著者
伊藤 千夏 高橋 史
出版者
信州大学大学院教育学研究科心理教育相談室
雑誌
信州心理臨床紀要
巻号頁・発行日
no.18, pp.1-11, 2019-06-01

インターネットやSNSの利用については過剰利用をはじめとして有害な側面が注目されてきたが,近年ではSNS相談窓口による援助要請促進の取り組みが進められている。しかし,援助要請機能を含め, SNSの有益な側面についてはいまだに検証が十分ではない。そこで本研究は,インフォーマルな援助要請におけるSNSの利用方法とその効果を記述することを目的として,面接調査による質的検討を行った。その結果, SNSを利用した援助要請行動では,発信の際の自己表現によって得られるサポートの種類が異なることがわかった。SNSはこれまで過剰利用や対人関係の阻害といった点で、問題視されてきたが,本研究は援助資源としての可能性を見出したものである。
著者
高橋 利枝
出版者
一般社団法人 情報システム学会
雑誌
情報システム学会誌 (ISSN:18842135)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.7-17, 2019 (Released:2019-06-10)

本論文の目的は,人工知能(AI)やロボットがもたらす社会的インパクトを理論的かつ経験的に捉えることである.まず理論枠組みとして,これまで理論と経験的調査研究との往還運動を通して発展させてきた「コミュニケーションの複雑性モデル」について紹介をする.次に,AIやロボットに関する日本と西欧の差異についてアプローチしていく.両者の差異に関しては,これまで思想や宗教的な観点から主に多く説明されてきた.そのため本稿では,ケンブリッジ大学との共同研究「グローバル・AIナラティブ」プロジェクトから,1920年代以降のAIナラティブについて社会経済的な力学から考察を試みたいと思う.さらに人とAI/ロボットとのエンゲージメントに関する実態について,現在行なっている2つの調査研究—若者とAI調査,高齢者のロボット・エンゲージメントから考察する.最後に今後のAI/ロボット開発において必要な「ヒューマン・ファースト・イノベーション」について提案したいと思う.
著者
高橋 英之 伴 碧 佐武 宏香 遠藤 信綱 守田 知代 浅田 稔 下條 信輔
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.395-399, 2015-09-18

正弦波に応じてリズムを変動させる太鼓をたたくぬいぐるみロボットを開発,正弦波のパラメータがどのようにその ロボットとの被験者のリズムインタラクション(交互太鼓たたき課題)における主観的感覚に影響を与えるのかにつ いて調べてきた.その結果,リズムを決める正弦波周期が長くなればなるほど,ロボットが被験者に追従していると いう社会的感覚が生じ,その結果,ぬいぐるみロボットに対する親しみなどの主観的印象が向上することが示された.
著者
周藤 芳幸 金山 弥平 長田 年弘 師尾 晶子 高橋 亮介 田澤 恵子 佐藤 昇 大林 京子 田中 創 藤井 崇 安川 晴基 芳賀 京子 中野 智章
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

当該年度は、前プロジェクト「古代地中海世界における知の伝達の諸形態」の最終年度に当たっており、そこで既に策定されていた研究計画を着実に進めるとともに、現プロジェクト「古代地中海世界における知の動態と文化的記憶」の本格的な展開に向けて新たな模索を行った。具体的には、図像による知の伝達の諸相を明らかにするために、図像班を中心に研究会「死者を記念する―古代ギリシアの葬礼制度と美術に関する研究」を開催し、陶器画による情報の伝達について多方面からの共同研究を行った。また、9月3日から7日にかけて、国外の大学や研究機関から古代地中海文化研究の最先端で活躍している13名の研究者を招聘し、そこに本共同研究のメンバーのほぼ全員が参加する形で、第4回日欧古代地中海世界コロキアム「古代地中海世界における知の伝達と組織化」を名古屋大学で開催した。このコロキアムでは、古代ギリシアの歴史家の情報源、情報を記録する数字の表記法、文字の使用と記憶との関係、会計記録の宗教上の意義、法知識や公会議記録の伝承のメカニズム、異文化間の知識の伝達を通じた集団アイデンティティの形成、神殿などのモニュメントを通じた植民市と母市との間の伝達など、古代地中海世界で観察される知の動態をめぐる様々な問題が議論されたが、そこからは、新プロジェクトの課題に関して豊富なアイディアと示唆を得ることができた。これについては、その成果の出版計画の中でさらに検討を重ね、今後の研究の展開にあたって参考にする予定である。これに加えて、当該年度には、知の伝承に関する基礎データを獲得するためにエジプトでフィールドワークを行ったほか、9月にはダラム大学名誉教授のピーター・ローズ博士、年度末にはオックスフォード大学のニコラス・パーセル教授の講演会を企画・開催するなど、国際的なネットワークの強化にも努めた。
著者
井上 彬 高橋 理音 村田 年昭 田村 淳二 木村 守 二見 基生 井出 一正
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.125, no.10, pp.946-954, 2005 (Released:2006-01-01)
参考文献数
15
被引用文献数
2 8

The spread of wind energy converter is progressing in recent years and its capacity is becoming larger and larger. In order to capture more energy from the wind, it is important to analyze loss characteristics of wind generators for operating speed which is determined dependent on the wind speed. This paper presents a method to evaluate various losses in wind generator as a function of wind speed, which is based on the steady state analysis and thus the calculation can be performed quickly. By using the proposed method, wind turbine power, generator output, various losses, and the total energy efficiency are calculated for three types of wind speed data which are represented by a weibull function.
著者
菊島 良介 高橋 克也
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.261-271, 2020-04-15 (Released:2020-05-08)
参考文献数
27

目的 本研究は食料品アクセス困難者(以下,アクセス困難者)の栄養および食品摂取にみられる特徴を把握することを目的とした。方法 食料品アクセス問題に関する調査項目が唯一調査票に含まれている平成23年国民健康・栄養調査と平成23年国民生活基礎調査の両個票データのデータリンケージを行い,分析に用いた。 65歳以上の高齢女性1,051人を対象に,アクセス困難者の栄養および食品摂取状況について計量経済学的手法を用いて把握した。分析の目的変数としてエネルギー産生栄養素の蛋白質,脂質,炭水化物の摂取熱量(kcal),17品目の食品群別摂取量(g/1,000 kcal)を用いた。目的変数の同時決定による内生性に対処した同時方程式モデルの一種であるSeemingly Unrelated Regressionsモデルを推計した。この推計により各栄養素摂取熱量や食品群別摂取量の多寡を規定する要因(変数)の影響の程度が係数として示され,各栄養素間や各食品群間の代替・補完関係が誤差項間の相関行列として表現された。結果 アクセス困難者の特徴として65歳以上女性において,食料品アクセスとエネルギー産生栄養素摂取量との関連をみた結果,炭水化物の摂取熱量(kcal)が有意に高く,脂質の摂取熱量(kcal)が有意に低いことが明らかになった。このことは食品群別摂取量(g/1,000 kcal)をみても穀類が高く,油脂類が低いことからも確認された。これらのことから,アクセス困難者は代替・補完関係を考慮しても炭水化物摂取に偏った食生活を送っている可能性が高いと推察された。結論 本研究により栄養摂取状況に関してアクセス困難者が炭水化物摂取に偏る局面もみられた。単純に価格や嗜好の問題ではなく食環境の要因として,すなわち食料品へのアクセスの制約によりアクセス困難者は炭水化物摂取へ偏った食生活を送っている可能性が高いと推察される。個人が直面する経済的状況の影響を考慮しても食環境は食生活を規定しており,フードチェーンを構成する各主体間や行政との連携・協力による買い物サービスの利用促進に向けた環境整備の必要性が示唆された。

2 0 0 0 OA 朝鮮の物語集

著者
高橋亨 著
出版者
日韓書房
巻号頁・発行日
1910
著者
長田 あかね 家原 彰子 岡井 毅芳 金子 千沙 小林 凱之 高橋 葉子 見市 泰男 山路 興造 渡邊 美秀子
出版者
京都造形芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

長命茂兵衛家文書は、中世から近世にかけて南都両神事能(春日若宮祭能と興福寺薪能)で活動した年預に関する、ほぼ唯一のまとまった文書群であり、日本芸能史・能楽史の研究を中心に、きわめて重要な資料と位置づけることができる。研究期間を通して、同文書について、書誌データの採取、目録・釈文・解題・画像データの作成、参考文献の収集他の作業を達成し、同文書の分析および年預の活動実態に関する研究も行った。その結果、これまで事実上未公開であった同文書の全面公開への道筋をつけ、同文書を活用した今後の研究発展に貢献しうる成果を得るに至った。
著者
山下 仁 高橋 昌巳 西條 一止 一幡 良利
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.457-464, 1996-11-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
16

黄色ブドウ球菌に対する生体の感染防御活性に及ぼす灸の効果を明らかにするため, 黄色ブドウ球菌 Smith 株を用いてウサギに免疫し, 施灸群4羽と非施灸群4羽の血清中の抗体産生能を enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA) により比較検討した。施灸群のIgM抗体価は非施灸群よりも有意な上昇 (P<0.05) が認められた。また同株の感染防御抗原である Smith surface antigen (SSA) を用いた ELISA inhibition test では, 初回免疫後9週目における施灸群血清のIgMおよびIgGの抗体活性が有意 (P<0.05) に高かった。このことから灸は黄色ブドウ球菌 Smith 株に対する生体の抗体産生能を昂進させるとともに, 同株に対する感染防御活性も増強させることがわかった。
著者
長尾 恭史 小林 靖 竹内 雅美 田積 匡平 小田 知矢 眞河 一裕 宮島 さゆり 馬渕 直紀 小林 洋介 高橋 美江 今村 一博
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.391-398, 2012 (Released:2012-11-23)
参考文献数
31
被引用文献数
4 1

【目的】脳卒中急性期における肺炎合併がどのような機序で機能回復に影響を与え予後悪化を招くか後方視的に検討した.【方法】急性期脳卒中患者のうち肺炎発症高リスク47名を対象とし,肺炎合併群17名と非合併群30名で各種データを比較.【結果】急性期入院時の背景因子・重症度は2群で差はなく,転院時では血清アルブミン値,SIAS麻痺側上下肢(上肢遠位除く),非麻痺側,体幹各下位項目,FIM,回復期退院時ではSIAS下肢近位(股),非麻痺側,体幹各下位項目,FIM,FIM効率と嚥下障害改善率で肺炎合併群が有意に劣っていた.【結論】肺炎合併による機能的予後の悪化とは,リハ遅滞や臥床による廃用性萎縮や学習された不使用が生じることにより,急性期での麻痺側運動機能,非麻痺側機能,体幹機能,嚥下機能の低い改善・低下や低栄養が主因となり,結果として回復期での機能回復にまで悪影響を及ぼすことであると考えられた.
著者
高橋 和雄 藤井 真
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.567, pp.53-67, 1997-06-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
10

地震, 風水害などの一過性の災害と異なって, 火山災害は長期化する特性をもつ. 火砕流に対して人命を守るために, 市街地で初めて警戒区域が設定された. わが国の災害対策は主として一過性の災害応急対策および被災者対策を対象としているために雲仙普賢岳の火山災害では被災者対策, 住宅対策, 生活再建計画などに多くの教訓と課題が生じた. 行政は, 現行法の拡大解釈および弾力的運用による21分野100項目の自立支援対策, (財) 雲仙岳災害対策基金および市町の義援金基金等によるきめ細かい被災者対策を行った. しかし, 災害対策システムの見直しなどの根本的な課題の解決はまだこれからである, 本報告では, 雲仙普賢岳の火山災害における被災者対策をまとめている.