著者
松田 敏信 永木 正和 長谷部 正 草苅 仁 鈴木 宣弘 伊藤 房雄 茂野 隆一 趙 来勲 山口 三十四
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は,少子高齢化と食の安全性をキーワードとして,消費者需要を中心に生産や国際貿易などフードシステム全般のメカニズムを経済分析により明らかにすることである.主な研究成果として,代表者の独自モデルLA/QUAIDSによって,都市別・月別の疑似パネルデータを推定し,少子高齢化が食料需要に与える影響を明らかにした.また,需要システムの新たな独自モデルを複数提案し,さらに食料生産の計量経済分析や国際貿易の応用ミクロ経済分析等を実施した
著者
堀内 成子 江藤 宏美 大隅 香 西原 京子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

研究者らは静電容量型加速度センサーを用いて、妊婦の腹部より胎動を記録する小型装置・自動解析システムを開発した。胎動監視装置FMAM(Fetal Movement Acceleration Measurement)は、(290g,77mmX27mmX140mm)で二つのセンサー(胎児・母親の体動をピックアップする)、生体アンプ、SDカードを内蔵し、40時間連続記録可能である。9名の健康な妊婦(29-39歳)の妊娠20週から36週の間の睡眠中の胎動変化を分析することができた。妊娠週数による胎動数の変化が把握できた。さらに胎動変化の個人差が大きかった。母親の呼吸運動がアーチファクトとして混入し、自動解析システムの課題が判明した。死産後の次子妊娠中の妊婦2名の家庭での胎動モニタリングを行い、コントロール妊婦の胎動の変動範囲に入っていることを確認した。睡眠中の胎動変動を見せることにより、妊婦の安心感を得た。こうした家庭訪問により、妊婦は不安を表出できた。妊婦は、胎動監視装置を用いて自分自身で簡単に胎動を記録することが可能であった。さらにデータを収集して、母親のアーチファクトを自動的に除外する解析システムに改善する必要がある。新胎動記録・解析システムは、胎児のwell-beingをみる妊婦による妊婦のための家庭胎動モニタリングとして期待できる。
著者
神山 かおる 早川 文代 安岡 利一
出版者
独立行政法人農業技術研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

高齢社会においてニーズが高まっている物性を調整した食品の開発に資するため、食品を実際に咀嚼する条件で、口腔内にかかる圧力を直接計測することにより、口腔感覚を簡便かつ正確に評価する手法開発を目標とした。口腔感覚粘度を測定する簡易なデバイスを設計し、口腔内で検出された力学的性質の食品による差異や健常者と摂食機能障害者との差異を解析することができた。
著者
阿部 なつ江 馬場 聖至 荒井 章司 富士原 敏也 杉岡 裕子 鈴木 勝彦 山野 誠 平野 直人 中西 正男 道林 克禎 石川 正弘 町田 嗣樹 志藤 あずさ 伊藤 亜妃 仙田 量子 水上 知之 清水 健二 森下 知晃
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

海洋プレートの非活動域に発見された新種の火山「プチスポット火山」海域において、地球物理学的・地質学的調査および岩石試料採取を実施してきた。同試料・データは、東北沖日本海溝に沈み込む前の海洋プレートそのものであり、陸側プレートに与える影響や島弧における火山および地震活動を評価する上で、重要な試料・データをもとに、海洋プレートとその下のマントル構造について総合的な研究・調査を行った。
著者
宇田 泰三 一二三 恵美
出版者
県立広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

「スーパー抗体酵素」とは、抗体として抗原に特異的に結合するだけでなく、抗体そのものが抗原を酵素的に破壊する事ができる画期的な分子を言う。本研究では現在、花粉症やアトピーなどに的を絞り、この治療を目的とした「スーパー抗体酵素」を作製する事である。これまでにヒトIgEをマウスに免疫し、細胞融合によりいくつかマウス型抗IgEモノクローナル抗体を作製し、その中で5H5抗体の遺伝子配列を決定し、この抗体に触媒三ツ組残基様構造が存在する事を明らかにした。さらに5H5抗体によるヒトIgEに対する分解活性を調べた。今年度は、5H5の抗体酵素としての性質をより深く検討することと、5H5抗体以外にも抗体酵素になり得るクローンがないか探索した。1,5H5抗体によるヒトIgEの切断箇所を調べたところ、ヒトIgEが肥満細胞などに結合するbinding siteの少し上流(N末端側)で切断していることが判明した。2,「スーパー抗体酵素」5H5のペプチド基質TP41-1の分解速度(kcat)は0.09min^<-1>であった。3,5H5抗体軽鎖以外の「スーパー抗体酵素」を探索するために1E3,4C4および5H10のモノクローナル抗体について重鎖、軽鎖の遺伝子解析を行った。その結果、1E3には重鎖、軽鎖共に、また,4C4および5H10軽鎖には触媒三ツ組残基様構造が存在すると推定された。4,上記抗体を重鎖と軽鎖に分離して、それらの酵素活性能をペプチド基質TP41-1を用いて検討した。その結果、1E3および5H10には重鎖、軽鎖共にペプチダーゼ活性が存在した。4C4重鎖には酵素活性は存在しなかったが、軽鎖についてははっきりした結果が得られなかった。今年度の研究で5H5以外にもペプチダーゼ活性をもついくつかの有力な「スーパー抗体酵素」が見つかった。この中の最もkcat, Kmの良いものを見つけ出して行けば、I型アレルギーの原因物質であるヒトIgEの機能を消失させると思われる抗体酵素が作成可能である。
著者
中別府 雄作
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、研究代表者の中別府がこれまでに明らかにしてきた細胞障害の原因の1つである活性酸素による酸化あるいは脱アミノ化で生じた異常塩基や異常ヌクレオチドの細胞内蓄積に注目し、酸化ストレス下で引き起こされる「神経細胞死」、あるいはその前段階の「神経細胞の機能障害」の発生機序を野生型マウス、Mth1、Ogg1、MutyhそしてItpa遺伝子欠損マウス及び細胞を用いて解析した。さらに、脳における酸化ストレス応答と海馬歯状回における神経新生の制御機構の解明を目指して、AP1転写因子のサブユニットをコードするfosB遺伝子とその標的の1つであるgalectin-1の機能解析を進め以下の成果をあげた。【1】パーキンソン病モデルマウスを用い、ドパミン神経細胞の変性における核酸の酸化損傷の意義を明らかにした。【2】ミトコンドリア毒3-ニトロプロピオン酸による線条体中型有棘神経細胞の変性に核酸の酸化損傷が関与することを明らかにした。【3】核とミトコンドリアゲノムへの酸化塩基の蓄積に起因する細胞死の制御機構を解明した。【4】ミトコンドリアヌクレオチドプールの酸化に起因する細胞死とその防御機構を明らかにした。【5】酸化的脱アミノ化を受けたプリンヌクレオシド三リン酸の浄化機構を明らかにした。【6】海馬における酸化ストレス応答と神経新生の制御にfosB遺伝子が関与することを明らかにした。【7】Galectin-1が海馬歯状回における神経新生を促進することを明らかにした。
著者
近藤 孝広 松崎 健一郎 宗和 伸行 盆子原 康博 佐々木 卓実
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

省エネ化・省資源化の実現に向けた限界設計の追求という最近の技術動向のもとで,設計段階における振動解析の必要性と重要性がより一層増大している.そのためには,より精密で実機に近い大規模自由度モデルに対する高精度の解析が不可欠である.そこで,拘束モードを利用する低次元化法を基盤として,システム内に不可避的に含まれる多種多様な非線形性をも考慮できる実用的な振動解析システムの開発を行った.
著者
森島 圭祐 古川 勇二 吉田 真
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

燃料電池の燃料として,バイオマスから生産されるバイオ燃料や,生物の生体触媒機能によって生産されるエネルギーを利用することで,化石燃料に依存しない発電が可能となる.このような,生体エネルギー変換機能に依存したバイオ燃料電池は,地球環境に対する適合性が高く,研究開発が盛んに行われている.本研究では,光合成細菌であるシアノバクテリアを燃料とし,その代謝反応において生産される還元物質を,導電性高分子であるポリアニリンによって細胞内から直接抽出ることで発電する,直接光合成型バイオフューエルセル(Direct Photosynthetic Bacteria Fuel Cell:DPBFC)を開発してきた.しかし,シアノバクテリア自体の還元物質生産能力が低いため,電池出力は5.3μW/cm2と低く,細胞内から還元物質が抽出されるため,細菌活性も著しく低下し,電池寿命は約2時間と短い.そこで,有機酸を炭素源として代謝を行い,遺伝子操作によって還元物質生産能力を制御することができる紅色光合成細菌Rhodopseudomonas palustrisを新たな燃料として選定し,遺伝子操作による還元物質生産能力の向上によって,DPBFCの出力向上を図った.その結果,遺伝子操作によって,細胞内での還元物質生産能力を向上させた電子蓄積型R.palustrisを使用した際、出力を向上させることができた.また,有機酸を炭素源としていることから,その供給による細菌活性の維持によってDPBFCの長寿命化を図った.有機酸の供給方法には,蒸発現象と吸水性ポリマーの吸水力による流体駆動方法を提案し,外部ポンプを用いることなく,最大流量32nl/minを得ることが出来た.この供給方法を用いた培地還流型DPBFCを試作し,電子蓄積型R.palustisを燃料として使用した結果,12時間以上の発電を確認することが出来た.さらに,試作した薄型DPBFCは、従来型の3分の1程度に厚みを減少させることに成功し,その出力が57μWと従来 のフレキシブルDPBFCとほぼ同等であることを確認した.
著者
石川 幸雄 宿谷 昌則 田澤 真人 垣内田 洋 宮田 弘樹 北野 博亮 安藤 邦明 菊池 卓郎
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

人体・生物が持つ環境生理機能を建築に模擬応用する「バイオミメティック(生物模擬)建築」を実現するために必要となる要素技術、複合技術、評価法を構築し、その環境・エネルギー性能を評価した。ここでは、有望機能である「発汗機能」、「植物導管揚水機能」、「衣替え機能」の他、「自律調光窓」、「日射制御外壁」を建築要素技術として構築し、実験と解析に基づき性能を確認評価するとともに、人体エクセルギー消費の考え方に基づく室内環境評価結果を示した。
著者
高橋 昌彦 川平 敏文 勝又 基 山田 洋嗣 亀井 森
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

台湾大学図書館に残る幕末の国学者長沢伴雄の旧蔵本・長沢文庫のすべてについて調査を行い、これまで以上に正確で詳細なデータを作成した。近年中、目録として刊行予定である。また、文庫中に残る伴雄の和歌和文集『絡石の落葉』の翻字を行い、刊行した。同じく、伴雄や同時代を理解するのに重要な日記について調査を行い、翻字作業にとりかかっている。こちらは出版計画中である。何よりも、和本に関する知識の供与などにより、台湾大学図書館との信頼関係を築くことができた。
著者
渡辺 秀文 鍵山 恒臣 大久保 修平 纐纈 一起 中田 節也 平林 順一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

最初の山頂陥没に関連した周期約10秒の地震波およびカルデラ形成過程で繰り返し発生した周期50秒の長周期パルス波を解析し,前者は巨大な岩体の落下,後者は火道内熱水溜りの増圧により岩体がマグマ溜り間欠的にへ押し下げられるモデルで説明できることが分かった。また.三宅島島内に稠密地震観測網を設置し,島外で発生する地震の観測記録から,三宅島山頂から南山腹にかけて,マグマ溜りを示唆する強い地震波減衰域を見い出した.GPS観測データの解析により,陥没カルデラ形成以降の三宅島の収縮変動の原因として,マグマ溜りに含まれる火山ガスが山頂火口から放出されるのに伴い収縮するというモデルを提唱した.実際,2001年6月以降の収縮率の鈍化に対応し,火山ガス放出量も減少した.絶対重力測定連日観測を開始し,火道内マグマの昇降による重力変動シグナルを捉えた.特に,2001年10月頃から始まった顕著な重力増加の後,11月-12月頃に火映現象が観測された.火口南山腹での全磁力観測により,最近1年間火口地下の比較的浅い部分の温度が上昇しているが,2001年3月下旬〜4月には一時的に温度が低下したことを検知した.比抵抗構造調査により,海水面の深さに帯水層の存在を確認した.自然電位調査により,三宅島中腹付近で若干の変化を見出した.山頂火口からの二酸化硫黄放出量が徐々に低下し,現在は10000〜20000トンに減少していることを観測した.吸収液による火山ガス観測から,活動開始から2001年9月にかけて,マグマの上昇や火口直下の地下水の減少などに起因すると考えられるCl/S比の若干の増大が検知された.また,雲で散乱した太陽光を光源とする赤外吸収遠隔測定を実施し,HClとSO2の組成比0.05-0.1を得た.噴出物の古地磁気学的,堆積学的および岩石学的解析を行い,2000年8月18日の火山弾は600℃以上の高温で着地したこと,8月初旬までと8月中旬以降とでは噴火に関与したマグマの組成が異なることが分かった.
著者
尾崎 まみこ 高野 敏行 伊藤 雅信 伊藤 雅信
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

食環境への適応と、摂食調節は、生物の生命維持に必要不可欠である。私達は、キイロショウジョウバエを用いたショ糖に対する吻伸展反射実験から、24時間絶食により対照区のMe16G59系統(Me16)に比べ100倍もの吻伸展反射感度の上昇を、さらに実際の摂食量測定からも顕著な食欲亢進を示すTaiwanG23系統(TW1)を見出した。味覚器の糖受容細胞の電気生理学的実験から、このTW1系統においては、飢餓が進むにつれ糖受容細胞のショ糖感度が約10倍上昇することを証明した。
著者
新田 恒雄 桂田 浩一 入部 百合絵 入部 百合絵
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

ビッグデータ中の音声ドキュメントから任意のキーワードを,実時間で検索する技術を開発した。研究実施にあたっては,(1)未知語を含む音声を高精度に音素列へ変換する技術,(2)曖昧性を含む音素列からキーワードを高速に検索する技術の二つに焦点をあてた。(1)では,双対空間で音素特徴を効率よく抽出すると共に,多層パーセプトロンで調音素性を抽出し,音素を高精度に識別する方式を開発した。(2)では,接尾辞配列に基づき反復深化探索を行う方式をベースに,調音素性間の距離計算を用いた連続DP,およびキーワード分割アルゴリズムを実装することで,検索精度,検索速度,記憶容量の三つの課題を同時に克服できることを示した。
著者
成田 伸 齋藤 良子 小川 朋子 角川 志穂 段ノ上 秀雄 野々山 未希子 鈴木 幸子 野々山 未希子 工藤 里香 水流 聡子
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本科研の避妊・性感染症予防カウンセラー育成プログラムを受講した助産師の実践評価を目的に、プログラムに参加しその後病院で産後の女性へのケアを行ってきた助産師 9 名を対象にグループインタビューを行い分析した結果、産後入院期間が短く、避妊に関しては集団で簡単に話すのみで、性感染症の話題はない等の現状が明らかになった。今後は、これらの対象者により近い場で活動している薬局の薬剤師との連携等、情報アクセスで新たな展開が必要と明らかとなった。
著者
黒瀧 秀久 北原 克宣 加瀬 良明 吉田 義明 范 為仁 菅原 優 北原 克宣 加瀬 良明 吉田 義明 范 為仁 菅原 優 應和 邦昭 姉歯 暁 堀口 健治
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

北東アジアにおける共通食料自給率政策の構築の課題を明らかにするため、北東アジアの農業構造、農業政策、農産物貿易構造、農産物の消費動向を分析した。その結果、共通食料自給率政策構築のためには、農業に対する価値観を共有し、共通政策を構築していくことが重要であることが明らかとなった。
著者
堀池 信夫 井川 義次 菅本 大二 辛 賢 松崎 哲之
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

中国ムスリムは、唐代に先達が入華して以来、元代まで各地に広がり、その間、イスラム思想は中国の伝統思想との対立や融合をへて、明代にいたって中国イスラーム哲学とも称すべき独自の哲学が起こってくる。本研究はその中国イスラム哲学の形成期について、諸哲学者の著述をめぐってその具体的施策の内容面にまで踏み込んで研究を進めたものである。
著者
田中 秀雄 黒星 学 光藤 耕一
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

水中で機能するメディエーター(I)を含む水溶液を分散媒、基質とメディエーター(II)を吸着あるいは固定化した固体粒子(シリカゲル、ポリマー粒子、活性炭など)を分散相とする固体粒子分散-水系電解法について組織的な研究を行い、ろ過-洗浄-濃縮といった簡便な操作で生成物を分取、水溶液(分散媒)と固体粒子(分散相)を回収・再利用する、実質的に廃棄物のない環境負荷O合成プロセスを開発した。
著者
谷川 恵一 青田 寿美 木戸 雄一 山下 則子 高木 元 中丸 宣明 青木 稔弥
出版者
国文学研究資料館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

幕末から明治初期にかけての時期に刊行された仮名垣魯文の著作をひとつひとつ検討していくという基礎作業を積み重ねた本課題は、当該時期の文学・文化研究の学術基盤の整備に関して、主として以下のような成果を挙げた。1.従来の仮名垣魯文の著作目録を大幅に補訂し、236点に及ぶ魯文の著作を掲出し、それぞれの著作の所蔵先を併記した著作目録を作成した。なお、本目録では、当時の戯作者と本屋(版元)をめぐる出版状況に鑑み、魯文序や魯文〓といった一般的には著作と扱われない作品をも拾い出すことで、より広範な問題領域に対応させた。2.80点の魯文の著作または魯文に関連する著作について、書誌事項を中心とした詳細な解題を作成した。3.明治8年から12年にかけて魯文を主筆として刊行された『仮名読新聞』の記事の中から、魯文およびその周辺人物の動向に関連した記事を拾い出し、仮名読新聞記事データベースを作成した。4.購入した原本や原資料を展示に供し、また研究成果の一部を取り込んで、詳細な解説を付した展示目録を作成・配布することによって、研究活動を対外的に拓いたものとした。これらに加え、従来明らかでなかった以下の事項について取り組み、明治初期という過渡期における文学と出版文化との研究を進展させた。5.新聞に掲載された〈つづきもの〉が単行本として刊行される過程において、著者・版元・読者がどのように関与したのか、具体的な作品に即しながら再構成した。6.「著作道書キ上ゲ」として知られるテクストを同時代の情況の中で多角的に分析することによって、明治という新たな時代を迎えたときの魯文たち戯作者の動向を明らかにし、文学史におけるあらたな戯作の位置づけを提出した。
著者
南 徹弘 日野林 俊彦 安田 純 今川 真治 小島 康生
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

幼児の社会的相互交渉他児との社会的相互交渉と言語的コミュニケーションスキルの関連を検討するために19名の4歳齢幼稚園児を対象とした観察を実施した。幼児の発話量には個入差が大きかったものの、概ね、女児は男児よりも肯定的発話を示し、否定的発話は男児に頻繁にみられた。また、スキルレベルの低い児は、より単独で過ごすことが多く、より活動的で、遊び集団への仲間入りを頻繁に試みていた。しかしながら、その試みは他児から必ずしも受け入れられず、他児からの拒否や無視を受けることが多かった。一方スキルレベルの高い児は遊びを方向付ける発話が多くみられ、遊び集団から離脱しても他児の追従を受けることが頻繁であった。すなわち、言語コミュニケーションスキルの高低が幼児の行動としてあらわれ、ひいては仲間関係に影響を及ぼすことが示された。そこで、実際にいざこざが生起した際に彼らがどのような行動を示すのか、また、いざこざに関わっていない他児がどのように関与するのかを保育園において5歳齢児を対象とした観察を実施した。その結果、男児のいざこざおよびいざこざへの介入には社会的関係に直接影響を受けず、女児のいざこざは彼らの社会的関係を反映した傾向があることが示された。保育士のしつけ行動幼児が逸脱的な行動を示した際に保育士がどのように介入しているのかについて、保育園3歳齢児と担当保育士を対象とした観察を行った。食事場面等においては保育士は児の行動を方向付けるようなしつけを頻繁に行っていたが、自由遊び場面においては児の自主性に任せるようなしつけ行動を示した。また、効果的なしつけの存在が認められたものの、保育士は必ずしもそのようなしつけを用いず、児が自身で考えられるような機会を用意していることが示唆された。
著者
大串 和雄 千葉 眞 本名 純 月村 太郎 根本 敬 狐崎 知己 木村 正俊 武内 進一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、複雑化を増す現代世界における政治的暴力の力学解明を試みた。取り上げた課題は主として以下の通りである。(1)グローバル化時代の暴力に関する政治理論的考察、(2)民族浄化の概念とメカニズム、(3)パレスチナ解放闘争におけるアラブ・ナショナリズムと個別国家利害の相克、(4)犯罪対策と治安セクター改革におけるインドネシア軍の利益の維持・拡大、(5)グアテマラにおける政治的暴力、(6)アフリカ諸国における民兵、(7)ビルマ難民の民主化闘争における非暴力の位置づけ、(8)ラテンアメリカの移行期正義。