著者
橋爪 伸子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成18年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.4, 2006 (Released:2006-09-07)

[目的] 牛蒡餅は今日和菓子として一般的なものではないが、江戸時代には寛永20年(1643)の『料理物語』を初め諸料理書に散見される。それによれば牛蒡餅は、糯米粉、粳米粉と煮熟した牛蒡を混ぜて作った生地を、揚げた後蜜または煎じ砂糖に浸けるという菓子である。この揚げて蜜に浸けるという特徴的な調理法は、日本古来の菓子には一般的ではなく、異国の菓子にみられることから、牛蒡餅の起源も伝来菓子の可能性がある。しかしながら、その由来についてはこれまで追求されてこなかった。そこで本報では、牛蒡餅の起源や実態について検討することを目的とする。[方法] 牛蒡餅の記述がみられる料理書、諸記録等による文献調査に加え、唯一牛蒡餅が現存する長崎県平戸で、製造業者へ聞き取り調査を行った。[結果] 牛蒡餅の起源と考えられる菓子は二つあり、いずれも江戸時代以前に伝来した異国の菓子で、揚げて蜜に浸けるものである。一つは南蛮菓子ひりょうずの根源とされる「フィリョス」、もう一つは朝鮮菓子「薬果」である。後者は日本では「くわすり」等と記され、安土桃山から江戸時代初頭にかけて饗応や茶会等で用いられた。 牛蒡餅の製法が収録されている主な料理書は、上記『料理物語』のほか、元禄2年(1689)の『合類日用料理指南抄』等比較的初期のもので、その後享保3年(1718)以降に刊行された『御前菓子秘伝抄』を初めとする菓子製法書にはみられないことより、この頃には次第に衰退の途にあったと考えられる。一方、元禄16年(1703)の『筑前国続風土記』では、牛蒡餅が筑前博多の土産にあげられていることから、牛蒡餅の消長には地域差があったことが考えられる。
著者
平島 円 奥野 美咲 髙橋 亮 磯部 由香 西成 勝好
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.108, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】pHが13を越える強アルカリ性では,加熱せずに澱粉の糊化(アルカリ糊化)が起こる。しかし,こんにゃくや中華麺などの食品のpHはアルカリ糊化を起こすほど高くない。そこで本研究では,食品で扱われるアルカリ性のpHの範囲を考慮して糊化させた澱粉の老化に及ぼすpHの影響について検討した。【方法】澱粉にはタピオカ澱粉(松谷ゆり8,松谷化学工業(株))およびコーンスターチ(コーンスターチY,三和澱粉工業(株))を用い,その濃度は3.0,4.0および20wt%とした。また,澱粉の糊化はNa塩の影響を受けることから,アルカリの影響についてのみ検討できるよう,Sorensen緩衝液を用いてNa濃度を一定とし,pHを8.8–13.0に調整した。アルカリ無添加の澱粉をコントロール(約pH 6.5)とした。糊化させた試料を5oCで0-45日間保存した後,DSC測定,透過度測定と離水測定を用いて老化過程について検討した。【結果】タピオカ澱粉は老化しにくい澱粉のため,コンロトールを含め高pHに調整した試料すべてにおいて,本研究で用いた保存期間内では老化の進行はほとんどみられなかった。一方,コーンスターチにおいては,pHが高くなるほど,保存に伴うDSC測定から求めた老化率の変化は小さかった。また,澱粉糊液の透明度と離水率もpHが高いほど変化は少なく,pHを高くすると老化の進行がゆるやかになるとわかった。特に,食品で扱われるよりも高い12.6を超えるpHでは,澱粉糊液の透明度はほとんど変わらず,離水も起こらなかった。以上の結果より,食品にみられるアルカリ性の程度(pH12以下)では澱粉の老化は進行するが,コントロールよりも老化の進行はゆるやかになるとわかった。また,非常に高いpH(pH13程度)では,老化の進行が非常にゆるやかになるとわかった。
著者
魚住 惠
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成17年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.80, 2005 (Released:2005-09-13)

目的:岩手県北地域には、砕いた豆腐を加えて打つ“そば切り”(以下“そば”と記す)が伝わっている。このそばには、現在一般的につなぎとして加えられている小麦粉ややまのいもといったものは入れられず、打つときに鶏卵が加えられることがあるが、なければ豆腐と熱湯だけで打たれるそばである。この豆腐の役割はつなぎと考えられるが、現在、豆腐をそばのつなぎとして用いる例は全国的にも珍しいものであり、実際の効果についての報告は見られない。そこで、豆腐がそばのつなぎとして果たす役割を調べることを目的として実験をおこなった。方法:そば粉にペースト状にした木綿豆腐、豆乳、および豆腐とにがりを、それぞれの量を変えて水と共に添加し、容器法により水回しをおこない生地を調製した。生地を薄く延ばし、一定の厚さ、大きさに整え所定の時間茹で、流水で冷却した。生および加熱後の生地のテクスチャーを測定し、豆腐、豆乳、にがり、加熱時間が生地の物性におよぼす影響を調べた。結果:豆腐および豆乳には加熱後のそばの硬さを増加させ、そばを切れにくくさせる効果が認められた。にがり添加量は、豆乳によるつなぎ効果に影響を与えた。茹で時間により硬さは減少した。豆腐および豆乳の添加は加熱後におけるそばの水の吸収に影響を与えた。
著者
嶋田 淑子 飯島 久美子 小西 史子 香西 みどり 畑江 敬子 齋藤 利則
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成14年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.43, 2002 (Released:2003-04-02)

食品用脱水シートでから揚げの揚げだねを前処理することによる、揚げだねのおいしさと揚げ油の劣化に及ぼす影響について検討した。揚げだねとして鯖と鶏肉を用い、脱水シートで1.5時間包んだ後、180℃の油で3分間揚げて試料とした。対照として脱水シート処理をしないものを用い、それぞれ15回連続して揚げ作業を行った。試料と対照を組み合わせ、官能検査を行なった結果、脱水シートを使用したから揚げは対照より有意に好ましいとされた。揚げ油の劣化を、酸価(A.V.), アニシジン価(An.V.), 色差ΔEで評価した。さし油をして連続してから揚げをした場合, 脱水シート処理した揚げだねを揚げた油の方が、A.V., An.V., 色差ΔE, いずれも低く抑えられ脱水シート処理によって揚げ油の劣化が抑えられたといえる。
著者
峰村 貴央 宮田 美里 西念 幸江 三舟 隆之
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成28年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.107, 2016 (Released:2016-08-28)

【目的】近年、平城京跡出土木簡や「正倉院文書」、平安時代の法典と知られる『延喜式』等によって古代の食品が判明するが、その調理法や食事、食膳風景はほとんど不明である。そこで本研究では、「正倉院文書」から東大寺写経所で一日一人当たりに支給されている食品名および量、さらに調理器具や食器を調べ調理法を検討し、古代の日常の食事の復元を試みた。 【方法】史料は、「正倉院文書」の天平宝字六年(762)十二月十六日「石山院奉写大般若経用度雑物帳」や『延喜式』等の古代史料とした。支給されている食品は、「粳米,塩,醤,末醤,酢,糟醤,海藻・滑海藻,布乃利・大凝菜・小凝菜,芥子,糯米,大豆・小豆,胡麻油,漬菜」であり、ナベなどの調理器具は古代と形状が比較的類似しているものを使用した。また、復元に使用する熱源は古代では薪だったが、ガスを用いた。 【結果】史料に見える支給された食品と調理器具、そして食器から復元をすると、1日の食事重量や食塩相当量が非常に多いことが推測された。推測した調理工程は、以下のようになった。①粳米は食品と共に甑が支給されており、それを用いて蒸したと推察された。しかし、浸漬の有無は文献や木簡に記載がないため、粳米は強飯のような調理工程であったと考えられる。②海藻類(海藻・滑海藻)は羹汁に調理されていたと思われる。③天草と布乃利は心太に調理されていたので、水と共に加熱後、ゲル化させた。④糯米は史料に「餅」という記述があるが、粳米と同様の調理工程では餅に加工ができないため、糯米を茹でた後にすりこぎで米粒を潰して餅にした。⑤大豆・小豆は、「大豆餅・小豆餅」という餅が存在したため、餅に混ぜ合わせた。
著者
井野 睦美 大富 あき子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2021年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.99, 2021 (Released:2021-09-07)

【目的】近年オリーブオイルに様々な食材を漬け込んだ商品が見られる。食材を漬けることで変化するオイルの風味を活かして、塩分量が多いと言われる和食へ利用した際の美味しさの増強や減塩効果について検討した。【方法】日本デルモンテ株式会社より提供のエキストラバージンオリーブオイルを使用し、11種の食材を1週間浸漬した。そのうち特徴のある食材3種(小エビ・かつお節・わさび)に厳選し、①常温で豆腐にかけて②加温してフランスパンに含ませて、標準オイルと比較して特徴を評価した。またこれらを和食に使用し、オイル未使用のコントロール料理と比較検討を行った。小エビオイルは味噌汁に加え、同じ塩分濃度の味噌汁と比較した。かつお節オイルは、醤油とオイルの混合液と、醤油のみをほうれん草のお浸しで比較した。わさびオイルは、醤油とオイル1:1混合液と、醤油のみを鯛の刺身で比較した。【結果・考察】小エビオイルは加温により辛みと生臭い香りが抑えられた。かつお節オイルは常温・加温両方で評価が高く、かつお節のうま味や風味が強く感じられた。わさびオイルは嗜好の個人差が大きいが、加温するとわさびの風味が減少することがわかった。小エビオイル入り味噌汁は、コントロールに比べ有意にマイルドであった。かつお節オイルのほうれん草のお浸しはコントロールに比べ有意にコクが強かった。わさびオイルを用いた刺身はコントロールに比べコク、うま味、マイルドさ、美味しさが有意に高かった。この結果から、食材を漬けたオリーブオイルを各種和食料理に使用することで美味しさが増していた。またほうれん草のお浸しと刺身は少ない醤油量で満足が高く、減塩効果も期待できると示唆された。
著者
伊藤 知子 安藤 真美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2022年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.136, 2022 (Released:2022-09-02)

【目的】汁物は様々な具材を使うことができ、献立の栄養バランスを取る上で便利な調整役を果たすことのできる料理である。しかし、一方で塩分の摂取量を上げる原因となりやすいことから敬遠されることもある。日本人の食事摂取基準(厚生労働省)において、1日の塩分摂取量(食塩摂取量)の基準は、改訂ごとに引き下げられ、2020年版では男性7.5g未満、女性6.5g未満とされている。本研究は、日常の食生活記録ではないものの「時代の半歩先に出る」というコンセプトで作られ食の変遷を示す資料であると考えられるNHK「きょうの料理」に掲載されたレシピから、汁物に含まれる塩分量を中心に検証を行い、献立の変遷について明らかにすることを目的とした。【方法】1990~2015年に発刊されたNHK「きょうの料理」テキストを5年ごとに調査した。汁物の献立について、だし汁の量(牛乳、トマトジュース等の液体を含む)、具材重量、塩分量を算出し、その変遷について分析を行った。【結果・考察】汁物の掲載献立数は1990年:76、1995年:75であったが、2000年は114と増加しており、以降、2005年:95、2010年:81、2015年68と減少していた。塩分量は1食で2.0gを超えるものも多かったが次第に減少しつつあった。だし汁の量は1990年では1人分200gを超えるものが多かったが、次第に減少傾向にあった。年々、減塩の必要性が重要視されるようになったこととの関連が推察された。また、1990年は「建長汁」、「国清汁」など郷土料理としての汁物の掲載がみられたが、近年になるほど具材等がわかりやすい料理名称が増加した。
著者
赤石 記子 太田 菜 長尾 慶子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成30年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.91, 2018 (Released:2018-08-30)

【目的】食物アレルギーに悩む患者は多く、幼児期や成人期で新たに発症するものとして果物があげられる。原因食品の中でもバナナは安価で通年入手しやすく、離乳食や給食での出現頻度が高い。生食のほかケーキやジュースに加工されることが多く、種々の加熱法が施される。加熱により一部の抗原が低下するといわれているが、実際の調理事例に当てはめた報告は少ない。そこで今回は加熱条件を変えて調製したバナナを対象に、低アレルゲン化と抗酸化性に及ぼす影響について検討した。【方法】外皮を除いた市販のフィリピン産バナナを5mm厚さの輪切りにした。未加熱(生)を対照に100gずつに分け、バナナを使用した菓子類の加熱条件を想定し、フライパンによる板焼き加熱法(中火、両面各5分)、オーブン加熱法(180℃、20分)、蒸し加熱法(中火、12分)、電子レンジ加熱法(500W、4分)とした。これら加熱法別試料の重量変化率、糖度、テクスチャー、及び化学発光法による抗酸化能を測定した。また試料中のたんぱく質を抽出し、電気泳動分析による分子量分布から、加熱条件別の抗原の変化を比較した。【結果】重量変化率は、オーブン加熱法で大となり蒸し加熱法で小となった。糖度は、重量変化率が大で濃縮されているオーブン加熱法で高くなった。抗酸化能は、未加熱に対し焼き加熱法とオーブン加熱法で有意に高く、これは加熱によるメラノイジン生成が多く生じたことが原因と考えられた。一方蒸し加熱法や電子レンジ加熱法は、未加熱との有意差がみられなかった。電気泳動分析の結果、電子レンジ加熱法で全てのバンドが消失しその他の加熱法でもバンドが薄くなったことから、加熱によるアレルギーの低減化の可能性が期待できた。
著者
上薗 薫 綿貫 仁美 長谷川 桜
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2022年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.99, 2022 (Released:2022-09-02)

【目的】灰干しとは、火山灰を用いた熟成乾燥加工法の一種で海産魚に対して用いられることが多い。研究者らは魚介類だけではなく、食肉、野菜、果物等に調理加工の下処理手法として活用検討し、加工食品への応用検討も行っている。魚介類では適度に水分を火山灰が吸収し、併せて魚臭やサメやエイではアンモニア臭も吸着し、食味が向上する。本研究では本特性に着目し、渋柿を試料とし、脱渋工程に火山灰干しが活用できるか検討することを目的とした。【方法】試料は平核無、刀根早生2品種とした。1)灰干しの手法は三宅島灰で行われている加工法を基本とした。灰干しに用いる火山灰は環境庁三宅支庁から許可された三宅島火山灰を使用した。2)各試料を火山灰に6時間、12時間、18時間、24時間浸漬処理を行い、その後、低温機械乾燥で干し柿とした。比較対照の脱渋方法としては、アルコール脱渋法を用いた。3)灰干しと灰干し未処理試料に対し、紫外吸収法で各試料の渋味判定と併せてD(+)-カテキンと比較し、カテキン含有量を判定した。また、フォリン・デニス(Folon-Denis)法も用い、含有タンニン定量を行った。【結果】灰干し処理後及び灰干し未処理(アルコール脱渋)後に低温乾燥を行った各々の試料のタンニン定量の結果は、脱渋処理の違いに差は認められず、いずれもほぼ同等のタンニン含有量を示した。よって、灰干しによる脱渋作用が示唆された。加えて、試料により灰干しのデメリットなる火山灰のにおいは、24時間火山灰浸漬処理を行っても火山灰独特のにおいが試料へうつらず、食味も比較対照手法品と同等の甘さが認められた。
著者
大羽,和子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, 1999-05-20

1)キタアカリ(VC高含有品種)および男爵薯の生育に伴って,塊茎の重量,デンプン価,ビタミンC(VC)量が増大し,7月下旬に最大になり以後減少した。2)ジャガイモ(7品種)塊茎を冷却(4℃)貯蔵するとVC量も(GLDHase活性も1ヶ月後に顕著に減少し,1〜2ヶ月の間は変が少なく,2〜3ヶ月後に再び減少した。3ヶ月後のVC量が著しく減少する時期および貯蔵2ヶ月以降のVC含量の低い時期に高くなった。3)収穫直後に塊茎を4℃に移すとその2〜3日後にVC量およびGLDHase活性が増大し,以後減少した。4)ジャガイモ塊茎を15℃に貯蔵した方が,4℃に貯蔵した場合よりもVC量の減少が小さく,GLDHase活性は低く保たれた。
著者
河野,一世
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, 2005-12-20

The uses and styles of serving bonito during the first, middle and latter Edo periods were studied in cookery books written during those periods. Bonito cuisine was categorized into raw and heated, and processed bonito was also classified as dried bonito and dried bonito soup stocks. It has been reported that bonito has been eaten since the Jyoumon period, and this study, confirmed that eating raw bonito remained popular through the Edo period. The main cooking method used was boiling rather than roasting. Dried bonito was widely used as garnishing for sashimi, in fish and shellfish soup, and for cooked rice during the Edo period. The use of dried bonito in soup stock was believed to have started in the 16th century, although, the findings from this study show that it could be traced back to the 13^<th> century, long before the Edo period. Dried bonito soup stock was added to "iri-sake" which was used as a sauce for serving raw fish and also used to enhance the taste of many other dishes during the Edo period.
著者
山本 亜衣 吉岡 慶子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成27年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.65, 2015 (Released:2015-08-24)

【目的】キウイフルーツは、タンパク質分解酵素アクチニジンを含み、食肉をその果汁に浸漬すると、アクトミオシンおよびコラーゲンを分解して肉質の軟化に作用する。本研究では豚肉をキウイ果汁に浸漬し、加熱豚肉の物性測定、組織観察および官能評価を行い、豚肉への軟化効果と嚥下調整食への応用性を検討した。【方法】試料調製:キウイフルーツはHayward種を用い、ミキサーで砕切してろ過し、キウイ果汁とした。試料肉は、豚ロース肉(LWD種)を厚さ15mmに切り、肉重量の50%のキウイ果汁に浸漬し、3時間、24時間浸漬保存した。浸漬後、過熱水蒸気オーブンで中心温度が80℃に達するまで8分-10分加熱した。物性測定:テンシプレッサー、卓上型物性測定器でテクスチャー試験を行った。組織観察:試料肉片を化学固定し、走査型電子顕微鏡(S-3000N)で観察した。官能評価:栄養科学部学生17名で評点尺度法で官能評価を行った。【結果】加熱肉のかたさは未処理肉、3時間、24時間の順に浸漬時間の経過に伴って軟らかい性状を示した。組織観察において、3時間浸漬肉ではコラーゲンの細い線維は消失し、太い線維の残存がみられ、24時間ではいずれのコラーゲン線維もほとんど認められなかった。官能評価では未処理肉の方が外観、食味が良く、弾力があると評価された。肉質の軟らかさ、噛み切り易さの項目では、未処理肉に比べ、浸漬処理肉の方が、軟らかく、噛み切り易いと評価された。さらに、薄切り肉やひき肉などの肉片の形状と酵素作用時間などの調理条件の検討により嚥下調整食への応用が可能であった。
著者
山田 直史 中桐 実奈美 山脇 香菜 新實 祐理 伊東 秀之 宗歳 日光里 山崎 勤 中西 徹 中村 宜督
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成30年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.11, 2018 (Released:2018-08-30)

【目的】ハーブとして料理やアロマオイルに利用されるローズマリーは,古くから薬草として含有成分の機能が利用されていた。有名な伝承として,手足のしびれを患っているハンガリーの王妃に,修道士らが治療薬としてローズマリーをアルコールに漬け込んだものを勧めたところ、王妃はみるみる回復されたうえ、みるみる若返り、70歳という年齢で20代のポーランド王に求婚されたというものがある。本研究では,ローズマリーの抽出物(溶媒:水またはエタノール)を用いて,抗酸化活性,メラニン生成阻害効果,抗糖化活性およびがん細胞増殖抑制効果について測定した。【方法】ローズマリー葉を水またはエタノールに20分漬け抽出液とした。抗酸化活性はDPPHラジカル捕捉活性法で,メラニン生成阻害効果はドーパとマッシュルーム由来チロシナーゼを用いて,抗糖化活性はグルコースとアルブミンの糖化反応によるAGEs生成量測定で,がん細胞はMCF-7(乳がん細胞株),MDA-231(乳がん細胞株),SW-982(滑膜肉腫株)を用いた。【結果】エタノール抽出物では,すべてで高い機能性が確認された。このような機能性の影響から,伝承のような若返りの言い伝えが残っているのではないかと憶測される。
著者
宇和川 小百合 色川 木綿子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成23年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.92, 2011 (Released:2011-08-30)

【目的】日本には四季折々の年中伝統行事があるが、核家族化や食の簡便化が進み、行事食を受け継ぐ機会も減っている。そこで、女子大生の行事食に対する実施状況及び意識調査を行い、行事食の現状を探ることを目的とした。また、平成21~23年度に実施された本学会の特別研究「調理文化の地域性と調理科学-行事食・儀礼食-」として公表されている調査データとも比較、検討した。 【方法】平成22年7月、東京家政大学栄養学科・同短期大学部栄養科の学生377名に質問紙法による調査用紙を配布し、その場で回答させて回収した。(回収率100%)調査内容は、行事食の認知度、実施状況、意識調査(理解度や子供に教えていく必要性など)、代表的な行事食の調理実態などである。 【結果】行事食(12種類)の認知度は「夏至」「お盆」が50%以下と低く、他の行事については高い認知度であった。毎年実施している行事は「正月」(94.7%)、「大晦日」(85.9%)が高かった。行事食をいいものだと思う者は「非常に」(49.9%)、「比較的」(42.7%)で9割以上の学生が食文化としていいものだと認識しており、自分の子どもに教えていく必要性も9割以上の学生が「ある」と思っている。しかし、行事食を理解して食べている者は51.2%、あまりそう思わない者は48.0%であった。また、行事食の調理経験については作ったことが「ある」(55.2%)、「ない」(43.5%)であり、今後、行事食の伝承の仕方を考えていく必要がある。
著者
真部 真里子 久賀 奈央子 牧野 麻美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成18年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.16, 2006 (Released:2006-09-07)

【目的】腸管上皮細胞は、生体に必要な栄養素を取り込むだけでなく、異物の侵入を排除する物理的バリアである。タイトジャンクションと呼ばれる密着結合により互いに接着して、物質を選択的に輸送している。しかし、酸化ストレスに晒されると、種々の細胞構成成分が損傷し異物の侵入を許すことから、身体活動に悪影響を及ぼすと考えられる。そこで、本研究では、野菜による腸管上皮細胞における酸化ストレス防御能について検討した。【方法】腸管上皮細胞モデルであるヒト結腸癌由来Caco-2細胞に、過酸化水素を添加し酸化ストレス状態とした。酸化ストレスによる細胞損傷の指標として、経時的な経上皮膜電気抵抗値測定によるタイトジャンクションの密着度、LDH活性測定による細胞膜の健全性ならびに細胞内グルタチオン量を用いた。【結果】生のピーマン、ブロッコリー、アスパラガスの水抽出液を添加すると、酸化ストレスによる細胞損傷が抑制された。アスパラガスでは、茹で加熱、レンジ加熱を行ってもその効果は維持された。一方、カボチャ添加では、生では酸化ストレス防御能は認められなかったが、茹で加熱、レンジ加熱を施すと酸化ストレスによるタイトジャンクションの弛緩や細胞膜の損傷を抑制できた。また、ゴボウ添加では、生、茹で加熱品ともに酸化ストレスによる細胞損傷を抑制できなかったが、レンジ加熱では、細胞内グルタチオン量以外の測定項目においてやや酸化ストレス抑制傾向が認められた。このように、腸管での酸化ストレス防御能を期待して野菜を摂取する場合、調理方法を考慮する必要があると考えられる。また酸化ストレス防御能は、一指標ではなくいくつかの指標を用いて検討する必要性が示唆された。
著者
古谷 彰子 大西 峰子 三星 沙織 米山 陽子 平尾 和子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.31, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】ワラビの根から抽出されるワラビ澱粉は、高価で保存性も悪い。わらび餅の調製に用いるわらび粉の市販品には安価な甘藷澱粉やクズ澱粉が混合されているもタピオカ澱粉を利用したものが多い。しかし、これらの澱粉は安価であるという利点はあるものの、ワラビ澱粉で調製した本わらび餅とは食味・食感がかなり異なっていた。本報告では、加工タピオカ澱粉を用いて、本わらび餅に近い食感のわらび餅の調製法を検討した。【方法】澱粉は、未加工タピオカ澱粉(NT)、リン酸架橋タピオカ澱粉(P)、Pの酵素処理澱粉(PE)、アセチルリン酸タピオカ澱粉(AP)、APの酵素処理澱粉(APE)の5種(グリコ栄養食品(株))とし、上白糖(三井製糖)と蒸留水を用いてわらび餅を調製した。加水量は各澱粉の水分量を求めて調整した。またシェッフェの単純格子計画法を用い、NTと2種の加工タピオカ澱粉(PE、APE)を3成分として配合割合の異なる9つの格子点を設定した。物性測定はクリープメータ((株)山電)、官能評価は本わらび餅を対照として、つり合い不完備型ブロック計画法を用いて行った。【結果】官能評価の嗜好では、PEとAPEを用いたものが総合評価の項目で有意に好まれたが、どちらも本わらび餅の食感とは異なっていた。そこで、シェッフェの単純格子計画法を用いて3種澱粉(NT、PEおよびAPE)の配合割合の影響を検討したところ、格子点⑦のNT:PE:APE=1:1:1の配合割合のわらび餅が本わらび餅に最も近い物性値を示した。官能評価の特性評価においても、弾力と口どけの項目で有意にあると評価された。嗜好においても、本わらび餅と同様に「好き」「非常に好き」と評価され、有意に好まれた。
著者
米田 千恵 粟津原 元子 畑江 敬子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.337-343, 2008-10-20
参考文献数
13
被引用文献数
3

冷凍メバチ肉の塊を,30℃の3%食塩水に浸漬する解凍法(解凍法1),30℃の水に浸漬する解凍法(解凍法2)および4℃での緩慢解凍(解凍法3)に供した。品質の同じ試料では,解凍過程における重量変化,色は解凍法1と解凍法2の間で差異はみられなかった。上物とよばれる品質の高いマグロ肉についての官能検査では,解凍法1で解凍した試料は解凍法2で解凍したものに比べて,水っぽくなく,一方で,粘性,塩味,マグロらしい味(うま味)が強かった。解凍法1で解凍した刺身の外側の食塩濃度は,解凍法2および解凍法3で解凍した試料の食塩濃度よりも有意に高かった。マグロ肉へ食塩が浸透することによって,粘性が増し,うま味が増強されるものと考えられた。
著者
菊地 和美 古郡 曜子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.20, pp.181, 2008

<BR> 【目的】<BR> 冷涼な気候と自然、豊かな大地とともに海に囲まれた北海道は、生乳などの農産物が豊富であることが知られている。北海道では近年、道産食品独自認証制度など食の安全・安心の取り組みを積極的に進めている。そこで、北海道産食材の特徴を活かした食育として、江別産小麦粉を用いた調理について検討を行うことにした。<BR>【方法】<BR> 調査方法は、2008年1月~2月の『第3土曜日道産DAY』に大学生対象として色彩に関するアンケート調査を実施した。さらに、江別産小麦粉を用いた調理体験を大学生ならびに高校生を対象として、官能検査や菓子作成に用いた色彩について考察を行った。 <BR>【結果】<BR> 大学生を対象にした色彩に関するアンケート結果はクリームの色がプラスのイメージでは白色、黄色であり、マイナスのイメージでは黒色、青色の出現傾向にあった。江別産小麦粉を用いたどら焼き調理体験におけるクリームに混ぜたジャムなどの種類は抹茶が多く、次いで大学生ではキャロットジャム、高校生ではアロニアジャムの順であった。ジャムなどの平均種類数は高校生が5.3±3.2種類、大学生が3.1±0.8種類であり、高校生が多く、有意差がみられた(p<0.05)。調理体験における官能検査結果では焼き菓子は「風味がよい」という回答がみられ、どら焼きのトッピングであるジャム入りクロテッドクリームは総合評価や風味、外観が高かった。また、クロテッドクリームについて、抹茶とキャロットジャムでは官能検査の結果、外観や総合評価はキャロットジャムが高くなり、食感や風味は抹茶が高く、有意差がみられた(p<0.01)。以上より、北海道産食材を用いた食育の展開を今後も地域において継続したいと考えている。
著者
浜守 杏奈 大倉 哲也 香西 みどり
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.31, 2019

<p>【目的】これまで大麦と米の混炊において,それぞれを単独で炊飯するよりも混炊することで糖の生成量が増加すること,炊飯中に大麦と米の酵素が互いの粒内に移動していることを確認した。しかし,両内在性酵素がどのように麦飯の糖生成に関与しているかは明らかになっていない。本研究では米と大麦から調製した粗酵素液を用いて糖生成活性の測定を行い,それぞれの粗酵素液と基質を組み合わせて実際の炊飯を想定した混炊モデル実験を行うことによって混炊における大麦と米の酵素の特性および相互作用を検討した。</p><p>【方法】90%搗精米(日本晴),75%搗精丸麦(モッチリボシ)を試料とした。米および大麦から50mMリン酸バッファーを用いて粗酵素液を調製し,基質を可溶性デンプン,米・大麦から調製したデンプンとし,糖生成活性を測定した。還元糖はソモギーネルソン法,遊離糖はHPLCにより測定した。混炊モデル実験は,基質デンプン総量に占める大麦デンプンの割合が0,10,20,30,40,50,100%となるように調整し,糊化させた米・大麦デンプン混合液に同様の割合で混合した粗酵素液を反応させ,単独の値から算出される混炊の計算値と比較した。</p><p>【結果および考察】還元糖生成活性については大麦が米よりも顕著に高く,その至適温度は大麦の方が低いことが示された。モデル実験において大麦単独ではβ-アミラーゼによるマルトースの生成量が多いが,混炊による遊離糖の増加はグルコースが顕著であり,大麦の割合が高いほどその傾向は強かった。大麦の酵素が米粒内でも作用することでマルトースが生成され,米のα-グルコシダーゼが作用しやすくなり,混炊でのグルコースの増加に影響したことが推察された。</p>