著者
北岡 良雄 石田 憲二
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

2本鎖梯子型量子スピン系のSrCu_2O_3について非磁性不純物(La-4%,5%,Zn-1%,3%)、磁性不純物(Ni,l%,2%,3%)を添加した系、ホールがドープされたSr_<14-x>Ca_xCu_<24>O_<41-y>系についてのCu-NQR、NMR測定を行い、梯子格子系の量子コヒーレンスの効果によって特異な磁気秩序が発現することを明らかにした。平成9年度の成果1. SrCu_2O_3にZnおよびNiを添加した系では、共通に反強磁性磁気秩序が起こることを示し、磁気モーメントの大きさは不純物近傍で空間的な分布をもつが、丁度不純物間の中間領域では0.041μB程度の比較的に均一な反強磁性自発分極をもつことを明らかにした。2. Zn添加系で反強磁性磁気秩序が起こる臨界濃度は0.5%付近であることを緩和時間の測定から明らかにした。3. L.aを添加した系(電子ドープ系)では、磁場による反強磁性分極が誘起されるが最大5%まで磁気秩序は起こらないことが明らにした。これはLaがSr位直に置換され、ラダー面のCu位置に均一に電子がドープされることに起因していることを示唆した。4. ホールがドープされたSr_<14-x>Ca_xCu_<24>O_<41>系では、すでに存在するホール濃度が少ない試料では空間的に均一な反強磁性分極が磁場によって誘起されることを見出した。平成10年度の成果1. 不純物(Zn,Ni,La,)によって誘起された異常磁性不純物によって誘起される交番磁化分極の相関長ξ_Sが不純物の種類に依らず、不純間距離とともに増大することを示した。また不純物を添加しない系のスピン一重項液体状態の相関長より極めて長いことが明かとなった。2. ホールドープ系スピンラダーの常圧での磁気秩序の同定加圧によって超伝導が発現するSr_<2.5>Ca_<11.5>Cu^<24>O_<41>は常圧下でT_N=2.2Kで磁気秩序を示すが、NMR/NQRの研究からラダー面上で0.02μ_Bの比較的に一様な大きさの自発磁気モーメントを持ち、鎖面上で最大0.5μ_Bの分布した磁気モーメントをもつ磁気秩序状態にあることを示した。梯子スピン系に不純物が添加されると低エネルギー励起(スピノン)が誘起され、その励起を媒介にして磁気秩序が発生する。一方、ホールをドープした系では多様な電子相が現れる。遍歴する場合は、超伝導が出現し、局在する場合は電荷密度状態と磁気秩序が共存する。電荷およびスピン自由度の局在と遍歴に起因して多彩な電子相があらわれることが本研究によってか明らかとなり、低次元量子スピン系の新しい研究分野の方向を切り開くことができた。
著者
久保田 康裕 辻 瑞樹 唐沢 重考 榎木 勉 島谷 健一
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

地球温暖化に伴う生態系の応答を評価することは、地球環境科学の大きな研究テーマである。私達の研究グループは、過去10年間にわたる島嶼生態系の維持機構に関する基礎研究を行う過程で、生態系が最近の大型台風で壊滅的に撹乱され、そのインパクトが島嶼生態系の自律的な修復能力を凌駕している可能性を認識するようになった。本研究は、台風撹乱が島嶼亜熱帯林の生物多様性と機能に及ぼす影響を定量化することを目的とし、温暖化に伴う台風の巨大化や頻度変化によって島嶼生態系が転移するリスク及びそのシナリオを予測した。具体的な研究成果は以下の通り:1)台風攪乱の強度や頻度の変化は亜熱帯林の優占種の交代を促して群集の機能的構造を改変し、生産量・物質循環過程のような生態系機能に影響を及ぼす可能性がある;2)台風攪乱による森林構造の改変は、森林性の野生生物(大径木に依存した希少な着生植物やマングース等の外来種)の分布に影響を及ぼす可能性がある;3)亜熱帯林の適応的な森林管理(持続的な木材生産と生物多様性の保全)を考える場合、攪乱体制の変化は重要な要素になる。
著者
平山 次清 高山 武彦 平川 嘉昭 庄司 るり 上野 道雄 塚田 吉昭 岩下 英嗣 土井 康明
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

海上が荒れた場合はバラストタンクと主翼および尾翼を制御することによって浅く潜航し波浪影響を避けるという新コンセプト船を提案し、その実現可能性について主として流体力学・運動制御工学の観点から実験・数値計算を実施して検討した結果、船長の半分程度まで潜水すれば波浪影響は数%以下に抑制可能であることやウェザールーチングの観点からは10%程度の燃費低減が可能といった結果を得た。
著者
曵地 康史 木場 章範 大西 浩平
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

Ralstonia solanacearumは傷口等の根の開口部から宿主植物に侵入し、まず、細胞間隙にコロニー化する。コロニー化後、細胞間隙で著しい増殖を行う。細胞間隙での増殖の有無が、宿主植物に対する病原性の質的な決定因子であり、この増殖は、hrp遺伝子群にコードされるタイプIII分泌系から菌体外へ分泌するタイプIIIエフェクターを介した宿主植物との侵入直後の相互作用により決定されていた。細胞間隙での増殖が可能となったR.solanacearumは、タイプIIIエフェクターの働きにより宿主植物の遺伝子発現の変化を誘導し、病徴である青枯症状の誘導の有無を決定した。その後、R.solanacearumは、タイプIII分泌系を介して分泌する植物細胞壁分解酵素(CWDE)の働きにより、導管壁を分解し、その結果、導管へ侵入することが可能となった。R.solanacearumは、導管を通じて全身移行し、導管内に病原力因子である菌体外多糖類(EPS)を分泌し、導管閉塞をまねくことで植物の水分通道能を阻害した結果、感染植物は青枯症状を呈すると考えられた。hrp遺伝子群の発現制御タンパク質HrpBによって、CWDEであるPhcBの発現は部分的に正に制御されており、タイプII分泌系とタイプIII分泌系の分泌能は相互に制御しあうことが明らかとなった。さらに、hrp遺伝子群やPhcAなどの一部のCWDEの発現は、EPS合成の正の制御タンパク質であり、クオラムセンシングにより活性化されるPhcAによって、負に制御されていた。これらの結果から、R.solanacearumの病原性に関わる遺伝子は、宿主植物への侵入過程に応じて制御されており、R.solanacearumの増殖を介した一連の制御系に存在することが明らかとなった。
著者
須川 修身 今村 友彦
出版者
諏訪東京理科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

区画火災時に火災室内でフラッシュオーバーやバックドラフトが起こると、800°C近い高温の火炎および熱気流が窓などの開口部から噴出する。このときの火炎は瞬間的には50~100m/s程度の比較的大きな初速度を持って火災室から水平に打ち出される。火炎高さに関して断片的な知見しか得られておらず、延焼危険性の評価も経験則に依っているところが多い。そこで本研究は、高速で噴出する拡散火炎の性状を把握することを目的として研究を行った。火炎噴射装置から発生させた火炎の高さ、温度および放射熱を計測した。燃料として、液体燃料を用いた。ノズル径と不活性ガスの圧力の組合せにより発熱速度を制御した。噴射装置架台は0°~90°(0°:噴射方向が水平方向)の範囲で任意に傾きを設定した。その結果、90°の場合、火炎高さは、Q*>106の範囲でも、無次元数RMの値が0.1より小さい場合は、火炎高さはQ*2/5に比例して高くなった。また火炎中心軸上の温度減衰を、McCaffreyモデル(低速拡散火炎)と比較すると、本実験では温度減衰の開始点がz/Q2/5=0.15~0.20付近であり、McCaffreyモデルよりも遠くなった。しかし、温度減衰が始まると、温度は距離に対してMcCaffreyモデルよりも急速に低下する傾向を示した。一方で、高速で噴出する拡散火炎の中心軸上の温度減衰、水平方向の温度分布、熱流束の水平分布は、いずれも発熱速度の変化に対して相似性が保存されていることが分かった。
著者
生田 まちよ 宮里 邦子 野村 恵子 永田 千鶴 木村 重美
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

在宅人工呼吸療法の小児の介護を行う家族の介護負担は大きい。このため家族にとって、レスパイトケアが重要である。しかし、これまでのレスパイトケアの利用は、家族の行事や病気などでの緊急の利用がほとんどであった。さらに、小児はレスパイト施設の利用が困難な状況であった。そこで、定期的に子どもの自宅に訪問看護師が長時間滞在するホームベースレスパイトケアを実施した。そして、そのケアの有用性が示唆された。さらに、このホームベースレスパイトケアを実施するには、不可欠な訪問看護師が、安心して小児のレスパイト訪問ができるような、教育プログラムを開発して実施した。
著者
小河 久朗 林崎 健一 黒倉 寿 佐野 光彦 馬場 治 堀之内 正博 小河 久志 KANGUWAN JUNTARASHOTE CHATCHAREE KAEWSURALIKHIT ANCHANA PRATHEP PRASART TONGUNUI
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

津波後の水産資源は回復しつつあるが、大型海洋植物の植生回復が遅れたところでのイカ・カニ漁業への影響は大きく、資源と漁業の回復への植生の重要性が分かった。一方、津波後、沿岸漁業と沖合漁業間に新たな漁場競合問題が発生しており、援助の不平等性と重複がこの問題の複雑化の一因であった。津波後の水産資源や漁業の回復には、植生に重点を置いた環境修復や零細漁民への被害実態に即した公平な援助の重要性を示唆した
著者
政宗 貞男 比村 治彦 三瓶 明希夫
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

球状RFPではヘリカル配位に遷移する確率が高いことを明らかにした.このヘリカルRFP配位で磁気計測と軟X線イメージング計測を実施し,高温//高密度のヘリカルコアの存在と電子エネルギー輸送障壁に対応する放射強度分布の勾配形成を確認した.さらにm/n=1/2キンク不安定性(RWM)のフィードバック安定化により,放電時間を50%以上伸長させた.トムソン散乱電子温度測定により,Ip~120kAで~200eV,電子ベータ値が10%程度のRFPプラズマ生成を確認した.電子系に関してRELAXの目標値を達成した.
著者
行場 次朗 三浦 佳世 北岡 明佳 川畑 秀明
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、R.L. Gregoryの「心のデザイン」モデルを援用し、人間情報処理の主要な3つのストリームに由来するクオリア、アウェアネス、知覚ルールを次元的にクロスさせて、体系的に視覚芸術の基底をなす共通項とその心理・脳科学的基盤を明らかにする世界に類がない試みを行った。その結果、心理・脳科学的には、視覚美の様相は多数存在し、それぞれが機能的に特殊化した脳内のモジュール活動に結びついており、本研究で示した分類法の妥当性とともに、美を感受するモジュールやストリームの多重性が明らかにされた。
著者
深井 喜代子 前田 ひとみ 佐伯 由香 關戸 啓子 兵藤 好美 樅野 香苗 大倉 美穂
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は,看護ケア技術の科学的根拠を明らかにし,看護界におけるEvidence-Based Nursing(以下,EBN)推進の一役を担うことであった。清潔ケア,感染看護,寝床環境,食のケア,そして痛みのケアのそれぞれの領域において,ケア技術のエビデンスを探究する研究を遂行した結果,以下のことが明らかになった。1)39℃の湯を用いた10分間の片手の手浴は,事後に保温することによって1℃以上の両手の皮膚温上昇と温感が手浴後少なくとも30分間は保たれた。2)手浴終了後の薬用クリームの使用で保湿効果が持続し,皮膚の生理機能が維持された。3)学生の手洗い行動を習慣化させるには,行動化に向けた教育方法の検討が必要なことが分かった。4)シーツ素材の吸湿性が低いと,寝床気候の悪化を招来することが示唆された。5)ヒトの話声は,話の内容に係わらず,70dB以上の大きな声の場合,不快感や交感神経系の緊張を高めることが明らかになった。6)欠食は疲労の原因になるほか,やる気や精神状態の安定にも影響を及ぼすこと分かった。7)一側の手の手浴で反対側の手の実験的疼痛閾値が上昇することが明らかになった。8)看護行為で発生する様々な音のうち,比較的持続時間が長く,大きな音は鎮痛をもたらすが,一時的にストレス性の生体反応を引き起こすので,看護行為中の不用意な音の発生を避けるとともに,事前に音についての説明を行うべきであることが提案された。9)4基本味うち,甘味と酸味にpricking painに対する鎮痛効果があることが分かった。10)温罨法の鎮痛効果は,皮膚温38℃以上の加温で始めて現れることが,実験的に誘発したpricking painで証明された。
著者
幸福 輝 佐藤 直樹 渡辺 晋輔 栗田 秀法 金山 弘昌
出版者
独立行政法人国立美術館国立西洋美術館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、16世紀から17世紀にかけ、版画という媒体において古代がどのように表象され、また、この媒体を通じて古代文化はどのように伝播されていったかという問題を、西欧各国の具体的な事例に基づいて、明らかにしようとする目的でおこなわれた。もとより、きわめて大きな問題であり、われわれの目的はその基礎的な概略図を描くことでしかないが、それぞれ異なる分野を専門とする者が協力しあったことにより、当初の目的は達成できたのではないかと考えている。はじめに、イタリア、ドイツ、ネーデルラント、フランスの順で、ごく簡単にこの主題について各国の状況を略述し、次いで、各研究分担者による研究成果を掲載する。佐藤はデューラーとイタリア版画の関係について、幸福はヒエロニムス・コックの版画出版活動について、金山は古代建築の復元図とバロック建築との関係について、渡辺はズッカレリの風景画に見られる古代彫刻のモティーフについての議論をおこない、栗田はフランス・アカデミーにおけるラオコーンに関する講演の翻訳とその解題を寄せている。なお、国立西洋1美術館に属す研究代表者の幸福と研究分担者の佐藤および渡辺は、2005年と2007年に本研究に関連するふたつの版画の展覧会(『「キアロスクーロ:ルネサンスとバロックの多色木版画』と『イタリア・ルネサンスの版画』)を同館で企画・開催した。別冊資料1、同2として、それら2冊の展覧会図録を本研究成果報告書に添付して提出する。
著者
城 仁士 岡田 由香 二宮 厚美 青木 務 杉万 俊夫 近藤 徳彦 小田 利勝
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は地域一体型の老人介護施設における利用者本位・住民主体の介護サービスがどのようなものであればいいのか提案し、さらにサービス機能の今後の方向性や評価方法を提言することを目的とした。平成13年度から15年度の3年間にわたって、次のような4つの研究アプローチを設定し、研究遂行した。1)社会システム論的アプローチ高齢者をとりまく社会システムを高齢者の発達及び自立支援という視点からアプローチした。特に介護保険によるサービスを個人の尊厳により選びとれる環境整備や制度的な問題点の洗い出しを行った。2)医療システム論的アプローチ高齢者を支援する環境づくりに向けて、地域医療の観点から実践研究を展開した。具体的には、高齢化率の高い過疎地域(京都市北区小野郷)における、住民が主体となって診療所を開設・運営するという新しい地域医療運動に、研究者も参加しながら、運動の経緯を検討した。3)生活環境論的アプローチ高齢者の衣食住環境を生活の主体者としての意識や生活意欲をひきだす環境づくりという視点からアプローチした。被介護者のみならず介護者、利用者の家族、スタッフのストレスを軽減するハード面とソフト面の機能を住環境学、食環境学、衣環境学から分析・評価した。4)心理行動論的アプローチ地域一体型施設における被介護者を中心としたスタッフ、介護者、地域住民の連携を促進する介護サービスの開発と評価を生活環境心理学、ストレス心理学、環境生理学の観点から行った。施設のサービス体系にもとづく調査結果を整理し、第8回ヨーロッパ心理学会や日本心理学会第67回大会に発表するとともに、今後の介護サービスの方向性やその評価方法について検討した。以上の結果に基づいて、今後は施設における集団ケアを少人数のユニットケアへ移行するとともに、個人の尊厳にもとづく新世紀型の施設介護のあり方を提言した。また、環境生理から研究からは、寒くなるとエアコンをつけるなどの行動性体温調節反応が高齢者ではどうなのかを検討した。この反応は自律性体温調節反応が衰えると大きくなり、また,高齢者では皮膚温度効果器の低下にも関係し、若年者より劣っている.このことから,高齢者の生活環境を支援するためにはこの反応も考慮する必要があることを明らかにした。最終年度には、本研究プロジェクトのこれまでの研究成果を実績報告書という形で公刊し、今後の施設ケアの方向性の参考として福祉施設関係者に配布した。
著者
酒井 保藏 石川 進 荷方 稔之 加藤 紀弘
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1日30m^3の水処理可能な大型の実験プラントを用いて、パイロットスケールでの磁化活性汚泥の実証実験をおこなった。最初沈殿池(約1m^3)、曝気槽(7.6m^3)、最終沈殿池(約1.5m^3)からなる活性汚泥プラントにおいて、曝気槽上部に小型の回転磁石ドラム(長さ80cm×直径30cm)を備えた磁気分離装置を1基設置し、大部分の高濃度の磁化活性汚泥を磁気分離により分離に、最終沈殿池でさらに残りのSS分を分離する磁気分離・沈降分離ハイブリッド方式を適用した磁化活性汚泥法について検討した。約5000〜10000mg/Lの高濃度汚泥を曝気槽に保持することで、自己消化による汚泥の減量を実現し、余剰汚泥を引き抜くことなく、半年間の実証試験に成功した。沈降分離槽から流出する最終的な処理水はCODCr=20〜30mg/L、SS=10〜20mg/Lと良好な処理水が得られた。また、汚泥滞留時間が長いことから、硝化が良好に行なわれることも確認された。7月に行なわれた下水道研究発表会ではポスター発表において最優秀賞を得た。また、10月に行なわれた磁気分離開発研究に関するワークショップでは、応用部門の優秀ポスター賞を得た。3月には、問い合わせのあった、イギリス・水処理企業まで出向き、国際的な共同研究・共同開発に関する打ち合わせを行なうことができた。パイロットプラントは世界初の実証規模での磁化活性汚泥法として、イギリスの磁気分離の著名研究者、荏原製作所、栗田工業などの多くの企業の見学を受けた。これらの結果は昨年3月28日にNature Science Update他に記事が掲載されたのをはじめ、6月にはアメリカ化学会のオンラインニュース誌、さらに7月にはアメリカ化学会のオンラインマガジン誌に繰り返し取り上げられるなど大きなインパクトを世界に与えたといえる。世界中の水環境関連のWebニュース、30誌以上で活性汚泥法の新しい技術として報道されている。
著者
山崎 晴雄 長岡 信治 山縣 耕太郎 須貝 清秀 植木 岳雪 水野 清秀
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

鮮新・更新世に噴出した火山灰層の対比・編年を通じて、日本各地の後期新生代堆積盆地の層序・編年を行った。これを利用して、関東平野や北陸地域、宮崎平野などの古地理変遷を明らかにした。また、洞爺火山や浅間火山などの活動史や地形変化を示した。これらにより以下の成果を得た。1.中央日本(大阪〜関東)において1.3Maの敷戸-イエロ-1テフラの存在確認を初めとして、4〜1Ma(百万年)の間に少なくとも12枚の広域指標テフラの層序及び分布を明らかにした。これにより、10〜50万年ほどの間隔で時間指標が設定でき、本州に分布する鮮新・更新世盆地堆積物編年の時間分解能や対比精度が著しく向上した。2.本研究で発見した坂井火山灰層(4.1Ma)は現在日本で知られている最古の広域テフラである。アルカリ岩質の細粒ガラス質火山灰で、その岩石記載学的特徴から同定対比が比較的容易であり、今後、日本列島の古環境復元に活用できる重要な指標テフラとなろう。3.関東平野の地下についてボーリングコア中の火山灰と房総半島や多摩丘陵に分布する火山灰の対比が進み、平野の地下構造、深谷断層-綾瀬川断層の活動史、テフラ降下時の古地理などが判明した。4.関東平野の地下構造とテフラ編年から、この地域の活断層の一部は15Maの日本海開裂時に形成された古い基盤構造が、1Ma以降の前〜中期更新世頃に新しい応力場で再活動を始めたものであることが明らかになった。5.北海道各地のテフラ情報が集積され、洞爺火山の活動史などが明らかになった。6.九州の火山活動史がとりまとめられると共に、テフラを用いて宮崎平野の地質層序、地形面の編年が詳細に調査され、鮮新・更新統の層序が明らかになった。7.テフラを利用して浅間火山の更新世活動史、泥流流下機構、周辺の地形発達との関係が明らかになった。8.本研究で改良した広域テフラを用いた地層の編年・対比技術はエチオピアの人類遺跡の調査・研究にも活用された。
著者
栗山 繁 大渕 竜太郎 青野 雅樹 持丸 正明
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

人体の動作や形状を計測して大規模に蓄えられたデジタルデータ集合に対し、所望のデータを探し出す技術とそのデータを様々に役立てる再利用技術を開発した。動作データの探索に関しては世界最高の性能を達成し、規則の導出に基づく新たな探索機構も開発した。一方、形状データの探索に関しても特徴量の学習に基づく各種手法を開発し、世界最高クラスの性能を達成した。また、再利用技術を用いた種々のアプリケーションを開発した。
著者
早渕 仁美 梅木 陽子 久野 真奈見
出版者
福岡女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

飲食物の内容と量から主食・主菜・副菜等の料理分類を行う方法と基準、食事摂取基準等指標との関係を明確にし、食事状況を栄養素・食品レベルだけでなく料理レベル、さらに料理の組合せである食事レベルで示し、食生活の質を総合的に評価するための、食物ベースの食事評価方法を確立することを目的とした。また、栄養士等専門家向けの定量的データ(食事摂取基準)と、一般向け定性的メッセージ(食生活指針)をつなぐ、半定量的な食事ガイドとして、食物ベースによる食事評価の科学的根拠に基づく教育ツールを開発し、栄養指導や食育活動に活用し、その妥当性と有効性について検討した。1.前回の科学研究費の研究成果であった「料理群分類方法」の妥当性を、データベースに基づいた系統的分析 によって明らかにした。2.食事状況を食物ベースで、視覚的にわかりやすく、的確に示す方法を提案し、その効果を検証した。3.食事評価に料理レベルのデータを用いることの意義を明らかにした。4.料理レベルで食物摂取の内容と量を簡便に把握する食事調査方法の検討を行った。5.自分の食習慣を簡便に把握し、食生活改善の動機づけに役立つシステムを開発した。6.料理を食事バランスガイドの基準で分類、サービング計算するシステムを開発した。7.食事記録調査データの栄養計算を行い、食物ベースで評価するシステムを試作した。8.上記開発した調査、評価手法を活用して、食事調査や栄養教育・食育活動行い、その妥当性と効果の検証を行った。
著者
長崎 勤 宮本 信也 池田 由紀江
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究では[研究I]の「心の理解」の発達機序についての解明と、[研究II]の「心の理解」の発達援助に大別して研究を行った。[研究I]では、0-1歳の取り上げ場面での、実験者による応答条件と非応答条件の比較検討を行った結果、「待つこと」は、15ヶ月以降、応答条件が非応答条件に比べ持続時間が長くなり、高次な手段に変換するようになり、1歳半ばから他者意図の想定が明確になることが示された。また、1-2歳児における誤提示条件への応答の分析から、1歳半頃から「他者意図の気づき」の反応がみられ、その後、相手の反応に応じ伝達手段の変更を行い、2歳前半では大人の関わり方に左右されず、伝達手段を修正できた。2、3歳児の母子場面の心的状態語の表出を分析した結果、2歳では自己欲求に関する発話が中心であり、3歳では自己叙述が増加し、他者叙述も増加することが示され、自己から他者へ、欲求から叙述へという発達過程が考えられた。高機能自閉症児の「心の理解」の発達と談話の発達の関係を分析した結果、誤信念課題等の「心の理論」課題の通過群では、自分の過去経験についての語りは他者や自己の心的状態に言及することが多かったが、未通過群ではそれらが少なく、また未通過群は出来事を時系列的に並べず並列させていた。[研究II]では「『心の理解』発達援助プログラム(MAP)」を開発し、発達障害児に対し発達援助を行った。広汎性発達障害児およびダウン症児に対し、「宝探しゲーム」やおやつ場面を用いて他者の欲求意図理解と信念理解の発達を援助し、「心の理解」発達の効果を認めた。また、自閉症児に対し相談機関と通園先の保育所において、小集団の模倣遊びと鬼ごっこルーティンを用いた指導を行った結果、指導場面で役割の自発的遂行が可能になった。
著者
楠本 哲次 川添 堯彬 田中 昌博 高梨 芳彰 馬場 俊輔 木村 公一
出版者
大阪歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では脳機能画像法を用いて咀嚼運動中の大脳皮質の賦活状態を捉えることとした.しかし,脳機能画像法では,頭部が振動を受けると脳の位置が動いてしまうと,データの信頼性が低下する可能性がある.この事も本研究の難易度を上げる原因となった.そこで我々は可能な限り実際の咀嚼運動を再現し,しかし脳機能画像法の妨げになりにくいTask方法として,咀嚼Taskを採用した.咀嚼Taskは右咬みタスク,左咬みタスクとした.各タスクは咬頭嵌合位にて上下顎の歯を軽く接触させ,タスク側の咬筋が等尺性収縮を起こさせるように指示し,咬みしめサイクルは1Hzとした,本Taskにより,実際の咀嚼運動に近いデータを得ることができたと考えている.本研究では咀嚼Taskにて大脳皮質が賦活する部位を検討している過程で,咀嚼Taskによる大脳皮質賦活部位が運動性言語野,言語優位半球との関連があるのではないかと考えた.そこで,我々はしりとりTaskを用いて被検者の言語優位半球を同定し,言語優位半球と咀嚼Taskによる大脳皮質賦活部位との関連を調べたところ,言語優位半球側に必ず咀嚼Taskによる大脳皮質賦活部位を認めた.よって,言語優位半球と咀嚼Taskによる大脳皮質賦活部位とは関連があることが明らかとなった.また本研究では脳磁図やfMRIでも使用可能な咬合力センサの開発を試みたが,実用化することは困難であった.実用化に向けて今後も改良を行う必要がある.
著者
梶原 苗美 瀬口 春道 松本 衣代 デル サス エバ ガルシア 松本 衣代 谷口 洋
出版者
神戸女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

伝統的食生活で知られるニューギニア高地民族の健康栄養調査を実施した。インドネシア、パプア州高地地区の農山村部に住むパプア州住民の多くは未だサツマイモを主食とする新石器時代の食生活の名残を強く残した食生活を営んでいた。しかし、都市化の進展、或は都市部移住者では食生活の変遷、欧米化傾向が著しく、住民生活の都市化比率に比例してメタボリックシンドロームのリスクが急上昇しつつあることが明らかになった。
著者
平川 新 佐藤 大介 菊池 勇夫 モリス ジョン 斎藤 善之 菊池 慶子 中川 学 千葉 正樹 高橋 美貴 菅野 正道 畑井 洋樹 籠橋 俊光 水野 沙織 坂田 美咲 栗原 伸一郎 高橋 陽一
出版者
宮城学院女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究課題では、旧仙台藩領の個人宅など地域社会に残されている歴史資料の保全を実施すると共に、研究期間中に発生した東日本大震災に対しては、行政や市民と連携して被災した仙台藩関係の古文書資料を約6万点を救済することが出来た。上記の保全活動や、仙台市史など1990年代以降の自治体史編さん事業などで新たに確認された史料を活用し、仙台藩主の動向、家臣団の編成、年貢制度の実態、生業の発展による地域間関係、災害史、幕末の政治史などについて、新たな史実の発掘と解釈を示すことが出来た。