著者
鈴木 雄大
出版者
専修大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2014-04-25

「反因果説に基づく反自然主義的な行為観の構築」という本研究プロジェクトの第3年目の本年度は、行為に関する「選言説」と呼ばれる立場を整理し、そのうちのあるバージョンを擁護することを主目標とした。行為に関する選言説は、行為にとって重要な三つの要素に関連して、三つの種類に分類される。その三つの要素とは、身体動作・意図・理由である。理由に関する選言説についてはすでに前年度に研究を進めたので、本年度の主な研究対象は身体動作の選言説と、意図の選言説であった。行為の反因果説に対立する因果説によれば、何らかの行為がなされるためには、ある身体動作が何らかの意図によって引き起こされたのではなければならない。この主張を導き出すために、意図の共通要素説と、身体動作の共通要素説が前提となる。意図の選言説と身体動作の選言説は、そうした前提をそれぞれ拒否することによって、因果説を導くことを防ぐ。まず身体動作の選言説に関しては、行為に関わる身体動作と、行為とは無関係な身体動作との間の比較が問題となり、身体動作の選言説は、二つの身体動作は同種のものではないと主張する。本研究は、身体動作の選言説を擁護するための理論構築を行い、その研究成果を、2016年6月6日に立正大学で開かれた国際ワークショップTaipei-Tokyo Workshop in Philosophyにおいて発表した。次に意図の選言説に関しては、行為へと実現した意図と、行為へと実現しなかった意図との間の比較が問題となり、意図の選言説は、二つの意図は同種のものではないと主張する。本研究は、意図の選言説を擁護するための理論構築を行い、その研究成果を、2016年11月26日に台湾の東呉大学で開かれた国際ワークショップSoochow International Workshop on “Knowledge and Action”において発表した。
著者
鈴木 和夫
出版者
東海大学
雑誌
東海大学紀要. 開発工学部 (ISSN:09177612)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.47-54, 2008-03-31

この総説では痛みの定義および古代からの痛みの治療について挙げ,レーザー治療に至る経緯,現在のレーザー治療およびその鎮痛機序の解析について紹介している.低出力レーザー(ソフトレーザー)とはどの様なものか述べ,実際の治療について麻酔科領域や整形外科領域の症例の肯定的および否定的両方の報告を示した.次に低出力レーザー照射鎮痛機序の解析的研究について,痛覚誘導をおこす物質や微生物を用いた疼痛モデル動物実験を挙げ,低出力レーザーが鎮痛に確かに効果があることを述べた.また,人為的に発生させた痛覚の活動電位(スパイク)を中枢に伝える感覚神経にレーザー照射したときスパイクは抑制され,レーザーはC 神経線維由来の感覚シグナル,つまり疼痛に特に効果があることを紹介した.そして,ミトコンドリアやATP などの生体活性物質が低出力レーザーにより変化して,それが起因して鎮痛がおこるという説,血流改善による鎮痛作用,中枢の下降性抑制系の賦活化による鎮痛作用,神経細胞膜のチャネルに作用,および発痛物質のシグナル伝達系の蛋白質に作用するという説を紹介した.これらの仮説から鎮痛機序をさらに解明するには中枢神経系の下降性抑制系のレーザーによる賦活化,およびレーザーが細胞レベルの物質に作用して光活性反応による分子構造変化を誘発しシグナル伝達を変調させるという観点から研究を進めることが期待される.
著者
鈴木 裕 中里 徹矢 横山 政明 阿部 展次 正木 忠彦 森 俊幸 杉山 政則 土岐 真朗 高橋 信一
出版者
日本膵臓学会
雑誌
膵臓 (ISSN:09130071)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.102-105, 2012 (Released:2012-05-15)
参考文献数
12

急性膵炎の重症化と合併症発生に対する肥満の影響について概説した.肥満の影響を考えるに当たり,多くはBMI(Body mass index)を用いているが,近年はCTを用いて内臓脂肪や皮下脂肪をパラメーターとしている報告も散見される.各報告をみると重症化や合併症発生に肥満は何らかの影響があると予想される.BMIでは,欧米では多くの肥満例が重症化と全身合併症に相関し,全身合併症の多くは呼吸不全である.本邦ではBMIは有意な重症化の危険因子とはならず人種差の可能性はある.しかし,日本人でも内臓脂肪の増加は急性膵炎重症化や合併症の発生に影響する可能性があり,肥満のタイプが重要であると思われる.今後は内臓脂肪面積などを画像診断による肥満のタイプをパラメーターとして詳細な検討を行う必要があると思われた.その際は,可能な限り発症早期の画像を用いるべきであり,理想は膵炎発症直前の測定が望まれる.
著者
鈴木 直
出版者
日本蘚苔類学会
雑誌
日本蘚苔類学会会報 (ISSN:02850869)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.17-18, 1977-08-10
著者
佐藤 寿俊 神田 順二 小寺 聡 櫛田 俊一 橋本 亨 鈴木 勝 樋口 和彦
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.124-128, 2007

症例は27歳,男性.17歳で心肥大を指摘,心エコーで大動脈弁閉鎖不全を伴うバルサルバ洞瘤を指摘されたため2000年3月大動脈弁置換術およびバルサルバ洞パッチ閉鎖術が行われた.しかし2001年8月無冠洞瘤部が破裂し,破裂部直接縫合閉鎖を行っている.2004年12月眩暈と動悸を伴う240/分の心房頻拍で入院.緊急カルディオバージョンで退院したがハイリスクなため2005年1月入院,心臓電気生理検査(EPS)を施行した.誘発された心房細動を経て三尖弁-下大静脈峡部を回路とするマクロリエントリー性心房頻拍(AT)が誘発されたため,ここに線状焼灼を行いブロックラインを作成した.再度EPSを行うと,今度は臨床的に確認されていたATが誘発され,起源は手術痕とは関連のない分界稜下縁であった.Fractionated potentialがAT中に先行する最早期A波の記録される部位で焼灼を行ったところATは速やかに停止,以後ATは誘発不能になった.退院後再発なく経過している.
著者
宮田 明子 山本 朋弘 堀田 龍也 伊藤 三佐子 片山 淳一 鈴木 広則
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.49-52, 2016

校務支援システムを導入した小・中学校の教員を対象に,校務支援システムの運用前・1年後・2年後の3回において質問紙調査を実施し,校務の状況に関する教員の意識および校務支援システムの機能の必要性についての経年比較を行った.その結果,校務支援システムの運用前と比較して1年後・2年後に,教員は校務の状況が改善されたと感じること,校務支援システムの機能の必要性を高く感じることが示された.また,校務支援システムの利用年数が1年目の教員と比較して2年目以降の教員は,児童生徒の状況把握や帳票印刷の機能に対して,より高く必要性を感じていることが示された.
著者
加藤 憲司 鈴木 志津枝 船山 仲他 福嶌 教隆 田中 紀子 岡本 悠馬 川越 栄子 長沼 美香子 益 加代子 植本 雅治 嶋澤 恭子 山下 正 松葉 祥一 金川 克子
出版者
神戸市看護大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

昨年度に引き続き、学部生対象の単位互換講座(10~1月 全15回)およびユニティ市民公開講座(7月 全5回)を実施した。今年度はロールプレイにスペイン語および中国語のネイティブスピーカーをそれぞれ招いて演習を行ったので、過年度よりも一層の臨場感を講義の中に盛り込むことができたと考える。ただしユニティ市民公開講座については、受講者数の減少が止まらず、市民への普及・啓発としての本講座の役割は終えたと判断することとした。医療通訳を巡る国内の情勢は極めて大きな変革期を迎えているため、常に最新の情報を踏まえて方向性を探る必要があることから、関連する第20回日本渡航医学会(倉敷市 7月)、第1回国際臨床医学会(東京 12月)などの学会や、全国医療通訳者セミナー(東京 8月)などのセミナーへ積極的に参加した。さらに、地元の兵庫県においても医療通訳の制度化に関する研究会が立ち上がり、3回の会合がもたれ、本研究チームからも複数のメンバーが参加した。調査研究については、昨年度末に1300通以上の質問紙を全国の一定規模以上の医療機関に発送したが、回収率は20%以下に留まった。データを一旦分析し、本学紀要に投稿したものの、追加のデータ分析をすべく取り下げ、現在も論文原稿を執筆中である。
著者
荒川 歩 竹原 卓真 鈴木 直人
出版者
日本感情心理学会
雑誌
感情心理学研究 (ISSN:18828817)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.22-29, 2006-03-30 (Released:2010-01-15)
参考文献数
13
被引用文献数
2 1

This research compared the effects of messages with and without emoticons from a familiar friend on the reduction of intensity of emotions, the relationship between changes in emotions, and the impact of emoticons on text messages. In particular, the effect of messages with one of five emoticons { (^_^) (;_;) (>_<) (^_^;) m(_ _)m } and messages with no emoticons, on four emotional scripts, happy, sad, angry, and anxious, were compared. Using their own cell phones, university students (n=33) participated in this study by reporting emotional intensity when they were in each script. They again reported emotional intensity after receiving a text message with emoticons from a familiar friend. Results indicated that (1) messages with emoticons reduced the intensity of the receiver's negative emotions in comparison to messages without emoticons; and (2) when receivers were feeling angry or happy, a significant relationship was found between the impact of emoticons and the reduction in the intensity of emotions, expect when receivers were feeling anxious or sad. Results suggest that appropriate selection from emoticons reduces the intensity of the receiver's negative emotions.
著者
白石 友紀 豊田 和弘 鈴木 智子 目黒 あかね 長谷川 幸子 西村 富生 久能 均
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.99, no.1, pp.27-34, 2010-02-01

In this report, an effect of FFC-ceramic (FFC-Japan Co. Ltd., Tsu) water on the process of infection by a pea fungal pathogen, Mycosphaerella pinodes was investigated. Energy dispersive X-ray analysis showed that both of the FFC-ceramic water and a common ceramic water contained mainly Ca and S elements, of which the relative atomic percentages were 53~56% and 44~45%, respectively. Lesion formation by pycnospores of M. pinodes on pea leaves was inhibited severely by the application with both ceramic waters at the 1/2~1/6 concentration of saturated solution. Cytological observation under microscope showed that germination, germ-tube elongation and penetration were severely inhibited by these ceramic waters. However, such inhibitory effect of FFC-ceramic water was superior to that of the common ceramic water. On ethanol-killed pea epidermal tissues, both FFC-ceramic water and the common ceramic water blocked the germination, germ-tube elongation and penetration by the pathogen, indicatingthe direct effect of both ceramic waters on the fungus. In this case, the inhibiting effect of FFC ceramic water was more intensive than the common ceramic water. CaSO(4) at a 1/2~1/4 concentration of saturated solution blocked penetration by the fungus on the killed epidermis of onion bulb but scarcely affected germination and germ-tube elongation. Based on these results, we discussed the role of FFC-ceramic water in disease tolerance of plants and its availability for cultivation.本研究は,FFCセラミックス(TM)(株 エフフシージャパン)の植物病原菌の発病抑制効果について調べたものである.FFCセラミック水は原液の1/2~1/6の濃度でエンドウ褐紋病菌の発病を顕著に抑制した.この原因を調べたところ,FFCセラミック水は,病原菌の発芽,発芽管伸長,侵入(貫入)を顕著に阻害することが判明した.FFCセラミック水中にはCa並びにS,O元素が多量に存在し,SEM観察の結果と合わせると,CaSO(4)が多量に含まれることが示唆された.そこで,CaSO(4)飽和液の1/2~1/4濃度で,病原菌に対する作用を調べた結果,発芽あるいは発芽管伸長はほとんど阻害されず,低率ながら侵入も観察された.これらの結果を総合して,FFCセラミック水やCaSO4の栽培場面での応用を考察した.
著者
鈴木 正三 茂木 一重 細田 達雄
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.191-195, 1956 (Released:2008-03-10)
参考文献数
11

我々は山羊血液の型物質の血清化学的性状と血清型につき調査し次の事項を得た。1 山羊の特異的血液型物質は血球基質中の蛋白分屑こ存在する。2 山羊の血清中には,α',β'の凝集素が存在し,山羊血清型をα',β',α'β'及びO'の4型に分類する。両者の凝集価は一般に低く,8倍程度であるがα'はβ'より一般に高い。3 山羊の血清型の出現頻度はO'型が大部分で,α'β',β',α'の順序にして,α'は比較的少ない。而してこの血清型は家兎型である。4 山羊血清中には抗-O抗体,抗-C抗体の存在するものもあるが,一般に抗体価は低く,その出現頻度も低い。
著者
鈴木 七美
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.355-378, 2005-12-31

「介護」は、他者への配慮・自己への配慮といった人間関係行為の総体に関わる概念だと捉えられる。「介護」を問うことは、「全体としての生」をテーマとして、人間の身心に具体的に関わる配慮的関係のありようを再考することであり、それ自体社会的・文化的に規定された文化人類学研究の対象である。本稿では、「高齢社会問題」そのものがどのように問題化されているのか、その構造に関し検討を加えた。「介護」にかかわり、「自立した生活」などと表現される「個生」へのまなざしをとりあげ、「個別的ライフスタイル」や、相互性のなかに生きる人間のアイデンティティの表現としての「個生」の模索について考察した。「介護」の試みは、高齢者の福利厚生のみを対象とすることでは果たせず、どの世代に関しても諸関係性を紡ぐ過程で創造される充足に配慮した構想を立ち上げる必要に言及した。「介護」あるいは「ケア」、すなわち相互性のなかに生きることに関して検討することは、壮年を中心とした狭義の社会を問い直すことにほかならない。とはいえ、現代生活においても人々は自らの暮らしを問い直し関係性を紡ぐ方途を模索し続けている。各人の活動の充足を念頭に労働時間の短縮や変更が広く認められているスイス連邦では、自宅で暮らすことを願う高齢者を援助する「シュピテックス」を推進してきた。対面的コミュニケーションが日常的に実現できる地域では高い評価を受けているこのシステムだが、都市部ではコミュニケーションや高齢者の創造的活動については保証できないという問題点が指摘されている。この点を考慮しつつ、地域に適合的な産業振興を模索してきた町を例として、高齢者が充足する社会は、環境をも含め共生社会構想と切り離しては実現できないという点に言及した。人々が求めるものは、一方から他方へのサービスのみを考案することでは持続的に充足せず、循環機構を組み立ててゆくことが不可欠である。この過程で、人々は年齢を問わず「明日」を見据えることが習慣となり、常に変動の相にある新たな相互関係を築くことに参与することになった。ケアについて考えることは、諸関係性を生きる様式のヴァリエーションに関し現時点で再考することにほかならない。
著者
小林 達明 高橋 輝昌 保高 徹生 近藤 昭彦 鈴木 弘行
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

福島第一原発事故による放射性Cs汚染に対する除染作業による里山森林生態系の反応を3年間継続測定した。137Csの初期沈着量は500kBq/m2だった。137Csの林冠から林床への供給は、2013年7kBq/m2だったのが2014年4.4kBq/m2に減少したが、2015年には4.7 kBq/m2に増加した。これは137Cs動態が平衡状態に移行しつつあることを示す。林床の137Cs蓄積量は有機物層除去で79%、リター除去で43%減少した。林冠から林床への137Cs供給はそれぞれ38%と33%減少した。処理効果は見られたが、有機物層下層の除去は可給態Csの減少にあまり貢献しなかったと考えられる。
著者
新居 智恵 田中 庄二 鈴木 昭 村上 幸生 小林 聡子 秋田 紗世子 利根川 茜 渡部 茂 町野 守
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.628-633, 2009-09-25 (Released:2015-03-11)
参考文献数
30

切歯結節は,切歯の基底結節が隆起した比較的稀な歯科的な異常である。われわれは,永久前歯における切歯結節の6 例を経験した。3 例は,上顎側切歯に,1 例は両側の上顎中切歯にみられた。1 例は,稀な下顎に,さらに,1 例は下顎側切歯と下顎犬歯の癒合歯にみられた。 結節の形態は,凸様突起物はたはT 字状突起物であった。処置は,レジン充塡にて結節の補強を行い経過観察とした。咬合に関係していない症例では経過観察とした。 永久前歯における切歯結節について,文献的考察を加えて報告した。