著者
吉本 佐雅子 鬼頭 英明 西岡 伸紀
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

49の高校(定点校)の生徒に,平成23年度(32,259名)と25年度(32,458名)の2回「高校生の喫煙,飲酒,薬物乱用の実態と生活習慣に関する全国定点追跡調査」を実施した。この2年間で薬物乱用経験者率は0.63%→0.51%に,飲酒の年経験者率は 40.0%→30.6%に,喫煙の年経験者は5.3%→3.6%と,減少していた。高校生においては「朝食摂取」,「学校生活の楽しさ」,「クラブの参加状態」,「アルバイトの週平均時間」,「大人が不在の状態で過ごす1日平均時間」,「悩みごと等を親に相談する方か」などのライフスタイルによる飲酒,喫煙の習慣化が薬物乱用に至る大きな要因として考えられた。
著者
永村 和照 池条 清隆
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究は,曲げ強度,歯面強度の伝達負荷能力がインボリュート歯車よりも優れた歯車を得ることを目的として,インボリュート・サイクロイド合成歯形,修正サイクロイド歯形といった特殊歯形はすば歯車を開発・設計し,その強度・性能を計算や実験の両面から検討を行い,つぎに示すような新たな知見等の成果を得た。1.本研究で設計・製作したホブにより特殊歯形はすば歯車の製作が可能となった。ホブの精度はJIS1級,それを用いて歯切りした試験歯車はJIS4級程度であった。 2.本研究のような特殊な歯形形状をもつはすば歯車においても成形方式の歯面研削によってJIS1級の歯形精度が得られ,歯形誤差が小さくなることによって歯車の振動性能が向上することがわかった。 3.設計された歯車の中心距離において,特殊歯形はすば歯車はインポリュートはすば歯車よりも優れた振動性能を有する。 4.特殊歯形はすば歯車は中心距離が設計値からずれた場合にかみあい状態が変化し,振動性能が変化する。特に,インボリュート・サイクロイド合成歯形はすば歯車では,中心距離が設計値よりも100μm以上狭くなると振動性能が低下する傾向があるが,その性能低下は十分に小さいものであり,はすば歯車によることによって振動性能が向上することが確認された。 5.インボリュート・サイクロイド合成歯形,修正サイクロイド歯形の2種類の特殊歯形はすば歯車のピッチング耐久限度はインボリュートはすば歯車よりも高いことが確認できた。このことから,これらの特殊歯形はすば歯車はインボリュートはすば歯車よりも歯面強度の優れた歯車であることが証明された。以上により,本研究で開発・設計した特殊歯形はすば歯車の振動性能,強度の優位性が確認され,実用に十分供することが可能と判断できる成果が得られたことを報告する。
著者
福井 厚 木谷 明 後藤 昭 白取 祐司 水谷 規男 葛野 尋之 中川孝博 豊崎 七絵 緑 大輔 石田 倫識 斎藤 司
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

3年間の研究成果は、福井厚編『未決拘禁制度の改革と展望』(日本評論社)と題して、龍谷大学矯正・保護研究センター叢書の1冊として2009年7月に公刊される予定である(既に入稿済である)。第一部が未決拘禁の実体的要件の理論的検討、第二部が未決被拘禁者の権利制限の解釈論的検討、第三部が不服申立・その他、附属資料1として外国調査の結果、附属資料IIとして施設調査の結果、付録(CD-Rom版)として、福井厚監訳「ドイツ未決勾留法対案」、という構成になっている。
著者
渡辺 修治 山野 由美子 原 正和
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

1.バラRosa damascena花弁に含まれるdamascenone香気前駆体の解明R. damascena Mill.花弁抽出物よりdamascenoneを与える前駆体2種、megastigma-6,7-dien-3,5,9-triol 9-0-β-D-glucopyranosideを単離同定した。また、それぞれの立体中心も別途不斉合成した化合物と直接比較することにより決定した。合成も含めこれらは論文発表済みである。2.茶飲料製造過程で生成するdamascenone香気前駆体の解明茶飲料製造時、滅菌過程で異臭となる化合物が生成する。これらの一部がdamascenoneであることからこの前駆体3種を単離し、それぞれの立体中心も決定した。また、それらの生成経路についても考察した(論文投稿準備中)3.C13-ノルイソプレノイド生成酵素(カロテノイド分解酵素)の解明バラ花弁、果実(スターフルーツ、クインスフルーツ)、茶葉、キンモクセイなどはdamascenoneだけでなくiononeなどのC13-ノルイソプレノイドを特徴的香気成分として生成し、発散する。これらの生合成起源と考えられるカロテノイドを基質としてカロテノイド分解酵素を探索した。その結果、上記の植物中に当該酵素の存在を明らかとし、かつ、酵素の生化学的性状、基質特異性の解明、生成物の同定に成功した。これらの研究成果のうちスターフルーツ、クインスフルーツについては論文に既発表である。
著者
上野 孝 湊 賢一 松浦 俊彦
出版者
函館工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

約300nmと1nmに粒子径を制御したイカ墨を用いる色素増感太陽電池の研究を行った。特に大きい粒子の利用について検討した。スクリーン印刷法を用いて、酸化チタンペーストにイカ墨粒子を混合したペーストを透明電極上に積層して、450℃で焼成すると白色の酸化チタン電極に変化し、イカ墨粒子が分解蒸発した。それと同時に、酸化チタン電極の表面粗さが増大した。これはイカ墨粒子が酸化チタン電極の多孔性を高める増進剤として効果があることを示唆していた。
著者
中根 允文 本田 純久 高田 浩一 三根 真理子 朝長 万左男
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

長崎市にて生活している原子爆弾被爆者(原爆被爆者手帳の保有者)はおおよそ5万人いるが、彼らについて科学的方法論に則って詳細な疫学研究は未だ行われてこなかった。われわれは、原爆投下から50年を経過してこの被爆者における精神的な負担の程度を知り、且つ精神障害の有病率を明らかにすることによって、現在彼らが如何なる精神保健支援を必要としているかを探ろうとした。対象は調査期間内に被爆者健康診断を受診してくる被爆者のうち、本研究に参加の同意が表明された者で、彼らに全般健康調査12項目版(GHQ-12)でスクリーニングを施行し、二次調査としてCIDI面接、および三次調査として精神科医による臨床面接が実施された。協力の得られた事例は7,670名(男性3,216名、女性4,454名)である。一次調査の結果として、GHQ-12における高得点者の頻度は9.3%であり、性別・年齢階層別に全く同一の頻度ではないものの有意な差を見るほどではなかった。これを被ばく距離別に見たとき、近距離被爆者(〜2km)が他の被爆距離群の者より高い平均得点を示し、また高得点者も多いことが確認された。次にこの一次調査のスコアをもとに二次調査(参加協力者は225名)・三次調査対象(同212名)が抽出されたが、彼らに見られた精神障害のうち最も頻繁に見られた診断はF4「神経症性、ストレス関連性、および身体表現性の障害」であり、中でも身体表現性障害・他の不安障害の亜型が目立った。次に多かったのはF3「気分(感情)障害」で、特にうつ病圏患者が目立って多かった。今回の多数の協力をもとに、被爆者における精神疾患の有病率を推算してみると、最低の11.59〜19.59%までの幅があった。日本においては、こうしたデータの報告が全くと言っていいほどに見られないので、同値が低率なのか高率なのかを判断できない。われわれは、一般内科外来を受診した患者について全く同じ方法論でもって調査研究を行い、20%を越える有病率であったことを報告している。それに比すと、やや高率であることが窺われる。ただ、今後も詳細な疫学研究を継続することによって、適切な解釈が可能となるであろう。更に、こうした頻度に影響する要因の解明も必要であり、今後は心理社会的背景を綿密に調査していく予定にしている。
著者
齋藤 昇 秋田 美代 跡部 紘三 村田 勝夫 佐藤 勝幸 今倉 康宏
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は,教員養成大学大学院の開発途上国への設置に向けての学術調査研究を行うことを目的としている。学術調査の結果,次のことがらが明らかになった。1 ラオスの教育大臣,教育省教員養成局長から,ラオスへの大学院修士課程設置について,国として歓迎するとの意向を受けた。また,ラオス教育副大臣から,具体的な設置場所について提案があった。さらに,設置について鳴門教育大学への協力要請があった。2 ラオスの小・中・高等学校の学校制度は,5-3-3年制である。ラオスの教員養成学校卒業生の就学総年数は,14年間である。ラオス教育省は,中学校を4年制に改革する計画を立てている。3 ラオスの教員養成学校(8校)理数科教員の学力及び授業実践力は,かなり乏しい。ラオスの理数科教育の質を高めるためには,教員養成学校教員の質の向上が必要である。4 ラオスの教員養成学校の施設・設備,特に実験装置,実験器具・薬品類は,皆無に近い。大学院修士課程を設置する際には,それらの設備の充実が必要である。必要な設備の例を列挙した。5 ラオスの教員養成学校教員の学位取得状況は,修士が16%で,博士が0%である。また,教員養成学校教員の100%が修士課程の設置を希望している。6 ラオスの教員養成学校及びラオス国立大学教育学部のカリキュラムを調査し,それをもとにラオスに適する大学院修士課程理数科コースのカリキュラム案及び履修方法案を作成した。7 大学院修士課程のラオスへの設置に際して,タイのコンケン大学から連携協力の申し出があった。それに基づき,連携した場合のカリキュラム素案を作成した。
著者
中川 敦子 鋤柄 増根 水野 里恵 古賀 一男
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

自分の順番が来るまで待つというような自己を制御する力は、3歳以降おもに認められるが、本研究では、それ以前の子どもの注意力や、内気・臆病・引っ込み思案といった傾向、環境(育児文化)などが影響を及ぼすと考え、月齢12ヶ月から36ヶ月にかけて縦断研究を行った。その結果、月齢36ヶ月時の自己制御行動には月齢18ヶ月時の内気・臆病といった傾向が関連すること、発達初期の注意機能は負の情動と関わることが示唆された。
著者
本郷 敏雄 日景 盛 安増 茂樹 喜多 和子 春宮 覚
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

「唾液に浸漬した歯科用有機材料硬化体由来の化学物質を同定・定量する簡便な一斉分析法を開発」では唾液浸漬による歯科用有機材料からの溶出物の同定、代謝物の同定をHPLCで高感度に定量できる簡便な一斉分析法を開発した。その結果から、ポリカーボネート製矯正用ブラケットからは口腔内では微量ながらビスフェノールA(BPA)が常に唾液に移行している可能性並びにレジン系仮封材からはフタル酸エステルであるジプチルフタル酸が唾液に移行している可能性が推定され、その摂取量は子供では無視できない量であることが明らかとなった。「ヒト培養細胞を用いたエストロゲン様物質の高感度で簡便な検出法」ではHeLa細胞にメダカのエストロゲンレスポンシブエレメント領域を含むフラグメントを挿入し、1ng/mL 17β-estradiolでも細胞が反応する検出系を確立したが、より低濃度の検出系を開発するにはGFPの代わりに化学発光するluciferase用いる必要性が考えられた。「高感度突然変異検出システムの開発」ではBPAの変異誘導性は、少なくともRSa細胞においてはhERαを介さない作用であるという可能性が示唆され、GRP78発現抑制細胞では、非常に低濃度のBPで変異誘導性が認められたことからGRP78発現抑制細胞を化学物質の変異原性を高感度に検出する細胞として使用できる可能性が示された。「エストロゲン感受性遺伝子導入メダカによる評価系の開発」ではChoriogenin遺伝子5'上流域とGFP遣伝子の融合遺伝子をメダカ受精卵に注射し、遺伝子導入系統を作製したところ、エストロゲンにより肝臓でGFP発現を示し、試験系は簡便なエストロゲン様物質の検出及び評価系として有用であることが明らかとなった。「歯科用有機材料による代謝活性化酵素誘導検出系の開発」では多環芳香族炭化水素(PAH)とBPAへの複合曝露がAHRシグナル伝達経路およびCYP1A1遺伝子の発現へ及ぼす影響を調べた。その結果、BPAはそれ単独ではCYP1A1遺伝子の発現をほとんど誘導しなかったが3-メチルコランスレンとの併用処理により発現を相乗的に誘導したことやBPAは芳香族炭化水素受容体(AHR)/ARNT複合体を介して転写レベルでCYP1A1遺伝子の発現を誘導していることを明らかにし、BPAとPAHとの複合曝露でAHRシグナル伝達経路を介した毒性発現する経路のあることが示唆された。以上の結果から、本研究で開発した各評価系は歯科用有機材料の生物学的基礎試験に応用可能な新規高感受性生物学的評価法であると考えられる。
著者
福土 審 金澤 素
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

脳腸相関の詳細と過敏性腸症候群の病態を解明することは、心身医学的に重要であるだけでなく、社会的利益が大きい。本研究では、炎症回復後の過敏性腸症候群の動物モデルに対する副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)拮抗薬の投与が、動物の内臓知覚過敏と消化管伸展刺激による粘膜炎症の再燃の病態をともに改善させた。また、ヒトへのペプチド性CRH拮抗薬の投与が脳腸相関を介した過敏性腸症候群の中枢機能を改善させた。
著者
大川 清 大野 始
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

樋口ら(1993)は開花の主要因により光周期性、温周期性、栄養・生殖生長周期(VR)型の3タイプに分けて、花卉の類型化を行った。この類型は多様な花卉を発育相と開花誘導要因により類別化した画期的なものであるが、世界各国で実施された生育習性および花卉の開花調節の研究の大部分は生育相の視点から研究されておらず、莫大な論文が発表されている割には類別するための肝心なデータが不十分なものが多い。研究代表らが現在までに実施した花卉の生育習性と開花調節のデータから、該当するものはつけ加えた。しかし研究代表らが実施した花卉の中ではアネモネ(発芽と花芽分化・開花に質的要求無し。10℃、4〜5週間処理で切り花本数と品質が高まる)、ステファノティス(花芽分化は中温で促進、高温で抑制。花芽分化後は高温が開花を促進、分化後低温では長日が開花を抑制、短日は著しく抑制、花芽分化に日長は関係しない)、スクテラリア・バイカレンシス(花芽分化・開花に日長と温度に対する質的要求無し)、ヒメヒマワリ(花芽分化と開花に温度に対する要求無し、日長に対しては質的要求性のある長日植物)、カンパニュラ・ラクティフローラ(花芽分化・開花に低温の質的要求無し、日長にたいして質的要求性のある長日植物)などは樋口らの類型に入らないことが明らかになった。竹田(1999)は環境条件によって変化する発育相よりも、環境に対する反応の違いに着目して類型化したほうが応用場面において利便性が高いと考えて、主な栄養生長期間、開花時期、開花に対する温度と日長の影響によって区分している。いずれにしても、花卉の生育習性の類型化に際しては春化や休眠をはじめ用語の明解な定義が必要である。
著者
胥 鵬 森田 果 田中 亘 蟻川 靖浩 松井 建二 内田 交謹 湯前 祥二 宮崎 憲治 竹口 圭輔 武智 一貴
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、ヘッジ・ファンド・アクティビズム、経営判断の原則、防衛策、株式持合、普通社債市場の発展、銀行株式保有制限法による銀行持株比率の低下、子会社役員等への親会社ストック・オプション付与などの様々な側面から日本における企業統治の新展開及びその効果について、理論・実証分析を行った。その研究成果は、多数の図書・雑誌論文・学会発表として公表された。
著者
木村 昭夫 生天目 博文 井野 明洋 仲武 昌史 坂本 一之
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は,空間反転対称性の破れに起因するナノ構造体のスピン分裂バンド構造について,スピン・角度分解光電子分光,高分解能角度分解光電子分光,および低温走査型トンネル顕微鏡を用いて明らかにすることを目的として行った。その結果,ビスマス単結晶のバルク状態のスピン状態の観測,タリウムや鉛吸着半導体表面における巨大なスピン分裂バンドの観測,さらには新しいトポロジカル絶縁体の発見など数々の顕著な成果が得られた。
著者
早崎 芳夫 田北 啓洋
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では, ホログラムを用いたガラスのフェムト秒レーザー加工において, レーザー照射において起こる高速な現象の動的な変化をポンプ・プローブ干渉顕微鏡により観測した. 特に, レーザーパルスを同時並列に照射した時に起こる特有な現象として, マイクロプラズマの衝突や衝撃波の合波・反射を発見できた. さらに, ライン状に成形したパルスによる回折格子の作製や計算機ホログラムの2光子吸収最適化法の開発に成功した.
著者
江崎 光男 奥田 隆明 岡本 由美子 長田 博 金城 盛彦 伊藤 正一
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

当該研究期間である平成12〜14年度の3年間、北京、上海、甘粛省を中心に、中国のマクロ経済発展、地域開発および持続的発展に関連する諸問題について現地調査を実施し、名古屋において3回のワークショップを開催した。これまでの3回のワークショップで報告された研究成果を中心に、『21世紀中国における持続的成長の課題-数量的評価』という標題の4部25章および付論(資料データ)よりなる最終報告書が作成される。第1部は「地域経済発展の課題」であり、中国の地域開発(特に西部大開発)における比較優位構造、労働移動、物流政策、中小企業・農村工業発展、WTO加盟に伴う課題に関する計量モデル分析および定量的実証分析が提示される。第2部は「持続的発展の課題」であり、中国西部地域における生態環境、水資源管理、SO2排出の問題および中国全体の都市問題、日中環境協力の課題が数量的に展望・検討される。第3部は「甘粛省の事例研究」であり、甘粛省の開発計画、開発戦略、労働市場、持続可能な発展が定量的実証的に分析される。第4部は「マクロ経済社会発展の課題」であり、中国の社会保障、教育投資、WTO加盟と貿易、直接投資、生産性、観光発展、失業問題に関する制度分析、計量分析が提示される。報告書は、全体として、中国の経済・社会・地域発展の現状と将来(2010年まで)に関する数量的評価・分析を主たる内容とする。
著者
近藤 勲 木原 俊行 長畑 秀和 山本 秀樹
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1994

本研究は、平成6、7、8年度の3カ年にわたり、情報教育普及をめざし現職教員向け研修プログラムの開発を目的に実施された。開発理念としては、"情報教育=コンピュータ教育または情報処理教育"という図式から脱却して、情報教育を教員の基礎教養と見なした。つまり、市販のコンピュータソフトの利用技術の習得だけでなく、情報の概念・性質などの他、情報教育の必要性が理解できるよう意図した内容と構成とした。以下に3カ年の研究の経過並びに成果を整理する。1)中学校技術・家庭科の「情報基礎」の学習内容をFCAIにより自作CAI教材化し、中学生に試行させ学習効果を見た。つまり、中学2年生と3年生を対象に、自作CAI教材の学習効果を測定し、プリ・ポストテストの得点をもとに学習効果を測定したところ、顕著な学習効果が見られた。この結果をもとに、あわせて教師による自作教材の必要性の可否を検討し、操作技術・制作技術・企画構成技術は、調和を持って習得することが不可欠であるとの結論を得た。2)中学校教員及び中学生を対象にインターネットを含むコンピュータへの関心の程度及び現状の意識を質問紙法によってアンケート調査した。この調査結果を分析した結果から、教師及び生徒のパーソナルコンピュータへの期待や意識の実情を把握し、研修用プログラムパッケージ作成に反映させた3)自作CAIソフト作成のため、市販ソフト、例えば、「ハイパーカード」、「ディレクター」による学習ソフトの自作に必要な解説書とビデオソフトを制作した。4)自作した解説書並びにビデオソフトを学生並びに現職教員を含む大学院生に試用させ、その有用性・改良点について、口頭または記述によって回答を求めた。
著者
和田 明 吉田 秀司 境 晶子
出版者
大阪医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

プロテオミクスにおいて現在最もよく普及しているのはO'Farrellが考案した等電点2次元電気泳動法にもとづくIPG法である。しかし最近、このIPG法の深刻な弱点がプロテオミクスの蛋白分離の段階に困難を齎している。一つは塩基性蛋白質の分離が不十分であること、もう一つは蛋白スポットが人為的に分裂することである。こうした弱点が等電点法の本質そのものに由来するため、これを克服するには分離原理のことなる新しい方法が必要であるが、われわれが開発したRFHR 2D PAGEは等電点法を採用せず、等速電気泳動に基づくため、この要請にこたえることが出来る。本研究の目的はRFHR法の分離能をさらに向上させ、極微量の蛋白質の検出・同定を可能にすることと、改良されたRFHR法による大腸菌と真核生物のプロテオーム解析を推進することである。先ずRFHR法の分離能向上について1.水冷方式の装置を考案し、厳密な温度制御を可能にした。その結果、4℃、1次元500V、2次元300Vの泳動では分離能の大幅な向上が見られ、大腸菌全蛋白質に対してIPG法の2倍を超える568の蛋白遺伝子を同定した。これはCBB染色で検出できた700スポットの80%を超える高い同定率である。分画をさらにきめ細かくすれば、極微量の蛋白質の検出・同定を実現できる。2.0次元ゲルを廃止し、蛋白質を1次元ゲルに直接濃縮させるように0次元濃縮過程を改良した。これによって、今後装置の自動化に取り組むことが容易になった。次いで真核生物のプロテオミクスについて1.ラット肝プロテオミクスを進める上で、懸案である蛋白の可溶化を促進するため、2Mチオウレアの導入を試み、難溶性のより大きい蛋白質や膜結合性蛋白質の分離能を向上させた。2.第3年度からヒトcell lineのプロテオミクスへの取り組みを開始した。引き続き取り組んでいく。
著者
佐藤 彰一
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究の目的はこの時代の行政文書の使用態様を明らかにすることにより、いかに文書に依存するところ大きかったかを実証的に明らかにし、その国家性の根拠のひとつを明示することであった。西ローマ帝国消滅後の西欧で、豊富な伝来史料を有するのはイタリアであり、東ゴート期、ランゴバルド期を通して、文書による統治実践は基本的に維持された。だが微視的に見ると、そこには文字記録作成とそれらの保存管理への親妥の変動もあった。7世紀初めには行政文書作成の退潮が見て取れるが、それはN・エヴェレットの研究によれば、美文への嗜好の弱化が根底の原因として挙げられる。セナトール貴族の文字文化の審美的探究が、実は最も日常的で、凡庸な記録形態である行政実務文書が日々生産される現実を下支えしていたとするその所説は、ランゴバルド王国だけでなく文字文化一般の理解にとっても、非常に示唆的である。西ゴート国家は、行政文書を一点も残していない。この事実は長く西ゴート国家が行政文書を作成する伝統を持たなかったのがその理由と考えられたが、1967年にマドリッド国立文書館で偶然西ゴート国王文書の断片と思しき数点の羊皮紙が発見された。僅かの断片的記録しか伝来していない理由として、人為的かつ体系的破壊が想定されている。西ゴート国家に独自な文書形態として、地中から出土する粘板岩に刻まれたいわゆるスレート文書がある。これは西ゴート国家における公文書の存在形態と、密接な関係が考えられる。重要なのは西ゴート国家においても統治実践面で、文字記録が用いられていたことが確実と思われる。アングロ・サクソン七王国の一つであるマーシア国家で作成された「トライバル・ハイデジ(TH)」は、国家的賦課をになう地域とその負担量を一覧にした記録である。現存の三写本は全て後代の写しであり、原本は存在していない。またこの種の記録は孤立したものではあり得ないが、周辺的文書は一切現存していない。THがその最終帰結であるところの、個別税査定に始まる一連の文書作成プロセスをが解明するのが今後の課題である。現時点ではこの文書に内在する情報の性格に依りながら、論理的想定として、この時代のイングランドに紛れもなく実務的文字記録作成の慣行が実在した事実を確認することで満足しなければならない。
著者
新本 光孝 新里 孝和 安里 練雄
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

1.琉球列島総合植物目録及び特定植物群落目録の作成沖縄県の島嶼の沖縄島,宮古島,石垣島,西表島を対象に,既往の著書・報告書を用いて植物分布の差異を明らかにし,さらに,特定植物群落の分布の特性を類型化し、それぞれ「琉球列島総合植物目録」、「特定植物群落目録」としてデータベース化をはかった。2.沖縄島、石垣島、西表島の天然林の資源植物分類各調査地に出現した全植物について、資源植物分類を行った。利用率が高いのは木本植物で、I類では幹の部分がよく利用されている。II類は防風防潮林、屋敷林、公園樹、庭園樹などに利用される木本植物も多い。末経済植物の比率は草本植物、シダ植物で高かった。3.沖縄島北部における天然林固定試験地の森林遷移森林・林分の遷移は3プロットの1980年、1995年、2005年の毎木調査結果に基づき分析を行った。3林分とも本数は減少傾向にあるが、林分材積は全体的には増加傾向にあり,出現樹種は樹種により消滅・新加入の入れ替わりはあるが樹種数に大きな変化はなかった。イタジイはどの林分でも主体をなしており、経年的に本数は減少しているが材積は増加している。4.亜熱帯林の非木材林産物資源としてのリュウキュウイノシシ西表島におけるイノシシ猟は、圧し罠猟,イヌ猟,ハネ罠猟,銃器猟と変遷している。現在は,ハネ罠猟が普及している。ハネ罠猟ではシマミサオノキ他20種の弾力性の強い樹種が利用されている。猪垣は,石塁や斜面掘削,木柵などがあり,石塁の材料には砂岩,サンゴ,木柵にはサガリバナが利用されている。持続的なイノシシ猟を行うためには、島の生態系の維持・環境保全を考慮することが重要であろう。
著者
松本 金矢 森脇 健夫 根津 知佳子 後藤 太一郎 磯部 由香 滝口 圭子 中西 良文
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

先行研究や実践活動で実績のある拠点校(5校区)を中心に、教育現場や隣接領域の実践現場のニーズを調査し、それに応じた領域を超えた教材・活動を開発・展開した。開発した教材は、現場との協働において教育実践に活用された。その実践報告を基に公開研究会を開催し、その有効性が検討された。得られた成果は、学会発表(33件)・論文発表(36件)として公開され、関係研究者の評価を得た。