著者
橋本 力 鳥澤健太郎 黒田 航 デサーガステイン 村田 真樹 風間 淳一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.293-307, 2011-01-15

テキスト間含意関係認識と呼ばれる技術は,深い自然言語理解を必要とするタスクにおいて重要な役割を果たす.この技術が実用レベルに至るには,大規模な含意知識ベースの構築が不可欠である.本稿では,動詞間含意関係知識の大規模な獲得を目的として,条件付き確率に基づく方向付き類似度尺度を提案する.提案手法の評価実験では,WWW上の日本語1億文書から得られた52,562動詞(異なり)を対象とした.この動詞セットには,日常的に使用される動詞も特定の専門的な領域でのみ用いられるような動詞も区別せず含まれている.提案手法と先行研究の手法それぞれのスコア上位20,000位までの出力からランダムに選ばれた200サンプルを人手評価したところ,比較対象のすべての先行研究の手法の精度を提案手法の精度が上回ることを確認した.また,提案手法のスコア上位100,000の出力を人手評価したところ,大規模動詞含意知識ベースを構築する出発点としてリーズナブルな精度が得られていることを実験により確認した.Textual entailment recognition plays a fundamental role in tasks that require in-depth natural language understanding. For entailment recognition technologies to serve for real-world applications, a large-scale entailment knowledge base is indispensable. This paper proposes a conditional probability based directional similarity measure to acquire verb entailment pairs on a large scale. We targeted 52,562 verb types that derived from 108 Japanese Web documents, regardless whether they were used in daily life or only in specific domains. Evaluating 200 samples that were chosen randomly from the top 20,000 verb entailment pairs acquired by previous methods and ours, we found that our similarity measure outperformed the previous ones. For the top 100,000 results, our method worked well too.
著者
黒田 彰 坪井 直子 筒井 大祐
出版者
佛教大学
雑誌
文学部論集 (ISSN:09189416)
巻号頁・発行日
vol.96, pp.1-18, 2012-03-01

八幡縁起は古代、中世に流行した八幡信仰を背景とする縁起絵巻で、北野縁起などと共に我が国の社寺縁起を代表する絵巻の一である。小稿では従来、甲乙類に分類される八幡縁起絵巻の乙類に属すると見られる新出資料、愛知県刈谷市の榊原家の所蔵に掛る、八幡の本地二巻をカラー影印、翻刻により紹介する。本号に収録するのは、その下巻で、本誌前号(95号)収録の上巻に続くものである。榊原本の書誌的事項や翻刻の方針などについては、前号の略解題を参照されたい。なお『京都語文』18号(平成23年11月)には、同じ八幡縁起絵巻甲類の新出資料、鰐鳴八幡宮本八幡大菩薩御縁起(上下巻)を紹介したので、併せての参照を乞う。
著者
稲田 尚子 黒田 美保 小山 智典 宇野 洋太 井口 英子 神尾 陽子
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.123-133, 2012

反復的行動尺度修正版(Repetitive Behavior Scale-Revised: RBS-R)は,自閉症スペクトラム障害(ASD)児者の反復的行動の種類の多さとその問題の程度を評価する尺度であり,6下位尺度43項目から成る。本研究は,日本語版反復的行動尺度(RBS-R)の信頼性と妥当性の検討を目的として行われた。対象者は,ASD群53名(男性:女性=42:11;平均年齢=11.2±10.5歳)と,対照群40名(知的障害児者23名,定型発達児者17名)とした。養育者の報告に基づき,専門家が日本語版RBS-Rを評価した。Cronbachのα係数は0.91であり,良好な内部一貫信頼性を示した。各43項目における評定者間一致度(級内相関係数)は0.79から1.00の範囲であり,評定者間信頼性は高かった。日本語版RBS-Rの該当項目数および合計得点はいずれもASD群で対照群よりも有意に高く,十分な弁別的妥当性を示した。また,合計得点は,小児自閉症評価尺度東京版に含まれる反復的行動に関連する3項目の合計得点と有意な正の相関(r=0.65)があり,併存的妥当性が確認された。今後,さらなる検討が必要であるが,日本語版RBS-Rの信頼院と妥当性が示された。
著者
野中 壽晴 渡邊 章亙 迫田 幸雄 黒田 宏治
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.85-97, 2003

本学の教育基本理念であるユニバーサルデザインは、デザイン学部の共通必須科目として位置付けられている。そのユニバーサルデザインについての様々な情報を各方面から継続的に収集し、体系的に集約して情報発信することで、ユニバーサルデザインの研究拠点としての基礎を確立しなければならない。これまで、わが国が福祉のモデルとしてきたのは北欧諸国であり、そのデザイン思想もヨーロッパ型になると考えられてきた。しかし、今日の日本におけるこの分野におけるデザイン理念は、アメリ力型の「ユニバーサルデザイン」が普及進行中である。かねてよりヨーロッパにおける「Design for All」う言葉と、アメリ力発の「Universal Design」にどのような違いがあるのか、その違いがあるとしたらそれをどう捉えたらよいのか気になっていた。今回の視察は、福祉先進国北欧2国 (デンマーク・スウエーデン) を訪問し、それらを肌で感じ、自分の目で実態を見て見極めようと言うことがねらいであった。
著者
飯塚 浩二郎 水上 憲明 大槻 真嗣 國井 康晴 黒田 洋司 久保田 孝
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp."2A2-M07(1)"-"2A2-M07(4)", 2007-05-11

Lunar rovers are required to move on rough terrain such as in craters and rear cliffs where it is scientifically very important to explore. Wheel typed rovers are popular for planetary exploration missions. However, there is a problem that the wheel typed rovers have possibility of stack. Therefore, this paper investigates a mechanism of kinetic behavior between the wheels of the exploration rovers and soil. This study especially focuses on influence on mobility of lugs. The fin called lug needs for running on soften surface like soil. However, there are few studies about the effect of lugs. Therefore, in this study, running experiments on simulant are carried out to observe the traversability of the wheel with lugs using slip ratio and electrical current.
著者
黒田 長久 米田 重玄
出版者
山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.p177-333, 1983-12
被引用文献数
1
著者
井口 靖 恒川 元行 成田 克史 黒田 廉
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

文を理解するために聞き手は出現する語彙の予測を行っていると想定する。そのひとつはある語からそれ以降の語を予測する場合で,これについてはコーパスを用いてさまざまなコロケーションを調査した。もうひとつは語彙の出現そのものの予測で,それはテキストの種類,分野などから予測できるのではないかと仮定した。そこで,分野別コーパスを構築し,その語彙頻度を大規模コーパスと比較することによりいくつかの実例を提示した。これらの結果を独和,和独辞典や教材に反映することを試みた。
著者
中村 厚士 黒田 知宏 千原 國宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.574, pp.45-50, 2000-01-20

没入型仮想環境提示装置においては, 設置場所を要求するジョイスティックや操作時に視覚的な位置と遮蔽関係との不一致が起こるデータグローブなどは使用が困難である.また, 没入型仮想空間に多く見られるような遠方の仮想物体と, 点で表現されるポインタとの奥行き関係は把握が困難である.そこで本稿は, 複数の体験者が指示棒でその延長線上にある仮想空間内の物体を指し示すことで, 物体とインタラクションできる, レーザポインタ型インタフェースを提案する.
著者
佐々木 結花 山岸 文雄 八木 毅典 山谷 英樹 黒田 文伸 庄田 英明
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.443-448, 2002-06-15
被引用文献数
3

広汎空洞型肺結核 (<I>b</I>I3) 症例を臨床的に検討した。対象は95例, 平均年齢は49.5±13.0歳であった。結核発見動機は, 有症状受診84例, 他疾患管理中10例, 他疾患受診時偶然発見1例で, 全例が喀痰塗抹陽性であった。社会背景として職業は入院時無職31例, 日雇労務者24例, 生活保護受給者25例と, 社会的弱者が多数であった。入院時病状として重症例が多数であり栄養状態は不良であった。当院入院中に死亡した症例は19例 (20.0%) で全例男性であり, 結核発見動機は全例有症状受診で, 入院から死亡までの期間 (在院日数) は35.0±39.8日と短期であった。有症状受診例84例の受診の遅れの期間は5.5±5.0カ月であり診断の遅れの期間は0.3±0.9カ月と短期間であった。<I>b</I>I3症例は発見の遅れの長期化により重症化し, 受診の遅れがその大部分を占めた。予後不良であるこの病型が生じないために発見の遅れを短期化するよう多様な予防対策の実施が望まれる。
著者
鈴木 基之 迫田 章義 藤江 幸一 花木 啓祐 黒田 正和 梶内 俊夫 岡田 光正
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

本研究は、使用水のリサイクル推進が、異なる局面で招く恐れのある処理設備および資源・エネルギー消費の増大を定量的に解析し、トータルな環境負荷を増大させない効率的な水再利用プロセス像を明らかにするとともに、そのための今後の技術開発の方向に関して提言を行うことを目的としている。水多消費型の主要産業に対してその排水量・排水性状、現状処理方法、処理水質、リサイクル状況およびエネルギー消費などについて調査を実施した。この調査結果に基づいて、排水および処理水の水質、処理方法と所要エネルギーの関係を示し、エネルギー消費の観点から今後のCOD削減、すなわち処理水質向上目標の設定および処理プロセスの選択のための指針を提案した。生活・事務系排水の循環利用状況の調査結果をもとに、各排水処理システムの設計条件と製造コストを検討し、水の処理レベルと再生水の用途、単位操作の組み合わせ方法とエネルギー消費との関係を解析した。中水道用の水処理プロセスに対して二酸化炭素排出量を指標にライフサイクルアセスメントを行い、膜分離方式は設置面積が小さく、処理水質が優れているが、建設時と運用時の環境負荷が大きいことが定量的に明らかになった。雨水利用についても、ある実例についてその業績を詳細に検討し、処理コストとエネルギー消費の解析を行うとともに、大規模建築物における雨水の利用における水のバランスなどを検討した。加えて、最も広く利用されている好気性生物処理法や、今後導入が期待される生物活性炭処理法と膜分離法などについて、その処理対象物質および処理最適濃度・到達できる処理水質・所要エネルギーとコストについて定量的評価を行い、エネルギー効率を向上できる操作条件を示した。さらに、既存の窒素・リン除去技術の適用範囲、処理能力とエネルギー消費特性を明らかにし、最適な窒素・リン除去方式を選択するため基礎データが得られた。
著者
黒田 龍二
出版者
神戸大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

本研究では、社会・風俗史的な要素を多分に含む、人物彫刻を中心に調査、研究を行っている。本年度の主要な調査としては、日本で作られた中国神仙彫刻の淵源と推定される中国古建築の実地調査を行った。調査地は中国で最も古い木造建築物が残っている山西省で、8世紀の南禅寺大殿にはじり、12世紀頃までの比較的古い建築物を踏査した。これらの古い建築物においては、建築彫刻は植物、動物にとどまり、のちの状況からすると未発達で、人物彫刻は見られなかった。このことから、人物彫刻の発生は、中国においても13世紀以降になると推定される。もた、比較的新しい伝統的建築物も何棟か見たが、山西省では人物彫刻は少ないと推定される。文献資料では中国南東部の古建築に人物彫刻が多くみられ、地域的には南東部で発生しているものと推定される。しかし、日本で見るような単独形態のものはもだ発見していない。17世紀に日本で建てられた中国建築である長崎の崇福寺の建築でも、建築彫刻は精緻であるが、それほど多くはなく、人物彫刻も無い。明治に入って建てられた興福寺大雄宝殿では豊富な彫刻がみられ、人物彫刻もある。このようなことから、中国建築に関してはまったく不十分な調査であるが、先年度に調査した16世紀の土佐神社に見られるような神仙彫刻は日本で独自に考案された可能性があるのではないだろうか。以上のような見通しを得ることができたので、今後、日本の桃山建築にみられる爆発的な彫刻の発生の要因が、中国であるのか、日本であるのかをその主題や使用部位をみながら考究する視座を得ることができた。社会・風俗史的な背景を明らかにすることは困難であったが、人物彫刻の扱いは中国と日本では異なる部分があると推定され、その要因がどのようなものであるのを今後の課題とする。
著者
黒田 輝 今井 裕
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

乳がんの集束超音波治療の安全性・有効性を改善するためMRI(Magnetic Resonance Imaging)による脂肪組織の非侵襲温度分布画像化の開発ならびに検証実験を行なった.動物脂肪由来のメチレン基及びメチル基プロトンのT_1は室温. 60℃の温度範囲で1.7.1.8[%/℃]及び3.0[%/℃]の線形な温度依存性を呈することを明らかにした.これに基づいて多フリップ角法と多点Dixon法を用いた水・脂肪組織同時温度分布画像化を可能にした.
著者
黒田 久寅 熊野 明美 岡本 幸子
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
衛生化学 (ISSN:0013273X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.165-168, 1964-09-30

The present work was undertaken to clarify the physiological mechanism of germination of conidio spore of Cochliobolus miyabeanus. With the spore obtained by wet method, rate of germinaton and regression coefficient of germination curve decreased and the synchronism of spore lowered during storage. But, with the spore obtained by dry method, this phenomena could not be recognized even after 12 weeks'storage. Neither α-picolinic acid nor its analogues were found in the spore. This spore showed a great resistance to such respiration poison as potassium cyanide and sodium azide, therefore, under the condition completely inhibiting the oxygen-uptake (concentration of KCN or NaN_3 was 10^<-3>M/L) or without oxygen the formation of germ tube was observed. Thus, it was supposed that this spore had a metabolic pathway producing energy necessary for germination under an anaerobic condition. The respiration of spore rapidly increased instantly after the beginning of cultivation and the faculty to oxidize external substrate had a tendency to increase after the formation of germ tube.
著者
黒田 展之 小林 裕一郎
出版者
関西学院大学
雑誌
法と政治 (ISSN:02880709)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.327-337, 1998-09-30
著者
黒田 有寿茂 石田 弘明 服部 保
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.159-167, 2011-11-30

水湿地に生育する絶滅危惧植物ツクシガヤ(イネ科)の保全に向け、その種子発芽特性と種子保存方法を明らかにするために数種の発芽試験を行った。段階温度法による試験の結果、本種は散布された段階では休眠状態にあり、休眠解除には2〜3週間程度の冷湿処理が必要であること、高温により二次休眠が誘導される性質をもつこと、発芽可能な温度域の下限は20℃付近にあることが示唆された。これらの結果から、本種の種子は秋季に散布された後、冬季に休眠解除され、春季に発芽していると考えられた。前処理の水分条件を変えた試験の結果、数ヶ月の冠水は種子の発芽能力に負の影響を及ぼさないこと、発芽時の水位条件を変えた試験の結果、数cmの冠水は種子の発芽を妨げないことがわかった。これらの水分・水位条件に対する性質は、頻繁に冠水する水湿地で定着するための有効な特性と考えられた。保存条件を変えた試験の結果、本種の種子の大部分は、遮光アルミパックへの抜気封入処理により、少なくとも3年は発芽能力を保持することが確認された。本種の保全に向けては、現存個体群の保護、生育立地の維持と共に、抜気封入処理による種子保存を補完的に進めていくことが有効といえる。