著者
秋山 壽一郎 重枝 未玲
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

任意の降雨外力から、流域・都市域の諸特性と各種治水施設の特性・機能を的確に考慮した上で、内外水が複合した浸水・排水プロセス、被害の状況、治水システムのバランスなどを評価・検討できる(1)「浸水減災シミュレータ」を開発した。また、(2)実流域・都市域での実績データに基づき、降雨流出、洪水特性、都市域における氾濫特性の再現性などを検証した上で、(4)そこでの治水対策の被害軽減効果と、仮想的な外力に対する浸水被害の評価・検討などを行い、同シミュレータの有用性・実用性を実証した。(5)併せて、環境にやさしい減災施設である樹林帯・水防林の工学的評価と樹林帯整備のあり方について検討を加え、整備計画のための検討ツールを開発した。
著者
中村 光一 櫻野 仁志 角 紳一 安井 晋示 酒井 英男 鵜飼 裕之
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

冬季自然雷の落雷電流とその大地・接地系への分流電流、さらに電気設備系、通信装置系への伝播サージ電流の測定を行った。観測地は石川県内灘風力発電所地内と同県加賀市山麓の北陸放送ラジオ送信局の2個所である。前者では100m級の高構造体への直撃電流とその大地への分流、後者ではいわゆる逆流雷による雷サージ電流の観測に成功した。同軸型接地電極の基礎的な研究を併せて行った。国際会議(4件)、電気設備学会全国大会(7件)で研究報告を行った。
著者
藤井 伸生 中山 徹 小伊藤 亜希子 齋藤 功子 田中 智子 立松 麻衣子
出版者
京都華頂大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

2007年に新たに打ち出された小学生対象の放課後対策「放課後子どもプラン」について、(1)全児童対策との関係を考慮した学童保育の保育計画をいかに作るか(2)地域における小学生の放課後対策をどう進めるか、を国内でのヒアリング調査・アンケート調査から検討した。さらに、諸外国の放課後対策の現状と課題を把握するため、スウェーデン、カナダ、ニュージーランドで現地調査を実施し、上記(1)(2)を考えるにあたっての参考とした。
著者
柳井 晴夫 椎名 久美子 石井 秀宗 前田 忠彦 池田 輝政 箱田 裕司 繁桝 算男 荒井 克弘 村上 隆 市川 伸一
出版者
独立行政法人大学入試センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

研究期間は2003年4月から2006年3月までの3年間であった。まず、一年目の2OO3年12月に、全国国公私立の教員2,5000名を対象にした、大学生の学習意欲と学力低下に関する調査を実施した。この調査は、2002年に本研究の研究代表者が実施した学生調査(柳井、2003)との比較を可能にするよう調査項目が設計され、被験者となった教員も学生調査と同一の大学に所属する教員が選ばれた。調査回収数は11,481名でこの数は全国の大学の教員(教授・助教授に限定)数の11.6%に相当する。上記の調査結果を2004年6月までに分析し、その結果報告に関する研究会を2004年7月に開催した。2004年度には、上記の調査結果の分析の他、東北大学、九州大学、名城大学に所属する分担者が、それぞれの大学における大学生の学力低下を示すデータを分析し、2005年8月に開催された研究会において、九州大箱田裕司氏より、「卒業論文テーマ選択にみる自主性の経年変化」、名城大学池田輝政氏より、「大学初年次調査からみた学力問題」についての研究発表があった。2006年2月には、長崎県の教育センターで開催された「大学入学前に培うべき資質・学習意欲に関するシンポジウム」を共催し、研究代表者(柳井)と研究分担者(渡部・石井)が2004年に実施した全国教員に対する学習意欲・学力低下に関する調査結果を発表した。2006年2月下旬に、研究会を開催し、3年間の研究のまとめとなる報告書作成のための打ち合わせを行い、下記の目次による報告書(全部で258頁)を作成した。さらに、2004年の教員調査の際に自由記述欄に記載されていた内容を、大学の設置形態(国立、公立、私立)、学部別に並べて記載した小冊子「大学生の学習意欲と学力低下に関する実証的研究」を補足資料として作成した。報告書の内容は以下の通りである。第1部 大学生の学習意欲と学力低下に関する調査結果第1章 総合報告第2章 大学生の学習意欲と学力低下に関する調査結果の分析-第3章 教員所属専攻別の分析第4章 学力低下の内容分析一非対称多次元尺度構成法を用いた分析第5章 長崎教育センター「大学入学前に培うべき資質・学習意欲に関するシンポジウム」-入試改善の視点を踏まえて-第2部 実証データを用いた学力低下の分析第6章 日本語基礎能力の経年変化第7章 卒業論文テーマ選択にみる自主性の経年変化第3部 学力低下問題再考-今後の課題第8章 教育接続からみた日本の学力低下問題再考第9章 今後の大学教育の在り方をめぐって-終わりにかえて
著者
西村 修 水落 元之 稲森 悠平 山田 一裕 坂巻 隆史 徐 開欽 大村 達夫 金 主鉉 須藤 隆一
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究では干潟のもつ自然浄化機能として、干潟の陸側後縁を形成するヨシ原による栄養塩類の取り込み,干潟における栄養塩循環・脱窒、さらに藻場による栄養塩類の取り込みに着目し、それらの機能の評価・解析、機能を発揮させるための生態工学的手法開発を行った。本研究で得られた主な成果を以下にまとめる。1)ヨシ湿地に関する研究・下水処理水を高度処理するヨシ湿地の高機能化として充填担体の空隙率が栄養塩の除去能力に及ぼす影響を解析し、窒素除去には根圏微生物の硝化・脱窒作用が重要であり、適切な空隙率と水面積負荷で硝化・脱窒の同時反応が起こること、リンの除去は担体への吸着によるものがほとんどであり、空隙率の低いほうが適していることが明らかになった。2)干潟に関する研究・東京都内湾の護岸に生息する付着動物の浄化機能を評価し、護岸距離192kmで1日19tのCODを浄化していること、この値は東京都から流入するCOD量の23%に相当することが明らかになった。・葛西人工海浜の環境修復状況と、東西両なぎさの生態系の違いの要因について解析し、構造的な問題から降雨時に河川水の流入・停滞が発生して底生動物に大きな影響を及ぼすこと、そのための底生動物の種類数は造成前のそれに回復しているが安定していないことが明らかになった。3)藻場に関する研究・大型褐藻類アカモク(Sargassum horneri)の栄養塩吸収機能を解析し、温度、照度、栄養塩濃度、生育ステージと栄養塩吸収速度の関係を定式化した。そして,松島湾の栄養塩循環に及ぼすアカモクの栄養塩吸収機能の影響を評価し、5月におけるアカモク藻場は流入負荷の約7割を吸収し、水質改善に大きく寄与していることがわかった。
著者
山中 弘 木村 勝彦 木村 武史 笹尾 典代 寺石 悦章 松井 圭介 平良 直
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、特定の場所をめぐる宗教的集合記憶と観光的文化資源との多様な関係の在り方を検討するために、長崎県の平戸市根獅子町、新上五島町、山形県出羽三山、沖縄、中米グアテマラを対象とした調査を実施した。伝承された宗教的集合記憶は、ツーリズムを梃子にした集落の再生の試みの進展に伴って再編成されつつあり、その動きに大きな影響を持っているのがメディアと世界遺産指定である。また、聖地の持続的な管理とツーリストの倫理的行動を要請している。
著者
吉田 栄人 桜井 三枝子 大越 翼 三澤 健宏 初谷 譲次 杓谷 茂樹 本谷 裕子
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、外部社会に対して語る優位なポジションを持たないマヤの人たちの日常生活において、外部の社会によって消費の対象として整形され直したマヤという文化がいかにマヤの人たち自身によって獲得され、かつ彼らのものとして領有されるのかその可能性とプロセスを、トゥルム市(メキシコ)のマヤ教会、チチェン・イツァなどの遺跡における観光産業、カルキニ村(メキシコ)の空間認識、ユカタン州(メキシコ)における言語復興活動、国境を越えた労働移動(メキシコおよびグアテマラ)、女性の機織りなどの事例を通じて記述・分析した。
著者
池田 光穂 太田 好信 狐崎 知己 小林 致広 滝 奈々子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

私たちの研究は、メキシコとグアテマラ両国における先住民(先住民族)について、先住民運動の中にみられる政治的アイデンティティについて現地に赴く民族誌調査を通して明らかにしてきた。具体的には、世界の他の地域での民主化要求運動、すなわち自治権獲得運動、言語使用の権利主張や言語復興、土地問題、国政への参加、地方自治などの研究を通して、(a)外部から見える社会的な政治文化としての「抵抗」の実践と(b)内部の構成員から現れてくる文化政治を実践する際の「アイデンティティ構築」という二つのモーメントと、その組み合わせのダイナミズムからなる資料を数多く得ることができた。
著者
大和 修 遠藤 大二 国枝 哲夫 竹花 一成 山中 正二 落合 謙爾 内田 和幸 長谷川 大輔 松木 直章 中市 統三 板本 和仁
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

多数の新規および既知の動物遺伝病(特に、ライソゾーム蓄積病)について、診断・スクリーニング法を開発した。また、その一部の犬疾患(GM1ガングリオシドーシスおよび神経セロイドリポフスチン症)については、予防法を確立・実践し、発症個体が出現しない程度にまで国内キャリア頻度を低下させることに成功した。さらに、猫のGM2ガングリオシドーシスに対しては、抗炎症療法を試行し、本治療が延命効果を有する可能性を示唆した。一方、次の研究に継続発展する新規の動物遺伝病を数件同定した。
著者
浅枝 隆 藤野 毅
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

河道内の樹林化の予測を行うために、現地調査より求めた、樹木個体の形態に関するアロメトリー関係より樹木個体の生長モデルを作成し、さらに、自己間引き、枯死率、萌芽率から個体密度の予測モデルを作成した. さらに、それを実際の河川の樹林化予測に適用した.
著者
栗栖 聖 花木 啓祐 小熊 久美子 中谷 隼
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

緑地の効用として暑熱緩和効果と大気汚染物質吸着効果について評価すると共に、都市の大規模緑地空間として江戸城外濠を取り上げ、その価値評価構造を明らかにすると共に、価値の一部を担う水質改善施策を評価した。
著者
奥田 一博 川瀬 知之 鈴木 啓展
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

歯周疾患により失われた歯肉および歯槽骨を成体由来細胞、増殖因子、マトリックスの三者を用いて組織工学的に再生させることを目的とした。とりわけ、細胞供給については少量の組織片から培養操作を経てシート状の大きさに拡大することにより初めて臨床応用が可能となった。具体的には歯肉組織片から上皮細胞と線維芽細胞に分離・培養して培養上皮シートと培養線維芽細胞シートを完成させた。また骨膜組織片から培養骨膜シートを完成させて、すでに報告済みの多血小板血漿(PRP)とハイドロキシアパタイト(HAp)顆粒混合物に被覆する形で歯槽骨欠損部に臨床応用を行った。基礎的研究成果として、培養上皮シートの細胞挙動、動物製剤を含まない培地で歯肉スポンジを培養する方法、骨芽細胞・歯根膜細胞における肝細胞増殖因子(HGF)の作用、細胞外ATPおよびATPγSの歯根膜細胞増殖に対する作用について検討した。臨床的研究成果として、培養線維芽細胞シートを従来の結合組織移植片の代替物として用い露出根面の歯肉被覆に成功した。培養骨膜シートを多血小板血漿(PRP)とハイドロキシアパタイト(HAp)顆粒混合物と用いることで、骨再生が飛躍的に向上した。今後、臨床研究については細胞プロセシングセンターでの培養を規格化し培養骨膜シートの症例数を増やしてかつ長期的予後を観察することで先進医療として申請したい。基礎的研究に関しては、さまざまな足場材料を検討するとともに細胞の播種方法に多血小板血漿やヒアルロン酸を応用することで細胞の更なる高密度の培養を図る予定である。
著者
岩本 晃明 佐藤 三佐子 古市 泰宏 野澤 資亜利
出版者
聖マリアンナ医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

当研究は当初「国際学術研究」として申請・採択されたものであり、国外研究協力者のMcGill大学・Gagnon教授との共同研究により、精子運動抑制因子(SPMl)およびその前駆体のSemenogelin(Sg)を中心として研究を行い以下の知見を得た。(1)従来より精漿蛋白は精子のcapacitationに関与すると言われており、ヒト精子capacitationに対するSgの影響を検討した。ヒト臍帯血に含まれる分子量3KDa以下の低分子成分(FCSu)を用いてcapadtationを誘発した。Sgの存在によりヒト精子のhyperactivationが抑制されるのが観察されたが、運動精子を用いたアッセイ系の不安定さや、精子自動分析機による解析が困難で、明らかな濃度依存性は見いだせなかった。つぎにacrosome reactionを指標とした検討で、Sgは濃度依存性にヒト精子のcapacitationを抑制することが判明した。Xantine oxidaseを用いたケミルミネッセンスの測定から、その作用機序はO_2^-の生成抑制であることが明らかになった。また、Sgは精製精子とインキュベーションすることで分解を受け、その分解産物も同様にヒト精子のcapacitationを抑制することをも見いだした。この結果より、SgおよびSPMlは精子のcapacitationに関与していることが示唆された。(2)男子不妊症および正常男性の一部にSg遺伝子の欠失が見られたことから、この変異型蛋白の機能を解析中である。また、DNA二次元電気泳動法によりSg遺伝子のSNP検索を行っているが、現在のところSNPは確認されていない。(3)組換え型Sg(r-Sg)蛋白の発現に成功し、多量の高純度・高活性r-Sg蛋白の精製が可能になった。このr-Sgを抗原として作製した抗体は、天然型SgやSPMlとも特異的に反応した。
著者
浪越 通夫 永井 宏史
出版者
東北薬科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

日本に棲息するヒトデ類の中には、捕食者に襲われたり物理的に傷付いた時に、障害を受けた腕を切り離す能力をもつものがいる。マヒトデ(Asterias amurensis、キヒトデとも言う)はその代表的な例である。本研究では東京湾と陸奥湾のマヒトデを対象に、自切誘導の刺激が加えられてから腕が切り離されるまでの経過の観察、自切中のヒトデの切片標本の作成と光学顕微鏡観察、および自切を誘起する生体成分(自切誘導因子、APF)の分離を行った。東京湾のマヒトデは陸奥湾のものよりも自切しやすい。マヒトデをオートクレープバックに入れ、加熱して自切させて得られる体腔液を正常なマヒトデの腕に注射すると自切が誘導されるので、これを生物検定法に用いて研究を行った。マヒトデの腕にAPFを含む溶液を注射し、口側と反口側の両方からビデオ撮影して外部変化を観察した。また、開裂部の組織切片の顕微鏡観察を行った。外部観察より、自切の始めに反口側の体表のコラーゲン組織の軟化が起こり、次に口側の歩帯板が断裂することが分かった。この時、ヒトデは自切させる足を固定し、表皮のコラーゲン組織を引きちぎる行動を示した。組織切片の観察では、歩帯板をつなぐ筋肉の異常な収縮が観察された。このことから、歩帯板の断裂は、歩帯板間をつなぐ筋組織の逆向収縮により、コラーゲン組織からなるじん帯が引き割かれることによって起こると考えられる。加熱処理した体腔中に放出されるAPFの分離を行った。自切を観察する生物検定試験を指標にして、ゲルろ過クロマトグラフィー、次いで高速液体クロマトグラフィーを繰返すことによりAPFを分離した。ほぼ単一のピークを示すHPLCフラクションが自切を誘導することを突き止めた。この物質は超微量しか含まれていないため、HPLC分取を繰り返して^1H及び^<13>C NMRスペクトルを測定した。最終構造の決定は現在なお進行中であるが、この物質はニコチンアミドの誘導体と考えられる。
著者
頼富 本宏 森 雅秀 野口 圭也 立川 武蔵 山田 奨治 内藤 榮
出版者
種智院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、研究代表者が平成9年に北京市の首都博物館を訪れた際、隋・唐代から清代に至る膨大な数量の金銅仏像が未整理のままに保管されている実態を確認したことから、国際学術研究として出発した。初年度では、比較的良質の数十点の作例を調査・撮影し、かつ妙応寺・意珠心境殿に整理・展示されている六千余点の金銅仏像群の報告を行なった。しかし、同年末に展示館新築が始まり、首都博物館蔵の他の資料についての調査続行が困難となった。そこで、当館所蔵の資料とも関わりを持つ中国金銅仏を多数保管する機関として、河北省の避暑山荘博物院・外八廟、遼寧省の遼寧省博物館の助力を得て、主に清朝金銅仏像を調査・撮影し、法量・尊格名などの文字データと画像データを収集して、データベースの構築に着手した。第二年次の平成14年には、当初の調査対象であった首都博物館所蔵品の調査研究が引き続き困難であるため、中国内外の個人収蔵家の協力も得て、百点を超える中国金銅仏の調査・撮影を行ない、比較研究資料の蓄積に努めた。そこで、従来の明・清代のチベット仏教系の鋳造仏だけではなく、北魏・隋・唐代のより古い時代の多数の鋳造仏の資料が得られることになり、それらを体系的に配列することで、仮説的ではあるものの、様式的展開を概観できるようになった。第三年次の平成15年には、SARSの流行によって現地調査の機会が阻まれたが、終息後に雲南省へ渡航し、雲南省博物館と大理市博物館の協力もあって、中国金銅仏でも特異な様式と内容を持つ金銅仏群の調査資料を採取することができた。さらに、静岡県三島市の佐野美術館の中国金銅仏像を調査・撮影した。三年間の研究期間中、海外現地調査と副次的な国内調査を重ねることによって、579点の資料(うち参考資料268点)を収集し、データを集積した。また、故宮から流出したと推測される「宝相楼仏像群」についても、簡略ながら復元を試みることができた。以上の諸資料の画像と採取データのうち、掲載許可を得た資料を収録した成果報告書を最終年度に刊行し、研究者に情報提供を行なっている。
著者
斉藤 明 末木 文美士 高橋 孝信 土田 龍太郎 丸井 浩 下田 正弘 渡辺 章悟 石井 公成
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、H15年5月に開催された第48回ICES(国際東方学者会議、東方学会主催)におけるシンポジウム(「大乗仏教、その起源と実態-近年の論争と最新の研究成果から」)を皮切りに、総計10名の研究分担者がそれぞれの分担テーマに取り組み、これまでに12回の研究会、8回の講演会、印度学仏教学会等の国内学会、IAHR(国際宗教学宗教史学会)、ICANAS(国際アジア北アフリカ研究会議)、IABS(国際仏教学会)、ICES(国際東方学者会議)他の国際学会等を通して研究発表を重ね、'ここに研究成果をとりまとめるに至った。また、研究成果の一部は、H18年度の第51回ICESにおいて「大乗仏教、その虚像と実像-経典から論書へ」と題するシンポジウムにおいて公開した。本シンポジウムでの発表内容の一部は、H20年に刊行されるActa Asiatica,The Institute of Eastern Cultureの特集号(vol.96,"What is Mahayana Buddhism")に掲載予定である。本研究により、在家者による参拝という信仰形態をふまえ、新たなブッダ観・菩薩観のもとに経典運動として-既存の諸部派の中から-スタートした大乗仏教運動は、時期的には仏像の誕生とも呼応して、起源後から次第に影響力を増し、3世紀以降には最初期の経典をもとに多くの論書(大乗戒の思想を含む)を成立させるに至ったという大乗仏教の起源と実態に関する経緯の一端が明らかとなった。大乗仏教徒(mahayanika,mahayanayayin)とは、こうして成立した『般若経』『華厳経』『法華経』『阿弥陀経』等の大乗経典をも仏説として受け入れる出家、在家双方の支持者であり、これらの経典はいずれもそれぞれを支持するグループ(菩薩集団)独自のブッダ観あるいは菩薩観を、宗教文学にふさわしい物語性とともに、空や智慧、仏身論や菩薩の階梯などを論じる論書としての性格を帯びながら表明している。本研究では、これらの詳細を各研究分担者がそれぞれの専門を通して解明するという貴重な研究成果を得ることに成功した。本研究成果報告書は、いずれもこの研究期間内に研究代表者、研究分担者、および上記ICES,IAHRにおけるシンポジウムへの招聴研究者がもたらした研究成果の一端である。
著者
澤田 むつ代 高橋 裕次 丸山 士郎 浅見 龍介 西山 厚
出版者
独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

東京国立博物館が所蔵する「正倉院頒布裂」を中心に、正倉院関係の「裂帖」、模写と模織、さらに正倉院関連資料について、研究成果報告書を制作した。これには各作品の名称、素材、技法、用途等の基本情報に加え、織物では文丈、〓間幅を、染物にあっては文様一単位の寸法も付して作品本体を立体的、かつ詳細に掲示した。各作品については、染織品の微妙な色合いを重視して、カラーで掲載した。これらの公開は今後の正倉院裂研究には欠かせぬものとなる。
著者
恵多谷 雅弘 下田 陽久 坂田 俊文
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

砂漠下に埋もれたエジプト王朝時代遺跡を対象として、乾燥した砂漠地域における遺跡探査での衛星SARの有効性の検証を行った。具体的には、JERS-1とSIR-CのLバンドHH偏波のSARによりその存在が確認されているサッカラ(Saqqara)の未発掘遺跡SiteNo.29およびSiteNo.39をテストサイトとして、入射角、観測方向の異なるALOS/PALSAR(LバンドHH偏波)画像から、両遺跡の検出におけるSARの観測パラメータの影響を検討した。また、PALSARの観測日と連動し、テストサイト地点を主体に土壌水分率を計測することで、地表の誘電的性質がSARの後方散乱係数に与える影響を調査した。その結果、オフナディア角35度のJERS-1/SARで発見されたSiteNo.29に関しては、上昇軌道(Ascending)、2偏波(HH/HV)、オフナディア角34.3度の観測モードで撮影されたPALSARで同定できる可能性が認められた。大入射角(オフナディア角61.5度)のSIR-Cで発見されたSiteNo.39に関しては、オフナディア角50.8度のPALSARで検出を試みたが、PALSARのセンサ特性に起因する問題から、同遺跡発見における入射角の影響については結論に至っていない。その一方で、SARの観測方向が両遺跡発見に影響している可能性は少ないとの結論が得られた。SARの後方散乱係数と土壌水分率の関係に関しては、PALSARの観測画像と同観測日に計測した土壌水分率データを比較検討した。計測された土壌水分率は最大で8.3%、最低は0.0%であり、SiteNo.29、SiteNo.39地点における後方散乱係数と地表の土壌水分率の間に特徴的な関係は見られなかったことから、両遺跡発見において地表の土壌水分率が影響した可能性は少ないと考えられ、この見解は2時期のJERS-1/SARの比較検討結果とも一致していた。
著者
植田 晃次
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

2005年度には、報告書(1)『朝鮮語教育史人物情報資料集』を研究代表者および3名の研究協力者が分担執筆して作成した。本資料集は、19世紀末から21世紀初の日本において、朝鮮語教育・学習に関わった人物に焦点をあて、各種データを採録したものである。具体的には、様々な教育機関の卒業生(在学生)、外務省・文部省・熊本県による留学生、朝鮮語奨励試験等の試験合格者、朝鮮総督府の『朝鮮語辞典』・「諺文綴字法」に関与した人々、NHKの朝鮮語講座の講師等にっいての各種データを収録した。また、巻末には1880年から1945年に至る時期に刊行された、朝鮮語学習書の目録も収めた。2006年度には、前年度の研究成果を踏まえつつ研究を進め、研究成果報告書『日本近現代朝鮮語教育史』を研究代表者および3名の研究協力者とともに編纂した。ここでは、日朝関係に大きな関わりを持つ近代以降の日本人への朝鮮語教育を取り上げ、「教育機関等における朝鮮語教育」、「朝鮮語の講習と試験の制度」、「朝鮮語の研究・教育・通訳に携わった人々」、「朝鮮語の学習書・辞書と規範」、「朝鮮語を考える」の5つの側面(44項目)から考察・総合し、その全体像を実証的に解明した。また、2006年度韓国社会言語学会・国立国語院共同国際学術大会で、各自が研究発表を行った。さらに、各年度に研究代表者・研究協力者が、それぞれ個別の論文等を発表した。この他、本研究の成果発表のひとつとして、以下のウェブサイトを開設した。http://wwwl.doshisha.ac.jp/~tmitsui/collaborating_research/seika.html
著者
井上 勝夫 福島 寛和 冨田 隆太 橋本 修 吉村 純一
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は,集合住宅を対象として,以下に示す4項目について検討を行ったものである。(1)住宅購入予定者が住宅に要求する性能の調査(2)住宅広告に記載されている住宅性能項目と内容に関する調査(3)住宅販売に携わる営業担当者の住宅性能に関する知識及び説明方法に関する調査(4)消費者が理解し易い音環境性能(遮音性能)の表現方法に関する検討その結果,(1)については,1都3県の23物件,315人を対象とし、直接面接方式による調査を行なったところ,1位:音環境性能,2位:光環境性能,3位:耐震性能の結果を得,音環境性能に関する要求が最も高いことが判った。(2)については,732枚の集合住宅に関する広告を調査した結果,住宅性能に関する記載は全ての広告においてあるが,その記述方法・内容は定性的または建築仕様による表現が多く,性能を定量的かつ具体的に消費者が捕らえることができない状況にあることが判った。(3)については,マンション販売に携わる営業担当者の住宅性能に関する知識はかなり低く,消費者が彼らの説明によって性能を理解するのは難しい状況にあることが判った。よって,今後,営業担当者に対して住宅性能に関する徹底した教育を行う必要性を示した。(4)については,集合住宅の居住者に対し,遮音性能に関するアンケート調査結果(311票)から,遮音性能を消費者が理解しやすい生活実感として表現する方法・内容を検討し,その具体的内容を提案した。