著者
木村 龍治 坪木 和久 中村 晃三 新野 宏 浅井 冨雄
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1994

本課題の重要な実績として、梅雨期の集中豪雨をもたらしたメソ降水系のリトリ-バルと数値実験を行ないその構造と維持機構を明らかにしたことと、関東平野の豪雨をもたらしたレインバンドの発生機構を明らかにしたことが挙げられる。1988年7月に実施された梅雨末期集中豪雨の特別観測期間中、梅雨前線に伴ったレインバンドが九州を通過し、その内部の風と降水のデータがドップラーレーダーのデュアルモード観測により得られた。このデータにリトリ-バル法を適用することによりレインバンドの熱力学的構造を調べ、維持機構を明らかにした。これにより対流圏中層から入り込む乾燥空気がメソβ降水系を形成維持する上において重要であった。またこの結果を2次元の非静力学モデルを用いて数値実験により検証したところ、この結果を支持する結果が得られた。さらに3次元の数値モデルを用いて降水系を再現し、その詳細な構造を明らかにした。関東平野において発生したメソ降水系のデータ収集とその解析を行なった。1992年4月22日、温帯低気圧の通過に伴い関東平野で細長いメソスケールの降雨帯が発生した。その主な特徴は、弧状の連続した壁雲の急速な発達により降雨帯が形成された点で、他の例に見られるような多くの孤立対流セルの並んだ降雨帯とは異なるものであった。この降雨帯は、それ自身に比べてはるかに広く弱い降雨域の南端に発達したもので、Bluesteinand Jain(1985)の分類では"embedded-areal-type"に属するものであった。最終年度には、メソ降水系の中でも特に梅雨前線に伴うメソβスケールの降水系について、平成8年6月27日から7月12日まで、北緯30度46.8分、東経130度16.4分に位置する鹿児島県三島村硫黄島で観測を行った。この観測期間中には気象研究所、名古屋大学大気水圏科学研究所、九州大学理学部、通信総合研究所など他の研究期間も同時に観測をしており、結果として大規模な観測網を展開したことになった。これらの研究機関の間ではワークショップを開きデータ交換も行なわれた。
著者
上島 通浩 那須 民江
出版者
名古屋市立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

2-エチル-1-ヘキサノール(2E1H)の空気中濃度が高い建物でシックビル症候群(シックハウス症候群)、化学物質過敏症状等が生じるが、病態は未解明で、また、2E1H発生量の決定要因にも不明な点が多い。9週齢の雄ICRマウスを理論濃度値0,55,110,219ppmの2E1Hに1日8時間、7日間吸入曝露した。219ppm群では鼻腔の嗅上皮に構成細胞の減少、炎症細胞浸潤が見られた。呼吸上皮では炎症細胞浸潤は軽度で、また下気道では区域気管支、細気管支の平滑筋層に炎症細胞浸潤が見られた。この結果は、2E1H曝露時にみられる鼻の不快感、刺激性と一致すると考えられた。また、肝のアルコール脱水素酵素(ADH)活性は、0ppm群で6.9±0.9(nmol/mg protein/min)、219ppm群で7.6±1.4(nmol/mg protein/min)で、曝露によるADH活性の上昇は認められなかった。マウスでは2E1HがADHの、2-エチル-1-ヘキサナールがアルデヒド脱水素酵素の基質となることも示されたが、ppbの濃度域で生じるシックハウス症状の原因が、2E1Hから2-エチル-1-ヘキサナールへの代謝亢進による可能性はほぼないと考えられた。また、2E1H発生側の要因解明のために、セメント中に存在する化学成分と2E1H発生量との関係を検討した。CaO、Fe_2O、Na_2O、Mn_2O_3が発生促進と密接な関係があり、一方SiO_2、K_2O、MgOは発生を抑制すること、発生促進と抑制はセメントの種類、含水率、経時日数に依存することが明らかになった。今回の分析条件では、アルデヒドの発生は認められなかった。2E1Hの発生を避けるためには、コンクリートの十分な乾燥が必要であることが知られるが、さらに、床を形成するセメントコンクリートの材料を適切に選択することの重要性が示唆された。
著者
新野 宏 伊賀 啓太 柳瀬 亘 伊賀 啓太 柳瀬 亘
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

傾圧性と積雲対流に伴う凝結加熱の両方がその発達に重要な役割を演ずるハイブリッド低気圧の実態と構造及び力学を事例解析、線形安定性解析、数値実験により調べた。その結果、梅雨前線上に生ずるメソαスケールの低気圧や冬季日本海を含む高緯度の海洋上にに発生するポーラーロウ、日本付近に豪雨をもたらす温帯低気圧などの低気圧の特性や力学が環境場の構造や凝結加熱によりどのように変化するかが明らかになった。
著者
西岡 千惠 (2008-2009) 西岡 千恵 (2007)
出版者
高知大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

MEK/ERKシグナルが恒常的に活性化している白血病細胞株HL60、NB4について、既存の抗癌剤(シタラビン、ATRA)とチロシンキナーゼの下流シグナル阻害剤(MEK阻害剤AZD6244)との併用により、単剤に暴露されたときよりも更に効果的に細胞増殖が抑制されることをMTTアッセイやコロニーアッセイで明らかにした。また、併用の際、薬剤の投与の順番を変えることによっても相乗効果の程度に変化が見られ、薬剤投与の順番も重要であることを確認した。またこれらの薬剤を併用することによって、相乗的に細胞増殖抑制やアポトーシス誘導能が高められることを明らかにした。さらに、MEK/ERKシグナルが恒常的に活性化している白血病患者の末梢血から採取した白血病細胞においても、これらの薬剤の併用による相乗的な細胞増殖抑制効果を確認し、このような薬剤の組み合わせが実際の臨床の現場においても効果的ではないかと思われる。また、長期間のチロシンキナーゼ阻害剤投与による薬剤耐性化のメカニズムを検討し、臨床の現場における問題点の克服につなげていきたいと考えた。まず、チロシンキナーゼ阻害剤(sunitinib)を白血病細胞株に長期間投与し、薬剤耐性株を樹立した。そして、この耐性株を用いて耐性化の機序の検討を行った。その結果、親株ではsunitinibによって抑制されるJAK2-STAT5シグナル活性が耐性株では抑制されないことを確認した。また、耐性株では親株に比べてJAK2を活性化させるIL-6と、IL-6のプロモーター領域に結合する核内転写因子c-Junの量が増加していた。そこで耐性株をIL-6阻害剤やJAK2阻害剤で前処理しその後sunitinibを投与してみたところ、薬剤耐性株は親株同様suitinibへの感受性を取り戻した。以上の結果から、sunitinibによってc-Junを介してIL-6が誘導され、このIL-6によってJAK2-STAT5シグナルが活性化、薬剤耐性化を引き起こしたのではないかと考えられる。このようなケースでは、IL-6やJAK2の阻害によって耐性化が克服される可能性が示唆された。このように症例の状態に合わせて適切な薬剤を組み合わせることでより効果的な治療法となりえることを見出した。
著者
池添 昌幸
出版者
福岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

用途転用した公共建築物は運用後に利用要求が高度化し、空間改変が行われていることを実証するとともに最適化の条件を示した。さらに、公共建築物の民間利用によるストック活用事例を検証し、3つの活用パターンを明らかにした。最後に、公共建築物の新たなストック活用手法として、時間別の併用利用型施設の可能性を提示した。
著者
飯田 全広 末吉 敏則 尼崎 太樹 尼崎 太樹
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

SoC市場は、高集積化の進展とともに多様化しており、設計はより複雑になってきている。FPGAの搭載はこの問題を解決策として有望である。しかし、FPGAは大量のメモリからできているため、ソフトエラーが発生したときに回路故障につながる。本研究は、信頼性の高いリコンフィギャラブル・ロジックのアーキテクチャとして、SoC用フォールトトレラントFPGA(FT-FPGA)アーキテクチャと、その設計ツール(CAD)を提案している。また、FT-FPGAの試作チップを開発し、このチップの一連の評価によって、FT-FPGAは、ハードエラーおよびソフトエラーの回避と自動修復の能力を有することを確認した。
著者
川村 隆一 植田 宏昭 松浦 知徳 飯塚 聡 松浦 知徳 飯塚 聡 植田 宏昭
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

大気海洋結合モデルならびに衛星リモートセンシングデータ等の観測データを併用して、夏季モンスーンのオンセット変動機構の重要な鍵となる大気海洋相互作用及び大気陸面相互作用のプロセスを調査した。標高改変実験からは亜熱帯前線帯の維持のメカニズム、植生改変実験からは降水量の集中化と大気海洋相互作用の重要性が新たに見出された。また、オンセット現象と雷活動との相互関係、夏季東アジモンスーン降雨帯の強化をもたらす台風の遠隔強制やモンスーン間のテレコネクションのプロセスも明らかになった。
著者
平松 和昭 黒澤 靖 原田 昌佳 森 牧人 福田 信二 黒澤 靖 原田 昌佳 森 牧人 福田 信二
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,窒素・リンを対象に,都市化・混住化が進むアジアモンスーン地域の農業流域における流域水環境統合管理モデルの開発を目指した.流域モデル構築にはGIS技術を利用し,DEMや土地利用,河川網,点源などの詳細な流域情報を統合することで分布型モデルを開発した.また,定量化が容易でない排出負荷や閉鎖性水域の水質動態のサブモデルには,適宜,人工知能技術や時間-周波数解析手法を導入し予測精度を向上させた.モデルの構築に当たっては,九州最大の河川流域で,流域内に多様な土地利用が拡がる筑後川流域と,福岡市西方に位置し,混住化が進行している農業流域である瑞梅寺川流域という,流域規模・特徴の大きく異なる二つの流域を精査流域と位置付け,個々の素過程の定量化やサブモデルの検討,全体モデルへのネットワーク結合方法の詳細を検討した.
著者
沢野 伸浩 後藤 真太郎 濱田 誠一 濱田 誠一
出版者
星稜女子短期大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

国土地理院による『電子国土Webシステム』を用い、インターネットブラウザ上から海岸線の環境脆弱性指標情報を書き込み、関係者間で共有できるシステム構築を行った。また、サハリン・オホーツク海沿岸で行われている石油・天然ガスガス開発の進捗より、宗谷岬を航行するタンカーや危険物積載船舶の動向を把握するために船舶自動識別装置から送信される電波を受信するための受信局を設置し、GISや自前で構築したプログラムを用いて同海域の船舶航行密度や行き先等の解析を可能すると同時に、同海域の船舶航行の実態を明らかにした。
著者
田中 健次 稲葉 緑
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,生活用製品業界における事故回避のために,企業,市民,行政の三者間における事故情報活用システムのモデルを構築した.企業内での設計・運用間でのトラブル情報の共有化構造に,社会全体での事故情報システムを統合したものである.特に市民ユーザの安全意識を高め事故情報やリコール情報を効果的に活用するために,Web利用を含めた事故情報活用システムのプロトタイプを作成,評価した.
著者
江田 匡仁
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、大動脈瘤に対する低侵襲手術のための治療デバイス開発を行った。動脈瘤の進展を防ぐDoxycycline(DOXY)に着目し、生体吸収性材料(ポリ乳酸)とDOXYを混和してelectrospinning法で紡糸し担体を作製した。DOXYの徐放化が可能で、平滑筋細胞やマクロファージと共培養するとMMPs、カテプシン、炎症性サイトカイン、ケモカインを抑制し、エラスチン発現が亢進した。大動脈組織との共培養ではエラスチン分解が抑制され、MMP-2の発現も抑制した。さらに、アポE欠損マウスによる大動脈瘤モデルでは、エラスチン分解抑制、MMP2,9、IL-6、TNF-αの発現抑制、TIMP-1、IGF-1の発現促進を認め、新たな動脈瘤治療の可能性が示唆された。
著者
樽井 武
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、日本語の影響(干渉)を受けた英語のスピーチリズムの確認と著者が開発したPC用自習プログラムを活用し、日本語的な英語のリズムを英語的なリズムに変化させる過程を解明する。たいていの日本人は、日本語の影響を受けたリズムで英語を話すが、学習者が強勢のある音節と強勢の無い音声の重要さに気づき、PC用の自主学習プログラムを活用して内容語と機能語の音声特徴および機能語の強形と弱形そして他の音声特徴等に気づいた上で音節の強勢の有無をコントロールできるまで学ぶことで、そのような日本語的な音声特徴も次第に減少していくことが示された。
著者
細矢 良雄 伊藤 知恵子 伊藤 知恵子
出版者
北見工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

電波伝搬の研究は, 無線通信回線設計の基本である. 信頼性がありかつ経済的な無線通信回線を設計するには, 事前に当該地域の気候などを考慮して伝搬特性を推定する必要がある. 本研究では, 特に降雨時の伝搬特性につき, 全世界的に入手可能な地域気候パラメータを用い世界的に適用できる精度良い推定法の作成を目指し, 熱帯降雨観測衛星(TRMM)搭載降雨レーダデータを用いた解析を行い, 全世界的に入手可能な雷雨率が, 降雨時伝搬特性推定法に用いる有望なパラメータであることを明確にした.
著者
森内 浩幸 有吉 紅也 大沢 一貴
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ベトナム中南部で2222組の母子を対象とする出生コホートで、種々の母子感染の研究を行った。先天性サイトメガロウイルス感染を0. 54%、(非流行時に)先天性風疹感染を0. 13%に認めた。母体のB型肝炎キャリア率は12. 5%、既感染も加えると58. 8%の高率であった。2歳児の調査ではB型肝炎キャリア率は1. 9%に認めた。2011年初頭の風疹流行に続いて先天性風疹症候群の発生が増えており、これまでに36名の患児の疫学・臨床的解析を行った。
著者
橋本 哲男 石田 健一郎 稲垣 祐司
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

フォルニカータ生物群は嫌気環境に生育する鞭毛虫からなる系統群であり、環境DNA解析から多様な生物種の存在が示唆されている。これまでに調べられたいずれの生物も、酸素呼吸を行う典型的なミトコンドリアをもたず退化型のミトコンドリアをもっているため、ミトコンドリアの縮退進化を解明する上で適切なモデル系と考えられる。しかしながら、実際に単離・培養されているフォルニカータ生物の種類は必ずしも多くないため、自然環境中から新奇フォルニカータ生物を見出すことを目的として研究を行った。これまでに数種のフォルニカータ生物を含む10種以上の新規嫌気性真核微生物の単離・培養株化に成功し、一部については記載を行った。
著者
柴崎 徳明 蓬茨 霊運
出版者
立教大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1998

超強磁場中性子星が発見されたので、その研究をミリ秒パルサーの研究に優先させ行い、以下のような成果を得た。X線、ガンマ線を爆発的に放射する天体がある。今までに4例見つかっており、Soft Gamma Repeaters(SGR)と呼ばれている。私たちは、1998年の4月と9月、X線天文衛星「あすか」でこの内の一つSGR1900+14を観測した。その結果、定常的なX線放射を検出し、その強度が5.16秒の周期で振動していることをみつけた。このパルス周期は1.1×10^<-10>ss^<-1>の割合で伸びていた。さらに、X線のスペクトルはベキ型であることも見い出した。これらの観測事実をもとに考察、検討を重ね、つぎのようなことが明らかになった。(1)パルス周期とその伸び率から、バルサーは〜10^<15>Gという超強磁場をもつ中性子星(マグネター)である。(2)解放される中性子星の回転エネルギーは少なく、定常X線成分を説明できない。エネルギー源はたぶん磁場そのものであろう。(3)定常X線成分は、中性子星表面からの熱放射ではなく、たぶん磁気圏からの非熱的放射であろう。中性子星が誕生する際、その回転がたいへんに速く周期がミリ秒程度のときは、ダイナモメカニズムが強くはたらく。その結果、磁場は〜10^<15>Gぐらいまで成長し、マグネターができると考えられる。私たちはマグネターの磁場の進化および熱進化について調べ、次のような結果を得た。(1)コアの磁場は、ambipolardiffusionにより10^4年ぐらいで一様にはなるが、大幅に源衰することはない。(2)中性子星全体としての磁場の減衰はコアとクラストの境界あたりでのジュール損失できまり、減衰のタイムスケールは10^8年以上である。(2)解放されるジュール熱により、中性子星の表面温度は10^6年から10^8年以上わたって、〜10^5K以上に保たれる。
著者
宇山 智彦
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

中央アジアに関してはこれまで国単位の研究とコミュニティ・レベルの研究が主流であったが、本研究ではその中間である州レベルの史料を集め、分析した。中でも特色ある地域としてタジキスタン東部のパミールとカザフスタン西部の旧ボケイ・オルダに注目し、両地域における諸文化の交流や共存の様相を明らかにした。また、タジキスタン内戦やクルグズスタン革命において地方意識が持った多面的な意味を分析した。
著者
大林 茂
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

仙台空港には電子航法研究所(ENRI)により後方乱気流の検出を目的としたドップラーライダが設置されている。我々のグループでは、仙台空港において実フライト機を対象とした後方乱気流の計測を過去3年間継続的に行ってきており、あらゆる条件下における後方乱気流の位置データを保有している。我々のグループでは、ライダ計測値からの後方乱気流の自動抽出法を開発しており、開発した自動抽出法を全ての観測データに適用することにより、後方乱気流移流データベースを構築した。このデータベースにより,減衰過程と気象因子との相関関係を得て、時々刻々変化する気象条件に照らし合わせて後方乱気流の挙動を事前に予測することができると考えられる。そのため、構築した後方乱気流移流データベースにデータマイニング手法を適用した。それにより、気温の影響により後方乱気流の垂直移動距離が変化することを示すことができた。また、我々のグループでは数値流体力学シミュレーション(CFD)を利用した後方乱気流の挙動解析をベースとした離発着効率化をこれまで検討してきた。これまでは,実際の運航に近い技術になるほどCFDシミュレーションの果たす役割は大きくなかった。その理由としては、CFDシミュレーションが理想状態の解析を得意とし、大気乱れを含むような実環境下における後方乱気流の挙動を予測することが困難であることが挙げられる。そこで、従来のCFDシミュレーションとは異なる初期値・境界値の設定方法を行うために局地気象予報モデルを利用したネスティングシミュレーションも行った。これにより、仙台空港周辺で特に卓越する海風中に発生する水平ロール対流の中での後方乱気流の挙動を再現することができた。
著者
八木 秀司 謝 敏カク 佐藤 真
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

中枢神経系の発生において神経細胞の移動と増殖に関与すると考えられたFilip分子とFilip相同分子の機能解析を通じ、神経発生における新たな調節系を明らかにすることを目的として本研究を行った。その結果、細胞骨格関連分子がFilip分子とFilip相同分子に結合することを見いだした。この結合を通じてFilip分子が結合分子の機能を調節していることを見いだし、神経細胞におけるFilip分子の新たな機能を同定した。
著者
望月 哲男 亀山 郁夫 松里 公孝 三谷 惠子 楯岡 求美 沼野 充義 貝澤 哉 杉浦 秀一 岩本 和久 鴻野 わか菜 宇山 智彦 前田 弘毅 中村 唯史 坂井 弘紀
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

ロシア、中央アジア、コーカサス地域など旧ソ連圏スラブ・ユーラシアの文化的アイデンティティの問題を、東西文化の対話と対抗という位相で性格づけるため、フィールドワークと文献研究の手法を併用して研究を行った。その結果、この地域の文化意識のダイナミズム、帝国イメージやオリエンタリズム現象の独自性、複数の社会統合イデオロギー間の相互関係、国家の空間イメージの重要性、歴史伝統と現代の表現文化との複雑な関係などに関して、豊かな認識を得ることが出来た。