著者
藤本 繁夫 吉川 貴仁
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

肥満者における最終糖化産物(AGEs)の血液中での形成・集積状態と種々の運動・食事介入を行ったさいの同成分の変化を若年から中高年の幅広い年代で観察した。主として血清CML濃度は一日歩数の増加や体脂肪量の減量に伴い減少した。肥満者における生活指導は生体内AGE成分を減少させ、動脈硬化性疾患を予防できる有効なプログラムとなり得る可能性を示唆した。
著者
鈴木 克明 市川 尚 向後 千春 清水 克彦
出版者
岩手県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究では、教材や授業の動機づけの側面を評価して問題点を見つけ出し、授業や教材の改善作業を支援するためのツール群を開発した。J・M・ケラーが提唱するARCS動機づけモデルに基づいて、ARCSモデルの枠組みである注意・関連性・自信・満足感の4要因それぞれ4項目ずつ、合計16項目からなる「ARCS評価シート」を設計した。それを複数の大学における学生による授業評価で試用し、因子分析などの手法により信頼性と妥当性を検討するデータを収集して改良し、「ARCS評価シート」最終版を提案した。さらに、「ARCS評価シート」をWeb上で実施し、データの回収及び統計的処理を自動的に行う機能を備えた「Web版ARCS評価シート」を開発し、大学における学生による授業評価の実践場面で操作性と実用性を確認した。また、様々な領域で提案されている動機づけに関する教授方略を収集し、ARCSの4要因をもとに分類・整理した「ARCS改善方略ガイドブック」をブックレット形式にまとめた。その内容を「ARCS評価シート」での診断結果と連動させて動的に提示する「Web版ARCS改善方略ガイドブック」を開発し、その簡便性などを調査した。「ARCS評価シート」で得点が低かった項目についての改善方略を選択して表示し、問題点に特化した改善方略を組み合わせて授業の再設計を支援する機能を備えていることが好意的に評価された。以上の成果をWeb上に公開し、教材や授業のデザインに関係する実践者の参考に供した。
著者
中川 理 矢ヶ崎 善太郎 並木 誠士 石田 潤一郎 笠原 一人
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

2年間の調査・研究により明らかになったことの概要は、以下のとおりである。1)芸術にかかわる人々の中で、郊外居住地の開発を最も促したのは、画家である。ただし、明治前半期までは、彼らの居住地は、近世までの居住地と変わらなかった。明治後半期になり、画家の地位向上にともない、画業の環境を求めて画家の郊外移住が始まった。2)京都市周辺部での郊外住宅地の開発は、昭和初期から盛んになるが、この開発行為の多くの事例で、画家、映画関係者、大学教員などの文化人の郊外居住の需要が前提になっていることがうかがえる。3)東山地域では、数寄者といわれる、茶の湯に親しんだ文化人たちが、独自の居住環境を作り上げていた。4)等持院かいわいの住宅地には、日本画家を中心とした「絵描き村」と呼ばれる地区がある。この地域では、関西のモダニズムをリードした建築家・本野精吾なども居住しており、画家と建築家とのサロン的交流があった。5)下鴨地域では、昭和のはじめから洋画家が集住し、その後、官吏やサラリーマンも住む住宅地になっていった。北白川地域では、昭和初期から土地会社により宅地開発が進み、京大教授を中心とした学者や医者などが住む宅地が形成された。6)大学教員が郊外地に住む場合には、同じ大学の教員である建築家に設計を依頼するケースが多く見られ、大学内で郊外居住をめぐるサロン的交流があったと考えられる。
著者
青田 洋一 飯塚 晴彦
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

長時間着座時の腰痛を緩和するために我々が開発してきた持続受動運動(CPM)装置は椅子の背もたれと座面に可動式エアバッグを設置したものである。一方の縮小時に他方が拡大する連動逆位相型と同時収縮する連動同位相型とがあるが、いずれも健常者では腰痛予防効果は従来型のCPMと比較して、腰痛予防効果は優れている。今回の検証で逆位相型は腰椎・骨盤の動きが大きく同位相型は重心の移動が大きい特徴を有し、両者の腰痛予防機序が異なることが明らかとなった。しかし深部静脈血栓の予防効果や腰痛患者に対する腰痛予防効果は限定的であり、さらなる動作様式の工夫が必要である。
著者
服部 泰直 山田 耕三 ドミトリ シャクマトフ 野倉 嗣紀 前田 定廣 三輪 拓夫 相川 弘明
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究では距離空間に現れる位相次元の特性を調べ、その他分野への応用について研究した。その成果を以下に要約する。服部は山田との共同研究により、距離空間上に定義される二つの超限次元、大きい帰納次元lndと順序次元O-dimの関連を調べ、「距離空間Xにおいて、Xがlndを持つことと、XがO-dimを持つこととは同等であり、、かつlndX<O-dimXが成り立つ」ことを証明した。これは、F.G.Arenasの問題に対する肯定解である。距離空間の群構造に関して服部は、「実数空間上の通常の位相より弱く、点列{2n:n=1,2,...}が0に収束し、さらに位相群となる距離位相が存在する」ことを証明し、「そのような位相で線形性を保つものは存在しない」ことを証明した。これは、R.Fricの問題の解である。位相群に関しては更に、山田により距離空間の自由群の位相構造について研究され、自由群の位相構造がその近傍系により表現されることが示された。また、Shakhmatovは、コンパクト生成な距離位相群や、自由アーベル位相群における位相的性質を次元論の観点から調べた。服部は、順序空間における連続関数の拡張性について調べ、「完全正規な順序空間において、ある条件を満たせば、Dugundjiの拡張定理が成立する」ことを証明した。そして、服部はGruenhageと大田との共同研究により、順序空間の部分空間でDugundjiの拡張性を持つものを決定した。これにより、Heath-Lutzer、van Douwenの問題は完全に解決された。順序空間における完全正規性と被覆的性質については、三輪により研究された。野倉とShakhmatovは、距離空間上の超空間における連続な選択関数の存在性について研究した。吉川と前田は微分幾何学的立場より、複素射影空間内における円形の構造について研究した。服部は距離空間おけるfinitistic spacesの性質について研究し、finitistic spacesに対する万有空間の存在、及びPasynkovのタイプのfactorization theoremを証明した。相川は、調和関数と測度そして位相次元との関連について研究した。
著者
曽野 裕夫
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、一般的な契約法理として、契約プロセス(契約の締結交渉から履行、さらに履行後の関係にかかわる一連の過程)における「交渉力濫用」を規制する民事法上の法理の可能性をさぐることにある。具体的には、3つの視点から検討を進めた。1 交渉力濫用規制の意味の明確化--民事規制と行政規制の同質性と異質性独占禁止法上の「優越的地位の濫用」規制は、行政による交渉力濫用規制である。この問題が、民事規制としてはどのように扱われるかを検討するための基礎作業として、コモンローにおける《既存義務の準則pre-existing duty rule》の沿革について検討を行い、民事規制の独自性についての試論をまとめた。2 交渉力濫用規制の理念的基盤となる契約法パラダイムの検討交渉力濫用の民事規制とは、当事者の私的秩序形成(private ordering)に国家法がいかに対峙すべきかという問題でもある。その観点から、private ordering論についての基礎的・比較法的考察としてUCC第2編にみられる契約法パラダイムの検討を行った。3 交渉力濫用法理の比較法的・法技術的検討(1)著作権ライセンス契約における著作権の譲渡、または、ライセンサー倒産時に生じうる、新たな著作権者による交渉力濫用に対応するための法制度のあり方を検討した。(2)売買契約において物的瑕疵のある商品が引渡された場合の、買主の救済過程において生じうる交渉力濫用(機会主義的行動)の規制について、CISG、UNIDROIT国際商事契約原則と日本法との比較法的考察を行った。(3)いわゆるADR法の制定に関連して、ADR係属中の時効完成を阻止するための法制度のありかたについて検討を行った。この成果は研究発表という形では公にできなかったが、パブリックコメントとして司法制度改革推進本部に提出した。
著者
濱谷 清裕 伊藤 玲子 江口 英孝 早田 みどり 早田 みどり 江口 英孝
出版者
財団法人放射線影響研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

放射線関連成人甲状腺乳頭癌の遺伝子変異に関する特徴を明らかにするため、発癌の初期段階に生じる遺伝子変異に焦点を当て解析を行った。被曝線量の増加に伴い、RET遺伝子の3'部位が別の遺伝子の5'部位に結合したキメラ遺伝子(RET/PTC再配列)を持つ症例の頻度が有意に増加し、他方散発性(放射線被曝のない)成人甲状腺乳頭癌で頻繁に検出されるBRAF点突然変異を持つ症例は有意に減少することを見出した。
著者
藤谷 秀雄
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

セミアクティブ制御装置であるMRダンパー(可変ダンパーの一種)だけを試験器で加振して制御力を検出し、制御対象の構造物が制御された応答をコンピュータによるシミュレーションで求め、その応答変位と応答速度を試験器で制御装置に再現すると同時に制御計算も行いMRダンパーを制御するというリアルタイム・ハイブリッド実験手法を確立した。これによってセミアクティブ制振構造の応答低減効果を検証した。このとき等価サイクル数を減衰性能を評価する指標として採用し、その有効性を示した。
著者
松井 高峯 牧野 壮一 石黒 直隆
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

羊のスクレイピー、牛の海綿状脳症(BSE)、およびクロイツフェルト-ヤコブ病(CJD)に代表される伝達性海綿状脳症(プリオン病)の病原体(プリオン)は病原体特異的な核酸を持たないことから、遺伝子型別および抗原型別は病原体型別には応用できない。しかしプリオンは生物学的性状あるいは生化学的性状によりある程度区別可能である。そこで本研究では、日本の羊スクレイピーの病原体に多様性("株")が存在するか否かを明らかにするための一連の実験を行なった。また、プリオンの多様性を規定するPrP以外の宿主の遺伝的要因についても検討を加えた。我が国で過去10年間に日本で発生した羊スクレイピーの11例を選抜し、マウスに接種して伝達性と羊脳内に蓄積したPrP^<Sc>の蛋白質分解処理抵抗性を調べた。その結果、使用した11例のスクレイピーは生物性状および生化学性状の異なる3群に分類された。つまり日本には複数のスクレイピー病原体が存在することが明らかとなった。本研究のような多数の羊スクレイピーを材料としてその性状を詳細に比較検討した研究はこれまでに英国で報告があるのみで、日本では本研究が初めての例である。本研究で得られた成績は、日本に存在するスクレイピー病原体が動物種を越えて牛や人間に感染する危険性を評価するための重要な知見となる。人ではアポリポプロテインE(ApoE)の特定の遺伝子型が、アルツハイマー病の危険因子であり、またCJDの病型に関与することが示唆されている。そこで本研究では、羊スクレイピーにおいてApoEが病型や病原体株の多様性に関与するか否かを検討した。まず羊ApoE遺伝子をクロ―ニングして塩基配列を決定した。次に羊ApoE遺伝子の多型を調べた結果、羊には3種のApoE遺伝子型があることが明らかとなったが、羊ApoE遺伝子の多型とスクレイピー病原体の生物性状および病型に関連は認められなかった。
著者
大森 正之 石岡 憲昭 東端 晃
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

宇宙環境下での光合成活性の測定を目指して、宇宙実験用にJAXAにより開発された全自動型微細藻培養装置を用い、藍藻スピルリナ(Arthrospira platennsis)を実験材料として地上での準備研究を行った。スピルリナは6日間の培養により、クロロフィル量では約9倍、タンパク質量にして約9倍に増加した。光合成活性は、酸素の発生量およびH218Oから発生した酸素の同位体比の変化、また13Cの取り込み量により測定した。その結果、光合成活性が高い精度で測定できることが実証された。宇宙利用を想定したナノバブル水は、ハンドミキサーで作成できた。ナノバブル水は藍藻Anabaenaの増殖を促進した。
著者
持田 諒 三宅 茜巳
出版者
岐阜女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

岐阜県には地歌舞伎保存会が28座ある。研究代表者は、30年に亘る人間国宝を中心とした歌舞伎・文楽等伝統芸能の舞台監督体験を踏まえ、地芝居及び芝居小屋の現状調査を2006年から2008年の3年次に亘って実施した。又、それらを支える技術職人が数年にして他界していくことも痛感、一人の職人に秘められた時代層も同時に消滅することを痛感した。調査に当たっては古老の聞き書き、映像収録を重視し後世の生きた教材とした。又、未調査の〓殿型農村舞台の撮影、実測も実施した。
著者
安田 徳子
出版者
岐阜聖徳学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

各地の地芝居に伝承された古台本はそれぞれの歴史と特徴をよく伝えているので、本研究では、出羽・赤城山麓・伊那谷・東濃・三河・小豆島の地芝居を対象として古台本の調査を行い、ほとんどの地芝居が江戸時代後期から明治初期までに上方系の旅役者によって伝えられたこと、その後も旅役者が地芝居に濃密に関わってきたことが明らかとなった。江戸系の台本も多少はあるが、明治以降の流入である。地芝居は義太夫芝居の奉納が根底で、浄瑠璃本を台本として伝える地域も多い。
著者
林 洋子 木島 隆康
出版者
京都造形芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

画家・藤田嗣治が、1920年のパリで国際的な名声を得た最大の理由に、彼が確立した「乳白色の下地」に、裸婦や静物を細く黒い輪郭線で描く独創的な技法が挙げられる。油性の地塗層に水性の墨で描く物理的な謎を生前の彼は秘密とし、死後も長らく詳細がわからなかった。本研究を通じて行われた、近年の作品修復成果の分析、技法再現、文献調査の照合によって、その秘密が「タルク(ケイ素とマグネシウムの水酸化物)」にあることが判明した。
著者
柏端 達也 美濃 正 篠原 成彦
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

以下のことを遂行することにおいて課題に関するいくつかの成果を得た。すなわち、(1)色彩の存在論における投影説的見解に対する評価。(2)聴覚対象および嗅覚対象の存在論に対する、出来事意味論の観点からの、また共同知覚の観点からの検討。(3)いわゆる「共同注意」に関する体系的な哲学的概念分析。(4)知覚対象と知覚経験に関する可能世界的意味論に基づく理論化可能性の検討と評価。(5)知覚に関する表象説(志向説)のさまざまなヴァージョンに対する理論的評価。
著者
長谷川 信
出版者
青山学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、通信機工業の勃興期であった明治期を対象に、沖牙太郎と岩垂邦彦の企業者活動に焦点を当てることによって、当該期における通信機ビジネスの特徴を明らかにすることである。本研究は、まず、沖電気の創立者である沖牙太郎の企業者活動について分析した。これまで沖牙太郎は、「技術国産主義」を掲げる経営者として海外企業との競争的な側面が注目されてきた。しかし、ウエスタンエレクトリック社が日本に派遣した社員・カールトンの書簡などから沖牙太郎の行動を再検討すると、沖牙太郎はウエスタンエレクトリック社との提携に合意しており、提携が成立しなかった要因はむしろウエスタンエレクトリック社の判断にあったことが明らかになった。また、沖牙太郎はウエスタンエレクトリック社製品の輸入を中心とした輸入ビジネスを積極的に推進し、それによって通信機ビジネスの成長が可能になったのである。このように、沖牙太郎の金業家活動は、従来の「技術国産主義」という範囲では理解できない、柔軟かつ積極的な内容であった。一方、日本電気(NEC)の創立者である岩垂邦彦は、沖牙太郎のビジネスとウエスタンエレクトリック社との仲介役を果たしつつ、独自のコンサルティング能力によってウエスタンエレクトリック社の信認を得て、最終的には、ウエスタンエレクトリック社の子会社である日本電気の設立を任された。沖牙太郎が創業した沖商会と岩垂邦彦が創設した日本電気は、競争と協調のなかで通信機ビジネスの発展をもたらした。通信機ビジネスの発展は、沖牙太郎と岩垂邦彦という2人の異なったタイプの企業家の存在が、相乗効果を持つことによって促進されたのである。なお、本研究の成果の一部については、企業家研究フォーラム全国大会(2004年7月4日)において報告をおこなった。
著者
中畑 正志 内山 勝利
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

アリストテレスの哲学の基礎的語彙の多くは、「可能と現実」「実体」などのように、現在では哲学の基礎概念となっているばかりでなく日常用語にまで浸透している。そうした語彙をアリストテレスがどのような意図で提示し、またその後西欧においてどのように継承され受容されてきたのかを改めてたどり直すとともに、19世紀の西欧における支配的な解釈の影響下にある日本における受容と翻訳のあり方をその問題点を確認し、あらたな翻訳の可能性を検討した。
著者
笠間 浩幸
出版者
同志社女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

幼児期の子どもの砂遊びについて、同一の幼児に対する発達的な視点からみる継続観察、保育者の関わりと砂遊びの変化・発展の様子、保育者の砂遊びに関する意識と保育カリキュラムにおける砂遊びの位置、さらに砂場の保育文化史的視点及び遊びの環境構成論からの研究を行った。その結果として幼児期における砂遊びの特徴と砂場という遊び環境構築の重要性について明らかにした。また保育者の役割と遊びの発展についての解明を行った。
著者
森岡 卓司 仁平 政人 高橋 秀太郎 野口 哲也 山﨑 義光 高橋 由貴
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

1945年1月~1946年8月までの東北六県県紙、及び全国紙二紙における文芸欄及び文化活動に関連する記事の悉皆調査を行い、東北地域における文化活動の特質を見通すための資料的基盤を形成した。帰郷を含む疎開において生じた具体的な接触を通じて派生した文学的活動の動態について地方雑誌を中心として調査分析を行った。その結果として、モダニズム文学と地域性との関わり、疎開文学者の地域的な活動の実態など種々の具体相が明らかになり、背景にあった地域主義とナショナリズムとの関係についても新たな知見を得た。
著者
古野 貢
出版者
武庫川女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

各守護の受発給文書の収集作業の結果、約6,000通を収集した。各守護の特色は、室町幕府内部での地位、分国配置(地理的・地域環境)、守護権力構造(守護代・奉行人・郡代など)の差により見いだし得た。今後はさらなる収集と、当該期の全体的理解に向けた検討を進める必要がある。
著者
吉岡 基
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

イルカ類の飼育下繁殖の促進ならびに種の保存策実行のために必要となる,イルカ精子の凍結保存技術の確立に向け,ストロー法による最良な凍結条件を探るため,精液の希釈法,液体窒素ガス曝露時間,凍結後の融解時間について実験を行い,後の精子性状を比較した.その結果,まず,バンドウイルカ2頭,カマイルカ1頭について,新たに訓練によって精液採取が可能となった.そして,バンドウイルカ精子については,8%グリセリン含有卵黄クエン酸ナトリウム溶液で2回にわけて最終3倍希釈して凍結を行った場合,35℃温湯中での凍結精子の融解時間を15,30,60秒の3条件間で比較したところ,15秒区では他の2区に比べて融解後の精子性状に低下がみられた.また,希釈精液封入後のストローの液体窒素ガス暴露時間を0.5,2,5,10,15,20,30分の間で比較したところ(液体窒素液面からストローまでの高さは約5cm),5分以上暴露区では生存率約50%以上の比較的良好な成績が得られ,とくに15分区では活力が最も高くなった.またこれらとは別に,原精液を同じ希釈液で2段階希釈せず,1回希釈で最終倍率(×3)まで希釈しても,凍結・融解後の性状に違いがみられなかったことから,この手順がより簡便な希釈・凍結法となる可能性が示唆された.また,シャチについて精液採取訓練を継続した結果,わずかな検体数ではあるが,活発な運動性を示す精子を大量に含む精液が採取され,その凍結保存を行うことができた.バンドウイルカ1頭を対象に凍結精子を用いた人工授精を試みた結果,受胎させることに成功し,約1年間の妊娠期間を経た後に,国内最初の凍結精子を用いた人工授精イルカの誕生に成功した.