著者
孫 富順 新田 裕史 前田 和甫 金 潤信 柳澤 幸雄
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.334-342, 1990-09-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
29

1989年1月に韓国で一酸化炭素 (以下CO) の室内濃度と個人曝露濃度の測定を行った。同時に室内汚染と個人曝露濃度に影響を及ぼす家庭特性を調べるための質問紙調査も行った。室内濃度は台所と居間で, 個人曝露濃度は最近開発されたパッシブCOサンプラーを用いて, 主婦に対して測定を行った。調査対象は都市地域であるソウルと地方である忠清南道Togoから, 暖房形態として伝統的オソドル又はオンドルポィラーを使用する世帯を選んだ。その結果, 日平均で室内CO濃度は台所23ppmと居間12ppm, 個人濃度はその中間の18ppmに及んでいた。室内濃度と個人曝露濃度には家庭特性, 特にオンドルのタイプの影響が認められた。さらに, 家庭での換気設備および対象家庭の社会経済的水準が室内CO濃度に影響を与える重要な要因であることが明らかになった。
著者
金子 俊明
出版者
筑波大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2017

聴覚障害生徒を対象とした聴こえと音声について考える学習において、生徒が主体的に音声ペンを活用するための授業デザインについて実践を通した検討を行った。音声ペンの利点は学習の題材とする音声を容易に録音できること、録音から音声の聴き取りまでの学習をアクティブラーニングの要素を加えて展開できること等である。実践では、はじめに生徒2人1組で音声ペンを活用して音声を録音し、ドットコードのシールとリンクさせ、さらに聴き取りのヒントも加えて実習用の音声カードを作成した。ワークシートにイラストやヒントの文を書き、音声ペンにリンクするシールを貼った上で切り抜き、ラミネートして音声カードを作る作業への生徒の取り組みは良好であった。次に、このカードを用いて音声の特徴を考える学習を展開した。録音した音声は、音声ペンの外部出力端子から外部スピーカーを通して再生し、発話者の特徴・音声の内容等について推測する学習を行った。学習後には、興味・関心、取り組みの態度、音声の区別、部分的把握、内容の推測等の評価項目について、生徒の主観的評価を調べた。その結果、音声ペンを用いて音声について考える学習に対する生徒の評価は良好であった。また、音声ペンを活用した主体的な学習と従来のサンプル音を用いた学習とで、客観テストに対する聴取正答率を比較した。その結果、5%水準で有意差が認められ、音声ペンを用いた学習には効果が見込めることがわかった。生徒の補聴の実態には個人差が大きいが、音声ペンを用いたアクティブラーニングのデザインを検討することで、聴こえと音声について考える学習をさらに推進できる可能性があることが示唆された。
著者
金本 郁男 井上 裕 守内 匡 山田 佳枝 居村 久子 佐藤 眞治
出版者
日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.96-101, 2010-02-28
被引用文献数
3

野菜サラダ(キャベツ,オリーブ油,酢)と米飯の摂取順序を変えた時に食後の血糖値とインスリン値のプロファイルがどのように変化するのかを確認するため,10名の健常成人において試験を行った.その結果,米飯摂取後に野菜サラダを摂取した場合と比較して,米飯摂取前に野菜サラダを摂取した場合には,食後20, 30, 45分での血糖上昇値(ΔC)は有意に低下し(<i>p</i><0.01),最高血糖値(ΔC<sub>max</sub>)に到達する時間は約40分遅延した(<i>p</i><0.01).ΔC<sub>max</sub>は平均21%低下し,食後0∼120分までの血糖値上昇曲線下面積は,平均39%低下した.血清インスリン値は血糖値とパラレルに推移し,食後のインスリン分泌が節約できる可能性が示唆された.以上より,野菜サラダは米飯よりも先に摂取するほうが食後の血糖上昇を抑制するために有効であることが示された.<br>
著者
金丸 純二 木本 一成 中尾 佳行 畑 浩人
出版者
広島大学学部・附属学校共同研究機構
雑誌
学部・附属学校共同研究紀要 (ISSN:13465104)
巻号頁・発行日
no.37, pp.417-422, 2008

本年度は昨年度までの質問票調査の結果をさらに詳細に把握して, 生徒指導モデルの形成に充分な事実データを収集するために附属中学校卒業生に対する面接調査を試みている。平等な取扱いの志向などいくつかの特徴を発見しつつあるものの, まだ聴取データが量的・質的に集積していないため, 今回の報告では質問票の記述回答部分を紹介する。総じて, 附属学園内にも一定の逸脱行動(容貌の乱れ, いじめ)は見受けられるが, 他校の方が規模も大きいので荒れの程度は大きかったようである。しかし, 1990年代後半の時期には附属学園でも荒れの程度が高まっており(学内喫煙, 破壊行動), 授業にもよくない影響が及んでいたようである。それが周囲の少年一般と同等なレベルであったのか, つまり当時流行していた非行化に包含されるものであったかのかどうかはさらに検証の必要があろう。生活指導態勢の変化については, 一貫して厳格な教員が少数存在するものの, 教員組織全体としては転属もあるためか, 1990年代前半に変化(教員との見解不一致)があったような印象が残る。また, 団結や仲良しの指摘は小規模学校固有の特徴であろうが, 必ずしも一枚岩ではなかったようである。
著者
金 仙姫 Sun Hee KIM 東北大学大学院
出版者
東北大学文学部日本語学科
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 = Journal of the Department of Japanese, Tohoku University (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.41-53, 1992-09-30

辞書類などでは「についての」と「に関する」が同じ用法を持つものとして扱われており、一方「に対する」は「についての」や「に関する」とは別の用法を持つものとして扱われている。それに対して本稿では、この三つの表現の語彙的意味の違いを主に文献の実際的な用例を中心に検討してみた。その結果は次の通りである。(1)「についての」や「に関する」は内容 (情報) を表す用法を持っている。しかし「についての」は知的行為を表す語と共起しやすいが、「に関する」はタイトルの提示を要求する傾向が強い語と共起しやすい。(2)「に対する」は態度を表す語と共起しやすい。心的態度 (評価・認識など) を表す語の場合は「についての」は「に対する」と共に共起しやすいが、「に関する」は共起しにくい。
著者
三井 康通 金子 聖史
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンピュータ (ISSN:02854619)
巻号頁・発行日
no.821, pp.110-113, 2012-11-08

ある日突然、システム構築のために海外拠点への赴任を命ぜられたら、あなたはどうするだろうか。渡航まで残された時間は2週間。そんなときこそ、焦らずに本連載を読んでほしい。海外での初仕事でトラブルを招かないよう、先達の失敗パターンを紹介しよう。
著者
金野隆光
出版者
農業環境技術研究所
雑誌
農業環境技術研究所報告 (ISSN:09119450)
巻号頁・発行日
no.1, pp.51-68, 1986-03
被引用文献数
12

自然界での生物活性は温度によって時々刻々と変化しているので,生物活性と温度との関係を定量的に把握することが重要である。著者らは,本報でArrheniusの法則を用いて生物活性への温度影響を指標化し,温度変換日数を提案した。温度変換日数とは,或る温度で,或る日数おかれた条件が,標準温度に変換すると,何日に相当するかを表したものである。温度の異なる地域の生物活性を比較するのに25℃変換日数の有効なことがわかった。地温データから算出した年間25℃変換日数は,札幌で88~160日,水戸で167~224日,那覇で約330日であった。この数値と有機物分解特性値とから,地域別の有機物の年間分解率を求めるための計算表を作成した。植物生態気候区分に使用されている温量指数と年間25℃変換日数とは相互に読みかえできることがわかった。これから,植物生態気候区分を年間25℃変換日数で同様に区分できた。25℃変換日数を計算する際に,日平均温度を用いた値は,日較差を考慮した値より低くなるので,温度較差ならびに活性化エネルギーの大きさと両数値の差の大ききとの関係を調べるための計算表を作成した。有機物分解特性値と土壌温度とを用いて,土壌中における有機物分解量を予測する方法を考案した。そして予測法の手順を提案した。この予測法を用いて,盛岡における土壌窒素無機化曲線を作図し,高温年での窒素無機化量は低温年より約2.5kg/10a多いと推定した。また,下水汚泥が5月に施用された場合の窒素無機化曲線を作図した結果,那覇での窒素無機化速度は札幌の2.4倍になることがわかった。
著者
金 洋太 荒川 美緒 出口 竜作
出版者
宮城教育大学情報処理センター
雑誌
宮城教育大学情報処理センター研究紀要 : COMMUE = COMMUE (ISSN:18847773)
巻号頁・発行日
no.19, pp.19-22, 2012-03-31

授業や研究発表などの場では、動画を活用する機会が増えている。動画には、内容を視覚的に分かりやすく伝えられるという利点がある。一方で、動画を制作するためには、一般に高価な専用ソフトや高度な技術が求められる。本研究では、日常的に使用されているプレゼンテーションソフトを用い、簡易的に動画を編集する方法について検討した。
著者
金子 克美
出版者
一般社団法人 表面技術協会
雑誌
金属表面技術 (ISSN:00260614)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.46-54, 1986-02-01 (Released:2009-10-30)
参考文献数
81
被引用文献数
5
著者
金山 幸平 笠原 究
出版者
全国英語教育学会 紀要編集委員会
雑誌
全国英語教育学会紀要 (ISSN:13448560)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.217-232, 2016 (Released:2017-04-05)
参考文献数
31

The present study aims to compare the effects of expanding and equally-spaced retrieval practice on long-term L2 vocabulary retention. Since the discovery of Ebbinghaus’ forgetting curve, expanding retrieval practice has been considered more effective than equally-spaced retrieval practice. Learners have been encouraged to review target items immediately after the first learning session, and then extend intervals between study sessions gradually, rather than have the same interval period between each session. The present study challenges this assumption. Participants in Group A (n = 34) learned 20 target words under the expanding condition (Day 1, 1, 8 and 22), while those in Group B (n = 19) learned the same 20 target words under the equally-spaced condition (Day 1, 8, 15 and 22). Twenty-one days after the learning session (Day 43), both groups took a delayed post-test, where they were asked to recall Japanese meanings for the English target words. This study revealed that the expanding group showed significantly better results than the equally-spaced group just after the first review session. However, there was no significant difference in long-term retention between the two forms of spaced learning, as long as both groups were given the chance to have four learning sessions.
著者
玉野 富雄 西田 一彦 Bimal SHRESTHA 金岡 正信 森本 浩行
出版者
公益社団法人 日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.5-8, 2004-01-15 (Released:2009-06-03)
参考文献数
2
被引用文献数
2 2

Japanese Castle masonry walls constructed from the end of sixteen century to the middle of seventeen century hold a historical heritage in the construction culture and are famous worldwide for their uniqueness with mortar-less construction. Present investigations on these walls have shown bulging at various locations and the engineering evaluation on the wall stability needs to be urgently required. Based on this viewpoint, this paper presents the FEM analysis results on the stability and deformation behavior with parametric analyses on Osaka Castle masonry wall. It is found that the cobble plays a significant role in reducing the stresses of stone wall and that the masonry wall structure ratio adds stability by the arching effect action on the masonry wall.
著者
日向野 智子 金山 富貴子 大井 晴策
出版者
立正大学心理学部
雑誌
立正大学心理学研究年報 (ISSN:21851069)
巻号頁・発行日
no.3, pp.1-17, 2012

The purpose of this study was to examine whether college students had done an annoying behavior in a train. We investigated to 198 college students, and asked the degree that to make an 17 annoying behavior in a train, and examined a reason to make or a reason not to make an annoying behavior. Result of analysis revealed that most people did not to "makeup"," call with the cell-phone", "sit on the floor" and" flirt by a couple" in a train. The reason was annoying and was a manner, unpleasantness, embarrassment. They did so the behavior in some cases about" eat food" ," talk aloud"," handed over a seat to an elderly person". In any case it seemed to be thought that these behavior were annoying. However, an opinion was divided whether they" keep on having worn a bag". Therefore, as for such behavior, it is thought that a judgment a annoying behavior was divided by a person.
著者
成田 孝三 藤田 昌久 岡田 知弘 足利 健亮 石川 義孝 金田 章裕 金坂 清則 石原 潤 応地 利明
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

8年度は、1.都市を中心とするシステムについて欧米、日本、アジア・アフリカに関する比較研究を行う、2.地理学の空間分析、マルクス経済学の構造分析、近代経済学の計量分析の統合を目指す、3.日本のシステムについて動態的研究を行なう、という研究の枠組みと分担を決定した。9年度はそれに従って各自がフィールド調査を実施し、報告書の研究発表欄に掲げた成果を得た。10年度は統合の実を挙げるために、近畿圏を共通の対象として研究し、次の知見を得た。1.古代国土システムの構成要素としての近畿圏は、従来説の大化の畿内と天武の畿内の間に、近江を中心とする天智の畿内が存在し、それは三関の範囲に合致する軍事的性格を帯びており、中国の唐制に類似する。2.古代畿内の首都は孤立した一点ではなく、複数の首都ないしは準首都によって構成されており、それは現代の首都移転論をめぐる拡都論にも通じる状況である。3.中世期末畿内の構造変化を本願寺教団の教勢の進展を通じてみると、それは近江・京都・大阪を中核とし、奈良・三重・北陸に広がり、最後に兵庫・和歌山に伸びて現代の近畿圏を覆った。近江が中心となった理由はその生産力と交通の拠点性である。4.五畿七道の区分を踏襲してきた幕藩体制から近代国家体制への転換に伴って、府県を単位とする地方区分が確立した。近畿の範囲は6府県を核とし、場合によっては三重や福井が加わるという形をとった。この構成は現代にもつながっている。5.現代の大阪圏は初め西日本に広がっていたが、次第に縮小して上記の近畿圏に収斂しつつある。また近畿圏の構成単位である各日常生活圏の完結性が弱まり、大阪と京都を中心とする圏域に統合されつつある。それに伴って各種行政領域と日常生活圏との整合性が崩れ、その〈地域〉としての有意性が損なわれるおそれがでてきた。なおバブル崩壊後、中心部の都市地域と周辺部の農村地域との格差が拡大しつつある。
著者
三橋 博 金子 光 佐々木 希吉
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
Chemical & pharmaceutical bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.10, no.11, pp.1119-1122, 1962-11-25

It was shown that DL-phenylalanine [2-^<14>C] was incorporated into C-3 of two kinds of isoflavone, formononetin and genistein, by Trifolium pratense sp., in vivo. These results indicate that the aryl group undergoes a migration within the C_6-C-C-C fragment, and this observation agrees with Grisebach's experimental data.
著者
金相鉉著
出版者
民族社
巻号頁・発行日
1991
著者
石井 博之 金子 純一朗
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.C0172-C0172, 2004

【目的】<BR>青年海外協力隊隊員としてマレイシアで2年間、青年海外協力隊調整員としてアフリカのマラウイで2年間の活動の中から発展途上国で活動するためにはより現地に適応した技術(適正技術)をさらに見出していく必要がある。特に医療の行き届かない農村部において、ポリオ発症後の下垂足や脳卒中や脳性麻痺による軽度の尖足が日常生活の歩行を妨げている障害者を多く目にした。その為強い強制力は必要としない短下肢装具の必要性を感じた。また装具作製にあたっては加えて現地で容易かつ安価に素材が入手でき、また作られたものが現地の気候の中でも快適な素材で作られていること、更に作製に高度な技術を必要とせず、かつ現地に既にある技術を活用できる必要性を鑑み、途上国の多くで利用されている腰巻き(サロン)の素材である綿の布を使用し、また、途上国でよく見かける縫製職人の技術で作製可能かつ安価に作製可能な短下肢装具の開発をした。また、この装具の強制力を把握するため、他の装具及び裸足との矯正力の比較をおこなった。<BR>【方法】<BR>日本の足袋を参考に基本モデルを作製し、既存の軟性装具を参考に縦方向と8の字にストラップを取り付けた(自作装具)。装具の背屈方向への矯正力を天秤ばかりを応用して実験装置を作製し、計測した。被検者は健常成人12名(平均年齢25.3±2.1才・男性6名・女性6名)。足を実験装置に載せて後方の錘で釣り合いを取り、500gの錘を前方に載せて底屈角度を裸足、自作装具、プロフッター装着にて10回測定した。<BR>統計処理は、装具を要因とした一元配置分散分析および多重比較検討(Fisher's PLSD)にて検討した。なお、有意水準は1%未満とした。<BR>【結果】<BR>装具を要因とした一元配置分散分析及び多重比較検定により、「自作装具」と「裸足」、「プロフッター」と「裸足」間で有意な主効果が得られた。また「自作装具」と「プロフッター」間では有意差は認められなかった。<BR>【考察】<BR>今回作製した装具は一般の軟性装具とほぼ同程度の矯正力があることが示唆された。しかし今回は静的場面での矯正力の検討のみであり、今後は動的場面での矯正力の把握が必要不可欠である。また、ストラップの取り回しや素材の違いによって矯正力や矯正の方向が変わると思われ、今後の研究課題としたい。<BR>【まとめ】<BR>今回、途上国農村部においても作製可能な装具を開発し、その矯正力も確認することができた。今後はさらに耐久性に着眼し、改良を重ねていきたいと考えている。また、完成したものは足のサイズに合わせた型紙を作製し、現地の言葉で書かれた説明文を添えることによりどこでも現地の縫製職人などが作製可能にする予定である。<BR>また、私が国際協力に携わる中で必要と感じた理学療法分野の適正技術は装具だけではなく、今後は車椅子や義肢、座位保持装置などに加え、理学療法手技においても考えていきたい。
著者
三森 国敏 岡村 美和 金 美蘭
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第33回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.24, 2006 (Released:2006-06-23)

1997年に開催された第4回医薬品に関する国際ハーモナイゼーション会議では、1種類のゲッ歯類を用いた長期がん原性試験と遺伝子改変マウスなどを用いた短期がん原性試験のデータから医薬品のがん原性は評価可能であると結論され、新しいがん原性試験ガイドラインが策定された。今までにこれらの遺伝子改変動物についての検証作業が実施されてきており、ヒトプロト型c-Ha-ras遺伝子導入トランスジェニックマウス(rasH2マウス)やp53の片側アレルをノックアウトしたマウス[p53(+/-)マウス]は遺伝毒性発がん物質に非常に感受性が高いことが示されている。さらに、rasH2マウスではPPARαアゴニストのような非遺伝毒性発がん物質に対しても感受性を示すことが報告されている。我々の研究室では、今までに多くの発がん物質についてのrasH2マウスに対する発がん感受性に関する研究およびその発がん増強機序についての研究を実施してきており、導入遺伝子の過剰発現がその腫瘍発現増強に関与しており、内因性のras遺伝子もその発がんに関連していることを見出した。さらに、その発がんには、osteopontin、 Cks1b、Tpm1、Reck、gelsolinなども関与していることを見出している。一方、2004年7月には、米国FDAは、PPARγないしα/γアゴニストの発がん性はp53(+/-)マウスでは評価できないことから、これらの医薬品の発がん性評価には従来のラットやマウスを用いた2年間がん原性試験のデータの提出を要求するという規制を開始した。しかし、γアゴニストであるトログリタゾンのrasH2マウスを用いた6ヶ月混餌投与試験を実施したところ、血管系腫瘍が6000ppm投与群(長期がん原性試験での発がん用量)で誘発され、rasH2マウスがPPARアゴニストの発がん性を検出できないわけではないことが示されている。