著者
石田 直也 二階堂 泰隆 浦上 英之 黒田 健司 冨岡 正雄 佐浦 隆一
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.753-757, 2021 (Released:2021-10-20)
参考文献数
30

〔目的〕異なる速度条件での歩行分析から歩行障害の原因を推測し,前庭リハビリテーションを行った結果を報告する.〔対象と方法〕対象は54歳男性の多系統萎縮症(MSA-C)患者である.異なる速度条件(至適・高速・低速)で歩行分析を行ったところ,低速度条件で歩行変動が増大したため,小脳片葉小節葉の病変による平衡機能障害が歩行障害の原因と判断し,前庭リハビリテーションを9日間実施した.〔結果〕重心動揺検査とFunctional Gait Assessmentの成績が向上し,治療前に観察された低速歩行時の歩行変動が減少した.〔結語〕MSA-C患者に対して歩行変動の速度依存性に着目し,前庭リハビリテーションを行うことで歩行不安定性の改善につながった.
著者
黒田 健成 宮川 雅巳 田中 研太郎
出版者
Japanese Society of Applied Statistics
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.79-91, 2006-12-30 (Released:2009-06-12)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

変数間の因果関係が因果ダイアグラムと構造方程式モデルで表現される状況で,ダイアグラムの矢線へ介入する行為を考え,その効果を定式化する.この定式化は条件付き介入の枠組みにおいて記述される.矢線への介入効果に対する識別可能条件についても考察した。線形構造方程式モデルのもとで,興味ある特性変数の分散が,これへの有向道上の矢線を介入することで,どのように変化するかを具体的に求めた.矢線への介入は,直接介入しにくい変数である中間特性を制御するうえで有用である.適用例を通して,これらの定式化の有用性を主張した.
著者
青柳 信好 黒田 卓 大石 建三 佐野 寿哉 連 利隆
出版者
Japanese Society of Oral and Maxillofacial Surgeons
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.481-485, 2007-08-20 (Released:2011-04-22)
参考文献数
13
被引用文献数
1

We report a case of serious injury to the oral mucosa resulting from the ingestion of a chemical agent.The severity of chemical injury to tissue depends on several factors, including the amount of agent involved, theduration of exposure, and the location of the affected site. It is important to immediately identify the cause ofchemical burns and to administer treatment quickly as damage will continue even after the chemical agent hasbeen removed.A 32-year-old man with schizophrenia swallowed sodium hydroxide in an attempt to commit suicide and wasbrought to our emergency room. An oral examination showed bilateral erosion of the buccal mucosa, soft palate, tongue, and lips. A tracheotomy was performed because of airway stenosis. The patient was instructed to garglewith azulene sodium sulfonate and to apply ointment on his lips. After 2 weeks, his condition improved and he wasdischarged from the hospital. Scar revision and skin grafting were performed as the patient was unable to movehis tongue for 5 months because of scar contracture of the sublingual region.
著者
菊地俊文 片山行雄 黒田泰弘 今本啓一
雑誌
コンクリート工学年次大会2023(九州)
巻号頁・発行日
2023-06-16

普通コンクリートでは,適切な対策を講じることで,受入れ時のコンクリート温度の上限値を35℃から38℃に変更することが認められているが,マスコンクリートは対象外とされている。本論文では,各種ポルトランドセメントを用いた同じ強度レベルのコンクリートを対象に,練上がり温度を20℃および40℃とした室内実験,受入れ時の温度を35℃超とした実機実験を行い,フレッシュ性状の経時変化,凝結硬化,自己収縮,温度履歴,圧縮強度(簡易断熱・模擬部材含む)を測定した。また,マスコンクリートの温度ひび割れ危険度を解析的に評価し,受入れ時35℃を超えるマスコンクリートの適用可能性について言及した。
著者
黒田 泰弘
出版者
一般社団法人 日本外科感染症学会
雑誌
日本外科感染症学会雑誌 (ISSN:13495755)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3-4, pp.368-376, 2022-08-15 (Released:2022-08-15)
参考文献数
72

敗血症における脳障害は,1.狭義の敗血症関連脳障害(sepsis-associated acute brain dysfunction:以下,SABD),2.広義のSABD,3.敗血症に合併した新たな脳神経疾患,に分けられる。狭義のSABDは炎症性メディエーターによる脳への直接的影響により生ずる。一方,広義のSABDは敗血症による脳以外の臓器障害または薬剤などによって間接的に引き起こされる。SABDは,敗血症関連臓器障害のうちで最も頻度が高く,敗血症患者の最大70%が罹患し,他の臓器が侵される前に発症することが多い。SABDは症状が非特異的であり,病歴も加味した除外診断が重要である。1は敗血症の治療が中心となるが,2および3は治療の追加や治療内容の早期変更が必要な場合がある。
著者
黒田 友紀
出版者
アメリカ教育学会
雑誌
アメリカ教育学会紀要 (ISSN:13406043)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.15-27, 2016-10-20 (Released:2023-01-30)

The purpose of this paper is to examine the transformation of desegregation/integration plans from "color-conscious" to "color-blind" in the United States.Current issues of equality in education are growing more and more complicated. Progress was made by Brown v. Board of Education in 1954, the Civil Rights Act in 1964, and the Elementary and Secondary Education Act(ESEA)in 1965, expanding equal opportunities in education for people of color, particularly black children. However, trends in population and racial/ethnic components continue to change, and some cities have seen increases in the Hispanic/Latino population in recent years.Furthermore, color-blind ideology has spread in the United States. Because color-blind ideology is seen by some as an ideal, seeming to indicate equal treatment of all people, both right and left use the term. However, we should be careful in our dealings with this concept, as "color- blindness" has potential to hide and exacerbate inequality.With respect to desegregation/integration, white students filed a lawsuit against the affirmative action admissions program in universities, claiming it to be "reverse discrimination" against white people. They requested equal opportunity for all, referring to the equal protection clause of the Fourteenth Amendment. Some Supreme Court decisions concerning desegregation plans have additionally affected and narrowed the scope of desegregation/integration. In elementary and secondary public education, Parents Involved in Community Schools v. Seattle School District No.1; Meredith and McDonald v. Jefferson County Board of Education et al., U.S. 127 S. Ct. 2738(PICS)had a huge impact on desegregation/integration plans in United States public schools, specifically outlawing any desegregation/integration plan giving priority mainly based on race. The U.S. Department of Justice and Department of Education illustrated and suggested guidelines on voluntary use of race—that is, a race-neutral strategy for achieving diversity. For instance, Cambridge’s controlled choice plan had been recognized since the 1980s as one of the better integration plans based on race and other factors; from 2002 on, factors including socio-economic status, race, and gender were used in controlled choice. However, this plan was revised in 2013, as the use of race as a criterion was forbidden.Color-blind or race-neutral educational policy has become widespread in pursuit of equality for all children. However, this strategy could in fact support rights for white people rather than people of color. We should thus examine the real situation of all children, and scrutinize whether inequality and(re)segregation has in fact grown worse than before.
著者
黒田 治之 千葉 和彦
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.544-552, 2002-07-15
被引用文献数
5 4

主幹形の11年生M.26台木利用'スターキング・デリシャス'リンゴ樹を供試し, 栽植密度が生産構造と光環境に及ぼす影響について検討した.1. 453&acd;623樹・ha^<-1>区における低密度域の個体群は, 円錐形をした樹の集まりで, 樹冠層は凹凸状態であった.しかし, 栽植密度の増加に伴って樹冠のうっ閉が進むと, 樹は円筒形に変化し, 樹冠が完全にうっ閉した高密度域では, あたかも一つの個体のような形態を示した.2. 623樹・ha^<-1>区の生産構造は針葉樹型であったが, 栽植密度の増加に伴って広葉樹型に移行した.3. 生産構造の果実重と葉重は, 対応した分布を示した.果実生産量は623樹・ha^<-1>区が最も高く, 針葉樹型生産構造が高い果実生産性を有することが示された.4. 果実生産量(Yd)と葉の果実生産能率(Yd/F)の関係は, 式(1)のYd=1.348+3.109(Yd/F)で表され, 針葉樹型生産構造の高い果実生産性が葉の高い果実生産能率に依存していることが示された.5. 吸光係数(K)は栽植密度の増加に伴って低下した.すなわち, 果実生産はKの低下に伴って減少し, Kに対して物質生産と相反した関係にあることが示された.6. 果実生産量(Yd)と光捕捉率(LI)の関係は, 定義域69.9%≦LI≦92.2%を条件として, 式(2)のYd=-150.42+4.175(LI)-0.0273(LI)^2で近似できた.果実生産量が最大になる最適光捕捉率(LI_<opt>)は76.5%であった.7. LI_<opt>における栽植密度とLAIは, それぞれ既報(黒田・千葉, 1999)の最適栽植密度と最適LAIに一致した.8. LI_<opt>における個体群構造の特性は, 個体群内の空間, 樹冠層の凹凸および針葉樹型生産構造であった.9. 式(1)と(2)から導いた葉の果実生産能率(Yd/F)と光捕捉率(LI)の関係式, Yd/F=48.816+1.343(LI)-0.009(LI)^2は, 定義域69.9%≦LI≦92.2%を条件として, 実測値とよく一致し, 葉の果実生産能率が光捕捉率に依存していることが示された.以上の結果から, 果実生産性の高いわい性台木利用リンゴ園はLI_<opt>を示すLAIを維持することにより構築できることが示唆された.このような園は針葉樹型生産構造であるため, 光の利用効率が高く, 結果として葉の果実生産能率が高まって, 果実生産性が高まるものと考えられる.
著者
福井 昌則 石川 岳史 黒田 昌克 掛川 淳一 森山 潤
出版者
日本情報科教育学会
雑誌
日本情報科教育学会誌 (ISSN:21890668)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.31-41, 2019 (Released:2021-02-01)
参考文献数
23

本研究の目的は,高校生のプログラミングに対する様々な意識と創造的態度との関連性について明らかにすることである.プログラミング教育では,プログラミングに対する様々な意識と創造性を高めることが重要であると指摘されているが,それらの項目における性差やそれらの関連性については明らかにされていない.そこで本研究ではこれらを明らかにするために,公立高等学校3校の1年生226名を対象に調査を実施した.その結果,創造的態度の柔軟性・分析性・進取性の因子が高い生徒は,プログラミングに対する様々な意識の各項目の平均値が有意に高く,これらの間に正の相関が認められた.またこの傾向には性差が見られ,創造的態度およびプログラミングに対する様々な意識全項目において,男子の平均値は女子よりも有意に高かった.よって,性別による意識の違いを踏まえ,柔軟性・分析性・進取性を高めるような実践構築の重要性が示唆された.
著者
真野 隆司 杉浦 俊彦 森口 卓哉 黒田 治之
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.573-579, 2011 (Released:2011-11-19)
参考文献数
23

イチジク‘桝井ドーフィン’に対する環状剥皮が凍害の発生に及ぼす影響を検討した.露地圃場の挿し木個体は萌芽期の凍害を受けたが,前年の秋季に環状剥皮処理を行った挿し穂を用いると,萌芽が遅くなり凍害が軽減された.また,ポットの挿し木個体について,萌芽期に低温処理を行った結果,−3℃以下で枯死する芽が発生した.しかし,前年の秋季に環状剥皮を施し,かつ,より下位節から採取した挿し穂の方が糖やデンプン含量が高く,遅く萌芽して芽の枯死が少なかった.さらに,露地圃場に定植した幼木についても,秋季に環状剥皮を行った枝の糖とデンプン含量が高く,厳寒期の凍害が少なかった.以上より,イチジク‘桝井ドーフィン’に対する環状剥皮処理は,休眠枝の貯蔵養分を高め,その生育ステージが遅延することによって,萌芽期や厳寒期の凍害を軽減する効果があると考えられた.
著者
飯嶋 寿江 加瀬 正人 相良 匡昭 加藤 嘉奈子 清水 昌紀 西田 舞 友常 孝則 田中 精一 青木 千枝 城島 輝雄 鈴木 國弘 黒田 久元 麻生 好正
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.707-714, 2015-09-30 (Released:2015-09-30)
参考文献数
30
被引用文献数
1

症例は70歳,女性.1型糖尿病,うつ病にて加療中,自殺企図のためインスリンデグルデク300単位,インスリンリスプロ300単位を皮下注射し,注射3時間後に意識障害で家族に発見され,当院救急外来に搬送となり,入院となる.簡易血糖測定では,測定感度以下(30 mg/dl未満)を示し,血清インスリン値は2972.1 μU/mlと極めて高値を示した.直ちに,ブドウ糖の静脈投与を開始した.低血糖は大量注射30時間後を最後に認めなかったものの,大量投与36時間後の血清インスリン値は1327.0 μU/mlと依然として高く,低血糖の予防のため,第6病日まで経静脈的ブドウ糖投与を継続した.本症例の経過より,インスリンデグルデクの大量投与症例では他のインスリン製剤以上に長時間にわたる注意深い観察と対応が必要であると思われた.インスリンデグルデク大量投与による遷延性低血糖の症例は極めて稀であり,文献的考察を加え報告する.
著者
黒田 有寿茂 中濵 直之 早坂 大亮 玉置 雅紀 花井 隆晃
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.2214, (Released:2023-04-30)
参考文献数
60

スパルティナ・アルテルニフロラ(Spartina alterniflora Loisel.)は北アメリカの大西洋岸およびメキシコ湾岸原産の干潟や河口の塩性湿地に生育するイネ科多年生草本である。本種は干潟の陸地化や沿岸域の保護を目的とした意図的な導入、また非意図的な移入・逸出によって世界各地に分布を広げており、定着地に大規模な密生群落を形成することで在来の生態系や産業に大きな影響を及ぼしている。日本国内において、本種は 2008 年に愛知県豊橋市の梅田川河口で初めて確認され、その後 2010 年に熊本県で確認された。スパルティナ・アルテルニフロラのもつ干潟生態系への脅威から、2014 年には本種を含むスパルティナ属全種が特定外来生物に指定された。本稿ではスパルティナ・アルテルニフロラの形態的・生態的な特徴と、2020 年に山口県下関市で新たに確認された本種の侵入状況ならびに駆除の現状についてとりまとめた。
著者
黒田 乃生 小野 良平
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.38.3, pp.679-684, 2003-10-25 (Released:2017-10-01)
参考文献数
25
被引用文献数
1

観光地の成立過程において、潜在的な資源が記号化され、「観光の対象」として意味を付与されるためには、観光経済の発展における内的・外的作用が必要である。この記号化の作用は「観光計画」の重要な一面であるといえる。一般および村が白川村を「観光地」として認識したのは1970年代である。一方、認識される観光資源が史跡から合掌造りの建物へと変化する時期は一般にくらべて村が遅く、白川村が当初一般社会からの認識に呼応する形で資源の認識が進んだことが明らかである。その後、村は内的作用によって資源を新たに作り出していったものの、それが来訪者から消費対象として認識される記号となるには至らなかった。観光とは地域にとってそこに投影される「まなざし」の中でどのような自己認識を行なうのかという相互関係の中にあり続けること、という視点が計画の立場にも必要である。
著者
和田 洋六 清水 健 黒田 康弘 樋口 昌史
出版者
一般社団法人 表面技術協会
雑誌
表面技術 (ISSN:09151869)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.111-117, 2016-02-01 (Released:2017-02-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

Wastewater containing tetrafluoroboric acid-hexavalent chromium was decomposed to fluorine (HF) and boron (H3BO3) in acidic conditions using excess aluminum sulfate at normal temperature. In subsequent processing, boron was separated by coagulation-sedimentation using ettringite and calcium hydroxide in highly alkaline conditions. This processing reduced the boron concentration to 10 mg dm-3 or less in the effluent standard. The ettringite used in this experiment was prepared using aluminum sulfate and calcium hydroxide. Alkaline filtered water containing aluminum ion and calcium ion was pH-adjusted to 6.5-7.0 for fluoride removal. This continuous process produced fluorine concentrations of 8 mg dm-3 or less in the effluent standard. Based on these experiments, we devised a practical advanced wastewater treatment system including processing of tetrafluoroboric acid using ettringite. The contents of this paper will contribute to solving treatment problems for metal surface treatment wastewater containing fluorine and boron, also help in the treatment of other industrial wastewater.
著者
山下 優毅 黒田 悦史
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

悪性グリオーマは中枢神経系に原発する悪性の腫瘍で種々の治療法が試みられているが、予後不良のまま残されている。患者においてはグリオーマに対して免疫反応が誘導されるという報告はあるものの、免疫療法のみでグリオーマを治療するのは困難である。グリオーマに対して免疫療法が成功しない原因として、担癌生体では免疫反応が抑制されているためと考えられている。したがって、担癌生体における免疫抑制機構を解明し、免疫抑制状態を改善することにより、有効な抗グリオーマ効果が期待される。我々はグリオーマに対する免疫反応の機構を解析している際にグリオーマとマクロファージを共培養すると、マクロファージから大量のPGが産生されることを見出した。さらに、このマクロファージでは腫瘍免疫に重要なIL-12,TNF等のサイトカイン産生が低下していることから、グリオーマがマクロファージに作用して、PG産生を誘導し、免疫抑制状態を引起こすという仮説を提唱した。今回、中枢神経系のマクロファージとしてのミクログリアを用いて、免疫反応におけるミクログリアの役割と担癌状態における免疫抑制機構を解析し、次の点を明らかにした。(1)マウス脳内より分離したミクログリアをグリオーマと共培養することにより、ミクログリアが大量のPGを産生した。一方、TNFの産生は抑制された。(2)PG合成酵素をKOしたマウス由来のミクログリアはPGを産生しなく、TNF産生も抑制されなかった。(3)PG合成酵素をKOしたマウスでは腫瘍の増殖も抑制され、有効な免疫反応が誘導された。以上より、ミクログリア由来のPGが免疫反応を抑制すること、またPG産生をコントロールすることにより、腫瘍に対する宿主の抵抗性を誘導できる可能性が明らかにされた。
著者
三木 恒治 前田 修 細木 茂 木内 利明 黒田 昌男 宇佐美 道之 古武 敏彦
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.83, no.11, pp.1789-1794, 1992-11-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
23
被引用文献数
2 2

大阪府立成人病センター泌尿器科における stage I 精巣セミノーマの治療成績を検討し, 予防的放射線療法を行わない surveillance の適応について考察した. 1962年から1990年末迄に当科において治療を行った stage I 精巣セミノーマ50例を対象とし, その再発率, 再発部位, 予後などを検討した. 27例は予防的放射線療法を行い (RT群), 1986年以後の23例は予防的放射線療法を行わない surveillance のみとした (S群). RT群では1例 (3.6%) に除睾術後3ヵ月で肺に再発を認め死亡したが, 26例は全例再発なく生存している. 予防的放射線療法による副作用は, 照射時の一時的な食思不振のほかは認めなかった. 一方S群では2例 (8.7%) に除睾術後4ヵ月, 7ヵ月で後腹膜リンパ節に再発を認めたが, 2例とも化学療法にて完治した. 残りの21例は全例再発なく生存している (観察期間14~70ヵ月). 以上より再発率についてはRT群が低く, 肺のみの再発であり, 再発の検索は比較的容易である. しかし, シスプラチンを用いた有効な化学療法により, 予後について両者に差はなく, 十分な再発の検索が可能ならば, 今後 stage I 精巣セミノーマに対する surveillance 法は適応可能といえよう.
著者
行岡 秀和 田勢 長一郎 黒田 泰弘 谷川 攻一 村川 德昭 中川 隆
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.85-89, 2016-08-01 (Released:2016-08-23)
参考文献数
8

心肺蘇生(CPR)の合併症の部位や頻度に関する検討はほとんど行われていない。日本蘇生学会医師会員923名に対して,CPR実施数(指導数を含む),合併症の部位・頻度,防止策などについてアンケート調査を実施した(回答率46%)。回答者は,40歳以上が84%,男性が84%で,ほとんどが麻酔科,救急科の専門医であった。CPR実施数は,20回以下26%,21~100回33%,101回以上41%で,85%が合併症を経験しており,肋骨骨折,気胸・血胸,胸骨骨折,皮下気腫・縦隔気腫,胃内容逆流,誤嚥性肺炎,肺損傷,肝損傷の順であった。合併症防止の注意点としては,胸骨圧迫の部位,強さ,気管挿管の手技が多かった。心停止において迅速なCPRが予後を改善することは明白だが,今回の調査で,合併症は熟練した医師でも発生することがわかった。合併症を最小にするCPR法や予後に及ぼす影響を検討する必要がある。