著者
関口 海良 堀 浩一
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第32回全国大会(2018)
巻号頁・発行日
pp.3H1OS25a03, 2018 (Released:2018-07-30)

AI倫理の重要性は近年益々大きく認識されているが,成果がAI技術の研究開発に取り入れられているとは言い難く,両者にはギャップが存在している.本研究では,AI技術者による倫理的な設計の実践を支援することを通じて,このギャップを解消することを課題として,有機的で動的なAI倫理ライブラリを実装し提供を開始した.ここで有機的とは,AI倫理ライブラリが異なるAI倫理間の複雑な関連を踏まえて支援することを意味する.また動的とは,AI倫理ライブラリがAI技術者とのインタラクションを通じて新しい文脈を考慮しながら支援することを意味する. 具体的には,AI倫理ライブラリは各AI倫理の構造の違いを明確にしたり,AI倫理の相互の意味的な距離を提示したり,また,AI技術の研究開発の延長線上に連続的にAI倫理を捉えられるようにシナリオパスを推薦する支援を行う. さらにAI倫理ライブラリによって,上記を通じてAI倫理の側もより実践的に再構築され得るものと期待される. 本論文では,倫理的な設計学を適用してAI倫理を扱う議論の枠組みを整理しながら,AI倫理ライブラリの概要と事例を紹介した上で,上記効果について評価を行う.
著者
関 桂子 小野 知二 中村 佳菜恵 森下 聡 村越 倫明
出版者
日本プロテオーム学会
雑誌
日本プロテオーム学会誌 (ISSN:24322776)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.25-35, 2016 (Released:2018-05-21)
参考文献数
47

ラクトフェリンは哺乳類の乳中に豊富に含まれる糖タンパク質であり,感染防御,免疫賦活など,様々な生理機能を持つことが知られている.我々は腸溶化したラクトフェリンに内臓脂肪低減効果という新機能を見出したことから,その機能性食品への展開と作用機序解明に向けて様々な検討を行ってきた.特に,脂肪分解促進効果の作用機序解析においては,プロテオーム解析技術を活用することで変動因子の抽出やラクトフェリン受容体の同定を行い,分子生物学的な解析による裏付けを重ねることで詳細な分子機構を解明することができた.2015年の「機能性表示食品」制度のスタートなど,近年の食品業界を取り巻く環境は刻一刻と変化しており,より高いレベルの研究成果が求められるようになってきている.今後も,人々の健康の維持・増進に貢献できる,確固たるエビデンスを持った製品を開発すべく,学際領域の知識・技術との連携を活かして取組んでいきたい.
著者
石井 正則 金田 健作 関 博之 小林 直樹 八代 利伸 小林 毅 吉田 茂 栄 春海 森山 寛
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.604-613, 1994-10-15 (Released:2011-08-10)
参考文献数
4

めまいや耳鳴を主訴とした患者の中には, 症状の増悪に患者の心理的因子や環境因子が関係することがあり, その治療には心身症としての側面を考慮する必要がある。とくにメニエール病では, ストレスが発症に関与していることが多く, ときとしてその治療に難渋することもある。そこで, 心身症や神経症に対して優れた臨床効果の報告がある抗不安薬 (Ethyl Loflazepate, メイラックス ®) を使用し, メニエール病を中心にめまいや耳鳴を主訴とした疾患に対してその臨床効果を検証した。その結果, この薬剤の内服により動揺感, 悪心・嘔吐, 耳鳴の大きさなどにその改善度や有用率が高いことがわかった。しかも心理検査のCMI検査や健康調査表でも服用後にCMIの値や健康調査の値が有意に低下することを認めた。以上により抗不安薬であるメイラックス ® が自律神経症状や動揺感を主体としためまい感や耳鳴の大きさに対する自覚症状を和らげる効果を示すことがわかった。
著者
関屋 昇
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.668-676, 2008-10-18 (Released:2008-10-24)
参考文献数
31
被引用文献数
1

The six major determinants of gait, as proposed by Saunders et al., were reviewed. The results showed that each of the first three determinants (pelvic rotation, pelvic list, and stance phase knee flexion) have only a minor effect on decreasing the vertical displacement of the center of gravity (COG). The major determinant of COG displacement is heel rise, and the second is the inclination of the lower extremity in the stance phase. In spite of the assumption that decreasing the COG displacement decreases gait energy consumption, the energy required for walking with a flat COG trajectory increased dramatically. Therefore, the major gait determinants as defined by Saunders et al. should be corrected in terms of both the COG displacement and energetics.
著者
辻 広生 福水 洋平 道関 隆国 山内 寛紀
出版者
一般社団法人 画像電子学会
雑誌
画像電子学会誌 (ISSN:02859831)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.510-521, 2017

防犯カメラにより撮影された顕著な照明光成分の偏りを有する複合劣化ナンバープレート画像の文字認識精度を改善し,かつ人の視覚特性にも適合する輝度値補正手法が求められている.この要求に沿った輝度値補正を行うため,サポートベクター回帰をRetinexモデルにおいて適用する手法を提案する.提案手法は,顕著な照明光成分の偏りに対応するためサポートベクター回帰を用いて従来のRetinex処理よりも正確に照明光成分を推定し輝度値補正精度を改善する.提案手法の有効性を確認するため,実写画像に複合劣化を付与した画像を実験用画像とし,正規化相互相関による劣化文字認識精度実験を行った結果,提案手法における正答率は従来のRetinex処理における正答率よりも最大で約39パーセント高い値となった.また提案手法を適用した画像は従来のRetinex処理を適用した画像よりもHalo が低減し,提案手法は,少なくともHalo の観点で従来のRetinex処理よりも視覚的に自然な画像を復元した.さらに実環境で撮影された防犯カメラ画像を対象とした場合においても提案手法は従来のRetinex処理よりも優位性があることを確認した.また輝度値補正手法を畳み込みニューラルネットワークによる文字認識に応用した場合においても提案手法は従来のRetinex処理よりも有効であることがわかった.
著者
関谷 剛男 浮田 忠之進
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.15, no.10, pp.1503-1507, 1967-10-25 (Released:2008-03-31)
被引用文献数
1 2

A complex neighboring approach provided a successful synthesis of 2'-deoxy-2'-thio-3'-deoxy-3'-aminouridine (IX). 1-(3'-Deoxy-3'-amino-β-D-arabinofuranosyl) uracil (I) afforded, in three steps, the blocked dithiocarbamoyl mesylate (IV), which, on heating in pyridine, cyclized to the thiazoline (V), that was deblocked to VI and reduced to the thiazolidine (VII). Compound (VII) was successively treated with mercuric chloride and hydrogen sulfide to furnish the desired product (IX).
著者
中場 勝 結城 和博 佐藤 久実 佐野 智義 櫻田 博 本間 猛俊 渡部 幸一郎 水戸部 昌樹 宮野 斉 後藤 元#森谷 真紀子#中場 理恵子#齋藤 信弥#齋藤 久美#小関 敏彦#工藤 晋平
出版者
山形県農業総合研究センター
雑誌
山形県農業研究報告 (ISSN:18834655)
巻号頁・発行日
no.3, pp.27-51, 2011-03

「山形100号」は,山形県立農業試験場庄内支場(現山形県農業総合研究センター水田農業試験場)において,良質の「山形75号」を母に,東北農業研究センターで育成したいもち病に強い「奥羽366号」(後の「ひゅらひかり」)を父に人工交配し選抜育成した水稲品種である.奨励品種決定調査において有望と認められ,2010年に山形県の奨励品種(認定品種)に採用された.熟期は育成地では"中生の晩"に属し,稈長は"中稈",草型は"中間"で,耐倒伏性は「ひとめぼれ」より強い"中"である.いもち病真性抵抗性遺伝子型は"Pia,Pii"と推定された.葉いもち圃場抵抗性は"強",穂いもち圃場抵抗性は"極強"である。障害型耐冷型は"強",穂発芽性は"やや易"である.「はえぬき」に比べ,玄米千粒重は3g程度重く,収量性は高い.玄米品質は乳白粒などの白未熟粒が多く発生しやや劣る.胴割程度は,「ひとめぼれ」並に低く,「雪化粧」より明らかに低い.試験醸造の評価は,雑味がなくすっきりと淡麗な酒質となり,甘口,辛口など様々なタイプの酒に対応でき,掛米用として醸造適性に優れる.山形県における栽培適応地帯は,平坦地域から中山間地域で,普及見込み面積は500haである.
著者
関 光世
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 = Acta humanistica et scientifica Universitatis Sangio Kyotiensis (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
no.50, pp.131-143, 2017-03

本論は,英国ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)のジョンストンコレクションに残された『猛虎集』を手がかりに,徐志摩(1897-1931)と清朝最後の皇帝愛新覚羅溥儀(1906-1967)の帝師を務めたレジナルド・フレミング・ジョンストン(1874-1938)との交流について,可能な限り明らかにしたものである。 この『猛虎集』初版本には,徐志摩のサインが残されているとの記録がある。しかし,筆者の現地調査によって未公表の献辞が確認できており,その文言は,二人の交流が従来知られているよりも長く,深いものであることを示唆している。徐志摩とハーディ(1840-1928)やフライ(1866-1934)らとの交流はよく知られているが,留学から帰国した後の西洋人との交流については,ほとんど取り上げられていない。 本論は,献辞の文言や日付などの情報を手がかりに,コレクションに残された他の中国知識人の書籍,ジョンストンの著書『紫禁城の黄昏』, 溥儀の自伝『わが半生』,徐志摩の日記や書簡など関係資料を参照し,二人の交流の起点と終点及びその過程について仮説による叙述を試み,以下の点を明らかにした。 1. 徐志摩とジョンストンの出会いは,1924 年のタゴール(1861-1941)訪中時よりも早い1922 年冬,つまり徐志摩の帰国直後であった可能性が高く,タゴール訪中は二人の交流が一層深まる契機となったに過ぎない。 2.二人の出会いと交流において,胡適は仲介者として重要な役割を果たした。 3.『 賀雙卿雪壓軒集』上のサインは,二人の交流が長期間継続しただけでなく,彼らの交友関係が,中国文学界においては相当程度共通していたことを物語っている。 4. 献辞の文言や当時の社会情勢から,『猛虎集』初版本は,出版から徐志摩が事故死するまでの短い期間に直接手渡されたと判断し,その時期と場所を概ね特定した。 以上を総合すると,徐志摩とジョンストンの交流は,徐志摩が留学から帰国した直後に始まり,タゴールの皇帝謁見を機に深まり,1931 年,互いに極めて多忙な中で最後の対面を果たすまで続いたと結論づけることができる。 本論は,ジョンストンコレクションに見られるジョンストンと徐志摩及び胡適ら中国の知識人との交流の詳細を初めて解明し,従来ほとんど取り上げられたことのなかった徐志摩とジョンストンの交流の起点と終点,及びその過程を明らかにしており,徐志摩の西洋理解,ひいては1920 年代における中国と西洋の文化交流について,その一端を理解する上で価値あるものである。

1 0 0 0 OA 小笠原諸礼式

著者
関, 義標
出版者
巻号頁・発行日
vol.[1],
著者
大関 信子 大井 けい子 佐藤 愛
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.189-196, 2014-11-30 (Released:2017-01-26)
被引用文献数
1

【目的】本研究は,乳幼児を持つ母親と父親のメンタルヘルス状態と夫婦愛着,及び自尊感情との関連を明らかにすることを目的とした.本研究の意義は,母親のメンタルヘルス向上の支援策の検討に役立てることである.【方法】簡易サンプル法を用いた無記名自己記入式調査用紙を用いた横断的研究で,A県内在住で6歳未満の子供を持つ父母552組に調査票を配布し郵送にて回収した.調査内容は,社会的背景の他にメンタルヘルスの測定には「精神健康度調査票」(General Health Questionnaires:以下GHQ12),夫婦愛着を測るために「夫婦関係尺度」(Quality Marriage Index:以下QMI),自尊感情を測るため「自尊感情尺度」(Self Esteem Scale:以下SES)を用いた.統計分析は,記述統計や重回帰分析を用いた.【結果】母親のGHQ得点とQMI得点,SES得点とに有意な相関関係が見られた.「父親の子育てに満足」の要因は母親のQMI得点に最も関連していた.母親のQMI得点は母親のSES得点に最も関連し,このSES得点は母親のGHQ得点に最も関連していた.父親にも同様な結果が得られ,「母親の子育てに満足」の要因が父親のQMI得点,SES得点そしてGHQ得点に有意な関連がみられた.【考察】母親,父親とも夫婦愛着が直接メンタルヘルスに関連するのでなく,自尊感情を介して影響することが明らかになった.父親の育児参加は,母親が認知する夫婦愛着を促進し,夫婦愛着が母親の自尊感情を高め,結果的に母親のメンタルヘルス向上に関連するとの示唆を得た.
著者
六崎 裕高 吉川 憲一 佐野 歩 古関 一則 深谷 隆史 山崎 正志
出版者
南江堂
雑誌
別冊整形外科 (ISSN:02871645)
巻号頁・発行日
vol.1, no.75, pp.241-244, 2019-04-25

は じ め に ロボットスーツHybrid Assistive Limb(HAL;Cyberdyne社)は,着用可能なロボットで,装着者の皮膚表面に貼付された電極から生体電位信号を解析し,パワーユニットを制御して,装着者の動作を支援することができる1).これまで,脳卒中,脊髄疾患,小児疾患などで安全性や効果が報告されてきた2~4).人工膝関節全置換術(TKA)後においても,関節可動域(ROM)の改善のために単関節型HALが用いられ,また,歩行能力の改善のために両脚型HALが用いられ,安全性や効果が報告されてきた5,6).われわれは,歩行能力,ROM,筋力の改善を念頭におき,両脚型HALより軽量で,単関節型HAL同様にROM訓練可能な単脚型HALを用いてTKA後にトレーニングを行い,リハビリテーションとしての可能性を考察した7).これをもとにTKA術後急性期における単脚型HALを用いた臨床研究について報告する.
著者
関 友作 赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.141-150, 1994-01-20 (Released:2017-10-20)
被引用文献数
2

学習メディアとしてのテキストを対象に,箇条型の情報提示が,読み手の内容理解に与える影響を研究した.具体的には,項目型の情報について,(1)各項目を箇条に分けて,リストの形で提示した場合(箇条群)と,(2)各項目を文中に埋没させて提示した場合(埋没群)とで,どのように理解に違いがみられるかを,印刷メディアを材料として実験調査した.実験では,テキスト読解後に内容についての再生を求めた.被験者の再生文を得点化した結果,箇条群の方が埋没群より,内容理解にすぐれていることがわかった.また,項目の再生順序については,埋没群の方が箇条群よりも,テキストの提示順序に近くなることがわかった.この理由として,次のことが示唆された.(1)リスト形式(箇条型)のテキストは,そのレイアウトにより,あらかじめテキスト構造についての情報を読み手に与える.(2)リスト型提示は,情報への自由なアクセスを,視覚的に可能にする.これらの点を,先行研究との関連の中で考察した.
著者
宮川 しのぶ 津田 朗子 西村 真実子 木村 留美子 稲垣 美智子 笠原 善仁 小泉 晶一 関 秀俊
出版者
日本小児保健協会 = The Japanese Society of Child Health
雑誌
小児保健研究 (ISSN:00374113)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.457-462, 2002-05-31
参考文献数
21
被引用文献数
3

小学3年から高校3年までの1型糖尿病患児38名の学校生活での療養行動とそれに伴う困難感を検討した. 療養行動をしている割合は, インスリン自己注射81.6%, 血糖自己測定44.7%, 間食, 補食摂取31.6%であった. 療養行動の施行場所は, 小学生では主に保健室であったが, 中高生ではトイレや教室が多く, 94.7%の児がいずれかの療養行動を行っており, その50%が「しにくい」と感じていた. 困難感を抱く理由には, 療養行動を不思議がられたり, 特別視されることによるものが多い. また97.4%が低血糖症状を経験していたが, 病気や療養行動を知られたくないために我慢をする場合や, 保健室に行くことがあった. 以上から多くの患児が学校での療養行動に困難感をもっているため, さらなる学校現場での正しい理解と環境作りが必要と考えられた.
著者
関島 建志 桐 博英 安瀬地 一作 木村 延明
出版者
国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
農研機構研究報告. 農村工学研究部門 = Bulletin of the NARO (ISSN:24326674)
巻号頁・発行日
no.3, pp.119-125, 2019

既往最大雨量を記録するような豪雨が日本各地で多発する中,農業用排水機場が浸水し機能停止に陥る事例が発生している。農業用排水機場は農地排水を目的に計画されているが,都市化・混住化が進んだ地域では,排水機場の機能停止は住民の被災に直結する問題であり,耐水化による減災対策の重要性が増してきている。平成 30 年 5 月に改定された設計基準「ポンプ場」に耐水化対策が明記され,新設,更新施設では耐水化がなされることとなるが,既存の施設への対応は今後の課題である。本報では,排水機場の耐水化対策の現状及び先行した取組事例について調査を行った。農業用排水機場では,過去に浸水被害を被った地域,機場で対策が行われている。また,大規模津波で電気,水道が途絶した場合の対策を計画している事例がある。河川等類似施設では,都市部を中心に耐水化対策が進められている。
著者
臼井 一茂 石川 賢一 関野 俊之 飯田 頌太 清田 雄司
出版者
神奈川県水産技術センター
雑誌
神奈川県水産技術センター研究報告 (ISSN:18808905)
巻号頁・発行日
no.7, pp.73-80, 2014-11

平塚市は、江戸時代には東海道の宿場町として栄えた。1887年には官設の鉄道開通により平塚駅を中心に発展し、1932年には県下で四番目の市になり、自動車関係や化学関係の工場が立地する商工業都市として発展してきた。近年では、規模の大きいショッピングセンターが駅前及び郊外にも多く建設されており、産業地域とともに居住地域としても発展している。農水産業も盛んであり、きゅうり、ねぎ、里芋、バラなどが県内主産地になっているほか、しらす船曳網漁業者自らが生産するシラス干しやたたみいわしなどの水産加工品が有名である。しかし、平塚市地先では2ヶ統の定置網が操業されているものの、その漁獲物を使った地域産品としては、地元水産加工業者などが製造している、小さなタチウオを用いた「白髪干し」や、アジ等の干物「須賀湊干し」しかなく、地元の水産物や農産物を活用して、全国的にも有名な「湘南七夕祭り」の土産となり得る加工品の開発が望まれていた。今回、平塚市及び平塚市漁業協同組合から依頼により行った、低利用魚のソウダカツオ類(ヒラソウダ Auxis thazardとマルソウダ Auxis rochei)を用いた常温保存が可能な製品開発について、その結果を報告する。