著者
小林 花神 堀口 高彦 近藤 りえ子 志賀 守 廣瀬 正裕 伊藤 友博 鳥越 寛史 林 信行 大平 大介
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.1551-1555, 2006-12-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
15

80歳,男性.平成16年10月より慢性心房細動に対して抗不整脈薬アミオグロンを内服していた.内服7カ月後の平成17年6月,呼吸困難,発熱を来たし入院となった.胸部レントゲン写真,CT写真にて全肺野にスリガラス影を認め,動脈血液ガス分析にて低酸素血症がみられ,acute respiratory distress syndrome (ARDS)と診断した.アミオグロン内服の中止,ステロイドパルス療法を施行するも病態の急速の進行により入院第4日目に死亡した.剖検にてdiffuse alveolar damage (DAD),肺胞腔内に水腫液の貯留,foamy macrophageを認め,アミオグロンによる薬剤性肺障害と診断した.
著者
斎藤 共永
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.55-62, 2002-05-31 (Released:2017-07-19)
参考文献数
14

本稿では、多様な可能性を秘めたデジタル機器のデザインにおいて、イノベィティブなデザイン生成のための方法としてのプロトタイピングについて検討する。プロトタイピングのもつ意味は、次の諸点にまとめられた。1)プロトタイピングの文化はイノベーションの質を決定づける。2)デジタルの価値創造においては、非線形的なプロトタイピングの役割が大きい。3)それは、デジタルの価値が、主に非モノ特性からなることによる。4)プロトタイプからスペックを導くプロトタイピング主導型のプロセスが必要である。5)プロトタイプは、開発過程における共通言語となる。これらを検証するために、企業のデザイン組織において、プロトタイピングがどのように行われているか調査を行った。その結果、技術や社会の変化を考慮に入れて、製品のあるべき姿を描くというプロトタイピングが、企業の開発プロセスや、組織構造などの中に組み込まれており、プロトタイピングが、これからのデザインプロセスとして、有効であるとの認識が定着しつつあることが分かった。
著者
Ichiro OHNO
出版者
The Seismological Society of Japan, The Volcanological Society of Japan, The Geodetic Society of Japan
雑誌
Journal of Physics of the Earth (ISSN:00223743)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.355-379, 1976 (Released:2009-04-30)
参考文献数
8
被引用文献数
287 380

A theory was developed on the free vibration of a crystal of rectangular parallelepiped and of general symmetry by extending Demarest's theory of cube resonance. All vibrational modes were classified and described in detail for the case of orthorhombic symmetry. The theory is applied to determine elastic constants of crystals from the resonance frequencies of its free vibrations. The method of numerical analysis of resonance frequency data was studied to derive a practical way of elastic constant determination. As an example, the elastic constants of two specimens of single crystal olivine (Mg1.8Fe0.2SiO4) were determined. The applicability of the resonance method is largely extended by the present theory to the precise determination of elastic constants of single crystals.
著者
奥村 烝司
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
油化学 (ISSN:18842003)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.254-259, 1986-04-20 (Released:2009-11-10)
参考文献数
13
著者
澤野 美智子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.437-456, 2021-12-31 (Released:2022-04-14)
参考文献数
35

本稿の目的は、アフェクト論の観点からパンデミック下の医療現場で起きたアクター間の相互作用について検討することである。特に韓国の「コロナ19」病棟における防護服と看護師に注目する。本稿では防護服を病棟内で相互作用しあうアクターのひとつとして捉え、看護師側だけでなく防護服側の視点も交えながらアクターの動きを描き出す。感染症対策マニュアル上では単純に人間をウイルスから防護するだけのはずだった防護服であるが、現場ではそれぞれに物質性と文脈を持つ防護服と看護師、その他のアクターが出会うことで新たな作用が生じ、アフェクトの秩序が乱されたり連続性が失われたりする。これを本稿ではアフェクトの攪乱と呼ぶ。防護服は独特の環境における多様なアクターとの相互作用によって、防護服に合った身体操作をするよう看護師たちを飼いならそうとする。一方で看護師たちは業務を遂行するため、防護服が遮断しようとする防護服外部の刺激を拾い上げようとするとともに、自らの身体と防護服の間に「第3者」を介在させることで防護服を飼いならそうとする。防護服と看護師が接触を継続せざるを得ない状況下、攻防自体は継続して繰り広げられつつも、アフェクトの秩序が再編されてゆく。
著者
辰巳 正明
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.68-76, 1995-11-10 (Released:2017-08-01)

本誌一月号(一九九五年)において、呉哲男氏は家持と池主との宴席歌・贈答歌を検討して、家持の同性愛を指摘した。確かに二人の交友をめぐる表現に男女の恋情の表現を認め得る。だが、二人が文学の贈答を通して交友を成立させているのは、文選が分類する贈答を示唆する。同心を理念とする贈答詩が見られ、それらには恋愛詩の表現を内在させるのを特徴とする。交友の感情が恋情に近くあったことは確かである。ただし、それが直ちに同性愛を意味するものではない。
著者
片寄 大 白土 邦男
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.25-38, 2001-07-20 (Released:2010-07-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1 2

循環器疾患の危険因子としての怒りを治療目標とする, 柴胡を含む医療用漢方製剤は循環器疾患の予防および制御に有用である可能性があるが, その循環器外来におけるその適用は確立されていない。そこで当科循環器外来で, 柴胡を含む医療用漢方製剤として使用頻度の高かった柴胡加竜骨牡蛎湯が投与された9名 (年齢44±13歳〉mean±SD〈 男性3名, 女性6名) について, 治療効果を解析した。柴胡加竜骨牡蛎湯使用9名中7名有効で有効率は78%であった。柴胡加竜骨牡蛎湯は上室性期外収縮, 心因性咳嗽, 高血圧, 心臓神経症などの患者における動悸, 胸部不快感, 咳嗽などの胸部症状および不眠に有効であった。柴胡加竜骨牡蛎湯使用例においては, 降圧効果, 抗不整脈効果, β遮断薬との比較しての安全性などが示された。以上, 肝関連方剤のなかで, 柴胡加竜骨牡蛎湯が動悸, 不眠の改善を介して, 循環器疾患の制御および予防に有用であると思われ, 循環器外来において使用が考慮されてよい薬剤と考えられた。
著者
工藤 瞳
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本年度を含めた3年間の研究において、働く子どもの運動MANTHOCが学校教育を提供する背景には、仕事をしていることのみならず、留年、中退、学校関連費負担、そして一部には小学校入試の存在など、子どもが一般の公立学校に通う上での様々な阻害要因が明らかになった。本年度は、仕事以外の学校教育への阻害要因および公立学校間格差、そして修道会などが運営する公立学校である民営公立校に着目して研究を行った。前年度および本年度の現地調査を踏まえて明らかになった点は以下の通りである。(1)ペルーの地方都市カハマルカの公立学校間格差に着目し、入試の有無や学校関連費といった点から比較した。2011年当時学区制のなかったカハマルカにおいて、試験による入学者選抜や学校関連費の違いといった諸条件が、各家庭による学校選択を左右している可能性があり、選抜がなく「誰でも入れる」学校の教育環境の改善が放置される懸念がある。(2)また、国が教員給与を全額負担し、修道会などが運営する宗教系民営公立校は、学校数は少ないものの、公立学校の枠内で貧困層に対して質の高い教育機会を提供してきた。ペルーでは財政的制約や政策の不連続性によって教育制度の変化が低調であり、教会による貧困層への教育の関与を背景とした民営公立校という伝統的な教育の公私協働の形が維持されてきた。(3)宗教系民営公立校の中でもネットワークを形成し、ラテンアメリカ17か国において学校教育・ノンフォーマル教育を展開するフェ・イ・アレグリアは、学校運営に関して地域と緊密な関係を築くとともに、教員研修や専門家の視察により教育環境・内容の向上に取り組んでいる。以上のように子どもの就学への阻害要因を学校側から検討することにより、働く子ども、貧困層の子どもへのより良い教育機会をいかに保障するかを考える上での重要な知見が得られた。
著者
菅原 徹 佐渡山 亜兵 上條 正義 岡本 宜久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.341, pp.41-44, 2002-09-20
参考文献数
7
被引用文献数
2

本研究の目的は生活用の製品を使用をしているときに生じる情動変化を顔面筋の筋電図計測によって推定することである.まず,顔面筋の筋活動を精度よく計測するために,多点電極を使用して筋の神経支配帯の位置を確認した.次に表情筋と咀嚼筋を同時に計測した.その結果,両者の筋活動は互いに密接に関連していることから,顔面筋の活動を計測する際には咀嚼筋の活動をモニターすることが必要であった.第3に閾値を設定することによって,顔面筋の活動レベルを2値化した.2値化された頻度によって快-不快の情動を定量的に表現した.応用例として,ドライビングゲーム中及び自動車運転中の顔面筋の活動を計測し比較した.その結果,アンケートから引き出せなかった情動変化が顔面筋の活動から計測できた.