- 著者
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高橋 芳浩
- 出版者
- 日本信頼性学会
- 雑誌
- 日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
- 巻号頁・発行日
- vol.36, no.8, pp.460-467, 2014-11-01 (Released:2018-01-31)
半導体デバイス(集積回路)は地上においては非常に高い信頼性を有するが,人工衛星などに搭載して宇宙空間で使用すると,強い宇宙放射線を受けて特性劣化や誤動作が引き起こされることがある.宇宙空間は高エネルギーの陽子線,電子線,重イオンなどが高密度に存在する劣悪な放射線環境であり,これらが半導体デバイスに照射されると,構造内で電離(電荷発生)や結晶欠陥が生じる.放射線照射により半導体デバイスが受ける影響は,半導体デバイスの材料や構造,また放射線の種類やエネルギーにより異なり,吸収線量と共に電気的特性変化が蓄積される「トータルドーズ効果」,電離能力の高い荷電粒子の入射によって発生する「シングルイベント効果」,高エネルギーの粒子線照射による結晶欠陥を起因とした「変位損傷効果」に大別される.本稿では基礎的な放射線と物質との相互作用について示した後,放射線により半導体デバイスが受ける具体的な現象,および耐放射線性強化に関する研究例を紹介する.