著者
門間 敏幸 梅本 雅 関野 幸二 磯島 昭代 後藤 一寿 安江 紘幸 吉永 貴大
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

農家が主体となって開発された農業技術を,技術特性・経営効果・普及可能性の3つの視点から総合的に評価した。具体的な成果は,次の通りである。1)篤農技術のデータベースの開発2)篤農技術の調査方法の開発3)農業技術の暗黙知の探索方法の開発4)経営管理能力,水稲代かき技術,大豆収穫技術,りんご剪定技術,知的財産管理技術,篤農技術の普及方法,新品種の普及ノウハウの整理。
著者
中井 直正
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本科学研究費補助金による研究の目的は、20GHz帯受信観測システムを開発製作し、筑波大学の近くにある国土地理院つくば32m鏡に搭載して電波望遠鏡として整備し、水メーザーの観測からセイファート銀河中心核の構造を明らかにすることである。特にセイファート銀河の1型(可視光のスペクトル線が極めて広い)と2型(狭い)の違いが従来言われていた降着円盤を見る角度が異なるため(統一モデル)だけではなく、降着円盤の厚さに薄いものと厚いものがあり、降着円盤を同じ斜めの方向から見たとしても薄いものは1型に、厚いものは2型に見えるという我々の仮説を立証することが目的である。研究成果の主なものは以下のとおりである。1.国土地理院32mアンテナに20GHz帯受信観測システムを開発製作し搭載した。アンテナの主ビームの半値幅(角度分解能)はHPBW=100"、主ビーム能率と開口能率は仰角40度付近でそれぞれ50%と42%である。受信機の周波数帯域は19.5-25.2GHzであり、中間周波数は4-8GHzである。大気込みのシステム雑音温度は冬季天頂で60-80K程度と良好な値が得られた。分光計はフーリエ変換型デジタル分光計で周波数帯域幅1GHzを1万6千点の分光を行う。望遠鏡制御ソフトウェアーシステムもVLBI(超長基線電波干渉計)観測とは独立に、単一鏡観測用に独自開発を行った。これらにより、22.235GHzにある水メーザーの定常観測が可能となった。2. 開発した上記観測システムによりセイファート銀河の水メーザーの速度モニターを開始した。またVLBI観測により2型セイファート銀河IC1481の水メーザー円盤が厚いものであることを明らかにし、我々の仮説を証明した。
著者
松岡 延浩 今 久 松田 友義 木村 玲二 神近 牧男 王 秀峰 井上 京
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では,砂漠化とは本来気候的に決まる「気候生産要因(Climatic Production Factor)」が,農業・牧畜業による人為的因子(農業形態,牧畜形態)などの「阻害要因(Inhibition Factor)」を上回っている場合に植生は安定しているが,「阻害要因」が「気候生産要因」上回った場合に砂漠化が発生するという仮説を立てた。それの従って,砂漠化の危険度を評価するため,地点毎の「気候生産要因」と「阻害要因」を表現するモデルを作成した。阻害要因としては「土壌水分量」,「放牧強度と土地利用」を取り上げた。研究組織を以下の3班に分けて,砂漠化ハザードマップ作成に必要な「気候生産要因」と「阻害要因」を表現するモデルの妥当性の検討とハザードマツブ作成を行った。メッシュデータ整備班(松岡,王)研究期間に整備された自然的要因に関するデータを用いて,「気候生産要因」メッシュデータの作成を行った。また,メッシュデータの妥当性に問題があると判断される地域現地の気象データの再収集および地表面分類のグランドトゥルースを行った。農作業調査班(今,神近,木村,松田,井上,中野)観測期間内に,「阻害要因」のモデル化とメッシュ化を行った。メッシュデータの妥当性に問題があると判断される地域において,農業形態,特に作物の種類,栽培方法,灌概水量の聞き取り調査を行った。同時に,農業形態には,農家の経営状況が大きく影響するため,経営状況のメッシュ化を松田を中心に再検討した。牧畜調査班(小林,松田,野島)上記に出作成されたメッシュデータの妥当性に問題があると判断される地域において,砂漠化指標の1つである植生量と構成植物種に対する家畜密度の影響を,再度植生調査と聞き取り調査した。以上の結果を取りまとめ,黄河流域の10kmメッシュを作成して,現地地方政府など普及機関に配布するとおもに農牧畜民の砂漠化に対する教育普及に供試することができた。
著者
土井 元章 林 孝洋 細川 宗孝 水田 洋一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

花卉の香り育種に有用な知見を得るため,バラを用いて以下の実験を行った.芳香性品種の花弁からは,モノテルペノイド,セスキテルペノイド,芳香族アルコール,酢酸エステル,ジメトキシトルエンが検出された.また,これらのバラ切り花の香りには鎮静効果と精神的疲労低減効果が認められた.モノテルペノイド合成酵素遺伝子として2遺伝子がクローニングされた.このうちRhMTS2は被子植物の非環式モノテルペノイド合成酵素遺伝子群に分類され,芳香性品種のかたい蕾で高発現していた.ゲラニル二リン酸合成酵素としては,RhGPPS-LSU1,RhGPPS1が単離でき,前者は芳香性品種すべてと非芳香性の1品種で高発現していた.
著者
駒込 武 冨山 一郎 板垣 竜太 鳥山 敦
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では、近代日本において「辺境」とされた地域において空間的移動と社会的移動の可能性がどのように開かれていたのか、その中で学校教育がどのような役割を果たしたのかを解明した。具体的には、奄美諸島の経験を基軸としながら、かつて日本の「植民地」とされた台湾・朝鮮や、「内国植民地」と称された琉球諸島・北海道を含めて、これらの地域に生きる人びとが高学歴の取得を通じて脱「辺境」を志向しながらも、その試みが挫折したプロセスを分析した。また、いわば「法制化された不自由」が存続した時代に構築された資本格差が、「法制化された不自由」撤廃後の不平等を存続させるための重要な因子としての役割を果たしたことを指摘した。
著者
岩崎 仁 萩原 博光 坂東 忠司 安田 忠典 中瀬 喜陽 土永 浩史 土永 知子
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

驚異的な「博物学的知識」が南方熊楠の第一の特徴であるが、一方で彼は日本の先駆的自然保護活動家として評価されている。本研究によって、彼の自然保護活動は、熊野地方を対象とした緻密な自然生態系調査、特に1900~1904 年の那智における植物標本採集を中心としたフィールド調査を絶対的な基礎としていることが明らかとなった。さらに、この時期の植物・生態学的な研究活動が、後に形成される熊楠の思考体系全体、民俗学や宗教学的側面にまで深く影響していることがわかった。
著者
緒形 康 嘉指 信雄 田中 康二 樋口 大祐 濱田 麻矢
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

具体的内容 3年間の研究成果をまとめた学術論文集の執筆を中心とした活動を行い、緒形康編『一九三〇年代と接触空間-ディアスポラの思想と文学』双文社出版、2008年3月を出版した。意義 一九一四年から四五年における神戸の文化研究を進める中で、仁川、釜山、ソウル(韓国)や青島、上海、広州、台北(中国・台湾地域)等と神戸が有したネットワークが、複数文化の共生の技法を生み出す上で重要であることが明らかになった。本書は、そうした東アジア海港都市のネットワークが大きな社会的・文化的な役割を担った一九三〇年代を取り上げ、総力戦・戦時動員体制・ファシズムといった様々な位置付けがなされてきたこの時代を新しい視点から再考した点に学術的意義がある。重要性 一九三〇年代における亡命やディアスポラは、既存の国家や共同体からの離脱という形だけではなく、共同体内部の再編、あるいは個人の内面における転向や共同幻想の再編という形でも出現した。その先に現れるのは、様々な背景を持つ異文化間の「接触空間」(contact zone)である。本研究の重要性は、異文化の対立と衝突を超えて共生し合い、領有化された新たな接触空間の可能性を、亡命とディアスポラという政治的・文化的背景の中に探ろうとしたことである。
著者
岩里 琢治 糸原 重美 加藤 裕教 西丸 広史
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

Rac特異的GTPase activating protein(GAP)の一つであるαキメリンに着目し、中枢神経回路の形成と機能におけるその役割を明らかにすることを目的として研究を行った。全身性およびCre/loxPシステムを用いた領域特異的αキメリン変異マウス、さらに、α1およびα2イソフォームのそれぞれに特異的なノックアウトマウスを作成した。それらのマウスを行動学的、および、組織学的に解析することにより、海馬機能におけるαキメリンの働きの一端を明らかにした。
著者
新野 宏 伊賀 啓太 中村 晃三 鈴木 修 石部 勝
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

水平格子間隔70m、鉛直方向45層、領域サイズ66.4km×66.4km×15.1kmの非静水圧準圧縮系のメソ数値モデルを用いて、1977年にアメリカ・オクラホマ州のデル・シティで発生した竜巻の環境場の高層観測デーダを水平一様に与えたところ、スーパーセル型積乱雲とこれに伴う竜巻の現実的な再現に成功した。積乱雲が発生して50分が経つと、水平風の鉛直シアと積乱雲の上昇気流との相互作用で高度2km付近に気圧の低下が生じ、この層の下で上昇流が強化される。これに伴って、60分頃になると高度1.2km付近で、水平渦度の立ち上げとその引き伸ばしにより下層のメソサイクロンが形成され、この回転場により1.2km付近での気圧降下が起こって、更に下層の上昇流を加速し、高度1kmでは40m/を越える上昇流が形成される。一方、地表面付近にはストームの降水域から流れ出す冷気流と周辺から吹き込む暖湿な気流のぶつかるガスト・フロントが形成されているが、ガスト・フロント上の水平シアに伴う鉛直渦度が丁度この強い下層の上昇流の下に来て引き伸ばされることによって竜巻が発生することが明らかとなった。このことは、スーパーセルに伴う竜巻が、定性的にはlandspoutと呼ばれる局地前線に伴う竜巻に似た機構で発生することを示している。本研究では、この他、日本付近の積乱雲を含むメソスケール対流の環境場を記述する環境パラメータの気候学的調査、竜巻ないしはダウンバーストと思われる突風被害をもたらした亜熱帯低気圧の構造とライフサイクルの解析、激しい積乱雲を生ずることの多い梅雨期のメソαスケール低気圧の力学の解析も行なった。
著者
羽田野 直道 中村 統太 西野 晃徳 PETROKSY Tomio ORDONEZ Gonzalo
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

量子ドットの電流電圧特性を測定する実験は広く行われています。しかし、それに対応する理論には決定的なものがありません。本研究では従来の手法と独立で相補的な手法を開発しました。我々の方法は、電子間相互作用のない場合に決定的な手法であるランダウアー公式を、相互作用がある場合に自然に拡張した理論になっています。その手法を用いて、簡単な模型において厳密に電流電圧特性を求めたところ、電位差を増やすほど電流が流れにくくなる領域があることを見いだし、その原因を明らかにしました。電子間相互作用のために2つの電子が互いに束縛し合う状態ができますが、その状態が量子ドットを通過できないために起こります。
著者
竹中 康治 加藤 一誠 村上 英樹 手塚 広一郎 吉田 雄一朗 浦西 秀司 辻本 勝久 乾 友彦 乾 友彦 井尻 直彦 呉 逸良 轟 朝幸 村上 英樹 松本 秀暢 手塚 広一郎 吉田 雄一朗 辻本 勝久 浦西 秀司 三枝 まどか
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

日本の航空・空港政策には改善すべき点が多い。まず, 航空の自由化は経済学的にも望ましいことが証明された。なぜなら, 二国間協定よりも多国間協定の方が経済厚生は大きくなり, 低費用航空会社の参入も経済厚生を改善するからである。そして, 規制の強化ではなく, 市場を通じた航空会社の安全性の向上も可能である。また, 空港政策については必ずしも所有・運営に民間の参入が望ましいとはいえない。同時に, 格付けのあるレベニュー・ボンドには空港の運営規律を維持する作用があることも明らかになった。
著者
塩澤 真人 戸塚 洋二 鈴木 厚人 中村 健蔵 伊藤 好孝 久嶋 浩之 西川 公一郎 塩澤 真人
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、100万トン実験装置のための、安価で高性能な光センサーを開発するものである。13インチのハイブリッド光センサーの試作をし、動作試験から、改良研究を行った。いくつかの問題点が見つかったが、それに対する解決方法を明らかにした。1.高電圧(25キロボルト)印加できず放電してしまう。-->光電面を製造中にセラミック絶縁体を加熱し、耐電圧を向上させる。2.ダイオードの短時間での劣化がおきる。-->新たに5mmφの光ダイオードを開発した。寿命は改善したようである。3.有効面積が小さい(240mm)-->ダイオードの位置と光電面の曲率を最適化することにより、300mmまで改善できることがわかった。4.HPDの構造全体の最適化-->部品の効率化、フランジの強度改善、光電面の曲率の最適化案を作成した。以上の開発により、致命的な技術的困難はなく、大型ハイブリッド光センサーの優れた基本特性と製作可能性が確かめられたと考える。今後の課題としては、生産性の向上のための光センサーと電子回路の最適なデザイン検討と開発がある。また、コスト低減のために、さらなる大型化の可能性の追求も必要である。
著者
小川 泉 岸本 忠史
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

二重ベータ崩壊・暗黒物質などの超稀現象探索実験を行うために必要な高感度放射線検出用シンチレータ(主としてフッ化カルシウム結晶)の開発研究を行った。結晶中に含まれる放射性不純物の低減を図るとともに、結晶の組成や物理パラメータを操作することによる高感度化(バックグラウンド低減)の可能性を探った。これらの研究の結果、不純物濃度の低減と、冷却による粒子弁別の効率化を確認し、高感度化が可能であることを示した。
著者
坂 志朗 宮藤 久士 河本 晴雄 石山 拓二
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

固体バイオマスは石油や天然ガス等と比較してかさ高く、輸送や貯蔵等の取り扱いには不便である。このため、林地残材や廃木材などの多くが未利用のまま廃棄されており、これらの有効利用が望まれる。一方、超臨界流体は新たな化学反応場として注目を集めている。物質は温度と圧力条件により、気体、液体、固体で存在するが、臨界点を超えると超臨界状態となり、気体分子と同等の大きな分子運動エネルギーと液体に匹敵する高い密度を兼ね備えた高活性な流体となる。また、超臨界流体では化学反応の重要なパラメータであるイオン積や誘電率を温度、圧力によって大幅に制御できる。そこで本研究では、超臨界流体のもつ特異性を活用して、バイオマス資源をバイオアルコールに可溶化させることで、新規な液体バイオ燃料を創製することを試みた。これによってかさ高く取り扱いにくい固体バイオマスを、取り扱いやすく貯蔵しやすい液体バイオ燃料に変換することが可能となる。すなわち、各種超臨界アルコールの温度、圧力、処理時間と液化物への変換率の相関について検討し、超臨界流体による最も効果的な高効率液化条件を見い出し、アルコール可溶部を液体バイオ燃料として分離回収する方策を検討した。その結果、メタノール、エタノールおよび1-プロパノールのような低分子量のアルコールでは、350℃、20-30分の処理で95%程度液化物が得られた。一方、1-オクタノールや1-デカノールのような比較的高分子量のアルコールでは、350℃、数分までの処理で液化がほぼ完了した。しかし、液化物の分子量が大きく、液体燃料としての利用には何らかの付加処理による低分子化が必要であることが判明した。本液化機構については、ほぼその全容が明らかとなり、今後アルコール可溶部の液体バイオ燃料としてのポテンシャルを明らかにして行く。
著者
池田 直 森 茂生 吉井 賢資
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

RFe204は電子の密度分布で実現する誘電体(電子誘電体)であり既知の誘電体とその発現原理が異なる。またその特性が室温に置いても実現しているため、応用面においても新機能発現の期待が持たれている。本研究は発見されたばかりの物性を精査するため、RFe204試料について化学当量比と酸素欠損量をパラメータとして調整しながら試料合成を行い,強誘電特性発現条件を明確化し、さらに電子秩序強誘電性崩壊条件近傍にある非線形電気伝導特性を探索・解明することを研究実施目標に定めた。本研究の結果,気密天秤炉を用いることで,高品質なRFe204結晶作成に必要とされるパラメータが解明された。また高品位単結晶を作成するための溶融帯或法の様々な条件が解明され発見された。新たに開拓した手法で作成された単結晶は,電気抵抗率が著しく高くなる。さらにまた"不完全な電子強誘電性"とも言うべき電子相が存在していることを確かめた。この電子相は,電気電導率が非線形特性を示し,さらに結晶方位に対して異方的であることを発見した。さらに可視光照射に伴い電気電導率が向上し、同時に誘電率が低下する現象を発見した。室温における光照射に伴う誘電性と電導性の異常応答今までに見いだされている物質と光の相互作用の理解は,イオンに存在する核に束縛された一つの電子が,光から運動エネルギーを受け渡され,その束縛順位から開放される過程として記述されている。一方ここに発見された現象は,本来金属状態にある電子系が電子相関効果で形成する極性な電子集団の光応答であり、新現象である。電荷秩序状態の非線形融解現象の異方性本物質の電流電圧特性は非線形であることを見いだした。この現象の起源は,物質の中に内在する電気集団が電流により融解し,また自発的に電気分極を持つ状態に再凝縮するためにおこる。これは室温にみられる集団電子の融解と再凝集の新しい現象である
著者
吉川 周作 三田村 宗樹 前島 渉 兵頭 政幸
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

三重県志摩半島の鳥羽市相差町,南勢町,大王町,南島町,志摩町,さらに尾鷲市須賀利町に分布する各沿岸湿地において,数mの連続柱状試料を数本採取し,各柱状試料について肉眼での岩相記載や剥ぎ取り試料の実体顕微鏡岩相観察を行った.このうち,相差では有機質泥からなる湿地堆積物中に多くのイベント砂層を見出した.この相差で発見した各イベント堆積物の分布・特徴を詳細に解析するため,合計9本の柱状堆積物試料を採取するとともに,岩相記載のほかに,古地磁気・帯磁率測定,AMS^<14>C年代測定,珪藻・有孔虫・貝形虫の微化石分析を行った.主に岩相観察、有孔虫・貝形虫分析によって,相差の湿地堆積物に挟まれる12枚の砂層(OS-1…SO-12と呼ぶ)は,それぞれ級化構造など津波堆積物の特徴を有し,比較的広域によく連続することから,津波によって海から突発的に運搬されたイベント堆積物である可能性を指摘した.そして,このうち5枚の砂層は,比較的深い中部浅海帯の海底に生息する底生有孔虫を産出することを明らかにした.また、珪藻分析および^<14>C年代測定によって,7千年前までは内湾,7千〜3千年前は淡水湿地,3千〜千年前は海水の影響を強く受けた湿地,千年前以降は淡水湿地と堆積環境が変化したこと,12枚のイベント砂層は,7千年前以降の湿地堆積物に300〜500年周期で挟まれることを示した.以上の結果,鳥羽市相差では、東海・東南海地震によって来襲した津波は300〜500年周期で津波堆積物を残したものと判断した.
著者
クリステワ ツベタナ 小峯 和明 スティール ウィリアム 小島 康敬 古藤 友子 ロビンソン ケネス 宮沢 恵理子 高崎 恵
出版者
国際基督教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究の成果を大きく次の三つに分けることができる。すなわち1.パロディといういまだほとんど取り上げられていないテーマに焦点を合わせて、テーマの意義を証明し、研究方法を示したこと;2.日本文化におけるパロディのあらゆる可能性を分析することによって、すでにパロディとして取り扱われている作品やジャンルなどについて確認した上、いまだパロディと見なされていないが、パロディとして捉えるべき作品やジャンルについて指摘したこと;3.日本文化の発展におけるパロディの働きと役割の考察を通じて、意味生成過程のパターン、引用行為のメカニズム、文化的伝統の伝達など、日本文化の特徴に着目したことである。
著者
長澤 和夫 山下 まり
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

電位依存型NaChには9つのサブタイプが存在し、これらは各々が、痛覚、心拍、筋肉伸縮等の重要な生命活動と密接に関係している。本研究では電位依存型NaChの阻害剤である貝毒サキシトキシン(STX)類縁化合物を、NaChサブタイプ選択的なリガンドとして開発するための基盤構築を目的とした。その結果、STX類の一般的な合成法の開発に成功し、種々のSTX類縁体の合成に成功した。また合成研究過程で新規STX骨格(FD-STX)を見いだし、これをもとにFD-STX, FD-doSTX, FD-dcSTXの合成に成功した。得られた化合物のNaCh阻害活性について評価した結果、今回合成した誘導体類はいずれも天然のSTXに比べ1/10~1/100倍阻害活性が低下した。一方、サブタイプ選択性では、FD-dcSTXが、テトロドトキシン-抵抗型のNa_V1. 5に対して、非可逆的に結合することを見いだした。
著者
汪 達紘 筒井 研 佐野 訓明 益岡 典芳 伊藤 武彦 荻野 景規
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、酸化的ストレス誘発有害物質の評価法の開発とその実用化を目指している。平成17〜19年度にわたってマウス由来のカタラーゼ変異遺伝子導入大腸菌(Cs^a:正常カタラーゼ活性菌、Cs^b:低カタラーゼ活性菌)を用い、CAT Assayにより化学物質の細胞毒性等について検討し、以下の成績を得た。市販の染料であるヘンナ製品(タトゥーや髪染め等)及びその抽出物であるローソンを各菌株に曝露させると濃度依存的な細胞障害を示され、その障害が各菌株のカタラーゼの活性とは負の相関であった。また、ローソンの曝露濃度依存性にH_2O_2の生成上昇を確認した。更に抗酸化物質catalase、 capsaicin、 ascorbic acid等で前処理された菌株にヘンナ製品及びローソンの投与により細胞毒性は減少した。金属キレート剤であるジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)をローソンと一緒に各菌株に曝露するとDTPAの曝露濃度が高ければ高いほど各菌株の生存率が上がり、量-反応関係が見られた。ジチオトレイトール(DTT)は、チオール性抗酸化物質として広く使用されているが、活性酸素種を産生し酸化促進剤として作用することも報告されている。CAT Assayでは、Cs^a、 Cs^bともDTT濃度依存性の細胞毒性が見られ、両者の間には有意な差異が認められた。Catalaseの添加により、DTTの細胞毒性を完全に抑制され、ascorbic acid、 catechin及びresveratrolもDTT毒性の予防に有効であった。CAT Assayの実用性について、医療廃棄物の処理残渣及び一般廃棄物の焼却灰を用いて検討した。3種類の有機溶媒及び滅菌水を用いて試料の抽出方法について比較した。水及びメタノールの抽出物による各菌株の増殖抑制はカタラーゼ活性と負の相関があり、検体の曝露量が高ければ高いほど各菌株の生存率が下がり、カタラーゼ活性に依存していることが示唆された。アセトン及びヘキサンの抽出物は各菌株に影響を示さなかった。本研究で確立したCAT Assayは、酸化的ストレス誘発有害物質の評価法として応用が可能であると考えられる。
著者
宮崎 隆志 横井 敏郎 上原 慎一 石黒 広昭 藤野 友紀 間宮 正幸 大高 研道 日置 真世 武田 るい子 大高 研道 向谷地 生良 仲真 紀子 駒川 智子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

社会的に排除された若者の移行支援の課題を明らかにした。彼・彼女らの「生きづらさ」の背後には、生活世界を構成する諸コミュニティの断片化がある。したがって移行支援のためには断片化したコミュニティを再統合することが必要であるが、そのためには多様性が保障された新たな媒介的コミュニティを構築することが有効であること、およびそのコミュニティを中心にした地域的な支援システムを構想することが必要であることを明らかにした。