著者
江㞍 晴美 篠崎 惠美子
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.11-20, 2021-03-31 (Released:2021-06-15)
参考文献数
28
被引用文献数
2 1

【目的】PICS(post intensive care syndrome,集中治療後症候群)アセスメントツールを作成し,妥当性と信頼性の検証を行う.【方法】先行研究に基づき78項目の作成と構成を行った.内容妥当性の検証は,各項目を「妥当である」~「妥当でない」の4段階で評価を求めた.信頼性の検証は,4事例の患者情報用紙と動画を見てもらい,ツールを用いた評価を求めた.【結果】内容妥当性の検証では,項目の採用基準を満たさなかった項目は,「70歳以上」「ICU日記」など8項目であった.「ICU日記」を除く7項目を削除したツール全体の妥当性は0.902であった.この結果よりツールの修正を行い,50項目に対して評価者間信頼性の検討を行った.ツール全体のκ係数は0.58で,中程度の一致度が確認された.正確度および所要時間を考慮し,最終的に37項目に修正した.【結論】PICSアセスメントツールの内容妥当性と信頼性を確認でき,PICSを日常的にアセスメントできる可能性が示唆された.
著者
青木 美土里
巻号頁・発行日
2021-03

歴史人口学と歴史社会学の視点で、人の移動に関する先行研究の一部を整理した上で、現状の課題を明らかにし、自らの研究の立ち位置を確認する。順序としては、まず研究のきっかけとなった極私的体験について紹介し、修士課程での研究について説明。その上で現在、博士課程において進めている研究のテーマとその背景である明治近代以降の家族形態の変化と人の移動について述べた。また、2020年、地球規模で直面しているCOVID-19のもたらす社会変化についても僅かながら言及した。先行研究は、主に鬼頭宏の著作を用いて、歴史人口学の視点から人口と文明の関連性、産業化に起因する人口増加と、明治近代以降、日本で起きた農村から都市部への人口移動を整理。次に、佐藤香の著作に従って、歴史社会学の視点から、世界における人の移動プロセスにかかわる学史の流れ、現在の日本における同テーマの研究するにあたっての限界と課題について整理した。最後に、筆者の家系を研究の対象とすることで、その課題に対する新たな突破口を見出そうとした。
著者
塚正 泰之 福田 隆志 安藤 正史
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.88, no.6, pp.503-514, 2022-11-15 (Released:2022-12-02)
参考文献数
28
被引用文献数
1

マダイの熟成(0℃)が呈味性に及ぼす影響を,塩締めおよび脱水シートの有無,熟成期間の違いによって調べた。また,熟成によるエキス成分の抽出性の変化も調べた。脱水シートはエキス成分の抽出性を低下させ,塩化ナトリウムはドリップ量を増大させ,うま味成分の抽出性を低下させた。イノシン酸(IMP)は熟成3日以降低下するのに対して,グルタミン酸(Glu)は熟成14日まで増加した。IMPとGluの濃度から算出されるうま味強度は,熟成1日がピークとはならず,少なくとも熟成5日まで高い値を維持することが確認された。

1 0 0 0 OA 核酸について

著者
渡辺 格
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.13, no.9, pp.709-715, 1964-08-20 (Released:2011-09-21)
著者
野口 亜季 岩永 朋子 十川 英 藏元 智英 藤木 誠
出版者
Japanese Society of Veterinary Anesthesia and Surgery
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.39-44, 2023 (Released:2023-10-17)
参考文献数
17

3ヶ月齢、未避妊雌の雑種猫が離乳後の吐出を主訴に来院した。血管造影コンピューター断層撮影(CT)検査にて右鎖骨下動脈起始異常、右鎖骨下動脈と右総頸動脈の吻合による完全な血管輪が確認され、それによる食道狭窄および重度食道拡張と診断した。食餌の工夫を行い症状は管理可能であったため、8ヶ月齢まで成長したときに右側第4–5肋間アプローチにて外科手術を行った。右鎖骨下動脈の起始部で結紮離断を行い、食道狭窄は解除された。術後の合併症は認めず、術後6日目で退院した。術後2ヶ月で食道拡張部位に毛球が貯留し内視鏡下での摘出が必要であったが、術後12ヶ月が経過した現在、経過は良好である。
著者
松井 克明
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.104-125, 2022 (Released:2023-10-17)
参考文献数
58

アメリカ・カンザス州は2012年と2013年に成長促進のための大規模な税制改革を行い,パススルー事業体などによる非賃金事業所得への課税を除外した。しかし,州経済は改善しなかったため,2017年,改革は見直された。カンザス州の「大いなる実験」とも称される改革の背景には,州共和党内の2つの勢力の動きや,レーガン連邦政権におけるアドバイザー的な役割を果たし,「サプライサイド経済学の父」ともされるラッファーやアメリカ立法交流評議会の影響がある。一連の改革の結果,州財政においては売上税の比重が,郡財政においては地方財産税の比重が増したことを明らかにした。
著者
鈴木 亮一 島田 昌和 森本 匡洋 神野 信夫 鈴木 周二 余戸 拓也 原田 恭治 道下 正貴 原 康
出版者
Japanese Society of Veterinary Anesthesia and Surgery
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.45-52, 2023 (Released:2023-10-17)
参考文献数
30

3歳4ヶ月齢の避妊雌のドーベルマン・ピンシャーが、右後肢の跛行が進行していたため紹介来院した。整形外科的検査では股関節の可動域が減少し、右大臀筋および大腿部骨格筋の萎縮が明らかに認められた。コンピュータ断層撮影では右坐骨腹側から右大腿骨転子窩尾側に伸びる骨塊が認められた。Von Willebrand病1型遺伝子のDNA検査では遺伝子変異は認められなかった。骨塊は外科的手術により切除され、組織学的に化骨性筋炎と診断された。運動機能は顕著に改善し、術後363日目においても再発は認められなかった。
著者
古賀 靖啓 十川 英 齋藤 靖生 三浦 直樹 野口 亜季 藏元 智英 藤木 誠
出版者
Japanese Society of Veterinary Anesthesia and Surgery
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.53-58, 2023 (Released:2023-10-17)
参考文献数
16

体壁の悪性腫瘍は肋骨を含めた広範囲な切除が必要な場合がある。肋骨切除による主な合併症はフレイルチェストの発生であり、6本以上の肋骨切除は推奨されていない。犬の胸壁に発生した脂肪肉腫に対して6本の肋骨を含めた切除を行った後、チタンプレートで頭側2本の肋骨再建を実施した。術後フレイルチェストの発生はなく、呼吸状態も安定していた。プレートによる肋骨再建により機能的な胸壁再建を可能にすると考えられた。

1 0 0 0 OA 書評

出版者
マーケティング史学会
雑誌
マーケティング史研究 (ISSN:24368342)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.250-282, 2022-09-30 (Released:2022-09-30)
参考文献数
45

青木 均『小売営業形態の成立の理論と歴史』同文舘出版,2020 年. (書評者:鳥羽 達郎) 上沼 克德『学としてのマーケティング―マーケティング学の論理と方法―』同文舘出版,2020 年. (書評者:小林 啓志) 田中 智晃『ピアノの日本史―楽器産業と消費者の形成―』名古屋大学出版会,2021 年. (書評者:薄井 和夫) 光澤 滋朗『わが国マーケティングの成立』晃洋書房,2021年. (書評者:神保 充弘) 矢作 敏行『コマースの興亡史―商業倫理・流通革命・デジタル破壊―』日経 BP 日本経済新聞出版本部,2021 年. (書評者:関根 孝)
著者
上田 健太郎 岩﨑 安博 山添 真志 川副 友 川嶋 秀治 山上 裕機 加藤 正哉
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.141-148, 2013-03-15 (Released:2013-05-29)
参考文献数
23
被引用文献数
1 2

【目的】壊死型虚血性大腸炎は全虚血性大腸炎の約10%と頻度は低いが予後が悪く,診断した時点で壊死粘膜を含めた広範囲の腸管切除の緊急手術が必要である。しかしながら,はっきりとした診断基準がなく手術時期が遅れることが多いのが現状である。我々は壊死型虚血性大腸炎の救命率改善のために早期診断基準と予後因子の検討を行った。【対象】2002年から2010年までに経験した壊死型虚血性大腸炎手術症例24例を対象とした。【結果】平均年齢は77.4歳と高齢であり,男性15例,女性9例であった。基礎疾患として全例が動脈硬化性疾患を有していた。術前現症は16例に腹膜刺激症状,10例に下血,12例にイレウス症状を認め,11例で急性期DIC,9例でショック,17例で代謝性アシドーシスを伴い全身状態が不良な症例が大半であった。また全例でSIRS(systemic inflammatory response syndrome)陽性・21例で血中乳酸値の高値を認める特徴があり,発症から手術までの時間が24時間以内だったのが12例(50%)であった。術中所見として,穿孔は7例に認め,壊死範囲は全結腸型(病変が回盲部・肝弯曲部・脾弯曲部・SD junctionのうち3箇所以上にまたがる)5例,限局型19例(右半結腸4例,左半結腸15例)であった。術式は壊死病変部切除および人工肛門造設術が23例,一期的吻合術が1例で,救命率は58.3%であった。上記の因子と血液検査のデータに対し単変量解析を行った結果,発症から手術までの時間(24時間以内vs.以上),年齢,PT-INR値が予後因子であり,これら3因子によるLogistic回帰分析を用いた多変量解析により発症から手術までの時間が独立予後因子であった(p<0.05)。【結語】動脈硬化性疾患を有する高齢者では腹部所見が乏しくてもSIRS陽性・血中乳酸値の上昇を認める場合,壊死型虚血性大腸炎を念頭に診療することが重要である。また本症の独立予後因子は“発症から手術までの時間が24時間以内”であり,早期診断,緊急手術により救命率が改善すると考えられる。
著者
矢作 徹 山田 直也 村山 裕紀 加藤 睦人 渡部 善幸 伊藤 浩志 峯田 貴
出版者
一般社団法人 表面技術協会
雑誌
表面技術 (ISSN:09151869)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.170-175, 2021-03-01 (Released:2021-03-09)
参考文献数
26
被引用文献数
1

This paper describes characterization of thermal imprinting of resins using a fabricated micro-multi-fin structured micro-electro-mechanical system(MEMS)mold to incorporate a structural color expression function.Through the MEMS fabrication process, micro-mold structures with 0.2-μm pitch inclined micro-multi-fin structures on the sidewalls of microscale ridges(structures resembling a morpho butterfly)were fabricated on Si substrates. Shape transfer properties related to thermal imprinting of cycloolefin polymer(COP)and polymethyl methacrylate(PMMA)were examined using the fabricated MEMS mold with an inclined multi-fin structure. Thermal imprinting was conducted under various temperature conditions related to the measured glass transition points of resins obtained via dynamic mechanical analysis. The multi-fin shape(a 4-μm pitch ridge structure with a 0.2-μm pitch inclined multi-fin structure)was transferred to the COP and PMMA. The molding resin fin widths increased along with increasing molding temperature. Also, adhesion between the mold and the resin improved, which made release of the resin from the mold difficult. Finally, the imprinted PMMA exhibited a light blue reflection(380-500 nm).
著者
脇坂 昭弘 古賀 健司 竹尾 陽敏
出版者
一般社団法人 日本質量分析学会
雑誌
Journal of the Mass Spectrometry Society of Japan (ISSN:13408097)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.125-136, 1997 (Released:2007-07-20)

Clusters, ensemble of atoms and/or molecules with less number enough to form stable bulk, are thought to play important roles in various phenomena such as, crystallization, phase separation, chemical reactions, etc. Several techniques to produce clusters have been developed and studies in this field are becoming active. Two new methods to produce clusters and the investigations on their characteristics are described in this paper. One is the characteristics of clusters formed from liquid (solution), and the other is the formation and the stabilization of clusters on the surface and their structural investigation.
著者
清野 公宏 鈴木 郁斗 野川 雅道 五十嵐 朗 内藤 尚 小川 充洋 山越 憲一 高田 重男 田中 志信
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.55Annual, no.5PM-Abstract, pp.460, 2017 (Released:2017-09-13)

これまで我々は腎・尿路系疾患発見に重要な指標である尿成分を全自動で計測可能なトイレ内蔵型尿成分計測システムの開発を最終目的として,近赤外光を用いた尿糖計測法について基礎的検討を続けてきた.具体的には糖尿病の早期発見に有用なグルコースをメインターゲットとし,蛋白摂取量の指標である尿素,塩分摂取量の指標である塩化ナトリウム,尿中成分の排出量測定に有用なクレアチニンの4成分について,糖尿病が疑われる成人男性等から採取した尿(高尿糖随時尿)などを対象に各4成分の濃度推定を行ってきた.その結果計測波長範囲(750-2500nm)の中から各成分の感度波長を4種類選定し重回帰モデルを構築することで,実用に供し得る精度で濃度予測が可能であることを確認した.今回は実用化に向けて,多波長LEDを光源とした場合の測定精度を次のような方法で検証した.すなわちFT-IRで得た透過光強度スペクトルに対して,中心波長の重みを1,半値幅を200nmとしたガウス関数を乗じることで,LEDのブロード状の発光特性を模擬し,上述の重回帰分析を行った. その結果,グルコース,クレアチニンについてはγ=0.7前後で濃度予測精度の更なる向上を要するものの,尿素,塩化ナトリウムについてはγ>0.8以上となり,多波長LEDを光源として用いることの妥当性が確認できた.