著者
山口 和子 高橋 史人
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.104-113, 1982-06-20
被引用文献数
11

食嗜好の変化とその要因を明らかにする目的で、食品の好み度を測定し解析を行った。調査は昭和53年10月、12歳以上の男女5,000人を対象に実施した。第1報では性・年齢、地域、職業、家族構成などの属性以外で、嗜好そのものに影響を及ぼす嗜好因子を抽出し、この嗜好因子が各属性と関連しあって嗜好を規定することを統計的に確認し、食品に対する好みの変化を追跡する基礎的内容となることを報告した。本報では前報に続いて、性・年齢階層別、地域別、職業別の嗜好傾向を食品の「好み値」「好みの偏り度」によって解析し、次のような結果が得られた。1)食品の好み傾向の性差は僅少であるが、年齢階層差は大きい。特に男女共に30歳代と40歳代の間に大きな断層が認められた。すなわち、10歳代から20歳代にかけて好きな食品数が増加し、好みの偏り度は上昇するが、30歳代では下降しはじめ、40歳代で急激に全体平均値以下に低落、50歳代、60歳以上の高年層とほとんど同じ好み傾向を示した。2)好み値3.8以上の好きな食品群をみると、男子は和風の蛋白質性食品が多いのに対し、女子は和風の糖質性食品でほとんどを占める。年齢階層別では10〜20歳代の若年層は洋風食品、スナック類、デザート類の好み値が高く、50歳代以上の高年層の場合の高い好み値は和風伝統食品に集中し、若年層、高年層の間で対照的た好み傾向が認められた。好み値の高い食品は普及率(95%以上)も高く、好み値に寄与することを示した。 3)地域別にみると、東海が全国平均値的な好み傾向を示し、関東は最も積極的な食品の好み傾向を示した。北陸・中国・四国はかなり保守的な好み傾向であった。近畿は好み値の高い食品も多いが低い食品も多い。北海道、東北は近畿と反対の好み傾向を示した。九州は好み値の高い食品数が少なく、好みの頻り度も低い。各地域の特産食品の好み値は年齢階層に関係なく高い。4)職業別の食品の好み傾向は、各職業を構成する年齢階層の最多響を受けていた。しかし、年齢構成がほぼ同じ比率で分布する専門技術職と労務職の間で、専門技術職が食品の好みのうえで明らかに積極性を示すのに対して、労務職の好み傾向は低いことから、職業もまた食品の好みに影響を及ぼすことがわかった。5)以上を総括すると、地域別、職業別の食品の嗜好差に比して、年齢階層別の嗜好差が最も大きいことが認められた。特に男女共30歳代に嗜好変動の分岐域があるように考えられた。
著者
松村 秀一 前田 秀一 高橋 淳 吉川 貞雄
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.317-324, 1988-04-25 (Released:2010-02-26)
参考文献数
13
被引用文献数
11 29

ポリピニルアルコール (PVA) の生分解について詳細な検討を行い, 活性汚泥により生分解を受けることを認めた. 細菌としてPseudomonas sp. M1及びPseudomonas putida M2などがPVAのポリマー部分分解菌として単離された. これらを用いた試験からポリビニルアルコールの優れた生分解性が確認された. さらに, ビニルタイブの生分解性を有する高分子電解質の分子設計としてポリアクリル酸ナトリウムの主鎖中に生分解性を有するポリビニルアルコール単位を有するポリ [(アクリル酸ナトリウム) -co- (ビニルアルコール)] [P (SA-VA)] を酢酸ビニルとアクリル酸を共重合させることにより合成し, 得られたものの生分解について検討を行った. その結果P- (SA-VA) は土壌で生分解を受けることが見いだされた. また, 共生的に働いているPseudemonas sp. C1及びC2の2菌株がP (SA-VA) のポリマー部分分解菌として単離, 同定された.
著者
金子 杏弓 高橋 史
出版者
信州大学大学院教育学研究科心理教育相談室
雑誌
信州心理臨床紀要
巻号頁・発行日
vol.17, pp.19-28, 2018-06-01

本研究では,援助要請行動を悩みの相談行動と定義し,相談行動に対する被援助志向性,心理的負債感,抑うつの影響性を検討した。大学生297名を対象に質問紙調査を行った結果,相談行動に影響するのは悩みの経験および被援助志向性であることが示された。悩みの経験が多いほど,また,被援助志向性が高いほど相談行動を多く行っていた。心理的負債感および抑うつは相談行動に影響を及ぼさないことが示された。今後は,相談行動以外の援助要請行動や,援助要請をする相手による違いについても検討する必要がある。
著者
高橋 絵里香
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第46回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.132, 2012 (Released:2012-03-28)

本発表は、トーベ・ヤンソン著「ムーミン」童話シリーズを題材として、フィンランドの家族概念を社会思想として理解し、外縁としての共同体との関係を明らかにすることを目指す。ムーミン物語における家族描写にはリベラルと保守という対極的な思想が混在しており、それはフィンランドの家族のかたちを反映している。こうした物語構造の分析を通じて、フィンランドの保守/リベラルをめぐる社会思想の軸を理解していく。
著者
辻 富基美 高橋 隼 篠崎 和弘
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.59-63, 2011 (Released:2011-06-30)
参考文献数
7

てんかん患者がもつ発作後精神病の予防にlamotrigineが有効であった3例を報告する。3症例は全て側頭葉てんかんと診断され、てんかんの発症から17~27年時に発作後精神病が出現した。発作型はいずれも複雑部分発作であり、十分な抗てんかん薬を投与したにもかかわらず、月1回以上の発作があった。精神病エピソードはこれまでに2~5回以上であったが、ラモトリギンの投与後10~12カ月の期間では精神病エピソードの再発がなかった。発作頻度はラモトリギンにより1症例は群発発作が消失し、2症例は発作頻度が減少した。この群発発作の消失、発作頻度の減少が発作後精神病の再発を予防した可能性がある。一般的にラモトリギンは精神病症状を引き起こす副作用の頻度が小さい。これらのことより、発作後精神病の予防ための抗てんかん薬として有用な可能性がある。
著者
前田 有美 横山 典子 高橋 康輝 土居 達也 松元 圭太郎 上野 裕文 久野 譜也
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.269-278, 2007-04-01 (Released:2007-05-25)
参考文献数
43

The purpose of this study was to investigate the effects of combined resistance training and aerobic training with protein intake after resistance training on body composition in obese middle-aged women. The subjects were 42 middle-aged women (age : 56.5±4.3 years, BMI : 26.6±2.3 kg/m2), who were classified into three supplementation groups: Protein group (PG), Isocalorie placebo group (IG), and Noncalorie placebo group (CG) by Double Blind Randomized Trial. The training program consisted of combined resistance training and aerobic training for 10 weeks, 5 times per week: twice a week in a university training room and 3 times per week at home. The subjects took the nutrient supplement immediately after each resistance training session. We measured body weight (Bw), body fat volume (Bf) by bioelectrical impedance analysis (BIA), and cross-sectional area (CSA) of muscle of the thigh extensor group (Te), flexor group (Tf), and psoas major (Pm) by magnetic resonance imaging (MRI) before and after the 10-week training period. Irrespective of group, Bw and Bf showed a significant decrease after the training period compared to before (p<0.001), and the CSA of Te muscle showed a significant increase after the training period (p<0.01). Moreover, the interaction of time×group was accepted in the CSA of Pm muscle (p<0.05), and the increase in muscle volume for PG was the highest increase among the three supplementation groups (p<0.05)(PG : 2.1±0.8 cm2, IG : 1.3±1.0 cm2, CG : 1.3±0.9 cm2). These results suggest that combined training in middle-aged obese women improves body composition, and resistance training with protein intake may increase the CSA of muscle of psoas major.
著者
小原 雄治 加藤 和人 川嶋 実苗 豊田 敦 鈴木 穣 三井 純 林 哲也 時野 隆至 黒川 顕 中村 保一 野口 英樹 高木 利久 岩崎 渉 森下 真一 浅井 潔 笠原 雅弘 伊藤 武彦 山田 拓司 小椋 義俊 久原 哲 高橋 弘喜 瀬々 潤 榊原 康文
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)『学術研究支援基盤形成』
巻号頁・発行日
2016

①総括支援活動では、支援課題の公募を行い、領域外有識者による審査委員会により選考し、支援を行った。経費上限設定など多くの採択ができるように努めた結果、応募188件、採択93件(採択率49.5%)となった。支援の成果として2017年度に54報の論文発表がなされた。②大規模配列解析拠点ネットワーク支援活動においては、最先端技術を提供するためにそれらの整備や高度化を進めた。遺伝研拠点では染色体の端から端までの連続した配列完成を目指して、ロングリードシーケンサー(PacBio Sequel)、長鎖DNA試料調製技術、さらに1分子ゲノムマッピングシステム(Irysシステム)の最適化を進め、実際の試料に応用した。東大柏拠点では、1細胞解析技術を整備し支援に供するとともに、Nanopore MinIONを用いた一連の要素技術開発を進めた。九大拠点では微生物ゲノムのNGS解析最適化を進めた。札幌医大拠点ではLiquid Biopsyによる体細胞における低頻度変異検出技術開発を進めた。③高度情報解析支援ネットワーク活動では、支援から浮かび上がった課題を解決するソフトウェアの開発を進めた。支援で特に活用されたものは、真核2倍体用denovoハプロタイプアセンブラPlatanus2(東工大)、染色体大規模構造変異高精度検出アルゴリズムCOSMOS、変異解析結果の信頼性を評価するソフトウェアEAGLE(以上、産総研)、エクソン・イントロン境界におけるスプライソソーム結合頻度の解析パイプライン(東大)、であった。また、CLIP-seqデータの解析パイプライン、高速オルソログ同定プログラムSonicParanoid、ロングリード向けアラインメントツールminialign(以上、東大)は今後の活用が予想される。高度化等の成果として48報の論文発表がなされた。
著者
竹之内 隆夫 高橋 克巳 菊池 浩明
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.872-873, 2018-09-15

データを秘匿したまま処理できる秘密計算技術の性能が近年向上し,実用化への期待が高まりつつある.特に,秘密計算を用いて,異なる組織のデータを秘匿しながら結合・分析することで,組織間での安全なデータ利活用が促進されることが期待されている.しかし,秘密計算にはさまざまな方式や利用形態が存在することから,一般の技術者からの理解が十分とは言いがたいのが現状である.本特集では,秘密計算の基本的な解説を行いつつ,さまざまな方式や利用形態を紹介する.また,技術の説明だけでなく,秘密計算の実用化への取り組みや,実用化に必要な制度や運用面での現状の課題や期待について説明する.
著者
金澤 しほり 中村 嘉隆 稲村 浩 高橋 修
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2016論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, no.2, pp.777-783, 2016-10-04

近年,Drive-by download 攻撃やフィッシングなど Web サイトを介したサイバー攻撃が急増しており,ユーザの個人情報等が不正に取得され,経済的被害を受ける事件が増加している.このような被害を防ぐために,ユーザが不正 Web サイトを閲覧する前に,Web ブラウザやセキュリティソフト側で警告を促す対策を講じている.本稿では,未知の不正 Web サイトの判別を行うために,IP アドレスクラスのネットワークアドレス部の特徴を分析し,交差検定によって評価した.IP アドレスクラス A と B では,高精度の結果が得られたことから,ネットワークアドレス部を用いた判別は,有効であることが確認できた.
著者
中川 将吾 六崎 裕高 鎌田 浩史 俣木 優輝 遠藤 悠介 松田 真由美 高橋 一史 岩崎 信明 山崎 正志
出版者
南江堂
雑誌
別冊整形外科 (ISSN:02871645)
巻号頁・発行日
vol.1, no.75, pp.245-248, 2019-04-25

は じ め に 外骨格型の動作支援ロボットであるロボットスーツHybrid Assistive Limb(HAL;Cyberdyne社)を使用した機能回復訓練が脳卒中,脊髄損傷,変形性関節症といったさまざまな運動機能障害患者に対して導入され,その良好な結果が報告されている1~3).HALは関節運動の補助を行うとともに,補助された運動の変化を感覚系が中枢神経にフィードバックし,HAL取りはずし後にもその効果が継続するのではないかと考えられており,interactive bio-feedback仮説と呼ばれ,麻痺症状を呈するさまざまな疾患に対しての効果が期待できる4). HALは,脳性麻痺患者に対しても自立歩行を可能にすると報告されている5).脳性麻痺はさまざまな病型があるが,痙縮型に代表されるように,筋出力のインバランスを伴っている.重症度の分類であるgross motor function classification system(GMFCS)(表1)6)のレベルⅠからⅤに進むに従って重症化し,筋出力のインバランスも強くなってくる.GMFCSレベルⅢやレベルⅣの症例は,歩行訓練を行い,筋出力のインバランスを調整することで歩行能力を維持し,変形を予防し,介助量を減少させることが可能である. われわれのグループでは,運動機能障害を有する脳性麻痺患者に,HALを使用した歩行訓練を外来レベルで単回,また入院して集中的に行っている.本稿では脳性麻痺患者に対してのHALを使用した歩行トレーニング方法と,使用後の効果について報告した.
著者
高橋 陽一
出版者
東洋大学PPP研究センター
雑誌
東洋大学PPP研究センター紀要 (ISSN:21895457)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-53, 2019-03

1999年のPFI法施行から約20年が経過し、期間満了となるPFI事業が増え始めている。内閣府 PFI推進委員会は「手法の有効性・必要性について、管理者等(主に地方公共団体)や住民間での共有が不十分」と指摘しているが、現状を見ると事業が生み出した「成果」に関する情報開示は不足しており、アカウンタビリティが全般的に低い状況にあると言える。本論では、PPP/PFI事業における上述の課題を解決するため、成果志向の評価手法である「プログラム評価」に着目し、国内外の先進事例の分析をもとに、その適用可能性と課題を検証する。
著者
北川 純一 高辻 華子 高橋 功次朗 真貝 富夫
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.143-149, 2013

「おいしさ」にとって重要な要素である「のどごし」の形成には、咽頭・喉頭領域の感覚が深く関与していると考えられる。しかしながら、咽頭・喉頭領域の感覚についての研究報告はあまり多くない。本稿では、これまでの研究によって明らかにされた咽頭および喉頭領域を支配する神経(舌咽神経咽頭枝と上喉頭神経)の味覚応答特性ついて紹介するとともに、近年、盛んに研究されているTRPチャネルファミリーとのどごし感覚の関連性を検討する。さらに、健康的な生活を過ごすために大切な摂食(嚥下)機能に対する咽頭・喉頭領域からの求心性情報の役割について考察する。
著者
土井 信幸 秋山 滋男 矢野 健太郎 高橋 恵美利 小見 暁子 井戸田 陽子 荻原 琢男
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.9, pp.651-658, 2016-09-10 (Released:2017-09-10)
参考文献数
17
被引用文献数
2

Many generic products of latanoprost ophthalmic solution are commercially available. For pharmacists' guidance, patients often ask questions, such as the total number of drops to be used per bottle. However, materials, including package inserts, that can be obtained from pharmaceutical companies do not provide such information, such as the total number of drops, the volume of a drop, or sense of use regarding each preparation. In this study, we compared the total number of drops, the weight of a drop, squeezing force, and sense of use using brand-name and generic products of latanoprost ophthalmic solution to establish selection criteria.The weight of a drop exceeded 25 mg in all products, but there were significant differences among the products. In generic products, the total number of drops per bottle was lower than in the brand-name product (112.6 ± 0.9 drops), showing significant differences (10 to 20 drops). The squeezing force required for dripping differed among the products (1.5 to 5-fold). The sense-of-use score regarding the rigidity of an eye drop container reduced with the increase in the squeezing force, showing a negative correlation. The utilization of this information may improve glaucoma patients' adherence and/or reduce costs, providing beneficial information for adopting pharmaceutical preparations in medical institutions.
著者
高橋 正和
出版者
日経BP社
雑誌
日経Linux (ISSN:13450182)
巻号頁・発行日
vol.12, no.7, pp.79-88, 2010-07

Part1で"総合1位"となったのが「Ubuntu 10.04」だ。6番勝負で二冠を穫り、かつ唯一すべての項目で3位以内に入った。デスクトップ用途で人気だが、サーバー用途や組み込み機器用でも幅広く受け入れられている。その実力を、「高速起動」「ユーザビリティの向上」「アプリケーションの刷新」という3つの観点で明らかにする。