- 著者
-
新藤 慶
- 出版者
- 北海道社会学会
- 雑誌
- 現代社会学研究 (ISSN:09151214)
- 巻号頁・発行日
- vol.35, pp.39-60, 2022 (Released:2022-08-01)
- 参考文献数
- 17
1990 年の改正入管法施行により増加したブラジル人・ペルー人の状況や,その集住地域として知られる群馬県大泉町の状況を検討した結果,第1に,定住者として来日したブラジル人・ペルー人の永住者化が確認された。ここには,日本生まれの日系4世の将来的な在留資格の確保といったねらいも見いだされる。一方,第2に,ブラジル人・ペルー人の経済状況は不安定であった。共働きが中心でも世帯年収は300 万円を少し超える程度である。そのなかで,非労働者の労働者化の進行がうかがえる。また,就学援助の受給率の高さなど,子どもの教育環境への影響もみられる。さらに第3に,こうした貧困の問題と並行して,日本語能力の低さの問題も見いだされた。大人も日本語能力に不安を抱えるが,子どもについても,他の外国人に比べて,ブラジル人は日本語指導が必要なくらい日本語能力が低い者が多くなっていた。そのなかで,第4に,大泉町では在留外国人の受け入れ体制の充実がみられた。当初から,町行政も受け入れを支援していた。また,子どもの教育についても,言語面を中心に充実した指導体制を構築していた。しかし,そのことが,「日本語学級にお任せ」といった形で,「外国人教育」への教員の当事者意識を低下させていた。今後の多文化共生のためには,在留外国人の実態の変化や多様化を把握し,外国人の声を聞きつつ,ホスト住民側も当事者意識を持って関わることが重要となる。