著者
岸岡 史郎 雑賀 史浩 深澤 洋滋 木口 倫一 小林 大地
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

マクロファージのフェノタイプ制御に及ぼすニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)シグナルの影響を精査し、神経障害性疼痛を含む慢性炎症疾患の治療に繋がる研究を行った。神経障害性疼痛を担う炎症性マクロファージにはnAChRが発現しており、nAChRリガンドの処置により炎症性因子の産生が抑制されることをin vivoおよびin vitroにおける各種解析から証明した。さらにnAChRリガンドを投与することで、神経障害性疼痛病態が改善することも明らかにしている。従って、nAChRシグナルを介した炎症性マクロファージの制御は慢性炎症疾患の治療に有用な薬物療法として期待される。
著者
武田 篤 鈴木 徹 藤井 慶博 高田屋 陽子
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では、複合的場面緘黙児の実態を把握するとともに、学校での支援体制や学級での具体的な支援方略を構築することを目的とした。平成30年度は、複合的場面緘黙児に関する質問紙調査を実施した。A市の小学校(41校)・幼稚園(6園)・こども園(11園)の58校園を対象に質問紙調査を実施した。調査内容は、1)場面緘黙児の有無、該当児童がいた場合、2)場面緘黙の状態と3)自閉症スペクトラム傾向、4)学級内での具体的な支援、とした(2)以降の質問内容については、場面緘黙児のいるクラス担任に回答を依頼した)。なお、本調査を実施するにあたり、依頼文書において「得られた回答は決められた手順に従って得点化すること」、「児童や回答した教員に関するプライバシーは守られること」の2点を明記した。回答のあった51校園に在籍する幼児児童数は、14939名(男児7592名、女児7357名)であった。そのうち、場面緘黙児が「有」と回答したのは13校園(小学校9校、幼稚園2園、こども園2園)で、在籍数は20名(0.13%)であった。男女の内訳は、男児8名(0.11%)、女児12名(0.16%)であった。これらの結果は先行研究を支持するものであった。本調査は、質問紙の内容を決定するまでかなりの時間を要した(年度末に実施した)。そのため、2)以降の調査データ(場面緘黙と自閉症スペクトラム障害との関連)の解析は次年度に行う予定である。
著者
三浦 俊介
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

近年、京都市左京区の貴船神社はパワースポット・縁結びなどの功徳を謳って多くの参拝者を集めているが、学術的研究が進んでいるとは言えない,しかし、平成に入り、上賀茂神社関連の古文書の目録が作成され、あるいはデジタルアーカイブスとして公開されたものもあって、資料が閲覧しやすい環境が整った。この度、研究代表者(三浦俊介)は幸いなことに科研費の助成を受けることができ、その助成金で調査した史料や購入した書籍などによって、主に江戸時代以前の貴船神社の歴史や文学作品の実態を明らかにすることができた。研究の一部は(1)単著『神話文学の展開』の論文、(2)報告書『貴船神社の文学と歴史』の史料や論文などで公にする。
著者
西澤 隆
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

「つやなし果」はトマト表皮のクチクラのみに微細な亀裂が入り,光を乱反射することによって生じる生理障害である.発生要因として,UV,低温,水ストレス,ホルモン量,ホウ素(B),カルシウム(Ca)などを検討したが,いずれも単独要因では「つやなし果」を発生させることはできなかった.一方B処理によって「つやなし果」の発生を抑制できたことから,「つやなし果」はB欠乏と気象要因を含む他の要因との複合作用によって生じる生理障害であることが示唆された.
著者
斉田 智里
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

大学入試センター試験への英語リスニングテスト導入による高大英語教育への波及効果の解明に取組んだ。リスニングテストの内容はCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)のA2からB1レベルの能力記述文に相当すること、関東地方にある一国立大学入学者全員の大学入学時のリスニング得点の平均値は、リスニングテスト導入前に比べて導入後は若干上昇傾向にあること、リスニング力の伸びを実感している学生の割合は7割程度と高く、音声に意識を向けて英語学習に取組む習慣が身についたなど、プラスの波及効果が認められること、一方、高校英語授業においては、テスト対策が主であり、教員の指導法そのものに変化をもたらすほどの顕著な波及効果は認められなかったこと、などが明らかとなった。
著者
渋谷 明子 寺本 水羽 祥雲 暁代 秋山 久美子
出版者
創価大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

2013年11月(W1)、2014年5月(W2)に、15歳から29歳までのソーシャルゲーム利用者を対象に、インターネット調査を実施した。また、上位30位のソーシャルゲーム(W1時)の内容分析を行い、課金や期間限定イベントの文脈への接触度をプレイヤーごとに算出し、ゲーム依存、ゲーム接触時間、課金額などとの関連性を分析した。その結果、他のプレイヤーとの対戦継続で課金できるゲームで遊ぶプレイヤー(W1)は、6か月後のゲーム接触時間(W2)が長くなり、期間限定ガチャの最高金額が高いゲームで遊ぶプレイヤー(W2)は、6か月後の課金額(W2)が上昇しており、これらは長期的影響である可能性が示唆された。
著者
津野 倫明
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、朝鮮出兵(文禄・慶長の役)に関する68通の豊臣秀吉文書の年代比定を全体構想としている。2年目にあたる本年度は、慶長の役に関すると推測される5通・現時点では推測が不可能な28通の年代比定にかかわる秀吉文書および関連する副状・諸大名間の書状などの収集と分析を進めた。1.史料収集:(1)9月、東京大学史料編纂所において承天寺文書・帆足コウ文書などの史料調査(閲覧・筆写)を実施した。また、徴古雑抄(国文学研究資料館所蔵)の複製を東京大学史料編纂所の採訪マイクロのデジタルデータにより入手した。(2)11月、東京大学史料編纂所において栃木県庁採集文書・神屋文書などの史料調査(閲覧・筆写)を実施した。2.史料分析:(1)昨年度の史料調査と1の作業により、上記68通のうち65通を収集し終えて、年代比定を進めている。(2)年代比定に要する刊本と原文書・影写本などとの字句の異同に関する知見を得た。3.研究発表:主要な発表は次のとおりであった。(1)「丁酉再乱時の日本の目的と日本側の軍事行動」を学会発表(国際学会、招待講演、韓日関係史学会、ソウル市(大韓民国))することができ、研究論文(「丁酉再乱時の日本の目的と日本側の軍事行動」『韓日関係史研究』第57輯)としても発表した。(2)「文禄・慶長之役諸大名的目的」を学会発表(国際学会、招待講演、ワークショップ「第二届壬辰戦争研究(国際)工作坊 壬辰戦争与日本、朝鮮、明朝 三国政治生態」、済南市(中華人民共和国))することができた。
著者
細矢 治夫 時田 澄男 浅本 紀子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

われわれはこれまでの研究で、n次元の水素原子のシュレーディンガー方程式の解の角度部分の縮重度の一般式を導出し、それがパスカルの三角形を若干修正した非対称パスカル三角形によって容易に表現できることも示した。これは、化学者の帰納的直観に基づいて得られた代数的な処方箋であるが、この波動関数に数学的に厳密な裏付けを行うこと、及び得られた波動関数を動的にグラフィック表示するという二つの目的をもっている。以下に、本研究で得られた結果を列記する。i)アニメーション技法の開発簡単な操作で、原子軌道のn次元のイメージを把握しやすくするアニメーション技術を、市販のQTVRというソフトウエアを利用して実現した。ii)3次元の原子軌道表示の見直し3次元のd軌道も、切断する面の方向と位置を変えることによって、s型、p型、d型等いろいろな対称性をもった断面を得ることができた。iii)4次元の原子軌道の多面的な可視化ii)で得られた可視化の手法を4次元の原子軌道に拡張して適用することによって、4次元の原子軌道関数の極座標表示を直交座標系に変換してから、様々な等値曲面表示を行う手法を開発した。iv)原子軌道の縮重度とパスカルの三角形n次元の原子軌道の縮重度が、変形した非対称パスカルの三角形によって容易に表されることは既に見出しているが、微分方程式の解の代数的な構造の解析から、その数理的意味についての考察を若干進めることができた。
著者
洲鎌 秀永 柿沼 由彦 竹之内 敬人 橋本 款 Conti Bruno
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

申請者はパーキンソン病発症における慢性ストレスの影響を調べる事を目的として、ラット(Wistar rat)を用いて慢性ストレスの影響を検討した。今回、慢性ストレス(1日8時間、5日/週)を継続的に負荷すると、数週間で黒質、青斑核、腹側被蓋野の神経細胞数の脱落が生じるという事を明らかにした。又、同部位において、活性化したミクログリアが検出された。更に、活性酸素関連のニトロチロシンも同様に上昇を示した。以上より、慢性ストレス下では活性化したミクログリアから活性酸素が過剰産生されて神経細胞に障害を与えている事が示唆された。
著者
木口 倫一 岸岡 史郎 小林 悠佳 深澤 洋滋 阪口 晴香
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

慢性疼痛の分子基盤解明を目的とし、核タンパク質であるヒストンの役割に着目した。末梢神経傷害後にはマクロファージなどの免疫細胞が浸潤し、ケモカインに代表される種々の疼痛増悪因子を産生する。これらの発現はヒストンのアセチル化やメチル化修飾に基づいて生じることを明らかにした。またヒストン修飾を受けたマクロファージは疼痛増悪に関与する性質に変化しており、薬物処置によりそのマクロファージを沈静化させると慢性疼痛が改善することを見出した。結論として、マクロファージにおけるヒストン修飾変化が慢性疼痛病態の鍵であり、新たな治療標的として期待される。
著者
岸 文和
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

画像=視覚イメージ(visual image)が実際に担っていた機能の多様さ/豊かさは、いわゆる「美術作品」にもっぱら期待されている美的(aesthetic)な性格の陰に隠れて、時として、見失われることも多い。本研究の課題は、このような画像の非美的(non-aesthetic)な機能、言い換えれば、画像が現実生活との間に保持しているプラグマティックな性格に、照明を当てることである。本研究では、具体的に、次の二つの課題を解決することを試みた。すなわち第一は、視覚イメージの多様な機能のバラエティーを、コミュニケーション論の立場-画像を視覚的コミュニケーションのメディアとみなす立場-から整理して、関説的/動能的/心情的/メタイメージ的/美的機能に分類すること。第二は、そのようにして分類された画像の機能を、オースティン(John Austin)やサール(John Searle)の言語行為論(Speech Act Theory)の枠組みを参照することによって、絵師の絵画行為(pictorial act)として解釈し直すことである。江戸時代の庶民にとって最も身近なイメージであった浮世絵に焦点を合わせ、役者絵/美人画/死絵などを描くことにおいて/よって、絵師が行ったことを、主張型(真を写す)/指令型(人を動かす)/表出型(情を表す)の発語内行為との類比において分析した。研究成果は、科研報告書としてまとめるとともに、『絵画行為論-浮世絵のプラグマティクス』として刊行した。
著者
染田 英利 石田 肇 米田 穣 橋本 正次 佐藤 泰則 小林 靖
出版者
防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ヒト硬組織中に含まれる炭素、酸素及びストロンチウムの各安定同位体比は、遺骨の身元確認の前段階におけるスクリーニング法として有効な情報を提供できる。本研究では、戦没者遺骨鑑定への適応を想定しパプアニューギニア人と日本人の歯牙エナメル質中の炭素、酸素及びストロンチウム同位体比を計測し、先行研究である米国人データを参照し、判別分析による統計学的検討をおこなった。これらの3群から米国人の分別は高精度に可能であった。パプアニューギニア人と日本人については一部地域では正確な分別が可能であった。安定同位体比分析は、ニューギニア戦線におけるこれら3群の遺骨を分別する方法として有効となる可能性が示された。
著者
吉田 豊
出版者
神戸市外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究では,漢字で音写されたソグド人の人名について研究した。ソグド人はイラン系の言語を話す民族で,ソグディアナを本土とする。これはほぼ現在のウズベキスタン・タジキスタンの一部に当たる。中国の唐王朝以前の時代,彼らはシルクロードの交易をほぼ独占する商業民族として活躍し,遠く中国にも多くのソグド人が来ていた。中国に居住すると彼らは名前を漢字で表記したが,その場合には,ソグド語の名前を漢字で音写して使う者と,中国風の名前を持つ者がいた。おおむね二世・三世以降は中国風の名前を名乗っている。ちなみに彼らソグド人は,出身地のオアシス国家ごとに特別の姓を持つので,文献の中から彼らの名前を見つけることは容易である。たとえば,サマルカンド出身者は康,ブハラ出身者は安という姓を持った。本研究では,これら漢字で音写されたソグド語の人名を可能な限り収集した。そして対応するソグド語に復元する試みをした。そのためにはソグド語のテキストに現れたソグド人の人名を参考にしなければならないので,発表されているテキストからソグド人名を網羅的に種集した。本報告の主要な部分はこれら2種類の人名のリストである(4・5章)。漢字で音写された人名が現れる漢文試料の簡単な解説は3章にある。別に参考のために人名以外の漢字で音写されたソグド語の要素も可能な限り集めた。(2章)。1章ではこの種の研究の歴史を概観した。リストに続く2つの章では,音写された名前を原語に復元するさいに発生する問題(6章)と,人名研究から究明される事実を概観した(7章)。
著者
下楠 昌哉 東 雅夫 紀田 順一郎 堀澤 祖門 佐藤 久子 立 恵子
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

日本が近代化を進める時期に西洋から多くの芸術作品が流入し、現在に至るまでそれらは日本で様々な芸術に携わる人々の想像力を刺激してきた。その結果、現代の日本において作成される各種芸術作品には、西洋を起源とする題材の活用が多くみられる。そうした作品で用いられる題材やモチーフは多くの場合、日本に受け入れられてからある程度の変容が生じている。本研究では、主に文学作品における幻想性・怪奇性に焦点をあて、そのような題材・モチーフがいかに受容され、日本で変容し、かつ世界に向けて再発信されるかの過程を追った。研究成果は、海外出版社からの英語による論文集に収録されて刊行されるなど、様々な媒体で世に問うた。
著者
齋藤 清二 西村 優紀美 吉永 崇史 TRISHA Greenhalgh
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

物語共有の場における経験的学習を推進することが、発達障害を有する大学生に対する心理・社会的支援として有用であるという暫定仮説に基づき、Webサービス(PSNS : Psycho-Social Networking Service)が構築された。PSNSは彼らの日常経験や想像上の経験を意味づけ、自由に表現することのできる、物語共有の場として機能した。PSNS上で交流されたテクストをデータとして、彼らが自らの経験を意味づけつつ学習することへの支援を通じて、どのような自己変容的プロセスが展開していくかについての質的分析を行い、発達障害大学生のための新しい支援モデルを提案した。
著者
福島 俊彦 鈴木 眞一 早瀬 傑 隈元 謙介
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

小児甲状腺癌手術症例のうち、研究参加の同意が得られた67例について、癌関連遺伝子の解析を行った。BRAFの点突然変異は63%で認められ、K, N, H RASには遺伝子変異を認めなかった。これらの結果は、これまでの日本人成人の結果と同等のものであり、チェルノブイリ事故後の甲状腺癌のものとは異なっている。また、BRAFについては、免疫組織化学的検討も行い、染色性と変異陽性は同等の結果であった。
著者
池田 修一 高橋 幸利
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

正常卵巣におけるNMDAR抗原の発現を検索するため、ウシの卵巣と未受精卵を検索した。免疫組織化学的に原始卵胞の細胞質と未受精卵の細胞膜にNR2B抗原の発現が認められた。次に凍結卵巣と未受精卵1031個を集めて蛋白化学的分析を行った。Immunoblottingではこれら組織にNR1とNR2Bの蛋白分画があることが見出された。そこで未受精卵の細胞膜から抽出した蛋白分画をLC-MS/MSで解析したところ、SPFGRFK, KNLQDR, GVEDALVSLK, QPTVAGAPK, NEVMSSKの5個のペプチドを得た。これらはNR1、NR2A、NR2B、NR2Cの部分アミノ酸配列と一致した。
著者
今井 一雅
出版者
高知工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

2016年7月に木星に到達したNASAの木星極軌道探査機JUNOと、アメリカにある世界最高レベルの感度を持つ低周波電波望遠鏡LWAを使った木星電波観測により、木星電波の放射機構を解明する上で重要となる電波放射源の位置やそれに関連する電波放射ビーム特性を調べ、3次元的な木星電波放射ビーム構造を明らかにすることを目的としている。LWAの観測データについては、木星電波のダイナミックスペクトラム上に見られる斜めの縞状構造のモジュレーションレーンに着目し、偏波特性を考慮したモジュレーションレーンの傾きの解析を行った。このモジュレーションレーンの測定によって、木星電波源の位置が推定でき、従来から同定されている木星電波源の衛星イオの位置に関連するIo-CとIo-Bについて、起源の異なる電波源の領域があることがわかった。それらを新たにIo-C'とIo-B'を呼ぶことにし、その電波源の領域が、衛星イオを貫く磁力線の根元で最もオーロラ発光強度が高い経度と一致するという重要な情報が得られた。特にIo-Cの領域においては、木星の北磁極側と南磁極側の両側から同時に電波が放射されていることがわかり、複雑な木星電波放射源の様相を明らかにすることができた。また、JUNOで観測された木星電波観測データの解析から、従来の木星電波放射が木星の磁力線に対して角度を持ち磁力線に軸対称に放射されているとするコニカルシート状のビーム構造を支持する結果が出始めている。つまり、JUNOから見た木星電波の緯度方向のビーム構造は、コーン状の一部を見ていることを示しており、電波放射機構を解明する上で、非常に重要な情報を得ることができたことになる。今後、さらに多くのJUNOで観測された木星電波のデータ解析を行うことにより、コニカルシート状のビーム構造が一般的であるかの統計解析も行っていく予定である。
著者
REPETA Lawrence
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、2011年に発生した東日本大震災を受けての福島第一原子力発電所事故に関する情報収集とアーカイブ化のプロジェクトである。政府、国会等が行った調査は、原発事故とそれに対する政府の対応を明らかにしたが、日常生活に及ぼす放射能の情報は複数の機関・組織に分散したままである。こうした問題意識から、1)福島県で行われた健康診断 2)環境省委託組織による調査 3)放射能レベルの測量基準 4)政府による除染作業 5)特定避難勧奨励区域に関する情報 6)除染対象地域の小中学生の健康診断についての情報を体系的に収集し、デジタル・アーカイブ化を行った。また、事故に関する行政再編成についての報告書を作成した。
著者
CAPRIO M.E.
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

日本の戦後から現在までの外交努力、特に南北朝鮮との順調な関係を構築しようとする努力は、韓国と日本との間に横たわる歴史遺産によって、しばしば妨げられてきた。第二次世界大戦後に到来した冷戦の結果、北朝鮮、韓国双方は(少なくとも最初の2、30年は)、植民地時代の圧政者である日本を競って「悪者」にすることで、韓日・朝日関係をますます冷却化させた。また一方で、朝鮮半島での南北対立に無関心を装う日本の態度は、朝鮮人(韓国・北朝鮮の人々)の敵対心を煽り、韓国人に悪感情を抱かせ、北朝鮮との間に政治的距離を生じさせることとなった。東京、ソウル、ピョンヤン間に存在する、この不協和音の根源を明らかにするためには、各国の国民が抱く他国のイメージの問題、つまり、日本人、南北朝鮮人が戦前の知識や信念に基づいて、それぞれ他の政府や国民に対して描いた戦後イメージを考察する必要がある。米国の北朝鮮に対する敵対的関係、およびその脅威の対策としての日本と韓国の同盟的な関係、日韓両国の北朝鮮に対する敵対的な外交は、より日・韓・朝関係を困難にした。20世紀において、米国は北東アジアとの関係史を認識(日本の朝鮮半島の併合)し、戦争し(日本と北朝鮮)、占領し(日本と韓国)、そして相互条約を結んだが、このように米国が巻き込まれた現状は、北東アジアの地域協調を達成するには大きな支障である。北東アジアの国々がより親しく、協調的な関係を達成しようとするならば、20世紀のこの長い歴史を再検討する必要がある。この再検討の一つの貴重なテーマとして日本が朝鮮半島に対して持っていたイメージの調査がある。本研究は朝鮮半島のイメージの変化を日本や米国の視角から分析した。21世紀において、日本は北東アジアの地域的平和のために前世紀の差別的な縦関係のイメージを平等な横関係のイメージに改める必要があろう。