著者
小坂 雅人
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.659, pp.659_101-659_122, 2022-12-31 (Released:2024-01-10)
参考文献数
25

日本の民間医療保険に求められている「公的保険を補完」する役割について,疾病構造の変化と保健医療ニーズの構造に着目した分析・検討を行った。生活習慣病対策は保健医療分野における優先課題であるが,なかでも高血圧や糖尿病のような「リスク疾患」は外来診療が中心であり,「入院」を支払事由とする民間医療保険では十分な対応ができていなかった。また,病院機能別にみた入院医療費の差異拡大や,感染症法等の定めによる患者負担の減免等の事例に鑑みると,患者の医療費負担とは関連しない「定額」給付のあり方について検討の余地があるように思われた。民間保険による保険給付を,社会的に望ましいと考えられるものの過少利用となっている保健医療サービス領域に重点化して必要な受診を促進することで,稀少な保健医療資源の有効活用にも寄与することができるのではないだろうか。
著者
諏澤 吉彦 田中 貴 永井 克彦
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.659, pp.659_207-659_239, 2022-12-31 (Released:2024-01-10)
参考文献数
31

本研究の目的は,健康増進型医療保険契約の引き受けが,保険会社の財務状況に及ぼす影響を,健康保険組合データを用いたシミュレーション分析に基づいて明らかにすることである。分析は,生活習慣病に関わる健康診断計測項目としてBMI,血圧,HbA1cおよびALTに注目し,被保険者がこれらの値を改善させた場合に,保険終期までの最良予測に基づく期待保険金削減額を原資とした保険料割引を適用する医療保険契約を引き受けるわが国の平均的な架空の生命保険会社を想定して行った。保険会社の財務状況の分析には,2025年にわが国でも導入が予定されている国際保険資本基準における貸借対照表および経済価値ベースのソルベンシー比率を用いた。その結果,健康診断計測値の改善は,期待保険金の低下分に相当する保険料割引を対象者に適用してもなお,保険会社の財務状況を改善することがわかった。
著者
洲崎 朝樹
出版者
日本眼光学学会
雑誌
視覚の科学 (ISSN:09168273)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.16-18, 2021 (Released:2021-03-30)
参考文献数
23
被引用文献数
1
著者
松本 良恵 李 楊 新井 さくら 井上 裕香子 清成 透子 山岸 俊男
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.43-53, 2023-11-30 (Released:2023-11-30)
参考文献数
54

Empirical studies have shown that beliefs in conspiracy theories are associated with low self-reported attitudinal trust in other people in general. However, self-reports do not always reflect actual behaviors. The present study investigates whether beliefs in conspiracy theories are negatively associated with actual trust behavior. We conducted a secondary analysis to examine correlations between conspiracy beliefs and trust behavior measured in a monetarily incentivized economic game (trust game) as well as self-reported attitudinal general trust. The results demonstrated that the more people believed in conspiracy theories, the less they entrusted their money to strangers when there was a risk of being betrayed and losing money. The present research confirms that conspiracy beliefs are associated with low trust regardless of whether trust is self-reported attitude or actual behavior which entails the risk of betrayal.
著者
小林 啓二
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.350-354, 2015-11-05 (Released:2017-06-08)

平成23年に発生した東日本大震災では,多数の航空機が救援活動に従事した.一方,一般に災害発生から72時間が経過すると被災者の生存率が激減すると言われているが,同震災においては救援航空機,特にヘリコプタによる初動時の迅速な救援活動を妨げる要因も顕在化した.宇宙航空研究開発機構(JAXA)は,総務省消防庁,自治体消防,災害派遣医療チーム(DMAT)等の災害対応機関と連携して大規模災害時における救援航空機の安全かつ効率的な運航管理を実現する技術の研究開発を進めており,消防防災ヘリやドクターヘリ等の実運用下での評価実験を実施してきた(「災害救援航空機情報共有ネットワーク(D-NET)」の研究開発).平成25年度からは,このD-NETを発展させ,航空宇宙機器(航空機・無人機・人工衛星)の統合的な運用による災害情報の収集・共有化,及び航空機による救援活動を支援する「災害救援航空機統合運用システム(以下,本システム)」の研究開発を進めている.本稿では,救援航空機の運用課題を整理し,安全かつ効率的な救援航空機の運用を実現する本システムの研究開発状況と今後の展望について紹介する.

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著者
山中 康裕
出版者
日本箱庭療法学会
雑誌
箱庭療法学研究 (ISSN:09163662)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.1-2, 2017 (Released:2017-04-19)
著者
南弘明著
出版者
音楽之友社
巻号頁・発行日
1998
著者
岡田 庄生
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.32-43, 2024-01-10 (Released:2024-01-10)
参考文献数
34

デジタルの進化と共に,ユーザー共創型の新製品開発が増えている。そのような新製品を販売する際,ユーザーのアイデアから生まれたと伝えることで消費者の購買意向を高める「発案者効果」の存在が既存研究で明らかになっているが,その効果が失われる境界条件については十分に解明されているとはいえない。そこで本研究では,制御焦点理論に着目して,制御焦点の違いが発案者効果の境界条件に与える影響を探るための実験を行った。具体的には,複雑さが高い製品における促進焦点型の製品タイプに関する実験と,複雑さが低い製品における予防焦点型の広告メッセージに関する実験を行った。その結果,発案者効果が失われるとされる複雑さが高い製品であっても,促進焦点型の製品タイプでは発案者効果が得られることが明らかになった。また,複雑さが低い製品において,予防焦点型の広告メッセージとユーザー発案情報とは,負の交互作用効果があることも明らかになった。
著者
石田 大典 大平 進 恩藏 直人
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.19-31, 2024-01-10 (Released:2024-01-10)
参考文献数
36

製品開発研究において,クラウドファンディング(CF)がマーケティング・リサーチやプロモーションの役割を果たすことが指摘されるようになっている。ところが,これらの役割の実態を実証的に明らかにする研究は試みられていない。そこで本研究では,日本の大手購入型CFプラットフォームにプロジェクトを掲載した支援者に対して調査を行い,いくつかの仮説の検証を試みた。分析の結果,CFの支援者と新製品パフォーマンスの間において,(1)支援者から学習し,新製品の品質を改善させる,(2)プロモーション効果が向上する,という2つの媒介効果が確認された。また,製品の非精通性によって,これらの効果が変化することも示された。一方,CFが競合の参入を促進し,新製品パフォーマンスを低減させるという媒介効果については,統計的に有意な関係を確認できなかった。
著者
花崎 七海 本田 澄
出版者
一般社団法人 日本デジタルゲーム学会
雑誌
日本デジタルゲーム学会 夏季研究発表大会 予稿集 2023夏季研究発表大会 (ISSN:27584801)
巻号頁・発行日
pp.75-77, 2023 (Released:2023-10-28)
参考文献数
7

本研究は FPS のプロ選手がスモークプレイヤーを利用する際にゲーム画面のどこを見て状況の判断や操作を行っているかを明らかとする.そこで我々はアイトラッカーを用いて,VALORANT のスモークプレイヤーを利用するプロ選手を対象として,試合中のゲーム画面に対する視線の注目箇所と操作の意思決定の関係を分析する.この結果を利用することで競技における新たな戦略の立案の支援となることが考えられる.
著者
永尾 晃治 柳田 晃良
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.129-135,128, 2002-03-01 (Released:2013-04-25)
参考文献数
42
被引用文献数
3 2

リン脂質の生理機能に関する最近の研究には目覚ましいものがあり, 様々な実験結果からリン脂質の代謝変動が細胞機能及び生命活動と密接に関わっている事が示されている。リン脂質の生理学的重要性としては, 生体膜の構成成分としてだけでなく, 生理活性物質としてのリン脂質代謝物や細胞内情報伝達物質としてのリン脂質代謝産物が挙げられる。本稿ではリン脂質機能に関する最近の知見, とくにリポタンパク質代謝における役割と食事リン脂質による肝臓や脳機能への栄養薬理学的研究の成果を中心にまとめた。
著者
船守 美穂
出版者
国立情報学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、ゲイツ財団などの米国巨大財団が、米国の高等教育政策に及ぼす影響について研究を行った。米国巨大財団は、「戦略的アドボカシー」という手法で連邦政府や州政府の政策形成にも強い影響力を及ぼし、助成の効果をスケールさせようとする。民間財団が国の政策に圧力をかけているようにも見えるが、実際には、米国は清教徒が移住した時代、政府が機能しなかった頃から、教会や一部の成功者がフィランソロピーとして地域の発展のために尽くし、これが現代の財団や各種NPOの活動へと発展した。米国は現代においても、こうした第3セクターと政府による、多極的な国の発展を実現している。
著者
本田 由美 河内 美恵 金 樹英 西牧 謙吾
出版者
一般社団法人 日本小児精神神経学会
雑誌
小児の精神と神経 (ISSN:05599040)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.345-359, 2024-01-01 (Released:2024-01-05)
参考文献数
165

本論文では,2010年以降に発表された和文の自閉スペクトラム症の介入実践研究を概観した.キーワード検索で該当した和文文献4,171編を抽出条件(1.査読付き実践研究,2.2010 年~ 2021年発表,3.対象は本人,保護者,支援者,4.個別・グループ含む)に従い選択し,最終的に148編の論文を対象とした.その結果,(1)対象者は「本人」が最多で75.0%,次いで「本人と養育者」(12.2%),(2)対象年代は学童期(35.1%),乳幼児期(25.7%)が多数を占める,(3)最も活用されている介入法は行動的アプローチであり,一定の介入効果をあげている一方で,結果が一様でないケースもみられることなどが明らかとなった.今後の課題としては(1)青年期・成人期への介入研究の増加,(2)統制群や待機群を設定した研究実施,(3)多面的な評価や中長期的フォローの必要性があげられた.
著者
Mitsuyo Hori Yusuke Kawai Koichiro Noguchi Kohei Nakamura Masaya Shimada Hitoshi Iwahashi Tomoyuki Nakagawa
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
Food Science and Technology Research (ISSN:13446606)
巻号頁・発行日
pp.FSTR-D-23-00098, (Released:2024-01-10)

From traditional Gifu ayu-narezushi, Leuconostoc, Latilactobacillus, and Enterococcus were isolated as dominant genera. Isolated strains of Leuconostoc mesenteroides showed high growth inhibition activity against Staphylococcus aureus and Escherichia coli. The isolated strain, Enterococcus lactis EC52, could produce γ-aminobutyric acid (GABA). These results indicated that Enterococcus lactis and Leuconostoc mesenteroides were lactic acid bacteria, which have GABA-producing and antimicrobial activities, respectively, in traditional Gifu ayu-narezushi.
著者
坂元 昂 山田 恒夫 伊藤 紘二
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.217-223, 2003-12-20 (Released:2017-10-20)

本稿では,まず,人間活動のグローバル化,共生の文化ならびICTの発達の視点から,第二言語学習とその支援に関する教育工学研究の重要性を論じ,そのことに鑑みて企画された本特集「第二言語教育とCALL(Computer-Assisted Language Learning)」の趣旨,投稿・採択状況,構成を紹介している.ついで,CALLに関する研究の現状と展望について論じて,深谷氏による研究史的視点からの総説を補い,また,とくに第二言語としての日本語の教育と支援システムに関する研究の源流を紹介して,仁科氏による日本語学習支援システム研究の現状と展望に関する総説を補っている.続いて,採択された論文・資料を分類して各々の概要を紹介し,最後に,今回,投稿論文・資料の査読を通じて,第二言語教育にかかわる教育工学研究と論文執筆ならびに本学会の役割について得た所感と提案を述べている.
著者
出口 康夫
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、現代哲学の新分野である「分析アジア哲学」研究の一環として、大乗仏教の「空」の思想の論理的・概念的な内実、即ち「空の論理」を、現代の非古典論理を用いて再解釈することで、空の思想そのものを、現代的水準に照らしても十分に合理的・論理的な哲学的立場として再生させることを目指した。具体的には、中国三論思想の「中」「仮」概念と、後期西田哲学の「絶対矛盾的自己同一」概念に着目し、それらが三値のパラコンシスタント論理の枠内で再構築できることを示した。また分析アジア哲学研究の国際ネットワークの構築にも取り組んだ。