著者
岸田 研作 谷垣 靜子 藤井 大児 張 星源 乗越 千枝
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

介護保険になって、サービスを利用者が選択する仕組みになった。しかし、利用者には、サービスを選択するのに必要な情報が充分提供されてきたとは言い難い。そのため、サービスの選択は、利用者が直接行うのではなく、ケアマネジャーが勧めることが多いといわれる。しかし、ケアマネジャーは、利益誘導のため自分が所属する事業所のサービスを勧める傾向があるといわれる。そこで、本研究では、ケアマネジャーによる利用者に対する事業者情報の提供の実態について調べた。
著者
植田 浩史 本多 哲夫 中瀬 哲史 田口 直樹 長尾 謙吉 大田 康博 桑原 武志 粂野 博行 義永 忠一
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

平成17年度は、おもに三つの課題に取り組んだ。第1は、今回の研究課題の具体的な成果の取りまとめに向けた準備であり、第2は、課題の国際比較研究のための海外調査の実施、第3に、製造業実態調査の再集計(岸和田市)である。第1の課題については、クラスターにとって重要な意味を持つと考えられる公設試験研究機関を対象に研究成果を取りまとめることを課題として、これまでの研究機関で行なわれてきた調査結果の取りまとめ、補充調査などに取り組んだ。特に、全国の公設試験研究機関の実態を把握するために、郵送アンケート調査を実施し、現状についてのデータの収集に努めた。公設試験研究機関に関する研究はすでに報告書案を策定し、執筆分担を確定し、執筆に取り掛かっている。平成18年度中には刊行されることになっている。この報告書(仮題『公設試験研究機関と中小企業』)では、企業、大学・研究機関、自治体のネットワークの中心として、地域産業クラスターの要の役割を果たすことが期待されている公設試験研究機関が置かれている現状と課題を実態調査を元に明らかにするとともに、高まる期待にこたえていく上でさまざまな課題が存在していることが示されることになる。第2の課題については、クラスターとしてこれまでも重視されてきたイタリアのプラート地域、現在新たなクラスターを形成しつつある中国蘇州地域を対象に海外調査が実施された。プラート地域については、1980年代に議論されてきた産業地区のイメージから大きく変化しつつあること、蘇州地域についてはローカル企業と日本をはじめとする海外企業の進出による新たな分業構造がクラスターの性格に大きく影響していることが調査によって明らかにされた。第3の課題については、岸和田市と協力して岸和田市の地場産業である繊維産業について製造業実態調査(全数調査)の再集計が行なわれた。
著者
村松 浩幸 杵淵 信 渡壁 誠 水谷 好成 山本 利一 川崎 直哉 紅林 秀治 松岡 守 関根 文太郎 田口 浩継 川原田 康文 松永 泰弘 吉田 昌春 大橋 和正
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

3年間の研究により,現実の技術開発を疑似体験させるロボット学習の教育システム(カリキュラム,関連教材)を開発した。技術観,職業観についても信頼性,妥当性のある尺度を開発できた。そして全国各地の中学校で複数の実践を行い,必修の授業での簡単なロボット学習であっても,現実の技術や技術開発と関連付けることで,生徒の技術観,職業観を向上させうる可能性を確認できた。
著者
伊藤 美千穂 本多 義昭 木内 文之 北山 隆
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、フィールドワークを軸として、ターゲットとする薬用植物についてのインテンシブな研究と、地域の民間伝承薬・薬用資源全般を対象としたエクステンシブな研究を組み合わせたプロジェクトとして計画しました。調査地域をインドシナ、特にラオス、ベトナム、タイの3国に絞り、時期を変えて繰り返し現地とラボを往復することで多様なサンプルとそれらに付帯する情報を効率よく収集することができ、特にインテンシブなターゲットとしたジンコウ、ケイヒ、シソについては多くの新たな知見を得ました。ジンコウに関しては、現地圃場での成木を使った処理実験と、実験室での培養細胞を使った化合物投与実験等の結果を組み合わせた考察から、香気成分構成要素のうち、セスキテルペン類は障害応答とよく似た仕組みで成分の生合成が誘導されるが、クロモン類はこれとは異なり、細胞死と並行して蓄積量が増加することを明らかにし、植林木を用いた沈香生産にむけての基礎的知見を得ました。ケイヒについては、ベトナム中南部に産するMN桂皮と呼ばれるものが特に他の産地のものより甘いということから含有成分と甘みに関して追究し、ケイアルデヒドが甘みに最も大きく関与する成分であることを明らかにしました。シソに関しては、インドシナ山岳地域を中心とする陸稲栽培ではエゴマ(シソと同種)を混作することが一般的に行われており、人々はそのタネを食することから葉茎の精油型には無頓着で選択圧が殆どかかっておらず、収集してみると多様な精油型が見出されました。それらの中から、精油成分生合成中間体と予測される化合物を多量に含むものを初めて発見し、育種を開始しました。ショウガ科植物については、バイオマスとしての利用を意識した有機合成反応に関する研究を重ねています。以上のように、本研究では、インドシナ特産の薬用資源植物を取り上げ、多様なアプローチで有効利用を考えるための多くの基礎的知見を得ました。
著者
田村 正人 梨本 正之 石崎 明
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では,未分化な筋芽細胞株であるC2C12細胞にcanonicalなWntとして知られるWnt3aならびにnon-canonicalなWntであるWnt5aを過剰発現させた細胞株を作製した.C2C12細胞では,骨基質タンパク質の一つであるMEPEを産生していないが,Wnt3a-C2C12細胞ではBMP-2によってMEPEやMMP-13の発現が大幅に誘導された.これらの結果から,骨芽細胞の分化においてWntとBMP-2の2つのシグナルが協調して特異的に骨基質タンパク質やMMPの発現を調節していることが明らかになった.次に,骨芽細胞分化においてWntとBMP-2の2つのシグナルの間でどのように調節しているのか検討した.canonical WntシグナルがBMP-2の誘導するId1 mRNAの発現を調節することを見出した.また,BMP-2はC2C12細胞の筋管形成を抑制するが,Wnt3a-C2C12細胞ではこのBMP-2の筋分化抑制作用が低下していた.すなわち,WntとBMP-2の2つのシグナルの間にクロストークがあることがわかった.さらに,Wnt3aによりOPG濃度は著しく増大した.一方,RANKLの発現はWnt/β-catenin及びBMP-2いずれによっても抑制された.活性型β-catenin応答領域を特定するために-253までの領域の4つのLef/Tcf1認識候補部位の変異レポーターコンストラクトを作製した.転写活性の検討ならびにクロマチンIP法を用いた結合因子の同定を行った.以上の研究からWnt/β-cateninシグナルの標的遺伝子としてOPGを同定し,転写活性化機構の詳細を明らかにした.骨芽細胞においてWnt/β-cateninシグナルとBMPシグナルが協調してOPGを介した破骨細胞の分化と機能を調節している可能性が示された.
著者
和氣 徳夫 小林 裕明 福嶋 恒太郎 加藤 聖子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

Ras/ERα/MDM2/p52/p21シグナロソームにはゲノム多様性が存在し対立遺伝子間発現量に差異があることを明らかにした。特にMDM2 p1プロモータ活性にはAEDが関与し、その機能に影響を与えていることが判明した。子宮体癌幹細胞で発現を更新する遺伝子を同定した。そのうち細胞表面で発現するものを標的に抗体を作成し幹細胞を同定するMACSシステムを構築した。
著者
鳥居 本美 石野 智子 大槻 均
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

スポロゾイトにおいて発現される分泌型分子P36pのタンパク質動態を詳細に解析した。肝細胞侵入後にP36pの貯蔵量が減少することから、P36pが細胞侵入に際して分泌されて機能することが示唆され、肝細胞認識/侵入に関わるという知見が強く支持された。P36pと相互作用する肝細胞膜分子は検出できなかったが、メロゾイトの細胞侵入関連分子が新たに6種類、スポロゾイトでも発現していることを見出した。
著者
樋田 京子 進藤 正信 戸塚 靖則 東野 史裕 樋田 泰浩 北村 哲也
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

腫瘍血管内皮細胞に特異的に発現しているマーカーをシグナル伝達経路,新規性などの観点からピックアップした.siRNAによるマーカーのノックダウンを行い, マーカーの発現抑制が及ぼす細胞への増殖・遊走能への影響を解析した.その後蛍光免疫2重染色によりおこない,ヒト腫瘍血管における発現を確認した.ヒトにも発現が認められたマーカーの阻害剤を用いたところ,in vivo血管新生の抑制を伴う抗腫瘍効果をみとめた.腫瘍血管内皮特異マーカーを標的とする治療の実現が可能であることが示唆された.
著者
奥田 昌之 芳原 達也 國次 一郎 杉山 真一
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

コメットアッセイ(single gel electrophoresis)による毒性評価は細胞DNAの障害性をとらえることができ、様々な臓器や動物種に応用されている。本研究では労働衛生の現場で利用される化学物質でも損傷をとらえることができるのか、またどのような損傷をとらえることができるかを明らかにするという研究を計画するに至った。まず化学物質による健康被害の報告が有り、その化学物質に特異的な臓器の障害が明らかである物質として、ブロモプロパンに注目して実験研究を行うこととした。ラット(Wistar系)精巣から取り出した精祖細胞、精母細胞に短時間のブロモプロパンを曝露させると、濃度依存的、時間依存的にコメットアッセイによるDNA損傷がおきた。また、ブロモプロパン類のなかでもBr基を多く持つ化合物の方がDNA障害を起こすことがわかった。産業現場で用途が似ているトリクロロエチレンとの同時曝露を行うと、ブロモプロパンによるDNA障害は軽減された。この機序については今後詳細に検討する必要が有る。DNAの加水分解を起さない条件下でコメットアッセイを行ったところ、コメットの形成は明らかではなかった。また精巣から抽出したDNAを用いた実験では、アポトーシスを起すと報告されているzealarenoneと比べて、ラダー形成は顕著なものではなかった。酸化的ストレスの指標である80HdGを測定したところ、初代培養細胞および組織のDNAにおいてブロモプロパン高濃度曝露で80HdGが上昇していた。これらの結果は、コメットアッセイでDNA障害性を検知することができるとともに、コメットアッセイを行う条件を変えることでアポトーシスによる損傷と区別することができることを意味する。コメットアッセイの実験方法を工夫することにより簡便な毒性の評価方法、スクリーニング方法となりえるという知見を得た。
著者
三井 唯夫
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

大容積・低バックグラウンドの液体シンチレータ検出器に、到来方向検出と粒子識別の能力を付加するための基礎研究を行った。液体シンチレータの発光点をイメージインテンシファイアユニットによって撮影することによって、1MeVガンマ線の位置分解能が、現在の15cmから5cmへと改善することを実測した。また、以前開発した「リチウム6液体シンチレータ」の中性子捕獲時間・捕獲後アルファ線エネルギーの測定を行った。これらの基礎データを用いて、地球ニュートリノ到来方向測定のシミュレーションを行った。
著者
水谷 修紀 高木 正稔
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

小児白血病の発症機序解明に向けて胎児環境と遺伝の視点から解明を試みた。妊娠マウスにDNA損傷刺激としてエトポシドを母体腹腔内に投与し、胎児造血細胞の状態の経時変化を追跡した。比較対象として母体マウスの骨髄を用いた。DNA損傷の程度を胎児肝、母体骨髄で解析した結果、胎児肝がはるかに強いDNA損傷応答を示すことが分かった。以上からDNA損傷刺激に対しては胎児の方が母体より強いことが判明した。染色体異常においてもATM+/+、ATM+/-、ATM-/-の遺伝的背景の中でATM-/-では顕著な増加が認められた。発がん遺伝子の効果をATM遺伝子の遺伝的背景の中で比較した。その結果、ATMのhaploinsufficiencyが発がん効果を発揮することを証明した。
著者
大曽根 寛
出版者
放送大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、当初、フランスと日本の新しい障害者政策の構造と施行実態に関する比較研究を構想していたが、両国の政策の全体系の比較検討を報告書として印刷するには到らなかった。最終年度の2010年度末に発行した報告書では、焦点を精神障害という領域に絞り、さらに職業支援に関することがらに限定した。それゆえ、最終報告書のタイイトルは「フランスと日本における新しい障害者政策に関する比較研究-精神障害者への職業支援を中心にー」としてある。また、2009年度末に、中間報告書として発行した「フランスの新しい障害者政策の紹介」では、制度・政策の詳細を示している。あわせて参考にしていただければ幸いである。
著者
横矢 直和 竹村 治雄 神原 誠之 山澤 一誠 大隈 隆史 荒木 昭一
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

1.現実世界と仮想世界の幾何学的位置合わせ拡張現実環境を構築するための最も基本的な課題である現実世界と仮想世界の位置合わせ問題に関して、複数の基本手法を開発した。具体的には、(1)ステレオカメラで取得した現実世界の映像からのマーカと自然特徴点の自動切換え追跡に基づくビジョンベース手法、(2)ジャイロセンサを併用することによる位置合わせのロバスト化手法、(3)赤外線ビーコンやRFIDタグのような環境インフラと歩数計測を用いるセンサベース手法、(4)屋外においてGPSとジャイロセンサを併用する手法等である。2.現実世界への注釈情報の付加現実世界の特定の場所・物に関する注釈情報を提示するためのユーザインタフェースの研究を行い、ユーザの眼前の実物体に対するオブジェクト名の重畳表示とユーザが注視している物体に対する詳細情報の提示からなる2段階情報提示法を開発した。またネットワーク環境において実時間で注釈青報の追加・更新・引用を行うためのネットワーク共有型注釈データベースの設計・実装を行い、複数のユーザが場所に依存した情報の実時間での発信と共有を行うための基本的な枠組みを確立した。3.プロトタイプシステムの開発上記1、2の成果を統合して着用型拡張現実感システムのプロトタイプを複数開発し、実験を通して機能実証を行った。開発したシステムではいずれも、現実世界の映像に注釈を重畳合成したものをユーザに提示するビデオシースルー型拡張現実感方式を採用した。最終的には、屋内外無線ネットワーク環境(IEEE802.11a及びb)での技術デモを行い、着用型拡張現実感システムの可能性を世に示した。
著者
大志万 直人 吉村 令慧 藤 浩明 塩崎 一郎 笠谷 貴史 藤井 郁子 藤 浩明 塩崎 一郎 笠谷 貴史 山崎 明 藤井 郁子 下泉 政志 村上 英記 山口 覚 上嶋 誠 新貝 雅文
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

日本海の鳥取県沖の海域と陸域での観測を連携させた電場・磁場観測を実施した。観測は、1)鳥取県と兵庫県の県境付近沖の海域を含む測線と、2)隠岐諸島周辺海域の日本海を含む測線で実施した。これらの測線に沿って、海域では海底磁力電位差計、および海底地電位差計を用いた観測を、また、陸域では、長周期電場・磁場観測を実施した。得られた広域比抵抗構造モデルによると、陸域では上部地殻が高比抵抗領域、下部地殻が低比抵抗領域として検出された。さらに日本海下深部に低比抵抗領域が見出された。
著者
佐藤 年明 児玉 克哉
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

前回科研費研究(2001-2004年度)時には達成できなかった、スウェーデンの基礎学校.高等学校におけるsex och samlevnad(性と人間関係)の授業観察の機会を得ることができ、日本語による授業記録作成と分析を行なうことができた。
著者
田中 信男 池上 亨
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

高速型、および、高理論段数型、モノリスシリカキャピラリーカラムの開発、高性能化を行った。シリカキャピラリー管内でテトラメトキシシランとメチルトリメトキシシランを原料とするシリカモノリスの調製において、シリカ量、ならびに、1-2μmのマクロ細孔と約10nmのメソ細孔の大きさを制御することにより、溶媒のカラム通過時間10sで10000理論段、5000sで1000000理論段の発現を可能とし、超高性能分離を実現した。
著者
池田 素子 小林 迪弘
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

カイコ培養細胞(BM-N細胞)は,ある種の核多角体病ウイルスの感染に対して,細胞のタンパク質合成だけでなく,ウイルスのタンパク質合成も停止して全タンパク質合成停止となり,ウイルス増殖を阻止している.本研究は,この全タンパク質合成停止の分子機構の解明を目的として行った.その結果,BM-N細胞は1つのウイルス因子,もしくはその因子のはたらきを認識すると,自らのRNAを急速に分解する機構を使って全タンパク質合成停止となることが明らかとなった.
著者
桜田 晃 遠藤 千顕
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

肺腺癌細胞においてリン酸化蛋白を質量分析計を用いてスクリーニングし、EGFR遺伝子に強く制御を受けている複数のタンパク質を同定した。これらの蛋白質が肺癌の進展に関与するかどうか検討するため、同定された蛋白のひとつであるGRLF1/p190A RhoGAPの機能を解析した。本蛋白が肺癌細胞の増殖に関与することが示され、今後の治療標的の候補となり得ると考えられた。
著者
杉本 公一
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

超高圧コモンレール用の材料として,3000気圧の使用に耐える焼入れ性を高めた0.2-0.4%C-1.5%Si-1.5%Mn-0.05%Nb-Cr-Mo-Ni-B系低合金TRIP型ベイニテイックフェライト鋼(TBF鋼)とTRIP型マルテンサイト鋼(TM鋼)を開発した.また,それらTRIP鋼の強靭性と切欠き疲労強度に対して,(1)最適な合金組成,(2)熱間鍛造熱処理による超微細粒化技術,(3)ベイニテイックフェライト/マルテンサイト(BF/M)組織率の同定法と残留オーステナイト(γ_R)への炭素の濃化機構,を提案した.
著者
村上 隆 小暮 敏博
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

先カンブリア時代の大気中の酸素の濃度変化は、地球化学的課題のみならず、生命の進化と密接に関連し、近年盛んに研究が行われている。古土壌(paleosol)と呼ばれる、当時の風化を受けた岩石は大気中の酸素の情報を含む。しかし古土壌は風化後、例外なく続成・変成作用を受けた弱変成岩であり、当時の風化過程は未だに理解されておらず、従って、古土壌から推定される大気酸素の濃度は常に曖昧さを伴う。我々は当時の風化条件を室内で模擬し、実際の古土壌のデータと比較することで、当時の鉱物-水-大気の相互作用を明らかにすることを研究目的とした。35-25億年前の大気中の二酸化炭素と酸素を想定し、二酸化炭素の分圧は1atm、酸素分圧は3x10(-5)atm以下の条件で、グローブボックス内でFe-rich biotiteを試料としてバッチ式の溶解実験を行った(非酸化的実験)。比較のため、同様な実験を現在の大気の雰囲気下で行った(酸化的実験)。酸化的実験では溶出したFe(II)が即座にFe(III)となり、Fe(III)が生成する、またこのため、溶液中ではFeは殆ど検出されない。非酸化的実験では溶液中のFe濃度が比較的多く、Fe(II)を含むvermiculiteが二次鉱物として、生成した。この結果を25億年前の古土壌と比較したところ、古土壌中でのFe(II)とFe(III)の分布変化、またchloriteのFe/Mg比変化が一致し、先カンブリア時代における風化時の鉄の挙動は、われわれの実験結果から予想されることがわかった。またflow throughタイプの溶解実験から、溶解速度は、非酸化的条件では酸化的条件より、3から4倍、早い、また、この溶解速度にFe(II)は影響しないことがわかった。