言語形成地を東日本で過ごした被調査者10名を対象として、提示した文を自身が考える大阪弁の音調で読んでもらった。結果として、句音調が負の言語転移となる、式音調が脳内辞書に入っていない、アクセントの下がり目の位置を意図的に変えてしまうといった要因が、エセ大阪弁の音調を構成する要因となっていることが検証された。
著者
牧 輝弥 佐野 到 定金 香里 黒崎 泰典 石塚 正秀 大西 一成 能田 淳 松木 篤 市瀬 孝道
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2021-04-05

黄砂や煙霧とともに微生物群(バイオエアロゾル)が,アジア大陸から日本へ越境輸送され,日本での環境・健康影響が懸念される。これまで,東アジア(日中韓蒙)での黄砂を捕集する高高度調査(気球, ヘリコプター)によって,越境輸送される微生物種組成は,日本海と太平洋の沿岸で大別でき,その生体影響も異なる可能性を突き止めた。しかし,従来の観測地点は日本海沿岸に偏り,太平洋沿岸へと沈着する微生物の詳細を講じる観測データは不足している。本申請では,日本本土での観測地を拡充し,「越境微生物の国内での拡散・沈着過程」を理解すると伴に,生理学実験・疫学的調査によって,生態・健康影響を評価する。
著者
金 聖愛 川端 康弘
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.143-153, 2017-07-01 (Released:2017-07-20)
参考文献数
31

本研究は北海道在住の20代から30代前半の学生に対して,単色及び左右並びの2色配色に対する好ましさの評価を行い,現代の若者の色の嗜好性について検討するとともに,評価にかかる反応時間および視線の動きをあわせて測定した.色の好ましさの評価については,配色の構成色間の距離に関わらず,ライトトーン(高輝度,低彩度)の配色構成がビビットトーン(低輝度,高彩度)やダークトーン(低輝度,低彩度)より好まれ,赤-緑系より青-黄系の方に人気があった.さらに,使用した2色が同じであっても,左から右へ暖色から寒色を並べた2色配色は,寒色から暖色を並べた2色配色より好まれた.また反応時間については,単色及び配色の好ましさの評価が高いほど短く,全般的に配色よりも単色の方が長かった.視線の動きに関しては左から右の順が暖色から寒色の場合,配色構成の距離に関わらずどの2色配色でも左より右の色に視線を多く向け,注視時間も長かった.
著者
杉山 智宣 別府 武 得丸 貴夫 山田 雅人 小出 暢章 谷 美有紀 金子 昌行
出版者
日本頭頸部癌学会
雑誌
頭頸部癌 (ISSN:13495747)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.30-33, 2019 (Released:2019-06-29)
参考文献数
15
被引用文献数
2

頸部リンパ節腫大を契機に発見されるものの,様々な術前検査を施行しても甲状腺内に原発巣を認めない甲状腺乳頭癌症例が稀に存在する。これは甲状腺内に原発巣がないものであるか,術前検査にて描出できないほど原発巣が小さなものであるかのどちらかである。 2010年1月から2017年12月にかけて当科で手術治療を行った甲状腺乳頭癌216例のうち,術前検査にて頸部外側区域リンパ節への転移を認めたものの甲状腺内に原発と考えられる腫瘤を認めなかった5症例を対象とした。どの症例も,一次治療として甲状腺片葉切除,患側D2b郭清を施行した。5例中1例は甲状腺内に原発巣となる病変を認めなかった。3例は多発の腺内転移を認めた。 術前検査にて甲状腺内に原発巣を認めない乳頭癌症例において,根治性,機能温存の双方を考慮した場合,甲状腺内の腺内転移の有無に関わらず患側の甲状腺片葉切除も選択肢になると考えられた。
著者
金 炳学
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究は、学術的独自性として、韓国においても紛争解決手段として多用されている間接強制に焦点をあて、日本においてその理論的背景についての分析がなされていない現状から、韓国における間接強制の弾力的活用をめぐる法改正議論について検証をする。あわせて、本研究の創造性として、韓国の理論的状況の対比を通じて日本民事執行法上の間接強制が帯びている独自の可能性について、姉妹法たる韓国法との比較法的見地から理論的・実証的意義を再確認し、ドイツ・日本・韓国の比較民事手続法的考察をし、アジア法からヨーロッパ法への法の環流を促す新たな可能性をみいだす。
著者
徳村 麻弥 峰谷 沙也佳 金井 眞理子
出版者
松江市立病院
雑誌
松江市立病院医学雑誌 (ISSN:13430866)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.13-20, 2021-12-01 (Released:2022-04-01)
参考文献数
14

スマートフォン(スマホ)の長時間の利用が産後の心身の健康に影響を与えることが懸念されるが,これについての研究はない.【目的】出産のための入院時にスマホについての適切な指導やアドバイスを行うために,褥婦におけるスマホ利用と心身の状態の関連を明らかにすること.【対象と方法】当院に出産のために入院した81名を対象に無記名自記式アンケート調査を行った.【結果】スマホ平均利用時間は入院中が179.8分,出産1ヵ月後が142.0分.平均睡眠時間は入院中が179.8分,出産1ヵ月後が300.0分.エジンバラ産後うつ質問票(EPDS)は入院中,出産後1ヵ月それぞれ7例が産後うつリスク群となる9点以上であった.スマホ依存症リスク群であるスマホ利用時間が4時間を超える症例では入院時の身体不調症状多数群と有意な関係が認められた(p=0.0133).スマホ・睡眠比が高い群は産後うつリスク群と入院時(p=0.0357),出産後1ヵ月(p=0.0248)と有意な関連が認められ,EPDSスコア9点以上はスマホ・睡眠時間の比の0.4(入院時)および0.5(出産1ヵ月後)に対応した.【結語】スマホの利用は睡眠とのバランスが重要であり,睡眠時間に比してスマホを長時間使用することが産後うつハイリスクスと関連しており,スマホ・睡眠時間の比は産後のメンタルヘルケアに関する指導やアドバイスに有用な指標である可能性がある.
著者
富永 サラ 金枝 夏紀 市丸 嘉 酒々井 眞澄 前田 徹 中尾 誠 藤井 広久 吉岡 弘毅
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第46回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-48S, 2019 (Released:2019-07-10)

【目的】クマザサ抽出液は健康食品や医薬品等で販売されており、近年関心が高まっている。また、抗炎症作用など様々な作用を有し、特に最近は乳がんに対する抗がん作用が注目されている。しかし、抗がん作用の機序や、その活性成分の存在などは明らかにされていない。そこで本研究では、クマザサ抽出液を用い、ヒト乳がん細胞株MCF-7細胞およびヒト肝がん細胞株HepG2に対する抗がん作用の検討と、クマザサの主要成分の1つとされる銅クロロフィリンナトリウム (SCC:0.25%含有)との関連を検討した。【実験方法】本実験ではクマザサ抽出液として株式会社サンクロンのサンクロン (SE) を使用した。(1) MCF-7細胞およびHepG2細胞に対して、SE (0.01-1000 µg/mL) またはSCC (0.25-2500 µg/mL) 処理24時間後の細胞増殖能を3H-チミジン取り込み法によって評価した。(2) SE (10-1000 µg/mL) 処理24時間後のMCF-7細胞を用い、蛍光染色によってアポトーシスを観察し、壊死関連タンパク (RIP1) および細胞周期関連タンパク (GSK-3α/β, Cyclin D1, Cdk1/2, Cdk6) 発現をウエスタンブロット法で測定した。【結果及び考察】(1) MCF-7細胞およびHepG2細胞に対して、SEには濃度依存的な増殖能の低下が認められたが、各SE濃度で含有されている量のSCCはがん細胞の増殖能を低下させなかった。以上のことより、SCC以外の成分が抗がん作用を示すと考えられた。(2) SE濃度依存的にアポトーシス細胞が増加したが、1000 µg/mLでは、RIP1の増加が認められた。また、Cdk1/2に変化は認められなかったが、GSK-3α/β, Cyclin D1, Cdk6はSE濃度依存的に減少した。このことから、中低濃度 (SE≤100 µg/mL) ではアポトーシスの誘導、高濃度 (SE≥1000 mg/mL) ではネクロトーシスの誘導による細胞死が引き起こされることが示唆された。今回はSEのみでの検討であるが、今後は活性成分の探索を行う。
著者
西條 豪 金子 聡 吉川 建夫
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.1180-1183, 2015 (Released:2015-10-20)
参考文献数
7

【目的】酢水にて直接フラッシュおよび充填を行う、“酢水フラッシュ充填 ”の経腸栄養カテーテル閉塞予防効果について検討した。【対象および方法】検討1:酢水フラッシュ充填を行った入院患者延べ47例を対象、閉塞に関して検討した。検討2:経腸栄養カテーテルを使用し、濃厚流動食を滴下、その後を〈方法1〉水道水フラッシュのみ。〈方法2〉水道水フラッシュ後、酢水充填。〈方法3〉酢水フラッシュ後、充填。また通水のみを〈方法4〉とし、実施後のカテーテル重量測定、細菌培養検査を実施した。【結果】検討1:47例中、閉塞5本。検討2:重量変化は〈方法2、方法3〉で同水準の増加。一般生菌数は〈方法1、方法4〉陽性、〈方法2、方法3〉陰性。培養検査は〈方法1〉接続部、〈方法4〉先端部より多数の菌が検出。【結論】酢水フラッシュ充填はカテーテル閉塞の予防策、感染対策として有効であり、さらに、看護業務、患者家族負担の軽減も期待できると考えられた。
著者
小俣 元美 原野 崇 佐藤 啓輔 横山 楓 片山 慎太朗 定金 乾一郎 小池 淳司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00023, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
10

本稿では,道路整備のストック効果把握の一環として,空間的応用一般均衡(SCGE)モデルを用いて,最初の開通から半世紀を経た全国の高規格幹線道路整備が地域経済に与えた長期的な効果とその変遷を検証する.分析の結果からは,これまでに段階的にネットワーク整備がなされた結果として,付加価値額変化では,関東・甲信越から中国地方にかけての本州エリアを中心に大きな効果が帰着している傾向にあることが分かり,このような地域の産業活動の日本経済全体の成長への貢献が確認された.一方,便益をみると,全国に広く正の効果が帰着しており,国土の均衡ある発展に高規格幹線道路が貢献していることが確認できた.
著者
長崎 好輝 林 昌希 金子 直史 青木 義満
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会誌 (ISSN:09120289)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.263-268, 2022-03-05 (Released:2022-03-05)
参考文献数
10

In this paper, we propose a new method for audio-visual event localization 1) to find the corresponding segment between audio and visual event. While previous methods use Long Short-Term Memory (LSTM) networks to extract temporal features, recurrent neural networks like LSTM are not able to precisely learn long-term features. Thus, we propose a Temporal Cross-Modal Attention (TCMA) module, which extract temporal features more precisely from the two modalities. Inspired by the success of attention modules in capturing long-term features, we introduce TCMA, which incorporates self-attention. Finally, we were able to localize audio-visual event precisely and achieved a higher accuracy than the previous works.
著者
富田 眞治 平木 敬 田中 英彦 末吉 敏則 金田 悠紀夫 天野 英晴
出版者
京都大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1994

本年度は,平成5年度までの研究成果を基に,超並列プロトタイプ・システムを実機として実装可能とするため,LSI,プリント基板,システム筐体の設計を行った.さらに,これと平行してシステムの妥当性を評価するための種々のシミュレーション実験や,入出力機構の開発を行った.以下に代表的な研究成果を示す.1.超並列システムのキャッシュ一貫性制御方式の評価ディレクトリ・ベースのキャッシュ一貫性制御法として提案した疑似フルマップ方式を,本重点領域研究の成果として提案した.Recursive Diagonal Torus(RDT)ネットワーク上に実装した場合の性能をシミュレーションにより評価した.その結果,ネットワークの階層構造を活用したマルチキャストや,ACK回収の効果により,フルマップ方式に比べ,約4倍の処理速度が得られた.また,マルチキャスト法として,LPRA(Local Precise Remote Approximate)法,SM(Single Map)法,ならびにLARP(Local Approximate Remote Precise)法を提案しその評価を行った.その結果,無駄なトラフィック軽減の観点から,宛先ノードが少ない場合にはSM法が有利で,宛先ノードが一定数を越すとLPRA法またはLARP法が有利になることが判明した.さらに,LPRA法とLARP法の優劣は,データのマッピングに強く依存することも判明した.2.超並列システムの高速入出力システムの研究入出力専用の高速ネットワークをRDTと独立に設け,仮想FIFOならびにLANを介して接続されたワークステーション群全体の広大なディスク領域を超並列計算機のファイルシステムとして提供する入出力サブシステムを提案した.さらに,仮想FIFOでHDTVを接続することでビジュアルな計算機環境を構築可能とした。また,画像表示機構の実装に際しては,1画面のフレーム・メモリを16分割し並列計算機からの表示データ転送を分散並列的に行うことで,最大250MB/秒の転送速度を実現し,ハイビジョン画質の動画表示を可能とした.
著者
中山 明則 對馬 雄次 荻野 友隆 金 喜都 森 眞一郎 中島 浩 富田 眞治
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第50回, no.ハードウェア, pp.51-52, 1995-03-15

3次元のボリューム空間を直接2次元ピクセルに射影するボリュームレンダリングは、様々な科学技術分野における計測やシミュレーションの結果を理解するために有効な手段である。しかし、計算量が非常に多いため画像生成に長い時間を要する。そこで我々は、(1)半透明ボリュームの取り扱い、(2)遠近法を用いた描画、が可能な高速ボリュームレンダリング専用並列計算機ReVolver/C40を試作している。本稿ではReVolver/C40のプロトタイプの構成について述べる。
著者
石原 昌人 仲宗根 哲 平良 啓之 山中 理菜 親川 知 松田 英敏 東 千夏 神谷 武志 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.620-623, 2019-09-25 (Released:2019-12-17)
参考文献数
6

人工股関節置換術(THA)後の腸腰筋インピンジメントに対して腱切離を行い改善した1例を報告する.【症例】62歳女性.左変形性股関節症に対し左THAが行われた.術後より左股関節自動屈曲時の鼠径部痛を認めていた.歩行は可能であり鎮痛薬内服で経過観察を行っていたが,症状の改善がなく術後6ヵ月時に当院を紹介され受診した.左股関節の自動屈曲は疼痛のため不能で,血液検査で炎症反応上昇はなく,単純X線像でTHAのゆるみは見られなかったが,カップの前方突出を認め,腸腰筋インピンジメントと診断した.キシロカインテストで疼痛は消失し術後8ヵ月で手術を行った.腸腰筋は緊張しカップの前縁とのインピンジメントを認め腸腰筋腱切離を行った.術当日より疼痛は改善し術後3日目に独歩で退院した.術後2ヵ月でADL制限なく職場復帰した.腸腰筋インピンジメントの観血的治療として腱切離は低侵襲で有効な治療法と思われた.