著者
片山 剛 Takeshi Katayama 千里金蘭大学 教養教育センター
出版者
千里金蘭大学
雑誌
千里金蘭大学紀要 (ISSN:13496859)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.87-99,

後白河法皇の嗜好によって制作された『伴大納言絵巻』は、九世紀に起こった応天門の火災に取材した説話を絵画化したもので、炎の描写、多様な人物の躍動感にあふれた表現、劇的な展開などの魅力に溢れた絵巻物屈指の名作である。しかし、絵画の読み解きは必ずしも完全に行われているとはいえず、また絵巻物という性質ゆえに原本の体裁をそのまま伝えているとも思えないなどの問題を孕んでいる。 本稿では、従来の説に多くを依拠しながらも、未解決の問題に私見を加え、併せて細部の読み解きを試みるものである。
著者
金 成主 成瀬 誠 青野 真士
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J100-C, no.6, pp.261-268, 2017-06-01

我々は先行研究において,意思決定問題を物理的に解く新しい計算原理である「綱引き原理」を提案した.本研究では,無線通信におけるチャネル割当ての全体最適解の計算を,「ユーザ内意思決定」と「ユーザ間相互作用」を表現する綱引き原理の導入により物理的に実現できることを示す.そこでは,複数のシリンダ内の二種類の流体のダイナミックスが利用される.この「全体最適意思決定装置」を使うことにより,膨大な計算コストが要求される評価値の計算を流体の物理プロセスに委ねることができ,高々ユーザ数に比例したコストを要する操作(シリンダ内の流体界面の上下運動)を繰り返すだけで,全体最適解を得ることができる.これは,自然現象の揺らぎ,保存則,アナログ性から,知的能力を引き出す新しい試みである.
著者
金丸 拓央 澤田 佳宏 山本 聡 藤原 道郎 大藪 崇司 梅原 徹
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.437-445, 2015 (Released:2016-04-19)
参考文献数
19
被引用文献数
1

オオフサモは主に関東以西の各地で水路の閉塞や在来種の圧迫などの問題を引き起こしており,特定外来生物に指定されている。近年,各地でオオフサモの駆除が行われているが,どの事例でも駆除後にオオフサモが再繁茂し,根絶できていない。本研究では,オオフサモの根絶手法を検討するため,オオフサモの生育状況調査,室内での遮光実験,野外での駆除試験をおこなった。生育状況調査の結果,オオフサモはため池全面を高被度で覆っていたが,定着しているのは水深の浅い水際部だけで,水深が 30 cmを超える場所には生えていなかった。室内での遮光実験の結果,長さ約 20 cmのオオフサモの苗は,遮光期間が長くなるにつれて主茎の上部から枯れ下がり,短くなっていった。遮光 158日目にはまだ生残個体があったが,遮光 197日目には生残個体は確認されなかった。野外での駆除試験の結果,底泥剥ぎ取りと遮光を併用した場合に限り,駆除後にオオフサモが再生しなかった。これは,大部分の根茎断片が底泥剥ぎ取りによって除去され,残された少数の断片が遮光によって枯死したためと考えられる。底泥剥ぎ取りと遮光を併用すれば,オオフサモを局所的には根絶させられる可能性がある。
著者
松永 康志 大田 涼子 坂東 信行 山田 博章 湯浅 宏 金谷 芳雄
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.720-724, 1993-04-15 (Released:2008-03-31)
参考文献数
10
被引用文献数
6 13

(E)-4-[1-[4-[2-(Dimethylamino)ethoxy]phenyl]-2-(4-isopropyl)phenyl]-1-butenyl]phenyl monophosphate (TAT-59) is a new drug for the treatment of breast cancer. Physical and chemical stability of a tablet consisting of TAT-59 powder and a few excipients (Formulated tablet), a tablet consisting of only TAT-59 power (TAT-59 tablet) and TAT-59 powder itself itself was evaluated based on water content, tensile strenght, porosity, the amount of TAT-59 and its hydrolysis product, DP-TAT-59.The water content of Formulated tablet increased with relative humidity (RH), whereas that of TAT-59 tablet and TAT-59 powder scarcely changed. The equilibrium water content of Formulated tablet was much greater than that of the TAT-59 tablet or TAT-59 powder due to adsorbed moisture by the excipients. The tensile strength and porosity of Formulated tablet decreased and increased linearly, respectively, with increasing water content. The degradation rate of TAT-59 decreased in the following order : Formulated tablet>TAT-59 tablet>TAT-59 powder. The relationship between equilibrium water content and degradation rate of the Formulated tablet was determined by the Carstensen equation, in which the interaction order between the durg and water content was 1.9, and the degration of TAT-59 in Formulated tablet was related to water content. Thus, it was found that the degradation of TAT-59 was accelerated by compression and addition of excipients.
著者
森谷 友昭 金子 裕哉 新井 崇博 清水 宣寿 青木 香織 高橋 時市郎 木口 実 片岡 厚 石川 敦子 松永 正弘 小林 正彦 森田 珠生 山口 秋生
出版者
公益社団法人 日本木材保存協会
雑誌
木材保存 (ISSN:02879255)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.69-79, 2017 (Released:2017-06-03)
参考文献数
11

本論文では,暴露試験により計測された木材表面の色を基に,木材画像の色の経年変化シミュレーションを高速に行う手法を提案する。暴露試験は,約1年間計測したデータを基に木材表面の色と試験実施場所の気候の関係性を明らかにした。求められた関係性により,提案する手法は温度,雨量,日射量を入力することで任意の地点での木材表面の色変化をシミュレーションすることができる。また,提案手法は建築物の外壁に取り付けられた木材表面の色変化シミュレーションができる。建築物の3D モデルを用意し,事前に遮蔽計算を行う。遮蔽計算の結果を基に提案手法への入力である,温度,雨量,日射量を各箇所で増減させることで,例えば,地面近くの木材では降雨の跳ね返りにより色変化が速い,というように,木材の周囲環境を考慮した木材表面の色変化シミュレーションができる。
著者
篠原 徹 飯田 浩之 井上 透 金山 喜昭 杉長 敬治 濱田 浄人 佐久間 大輔 戸田 孝 桝永 一宏 松田 征也 佐々木 秀彦 五月女 賢司 半田 昌之 守井 典子 田中 善明 石川 貴敏 水澤 喜代志 佐々木 亨 柏女 弘道 大川 真 高田 みちよ 神田 正彦 岩井 裕一 土居 聡朋
出版者
滋賀県立琵琶湖博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

博物館を対象に全国規模で定期的に実施されている2つの調査の1つである「博物館総合調査」を継承する調査を、全国の4,045館を対象に平成25年12月1日を調査基準日として実施した。そして、その結果を分析すると共に、博物館の経営・運営と博物館政策の立案上の緊急を要する課題(現代的課題)の解決に貢献できる、「博物館の使命と市民参画」「指定管理者制度」「少子高齢化時代の博物館に求められる新しい手法の開発」「博物館の危機管理」の4つのテーマ研究を行った。これらの成果は報告書としてまとめ、Webサイトに掲載して広く公開している。
著者
梶原 優介 林 冠廷 金 鮮美 小宮山 進
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.811-815, 2013-11-01 (Released:2014-02-25)
参考文献数
12

本解説では,試料自身からの放射光をナノスケールで検出する新概念の顕微技術について紹介する.まず,THz 検出器CSIPや散乱型近接場光学系を導入することによって構築したパッシブ型THz近接場顕微鏡について説明し,空間分解能60nm (波長の1/250)にてTHzエバネッセント波を検出した観測例を示す.応用展開例の1つとして,ナノサーモメトリーについても紹介する.
著者
松原 剛 金杉 洋 熊谷 潤 柴崎 亮介
雑誌
マルチメディア,分散協調とモバイルシンポジウム2016論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.1550-1555, 2016-07-06

平常時から継続的に人々の流動や分布を把握することは,様々な分野の基盤情報として需要が拡大しつつある.人々の流動を把握する手段として,屋外においては GPS を利用した衛星測位技術が確立しているが,地下や屋内等 GPS が利用できない場所では,様々な屋内測位手法が提案されており,施設ごとに独立して設置されている.人々の流動や分布の変化を屋内施設 ・ 地下空間に渡って捉えるには,少なくとも施設単位の粒度で位置を特定する必要がある.本論文では東京都内の地下鉄駅を対象に,携帯電話網の通信で参照される基地局セル ID と各地下鉄駅の対応表を作成し,地下鉄利用時の利用駅の推定を試みた.
著者
金子 慶之
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.103, no.3, pp.203-226, 1997-03-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
103
被引用文献数
21 23
著者
金子 大輝 大知 正直 森 純一郎 坂田 一郎
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.31, 2017

分散表現を用いることで、単語の意味の時系列での変化を分析する研究が行われてきた。本研究では企業名に注目して、word2vecによって日本経済新聞の記事データから企業名ごとに分散表現を獲得した。不祥事や経営危機などの事象の前後での分散表現の変化について分析を行い、また、分散表現と企業の業績に相関関係についても検証した。
著者
北澤 宏泰 金田 北洋 岩村 惠市 越前 功
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EMM, マルチメディア情報ハイディング・エンリッチメント (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.138, pp.205-212, 2013-07-11

紙メディアは電子化が進んだ現在においても重要なメディアであることは間違いない.しかし,紙を用いた印刷物に対する保護技術の研究は少ない.その保護技術の1つとして,金田らによって提案された単一ドット方式がある.単一ドット方式は,印刷物に小さな点を打ち込むことで情報を埋め込み,印刷物に違和感なく情報を埋込むことができるが,今までの研究ではその抽出精度が低く,100%の情報抽出は困難であった.そこで,本論文では単一ドット方式の抽出法を改善することで,元となる誤り率を低減し,かつ,誤り訂正符号を適用することで,低い冗長度でほぼ100%正確な情報抽出を実現した.
著者
金野 俊太郎 大河内 博 黒島 碩人 勝見 尚也 緒方 裕子 片岡 淳 岸本 彩 岩本 康弘 反町 篤行 床次 眞司
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

2012 年より積雪期を除き 1 ヶ月もしくは 2 ヶ月毎(2015 年以降)に,浪江町南津島の山林でスギと落葉広葉樹の生葉,落葉,表層土壌,底砂の放射性Cs濃度を調査した.福島市-浪江町間の走行サーベイでは,除染により空間線量率は急速に減衰したが,未除染の山林では物理的減衰と同程度であった.2014 年以降,落葉広葉樹林では林床(落葉と表層土壌)で放射性Csは物理減衰以上に減少していないが,スギ林では生葉と落葉で減少し,表層土壌に蓄積した.2014 年までスギ落葉中放射性Csは降水による溶脱が顕著であった.2013 年春季には放射性Csはスギ林よりも広葉樹林で表層土壌から深層に移行していたが,2015 年冬季にはスギ林で深層への移行率が上回った.小川では放射性Csは小粒径の底砂に蓄積しており,一部は浮遊砂として流出するが,表層土壌に対する比は広葉樹林で2013 年:0.54,2015 年:0.29,スギ林で 2013 年:1.4,2016 年:0.31 と下がっており,森林に保持されていることが分かった.しかし,春季にはスギ雄花の輸送による放射性Csの生活圏への流出が懸念された.
著者
金光 秀和
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.24-38, 2006-08-08
参考文献数
25

現在,技術者倫理が世界各国で技術者教育に導入されつつある.日本においても,技術系学協会が倫理教育に取り組むと同時に,理工系の大学や高等専門学校で技術者倫理教育が活発化している.本稿では,歴史的背景の概観を通して,なぜ技術者倫理が必要なのか,また,現在どのような技術者倫理が求められているのかについて考察する.現在の技術者倫理はアメリカにルーツをもつものであるが,各国はそれぞれ異なった歴史的背景を有している.本稿では,アメリカの技術者倫理の歴史を概観し,その上で各国の歴史的相違について考察する.そのさい,とりわけ技術者の専門職としての責任に注目する.最後に,技術者倫理の今後の展望について論じ,ヨーロッパで試みられている,技術者倫理の技術倫理への拡張の構築に注目し,技術哲学による技術者倫理の基礎づけを求める議論について考察する.