著者
奥津 文子 星野 明子 江川 隆子 荒川 千登世 横井 和美 本田 可奈子 山田 豊子 赤澤 千春 山本 多香子
出版者
滋賀県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

リンパ浮腫セルフケア支援における携帯電話使用群・通常支援群共、6か月間に蜂窩織炎等の合併症を発症した者はいなかった。周囲径については、有意差は見られなかったが、インピーダンスによる水分量については、携帯電話使用群が有意に減少しており、浮腫が改善していることが分かった。セルフケア実施状況については、携帯電話使用群が有意に実施状況が高かった。抑うつ状態については、携帯電話使用群が有意に低かった。以上より、リンパ浮腫患者に対する携帯電話による支援は、セルフケア実施や継続、水分量の減少、および抑うつ症状の改善に有効であることが分かった。
著者
佐藤 井一
出版者
兵庫県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

メルカプトコハク酸で表面修飾された金ナノ粒子を水溶液表面で集合させ、単結晶配列金ナノ粒子格子を作製した。得られた金ナノ粒子格子の光学誘電率は、構成粒子の粒径を変化させることで5から11まで変化することを確認した。また、金ナノ粒子をアモルファス状に押し固めた材料の電気伝導度は、構成粒子の粒径を変化させることで3.0S/cmから500S/cmまで変化した。この電気伝導率の温度係数は1.2×10^<-4>K^<-1>であり、バルク金の温度係数よりも一桁小さかった。本研究で得られた金ナノ粒子格子あるいは金ナノ粒子アモルファス体は、発熱による熱暴走を防ぐバラスト抵抗、もしくは、電子回路の高集積化の際のゲート材料として有望である。
著者
王 柳蘭
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、中国出身のムスリム越境者(雲南系ムスリム)に着目し、政治的経済的なマクロな諸要因によって生活様式が大きく影響されつつも、民族独自の宗教、言語や諸文化にもとづく多元的なネットワークを用いて、東アジアと東南アジアを結ぶ移民の生活圏を確立していく姿を捉え、移民の視点からみた地域像を浮き彫りにする点にある。最終年度において代表者は、アメリカ・サンフランシスコで行われたAmerican Anthropological Associationの年次集会にて"The Negotiation of Chinese Ethnicity, Islam and the Making of Trans-Regional Network Among Yunnanese Muslims in the Thai-Myanmar Borderland"と題して、本研究で得られた越境とネットワーク、宗教の動態に関する最新の知見にもとづき、研究発表を行った。また、宗教の再構築というテーマのもと、日本文化人類学会においても、「中国ムスリムの越境と宗教の再構築」と題して口頭発表を行い、地域を越えた比較の視点から議論を行った。また、台湾のキリスト教組織によるタイ北部雲南系ムスリム移民支援に関する資料収集を行い、文献資料をもとに越境と宗教空間の再構築に関する理論的検討も行った。これらの研究と成果発表にもとづいて、越境と宗教動態とネットワークに関する中国系ムスリムの独自性と地域的特徴を把握し、越境プロセスにおいて宗教の果たす役割、民族・宗教を超えた共生の在り方についてあらたな知見を得ることができた。
著者
松浦 智子
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究は、多民族が流動・衝突する金元華北の軍事社会に生じた"異文化と武力世界"に関わる各現象が、北方系の英雄を題材にとる明刊通俗戦記小説の形成過程に、如何に関与していたかを考察するものである。昨年度(H19)に引き続き、宋代山西の英雄・楊家一門の活躍を描く「楊家将演義」(『北宋志伝』『楊家府演義』)を研究対象の中軸とした本年度(H20)は、主に2008年3月に楊家将の故地である山西省で行ったフィールド調査で得た情報の分析を進めた。具体的には、元の中期頃に楊家将の末裔を称する楊懐玉なる人物によって建てられた楊忠武祠に伝存する、元の天暦二年と泰定元年に繋年される二つ碑文を検証した。結果、この二つの碑文に記される山西楊氏の系譜が、『宋史』を始めとする史書系統に書かれる系譜とは大きく異なる一方で、元雑劇や小説といった通俗文芸に描かれる楊家将の系譜に近いものとなっている事を見いだした。ここから報告者は、楊家将の故事に見える世代累積型の体系が、これまで考えられていたよりも早い元の中期頃に、北方中国である程度形成されていたという新知見を得るに至った。この検証結果は、これまで文学研究分野で殆ど等閑視されてきた金、元北方の地域社会が、小説を始めとする俗文学の形成に与えた影響力の大きさを解明する重要な糸口に繋がると考えられる。本成果は、2008年10月に京都大学で行われた日本中学学会で「「楊家将」物語の形成過程について-山西省楊家祠堂の元碑、家譜を手がかりに-」として口頭発表し、更にこの発表を元に手直しを加えた原稿に沿って、2008年11月に中国武漢大学で開かれた「明代文学与科挙文化国際学術研討会」で「"楊家将"故事形成史資料考-以山西楊忠武祠的文物史料爲線索」として発表した。後者で発表した原稿は、2009年夏に出版される論文集に掲載予定である。
著者
緒方 敦子 衛藤 誠二 下堂薗 恵 川平 和美 林 良太
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

半側空間無視は脳損傷患者が病巣と反対側のものを無視してしまう事であり、右脳損傷で生じ易い。リハビリテーションの阻害因子となることが知られているが、そのリハについては有効な方法は確立されていない。無視する側への視覚探索(走査)訓練と体幹回旋は推奨されるが、今回、ゴーグル型モニターで視覚探索訓練を行った。これを使う事で、半側空間無視の患者は視線だけでなく体幹も回旋し、同時に重心、頭部も無視側へ回旋した。無視への即時効果も認められた。ゴーグル型モニターでの視覚探索訓練は、半側空間無視のリハに役立つと考えられる。
著者
カートハウス オラフ
出版者
千歳科学技術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

大面積のディウェッティング装置の製作に成功した。すなわち、ディウェッティング現象を用いて、30×40センチの基板に均一の高分子や低分子のマイクロ構造を作ることができるようになり、マイクロレンズのアレーや有機トランジスタのナノファイバアレーの作成に成功した。
著者
砂原 秀樹 和泉 順子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2009

インターネット上にあふれる情報を収集し処理・公開していくシステムとしてセンサネットワークがあるが、これを安全で安心して利用できるようにするためには、大量の情報源からの情報の流れを取り扱うための技術、情報源の信頼性の確保、情報源の攻撃からの保護を実現する基盤技術の開発と運用技術の確立が重要となってくる。そこで、多数のセンサが接続されたインターネット基盤において安定したセキュアなネットワークを構築・運用する技術の開発を行った。具体的にはノード群の相互監視による自律的情報管理機構を提案し、実装評価を行った.その上で、100箇所/10カ国以上に設置された環境センサを用いたセンサネットワークによる国際実証実験基盤Live E! Projectにおいて提案手法の検証を行った。Live E!から得られる実際のセンサデータと組み合わせることで、東京都心におけるゲリラ豪雨とセンサ機器の故障による異常値を判別することに成功している。また、イベント駆動型の処理が可能であるCBNにデータ処理機構を導入し、また負荷分散機能も同時に実装した。データ処理機構が処理部分を分割し、処理の再割り当てを行うことで規模性を担保している。またセンサデータにはデータ発生源を示すセンサIDに加え発生データにシーケンシャル番号を与えることでデータ処理過程やトレーサビリティに役立てている。本研究での成果により、センサネットワークという新しい情報基盤に社会が依存することが可能となり、より安心、安全な社会を構築する礎となると考える。
著者
伊藤 繁 三野 広幸 宇津卷 竜也 石浦 正寛
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

クロロフィルdをもつ新発見の光合成生物Acaryochloris marina の光合成系の反応中心複合体及び光捕集系タンパク質の機能と構造その遺伝子をを検討した。クロロフィルd 合成系の原因遺伝子は未特定におわったが、クロロフィルdを使う光合成系の特性を明らかにした。多様な生物の光合成系の比較研究を行い、光合成光反応系の構築原理を検討した。新規の光センサータンパク質についても研究した。
著者
平野 牧人
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は種々の神経変性疾患原因蛋白の核内輸送に関して、運動ニューロン病様Triple A症候群(AAAS)の原因である核膜孔蛋白アラジンに依存性であるかを検討し、本疾患で障害を受けやすい古典的な核局在シグナル(NLS)以外の輸送シグナル同定と輸送機序の解明である。本研究により小脳失調原因蛋白アプラタキシンのみAAASの輸送障害を受け、他の原因蛋白は障害を受けないことが判明した。また、核内輸送障害を受けないDNA修復蛋白であるXRCC1において、輸送障害を改善するために重要なのは、古典的NLS(239-266残基)の下流267-276残基であることを同定した。この部位を含む新規NLS(239-276残基)38アミノ酸配列をminimum essential sequence of stretched nuclear localization signal(mstNLS)と名付けた。mstNLSを融合すると、輸送障害を受けていた小脳失調原因蛋白アプラタキシンはAAAS患者細胞の核内に効率よく輸送された。さらに、mstNLSは酸化ストレス下の正常細胞においても、強力な核局在シグナルとなることが証明された。以上から本研究成果は、AAASの病態機序改善のみならず、核内輸送研究に貢献しうると考えられる。
著者
北田 聖子
出版者
京都市立芸術大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、規格化、標準化が、製品のデザインにどのように関係し、意義をもつかを明らかにすることである。これまでのデザイン史研究は、デザインの側から、デザインと関わる特殊な概念として標準化をみるきらいがあったが、それに対し本研究は、標準化の事例研究を通して、標準化と呼ばれる行為によって具体的に何がなされてきたかを明らかにし、標準化のコンテクスト中に標準とデザインの交わる地点を見つけるという道筋をたどる。特に、1920年代以降にみられた日本の規格統一事業による紙の寸法の標準化と事務用家具の寸法の標準化を事例研究の対象とする。本年度は、1920年代から1970年代に至るまで、つまり戦前、戦後をとおしての事務用家具の標準化の事例研究をおこなった。具体的には、国家規格による事務用家具標準化、1920年代から日本に登場し始めた事務管理論者の著作で言及された事務用家具標準化、そして木檜恕一を起点として国立工芸指導所の家具研究にいたるまでの事務用家具標準化の系譜を比較し、それぞれが同じ事務用家具標準化という目的をもちながらも、その目的へのアプローチ方法には相違があることを明らかにした。その結果、標準化ということばでくくられる事象は、複層的で立体的な内実をもつことが確認できた。また、先行研究ですでにいわれてきた戦前の家具研究における標準化を、異なる視点からの標準化の事例と照らし合わせることによって、標準化のなかで相対化し、ひいては、標準化という問題に対するデザイン史研究の学問的パースペクティヴを浮き彫りにすることもできた。
著者
林 美里
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ヒトにもっとも近縁なチンパンジーを対象とした比較発達研究をおこなった。物を操作する行動を指標として、チンパンジーとヒトの発達過程を直接比較した。形の異なる積木をつむという物理的な特性の理解などの項目では、チンパンジーとヒト幼児の類似性が示された。一方で、社会的・恣意的な要因がかかわる課題はチンパンジーにとって獲得が困難だった。物を介した社会的な他者とのかかわりが、ヒトの発達に影響を与えている可能性が示唆された。
著者
村上 謙
出版者
埼玉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

これまで未開拓の分野であった明治大正期の関西弁資料の発掘とその資料的価値の検証をおこなった。具体的には、上司小剣による関西弁小説群と曾我廼家五郎による脚本類などである。またその検証結果をもとに、明治大正期の関西弁における文法問題の抽出、及びその研究と解明をおこなった。具体的には待遇表現や否定表現、音変化のあり方などである。
著者
渡部 眞一郎
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

諸言語における多様な二重母音と二重母音化の普遍的特徴、類型論的な一般性について多くの言語事例に基づき特定した。まず、数多くの言語の二重母音と二重母音化のデータベースの作成および二重母音の生起と変化に関わる様々な通時的変化、過程の分類により、いくつかの普遍的特徴を抽出した。それらの特徴が、個別言語の二重母音を含む母音体系の変遷について分析をすることにより、妥当であることを検証した。さらに、現在進行中の二重母音の推移の調査分析を行った。ロンドン英語にみられる二重母音の発音が、世代差により一貫した違いがあることを実地調査により示して、その二重母音推移について通言語的一般性に照らして考察分析した。
著者
劉 愛群
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では、日本の大学の中国語学習者を対象として、中国語教育においてはまだ例の少ないインプット処理理論を導入し、学習者の注意、気づきを促しつつ学習事項を定着させる新しい文法指導法の応用を検討した。具体的に、三種類の言語項目の習得における中間言語の変容に関して、理論的及び実証的な見地から検討を加えた。これらは、アスペクト助詞“過”、“把”構文及び副詞“就”と“才”の習得の考察と「インプット処理指導」の介入である。本研究では、中国語の習得研究と教授法の両者を同時に扱う研究分野を切り拓き、中国語学習者の認知的学習ストラテジーに対し、教室でどのような指導を行うべきかの提言を試みた。
著者
ANTWI Effah Kwabena (2011) 武内 和彦 (2009-2010) ANTWI Effah Kwabena
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本年度は、研究のコンセプトとデータ収集のための更なる知識、データ準備・分析に必要な理解を得るために、研究に関する更なる文献調査を行った。ガーナにおける複雑な土地利用変化の要因を理解するために、データ収集・分折の統合的なアプローチが必要であり、コミュニティの重要なステークホルダーとの協議、コミュニティとの交流、土地被覆変化の分析と炭素濃度測定のための地理情報システム(GIS)とリモートセンシングの使用を行った。また、研究成果報告として国連大学サステイナビリティ平和研究所の学術会議で最終発表を行った。ガーナへの現地調査は、主導・協働の共同研究の構築、生態域からのデータ収集、土地利用調査の遂行、土地被覆変化の原因調査、異なる土地被覆の炭第濃度のマッピングを目的とした。変化する景観と異なる土地被覆タイプにおける陸地の炭素濃度を測定するため、1990年と2000年にガーナの衛星画像(LANDSAT TM)から得られた土地被覆マップが使用された。研究結果としては、1990年から2000年のガーナにおいて、異なる土地被覆タイプに関する顕著な増加と減少、つまり農耕地、乾燥疎開林、森林農業・市街地に著しい増加が見られた。ガーナの林地はかなりの勢いで減少を続け、さらに林地の多くの地域が農業活動や、その他の土地被覆タイプに変化しており、多くの混地帯と水塊は上述した調査期間の間に干上がっていた。土地被覆タイブの変化はガーナを隔てる各地域における穀物生産、生息分布、土壌炭素濃度、生活形態に多大な影響を与えている。土地利用強度は、居住環境の豊かさ、不均一性、分断化、および形状複雑性の増加に起因している。部分的な土地利用変化とその他の要因による地域の食品保障格差はガーナの持続可能な開発にとって依然電要な問題である。基本的には6つの土地被覆タイプがガーナの炭棄貯藏の99パーセントを担っており、炭素の増減が総針貯蔵量に多大な影響を与えているのである。
著者
三留 雅人
出版者
徳島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

海馬歯状回には神経幹細胞が存在し,成体においても分裂を続け,記憶や空間認識に関与していると考えられている。最初に制限給餌が海馬神経幹細胞の性質,増殖,分化,維持及び機能に与える影響について調べるために,マウスに13時から17時までの4時間のみに餌を与える制限給餌を8週間行い,海馬歯状回において分裂した神経幹細胞のマーカーであるBrdU (bromodeoxyuridine, 50μg/g b.w.)を1日1回,12日間投与した。投与終了1日後,半数を4%パラホルムアルデヒデドにて灌流固定し,固定後脳を取り出し,ビブラトームにて50μmの厚さで海馬全体の連続切片を作成した。残りの半数はBudU陽性細胞の一定期間後の生存・分化を調べる目的で,さらに各条件で5週間飼育した後,灌流固定を行い同様の脳切片を作成し,分裂した神経幹細胞を蛍光免疫染色法により調べた。制限給餌群では,BrdU投与直後では,BrdU陽性細胞数には変化はなかったが,BrdU投与5週間後において,制限給餌群のBrdU陽性細胞数が有意に増加していた。次に,制限給餌における味覚の影響を調べるために,マウスに12時30分から20分間サッカリンを溶かした水を8週間与え,同様にして海馬歯状回における神経幹細胞の増減を調べたところ,サッカリン投与群では,BrdU投与直後およびBrdU投与5週間後で,BrdU陽性細胞数が有意に増加していた。これらの結果,制限給餌は,海馬歯状回神経幹細胞の維持を上昇させ,さらに,ノンカロリー成分であるサッカリンの制限投与のみでも,神経幹細胞の増殖と維持の上昇に関与したころから,味覚による一日一定時間の刺激は,海馬歯状回神経幹細胞の増減に関与し,記憶や空間認識に影響を与えることが示唆された。以上のことから,規則正しい食生活は,中枢神経の活性化に関与していることが示唆された。
著者
大鐘 敦子
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

フローベールの長編歴史小説『サラムボー』は、19世紀後半に注目された「ファム・ファタル(宿命の女)」という概念に多大な影響を与えたと言われている。本研究では、従来、統一した転記がなされず、分類も未整理だった『サラムボー』のプランとシナリオの全自筆草稿を、現段階で最も厳密な基準での転記方法で判読・転写するとともに分類整理し、これら初期草稿にみられるファム・ファタル像の萌芽と決定稿までの形成過程をより精密に実証的に捉え直して、新プレイアッド校訂批評版など最新の資料を用い、19世紀ファム・ファタル神話形成の起源の一つとして新たに位置づけた。
著者
室賀 清邦 高橋 計介
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

17年度および18年度の2年間の研究成果は以下の通りである。1.マガキにおける粒子取り込み直径1μmの蛍光標識ビーズを用いてマガキにおける粒子取り込みについて実験を行ったところ、実験開始30分後には粒子は消化盲嚢細管に達し、消化細胞内にも取り込まれることが観察された。水温10℃の場合に比べ、20℃の場合はより効率よくビーズが取り込まれることが確かめられた。2.天然マガキおよびムラサキイガイにおけるノロウイルス汚染状況東北地方のある港において1年間にわたり、毎月1回天然のマガキおよびムラサキイガイを採取し、ノロウイルスの汚染状況を調べた。いずれの種類においても、汚染率は12月から3月の冬季に高く、夏季には低くかった。また、ノロウイルス汚染率は下水処理場に近い水域で採集された貝で高いことが分かり、汚染源は下水処理場であると推定された。3.養殖マガキにおけるノロウイルス汚染17年度は2箇所、18年度は5箇所の葉殖場において、マガキのノロウイルス汚染率を調べ、いずれにおいても冬季に最高50%程度の高い汚染率を示すことが確認された。また、それぞれの養殖場の夏季における大腸菌群数を指標とした海水の汚染の程度と、冬季のカキにおけるノロウイルス汚染率の間に、ある程度の相関性が認められた。4.養殖マガキの血リンパの酵素活性10ヶ月に亘り、2ヶ月間隔で6回サンプリングを実施し、養殖マガキの血リンパにおける酵素活性を測定したところ、血漿からは16種類の酵素が、血球からは17種類の酵素が検出された。これらの酵素は、年間を通じて常に高い活性を示す酵素群、常に低い活性を示す酵素群、および活性の季節変動を示す酵素群に分けられた。5.浄化処理方法の検討10℃で48時間流水浄化処理を行った場合は、浄化前後におけるノロウイルス汚染率に差はなかったが、25℃で48時間流水浄化処理を行ったマガキでは僅かではあるが汚染率の低下がみられた。
著者
徳永 光俊
出版者
大阪経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、これまで十分になされてこなかった日本農業の歴史と農耕文化に根ざした日本農学原論を構築するために、大正・昭和期において日本農学がどのように展開してきたかを、史料調査と農家からの聞き取り調査に基づきながら、実証的に明らかにした。欧米農学を融合しながら日本農業の伝統に根ざして作られてきた日本農学の基本的な哲学、原論的理念を明らかした。
著者
高橋 正彦 JONES Darryl Bruce
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、研究代表者らが初めて開発した「分子座標系の電子運動量分光」の検出感度の改善を図り、様々な直線分子の分子軌道の形を運動量空間において三次元観測し、量子化学理論が予測する波動関数形との比較を行うことである。これにより、運動量空間という従来とは反転した視点からの電子状態研究、いわば''運動量空間化学''を展開する。上記の目的に向けて、前年度までに整備した新規イオン検出器システムの開発の成果を踏まえ、本研究計画最終年度の今年度は、窒素分子の分子座標系電子運動量分光を行った。水素分子を対象とした従前のものと比較して、Signal/Background比の大幅な改善を達成した。また、得られた実験結果は、位置空間で分子軸方向により広がったσ型分子軌道が分子軸と垂直な方向に伸びた形で観測されるなどフーリエ変換の性質を反映した運動量空間特有の波動関数形を示すことが分かった。こうした研究成果は、波動関数の形そのものの視覚化を具現化したものと関連研究分野で極めて高い関心を集め、2010年夏に開催されたInternational Workshop on Frontiers of Electron Momentum Spectroscopy (IWFEMS2010)から招待講演として採択された。現在、当該分野で最高水準の雑誌であるPhysical Review Letter誌に投稿すべく、論文を執筆中である。以上のように、本研究は所期の目的を達成することができた。