著者
岩崎 秀雄
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

シアノバクテリアの概日リズム,とくに転写翻訳に依存しない翻訳後振動子によるゲノムワイドな転写制御に関する解析を行った。連続明ではゲノム上の約1/3-1/2の遺伝子群に顕著な転写レベルの蓄積リズムが観られ,その位相分布,kai 依存性などを解析した。また,連続明では殆どの遺伝子の転写が劇的に低下し,プロテオームとトランスクリプトームの相関性に著しい乖離が生じること,ごく一部の遺伝子発現は暗期に活性化され,その多くはkai依存性がみられることなどを明らかにした。これらは,あらゆる生物種において,新規の概日遺伝子発現を欠く条件での初めての概日時計依存的転写調節の観察例である。
著者
澤田 和彦 井上 絋一 井上 紘一
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ブロニスワフ・ピウスツキはリトアニアに生まれたポーランド人である。彼はペテルブルグ大学在学中にロシアのツァーリ・アレクサンドル三世暗殺未遂事件に連座し、サハリン島へ流刑となった。この地でピウスツキは原住民ギリヤークやアイヌの民族学的調査を行い、民族学者となった。本研究では、日本、ポーランド、ロシア、リトアニアの研究者計13人の共同執筆によりピウスツキの評伝を完成した。また3冊のピウスツキ資料集を刊行した。
著者
面谷 信 中村 賢市郎
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

I.電子ペーパーの満たすべきヒューマンインタフェース条件の検討について次の成果を得た。1)手持ちの優位性を電子書籍端末を使った実験により確認した。2)ディスプレイ上で文書の間違いが見つかりにくいのは、作業を急ぐ傾向があることが要因のひとつと考えられることを見いだした。3)ディスプレイ作業では紙上作業に比して表示面を注視する傾向が確認された。4)電子書籍端末として読みやすい画面サイズについてその最適範囲を明らかにした。5)電子書籍端末として許容できる媒体重量について被験者実験により明らかにした。6)画面光沢の有無は呈示条件の好みに大きく影響し、光沢媒体では手持ちが好まれる傾向が顕著となる実験結果を得た。本結果は電子ペーパーにおいて表面光沢を避ける設計の重要性を示唆する。7)近点距離変化と主観評価の結果を総合し、現状の電子書籍はディスプレイと紙の中間的な疲労程度を示し、少なくとも疲労の点では90分程度の連続使用に特段の問題はないレベルにあることを示した。8)文書の表示形式0.5〜4ページの間においてページ数の増加に伴う校正作業成績の向上が確認された。II.電子ペーパーを実現するための表示技術の研究について次の成果を得た。1)電気泳動表示方式の検討:電気泳動表示における粒子帯電および泳動のメカニズムに関する検討を行い、粒子の駆動力源となる粒子電荷が従来の説明のように支持液体中の残存水分による液中イオンから得られているものではないことを明らかにし、非水系電気泳動現象のメカニズム解明を進めた。2)液体マイクロレンズ表示方式の検討:物質表面の濡れ性を電気的に制御して互いに接する2つの液体の界面曲率制御を行う液体マイクロレンズ表示方式の基本動作確認を行い、コントラスト確保のためのセル構造、液体材料に関する選定指針を示した。3)ER流体を用いた表示方式の検討:電界の印加で鎖状クラスタを形成するER流体(電気粘性流体)を用いて表示を行う方式について検討し、新たな電極形状および駆動方式の採用によりコントラストと表示安定性について大幅な向上を確認した。
著者
篠本 滋
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

脳シミュレータの基本要素である神経細胞の入出力関係を定量的に記述した.スパイク発生予測の国際コンペで優勝したMAT (multi-timescale adaptive threshold) modelについての論文を公表し(Kobayashi, Tsubo, and Shinomoto, 2009),それにさらなる改訂をおこない,オリジナルMATモデルの予測能力を保ちながら,オリジナルモデルでは達成できなかった多様な応答形式を実現できるモデルに改良した(Yamauchi, Kim, and Shinomoto, 2011).後者の研究では,オリジナルMATモデルの長所であるスパイク予測能力をそこなわないようにしてIzhikevichによって分類された多様な発火パターン20種類のすべてを実現することを可能にした.著名な外国人研究者を招へいし,質の高い情報収集を行い,またいくつかの国際共同研究を開始した.
著者
土井 政和 岡田 行雄 正木 祐史 渕野 貴生 井上 宜裕 武内 謙治 金澤 真理 佐々木 光明
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、(1)社会内処遇について理論的実証的検討を行い、(2)更生保護基本法要網試案を作成することであった。目的(1)との関連では、前年度までの研究の成果として刑事立法研究会編『更生保護制度改革のゆくえ-犯罪をした人の社会復帰のために』(現代人文社・2007年5月)を公表した。いくつかの事件をきっかけに誕生した「更生保護の在り方を考える有識者会議」の提言は、傾聴すべき改善案を含む一方で、監視強化の方向性をも内包したものであった。その方向性は更生保護法にも引き継がれている。それは、指導監督と補導援護を統合し、援助とケースワークを基本に実施してきた従来の実務動向とは逆行するものと評価できよう。本書では、そこに欠けている歴史的視点や一貫した社会的援助の理念、保護観察対象者の法的地位及び国際準則等について分析検討を行った。これらの成果を生かす形で、更生保護立法に対する働きかけも継続的に行った。参議院法務委員会参考人意見陳述(6月5日):土井政和「更生保護法案についての意見」、更生保護法案審議中の参議院法務委員会等に対する「更生保護法案についての意見」提出(2007年5月4日)、「『仮釈放,仮出場及び仮退院並びに保護観察等に関する規則の一部を改正する省令案』に関する意見募集」(法務省:案件番号300110003)に対する意見書提出(2007年9月4日)、「犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則の制定について(意見募集)」(法務省:案件番号300110006)に対する意見書提出(2008年3月10日)がこれである。目的(2)の達成のため、最終年度における研究会の過半を費やして、要綱試案策定に力を注いだ。その成果は、現在取りまとめ中であるが、龍谷大学矯正・保護研究センター2007年度研究年報に掲載の予定(8月刊行予定)である。
著者
深田 智
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

将来の核融合炉燃料トリチウムサイクルあるいは既存の核分裂炉燃料処理水において大量のトリチウム排水が生じる。法規制値内であれば、そのまま放流できるが、規制値を超える場合、大量の水で希釈する必要がある。しかし、トリチウム濃度が高く、濃縮減容する必要があると、現在では、水-水素同位体交換法が重水減速材製造用に一部実用化されているだけであり、トリチウム排水濃縮に適用するためには、希釈トリチウムの濃縮技術が証明されていないこと、水-水素同位体分離に使用する白金系触媒が高価で、CO被毒の可能性があることなど実用化には多くの課題があり、現実的にそのまま保管貯蔵されているのが現実である。本研究者は、水蒸気吸着処理に用いられるゼオライト系吸着剤あるいはシリカゲルの軽水-トリチウム水間の同位体分離係数が、1.1〜1.2程度であることに着目し、これを連続同位体分離できる蒸留塔分離システムを構築し、より小型で簡便なトリチウム同位体分離システム構築確認の実験をおこなった。本科学研究費計画年度内におこなった、ゼオライト系吸着剤であるモレキュラーシーブ13Xや5A、シリカゲル吸着剤を同位体分離挙動全般について比較すると、ゼオライト系では平衡分離係数は大きいが、吸着と脱着速度が遅く(従ってHETPが大きく)蒸留塔の蒸気速度が遅いときのみ同位体分離が優れるが、同位体収量を上げるため蒸気速度が大きくすると、シリカゲル吸着剤による方が高い分離を示すことが分かった。これまでの研究成果はおもに、英語論文誌に発表した。最終年度であり、成果をまとめて研究成果報告書を完成させ、提出する。
著者
松井 孝典 阿部 彩子 杉田 精司 大野 宗祐
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では, 堆積岩及び各種氷の衝突脱ガス過程における化学反応過程の解明を目的として実験を行った. また, 脱ガス過程からの反応生成物が, 地球気候システムに及ぼす影響の定量的評価を行った. 結果として, (1)衝撃脱ガスによるCO2の発生は, 先行研究の推定より非常に高圧でのみ起きることと(2)白亜期末の巨大隕石衝突後には, 従来想定されていたCO2の大量発生ではなくCOが大量に発生したらしいこと, (3)COが大量発生した場合には, 強力な温室効果が起きることが分かった.
著者
渡邊 公一郎 今井 亮 横山 拓史 板谷 徹丸 三谷 泰浩 小林 哲夫 本村 慶信 セティジャジ ルーカスドニィ 高橋 亮平 米津 幸太郎 糸井 龍一 池見 洋明 実松 建造 HARIJOKO Agung SHERSTEN Anders IDRUS Arifudin WARMADA I Wayan DUNCAN Robert A.
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

インドネシア及びフィリピンの金・銅鉱徴地と地熱資源、タイ及びマレーシアの含REE花崗岩風化殼、フィリピンの斑岩銅鉱床および浅熱水性金鉱床についての地質調査を行い、鉱床生成条件の解析に基づく資源量と開発可能性の評価を行った。また、地質試料と室内実験データについて、地理情報システムとデジタルデータベースを併用した統合管理システムを構築した。
著者
今村 律子 矢野 勝 綿貫 茂喜
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

健康な男子学生28名に研究協力を依頼し、10月〜11月にかけての4週間の間、夜間睡眠時に同一素材の肌着をパジャマとして毎晩着用してもらい、その間の皮脂成分の変化を測定した。皮脂の採取法は、有機溶媒を用いたカップによる抽出法とし、背部肩甲骨上部から皮膚表面皮脂を実験前、実験開始1,2,3,4週間後に採取した。供試肌着は、綿100%(吸湿率7.75%)、ポリエステル100%(同0.63%)および綿・ポリエステル・キュプラ混(同6.46%)のそれぞれ水分率の異なる3種類のものとした。肌着の洗濯は験者が条件を統一しておこなった。皮脂分析は、薄層クロマトグラフ法を用いた。皮脂は、スクワレン(SQ)、トリグリセリド(TG)、ワックスエステル(WE)、遊離脂肪酸、コレステロールエステル、コレステロールおよびセラミドの7種類に展開分離させた。展開後の薄層プレートは、デンシトメータ(島津、CS-9300PC)で読み取り、定量化した。皮脂は、皮脂腺由来成分と表皮由来成分に分けることが出来る。本研究では、皮脂の約9割を占める皮脂腺由来成分であるSQ、TG、WEに注目して解析をおこなった。グループ間のWE、TG、SQを平均値で、また着用前の値からの変化量で分析したところ、WEは、綿肌着着用群において、着用3週間目まで上昇し続け、平均162%となった。TGは、綿着用群は、1週間着用後132%まで上昇し実験終了時まで130%の値を維持した。ポリエステル着用群では、WEは、着用2週目まで一旦上昇したがその後低下し、実験終了時には78%であった。TGは、1週目にピーク値を取り、その後低下して最終的には80%であった。混紡肌着は、両者の中間になった。SQは、3種類の肌着間に一定の変化は認められなかった。
著者
梅村 晋一郎 吉澤 晋
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

生体組織の超音波加熱を促進するキャビテーション気泡の強力な超音波パルス照射による生成を,まず,高速度カメラを用いて研究した.そのために,生体に類似した超音波特性をもち光学的に透明なゲルファントムを作成し,実験を行った.強度10kW/cm^2程度以上の超音波パルスにより,目的の気泡をゲル中に生成できること,また,100μs程度以下の短いパルスを用いれば,超音波焦点付近に限局して生成できることを確かめた.次に,生成したキャビテーション気泡により,摘出生体組織を超音波加熱凝固するスループットを顕著に改善できることを確かめた.さらに,第2高調波重畳波を用いることにより,目的のキャビテーション気泡を発生するに必要な超音波強度を顕著に低下させ得ることを見出した.
著者
西崎 一郎 上田 良文 林田 智弘
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

(1) 耕種農業と畜産農業が混在する北海道十勝での耕畜連携型農業モデルの研究に対して,耕種農業者への便益,畜産農業者への便益,耕畜連携型農業を運営する組織の運営,環境への影響の4つの目的を有する多目的問題として定式化し,複数の代替案を構成し,比較する.(2) 日照時間の長い宮崎での太陽熱利用のハウス暖房による有機野菜栽培モデルの研究に対しては農家の満足度,地域農業の振興,環境への影響の3つの目的を有する多目的問題として定式化し農業ビジネスモデルの複数の代替案を構成し,比較する.
著者
原 圭一郎 林 政彦 塩原 匡貴 橋田 元 森本 真司
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

南極で出現するヘイズの物理的・化学的特性、空間分布、出現頻度に関する知見を得るために、昭和基地において、エアロゾル・ガスの同時観測を実施した。得られた観測データと過去のデータの再解析から、強風下で起きる海氷域からの海塩粒子放出がヘイズ現象の主要因であることが示された。ヘイズの出現頻度は7-9月に増加しており、海氷面積の季節変化との対応が確認された。ヘイズ層は主に地上近傍~2kmの高度で観測されることが多かったが、4kmまでエアロゾル層が広がった例も確認された。極夜明け時期(8-10月)のヘイズ現象時にオゾン濃度も確認されたことから、ヘイズ現象は大気化学過程と密接に関連していることが示唆された。
著者
河野 一郎 清水 和弘 清水 和弘 赤間 高雄 秋本 崇之 渡部 厚一
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では,唾液中のヒートショックプロテイン70(HSP70)が競技選手および高齢者のコンディション評価指標としての有用性について検討した.一過性高強度運動で唾液HSP70が増加することを示した.また継続的な高強度運動で安静時のHSP70は顕著な変動はしないが,その原因として高強度運動に対するHSP70応答の個人差が考えられた.さらに継続的な運動で高齢者の安静時HSP70が高まり,さらにHSP70がT細胞活性経路の亢進メカニズムに関わる可能性が示された.以上より,唾液HSP70によるコンディション評価は,競技選手では個々の変動が異なるため検討が必要であり,高齢者では有用である可能性が示された.
著者
下井 信浩 長谷川 彰 谷田部 喜久夫 市村 洋 片桐 正春 西原 誠一郎
出版者
東京工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

我が国で初めて、東京高専の下井研究室と千葉大学の野波、研究室との共同研究により、開発された半自律型(制御面で完全自律とはまだ表現できない。)地雷探知用6足歩行ロボットの試作機(COMET-I)は、各々の歩行脚に高性能磁気探知器を搭載し、地中に埋設された対人地雷の信管部の金属反応を探知して、地雷に接触することなく回避することが可能である。これらの実験は、2000年2月22日に実地された一般公開野外試験等において基礎的な技術検証が得られている。(2月23日の朝日新聞及び読売朝刊等に掲載された)また、ロボット腹部には地中レーダによる埋設地雷探知器を搭載している。これにより埋設されている地雷が対人地雷であるか対戦車地雷であるか等を判断し、地雷埋設地帯において探知された地雷が対人地雷のみである場合は、速やかにロータリカッタ付の特殊車両等により埋設対人地雷を粉砕処理を実施することを可能にする基礎技術を得ることが出来た。地雷探知用半自律型6足歩行ロボット(COMET-I)の概略は、不整地歩行の安定性を考慮して歩行脚を6足とし、各脚は3関節の自由度を持ち平行リンク機構を用いた独立制御が可能である。また、地雷の埋設箇所を回避した時のバランスを失うことのないよう重心の安定性を考慮した設計がなされている。駆動用の電源は、短時間の作業にはバッテリーを搭載し、長時間の作業には外部から供給する。総重量は、約120Kg、外形寸法は1.4m×0.8m×1mであり、実用を考慮した形状をしている。また制御面においては、2台のパーソナルコンピュータを搭載して分散制御と姿勢制御を併用したニューラルネットワークを基本とする非線形制御を実施、外界センサー技術として可視光及び赤外線映像による画像認識技術と自己位置計測等に超音波及びレーザレンジファインダー等を用いている。
著者
竹中 隆 田中 俊幸 周 輝 西本 昌彦
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

長崎大学の研究グループでは改良された合成開口処理法を提案した.次に乾燥した砂による地雷フィールドを作成した.この地雷フィールドに金属製の地雷を想定した直径3cm,長さ5cmの金属円柱とプラスチック製地雷を想定した直径7cm,長さ5cmの円柱(ロウソク:比誘電率2.6)を埋設し,検出実験を行い,改良された2次元合成開口処理法の有効性と現有のレーダ装置に対する地雷探査の限界を確認した.さらに,改良された3次元合成開口処理法を提案し,2次元合成開口処理では識別が困難であった模擬プラスチック地雷でも,精度良く推定できることを示した.また,処理時間の短縮化を図るため,2段階の3次元合成開口処理を検討し,マルチグリッドの概念を3次元合成開口処理に取り入れることにより処理時間の大幅な短縮(従来法で約60分の処理時間が約1分)が可能であることを示した.熊本大学の研究グループでは,地雷とその他の物体(石など)を識別するのに有効な特徴の一つとして,ターゲットの上面と下面で反射されたパルスの時間間隔を用いる方法を提案した.この特徴を用いた検出・識別アルゴリズムを基に,実際に地雷識別部を構成し,計算機シミュレーションにより有効性を確認するとともに,信頼性・安定性の検証を行った.すなわち,地雷の種類,地面の粗さ,地雷の深さ,土壌の誘電率や導電率(含水率)など,種々のパラメータの変化に対する識別性能の変化を定量的に評価し,総合的な検出・識別性能と適用限界を明らかにした.同時に適用限界についても検討にした.また,実験的にも有効性を確認するため,センサ用のアンテナシステムを構築し,これを用いたモデル実験による有効性の確認を行った.さらに,性能向上へ向けての取り組みとして,最適な低次元特徴ベクトルについての検討も行なった.
著者
柴田 佳子
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

カリブ海社会のアジア系、特に内外の研究で最も手薄な中国系に焦点を当てたことで、現地内外のカリブ海地域研究に貢献できるものとなった。具体的には、経済社会的に躍進を続ける現地生まれの中国系のジャマイカ社会へのコミットメントのあり方を、諸行事や生活などの参与観察と多数へのインタビューなどにより、到来150周年記念を契機にエスニシティが再活性化される様態を明らかにした。さらに80年代以降の中国の改革開放政策、ジャマイカでの自由経済政策への転換によるフリーゾーンへの若者労働者、また従来型の親族ネットワークによる移民、出稼ぎ労働者の五月雨式到来により、チャイニーズ・コミュニティは大きな転換期を迎えたが、その種々の側面と動態について調査した。なかでも政治経済的左傾化で大挙して海外逃避した70年代に廃墟と化し、長年の懸案だった民族共同墓地の再編は特筆すべきで、世代を超え、最新の技術や知識、資金を駆使し、内外のディアスポラ・ネットワークが動員されている。グローバル化のマクロなレベルとの連動やクレオール化には従来の主流派のアフリカ系/黒人系主体とは異なる位相がみられ、グローカル化、ディアスポラ研究、トランスナショナリズム研究へも重要な知見の提供が可能となった。現代の急速に変化するミクロなレベルの動態とグローバル化との関連、クレオール化の現代的位相において、ガイアナはジャマイカとは別種の展開をみせ、カリブ海社会の多様な変化の実態を証明できる。ガイアナのエスニック・コミュニティはインド系と中国系では全く異なる。中国系の旧移民はほとんどが国外居住し、共同体としては崩壊したが、90年代から参入増加が目立った新移民がとって代わりそうな状況にある。しかし、クレオール化した旧移民とのコミュニケーション回路がほとんどなく、言語、宗教、生活文化の差異は分断する決定的な影響を与えていることがわかった。
著者
寒川 恒夫 石井 浩一 安冨 俊雄 瀬戸口 照夫 宇佐美 隆憲
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究では,(1)日本の民族スポーツの実施状況を地方誌など主に文献資料によって把握し,次にその基礎の上に(2)47都道府県について各1〜2事例を選んで現地フィールドワーク(参与観察と聞き取り調査)をおこない,個々の事例の変容過程を明らかにした上で,変容の諸傾向を抽出することに目的が置かれた。研究目的の(1)については,対象事例が年中行事化しているものに限ったが,(a)実施頻度に地域差がみられること,(b)日本列島全体に実施が及ぶ種目と特定地域に実施が限定される種目があり,種目間に分布差がみられることが明らかにされた。研究目的の(2)については,観光化変容,行政公共化変容,簡素化変容,競技化変容の諸傾向が抽出された。観光化変容とは,民族スポーツが地域の経済振興のための観光資源としてその内容を変化させられてゆく現象という。行政公共化変容は,従来特定の集団に伝承されてきた民族スポーツが諸種の理由から主催権を市町村など行政当局に委譲したことによる変容を指している。簡素化変容は,人口減や経済的負担の増加などの理由から,主催集団が民族スポーツの規模や内容を簡略化する現象をいう。競技化変容は,それまで競争の形式をとっていなかった民俗行事が競技の体裁を取ってゆく現象をいう。これら4つの傾向は,それぞれを独自に生起する場合もあれば,その中のいくつかが複合する場合もある。
著者
陶安 あんど
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、出土簡牘資料によって齎された秦代と漢代初期の二つの司法文書集成を整理・分析し且つ通常の行政文書と比較研究することを通じて、行政文書の書式、行政的な「裁き」の構造、文書行政による労働負担と資源の配分原理、及び文書集成による法的知の形成と伝承の解明に努めた。中国で中国籍以外の研究者が出土資料の整理を担当するのが史上初めての試みで、日本の法制史研究及び簡牘研究の成果を国際的に発信し、日中学術交流にも画期的な貢献をした。
著者
高嶺 豊 KHAN Imran Ahmed BALARAJU Kasupa DAS D.K.Lal REDDY Sudhakara MURTHY Krishina PRATAP Kumar Raja
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

南インドのアンドラプラデッシ州における障害者の自助グループとその連合体の構築の取り組みが、開発途上国の農村部における障害者のエンパワメントと貧困削減に効果的であることが検証された。この取り組みは、さらなる研究が必要であるが、今後、この取り組みが、他の開発途上国においても障害者の貧困削減のための重要な解決策となることが期待される。
著者
赤池 紀生 賀数 康弘 鍋倉 淳一 ANDRESEN Michaelc 李 禎そぶ ANDRESSE M.C 野田 百美
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

延髄孤束核(NTS)において,染色された上行性大動脈弓由来降圧神経(ADN)は孤束を介してmedial NTSの樹状突起と細胞体に投射していた.ADNからの入力を受ける細胞は,ADNから単シナプス性入力を受けない細胞よりもカイニン酸応答が約2倍に増強していた.また,ADNからの神経伝達物質はグルタミン酸であり,後シナプスNTS細胞におけるグルタミン酸受容体はnon-NMDA受容体であった.また,後根神経節などの感覚器受容細胞にはVR-1(バニロイド配糖体)受容体が高密度に発現しているが,ADN神経終末にもVR-1受容体が存在しグルタミン酸放出が増強することが明らかとなった.しかしVR-1受容体のアゴニストのカブサイシン頻回投与ではむしろグルタミン酸放出量が減少したことから,後シナプスNTSニューロン上のnon-NMDA受容体が脱感作するか,もしくはグルタミン酸放出が枯渇する可能性が考えられた.さらに,VR-1受容体が高密度に発現している部位にはATP受容体の一つであるP2X3受容体が共存していることが1997年にCaterinaらによってNature誌に報告されており,medial NTSより得たシナプスブートン標本においても,P2X1,3,2/3受容体アゴニストのαβ-met ATPならびにカプサイシンともに,後シナプス細胞に影響することなくグルタミン酸の放出のみを増強した.以上の結果から,VR-1受容体とP2X受容体はグルタミン酸作動性興奮性神経終末部に共存してグルタミン酸の放出を促進し,その結果NTSニューロンの興奮を惹起して降圧効果を示すことが初めて明らかとなった.