著者
鈴木 栄一
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測 (ISSN:04500024)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.238-245, 1959-04-01 (Released:2010-01-21)
参考文献数
11
著者
福本 拓
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.197-217, 2015 (Released:2018-04-04)
被引用文献数
3

本稿の目的は,大阪市生野区の今里新地を事例に,花街として栄えた地域がエスニック空間へと変容する過程を解明し,その含意を考察することにある。分析に際しては,在日朝鮮人による土地取得とその後の韓国クラブの集中経緯に着目し,①資本の由来,②建造環境の変容,③人口移動との関係,④既存住民との接点,の4 つの観点から検討した。1960 年代以降,花街の関係者から在日朝鮮人への土地移転が進み,特にバブル期以降は賃貸マンションに加えスナックビルも建設され,「ニューカマー」の経営する韓国クラブが急増した。その背景には,花街の衰退のほか,バブル期以前に形成された在日朝鮮人の遊興空間へのニーズ,そして韓国から移入された労働者が居住しうる住宅の存在があった。また,在日朝鮮人の土地取得過程では,エスニック・ネットワークを介した土地取引があり,民族金融機関による融資も一定の役割を果たしていたことを指摘できる。
著者
高橋 進一郎 高地 哲夫 石橋 史子 富永 静子 坂下 美彦 長谷川 里砂
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.18, no.10, pp.755-758, 1998-12-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
6

純酸素吸入は,より低濃度の酸素吸入時に比べ吸収性無気肺を起こしやすいことが実験的に示されている.そこで,麻酔導入時と抜管時の純酸素吸入が,臨床的に問題となる術後の酸素化障害や,無気肺を引き起こしているか否か検討を行なった.幽門側胃切除を予定された呼吸器合併症のない21例を対象とし,麻酔導入時と抜管時の各10分間,純酸素吸入を行なう群と40%酸素吸入を行なう群に分けて,術中から術後24時間までの動脈血酸素分圧,術直後と術後第1日の胸部X線写真を比較した.その結果,両群間で有意な差を認めず,麻酔導入,抜管時の吸入酸素濃度の差は術後の酸素化障害および無気肺の発生に寄与していなかった.
著者
松丸 秀夫 朝比奈 菊雄 加藤 仁
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.117-122, 1978-02-01 (Released:2018-08-26)

木枯しが吹き出すと落ちつかなくなり, そして雪が降る頃には時々姿を消し, 黒くなった顔で現われる人種, スキーの楽しさにとりつかれた人達-."スキー狂師"であることを自他共に認めておられる薬学人もあちらこちらに数多いようである.そこで, このような方々の間での隠された逸話や思い出話の一端なりとも御被露していただこうと先生方にお集りいただいたが, 出席を予定されていた津田先生には御都合がつかず, 紙上参加の形で思い出話を寄せていただいた.
著者
麻生 将
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2023年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.298, 2023 (Released:2023-04-06)

1.はじめに 無教会主義は内村鑑三(1861~1930)によって創始されたキリスト教のグループの一つであるが,指導者や体系化された神学,儀式化された聖礼典,礼拝堂などを持たず,「既成の教会論を転倒」した運動であり,彼らの礼拝の場は「大自然という教会堂」であった(赤江 2013).すなわち既存のキリスト教の組織化,体系化された信仰実践ではなく,『聖書之研究』などの雑誌の読者によって支えられる「紙上の教会」であり,日常生活に根差した信徒たちそれぞれの場における祈りや聖書学習などの信仰実践であった(赤江 2013).このような無教会主義キリスト教の姿は近年人類学や地理学などで注目されている「生きられた宗教 Lived Religion」(McGuire 2008)とも関連すると考えられる.本発表は無教会主義キリスト教の詳細な記録を残した斎藤宗次郎(1877~1968)が描いた様々な風景画を通して,視覚資料による無教会主義の思想の検討を試みる. 2.『聴講五年』の挿絵 『聴講五年』は上・中・下の三巻,合計670ページから成るテクストで,斎藤が花巻から東京に転居した後の1926年9月から内村が死去した1930年3月までのおよそ三年半にわたる記録で,内容は今井館や日本青年館などでの聖書講義の内容のほか,内村の言葉,内村の家族の様子,内村の最期の様子,斎藤と無教会関係者との会話や活動などを記録したものである.また,斎藤はこれらの記録を内村の下での活動中から執筆していたが,第二次大戦後に清書し,1953年に完成させた.斎藤はこのテクストに膨大な文章とともに風景や人物などの数十点の挿絵を描いている.挿絵は合計62点で人物が47点,それ以外が15点で,人物を多く描いていた.人物の描き方について,内村の姿を描く際は人物を比較的大きく描く一方,集会に大勢の人々が集う様子や内村邸の庭先の数名の関係者を描く際は比較的小さめに描いていた.これらの挿絵は本文の内容と密接に関係しており,斎藤が後世に伝えるべき記録として必要に応じて描いたと考えられる.この点は近世京都名所を描いた『都名所図会』の人物の描き方との関連も考えられよう(長谷川 2010). 3.挿絵に投影される無教会主義の思想 図1の左は1929年5月16日の夕方に斎藤が現在の世田谷区の楠林で,左は1930年1月18日に現在の杉並区荻窪の林で,それぞれ祈る場面を描いた挿絵である.『聴講五年』の中で斎藤が自ら祈る場面をいわばメタ的に描いたものであるが,注目すべきは祈る自身の姿だけでなく,周辺とはるか遠くの景観を描いている点である.斎藤にとっては自分が存在する周囲の空間,そして自身の目に映る遠景も含めたまさに「生きられる空間」こそが信仰の実践としての祈りや賛美などを行う,彼にとっての「生きられた宗教」たる無教会主義キリスト教の信仰実践の場であった.こうした挿絵は斎藤の無教会主義キリスト教の信仰と思想を視覚化したものだったのである.言い換えれば,こうした風景や景観を描いた視覚資料は単に歴史的な景観を復元するだけではなく,日常的な信仰実践やその思想の研究,すなわち宗教史研究や思想史研究との接続も可能な資料なのである. (本稿の作成にあたってはJSPS科研費基盤研究(C)19K01193の助成を一部使用した.)
著者
王 龍飛 千川 はるか 朱 澤川 銭 胤杉
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2023年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.208, 2023 (Released:2023-04-06)

Ⅰ はじめに 現在,日本に滞在する外国人の増加に伴い,それぞれのエスニック・グループが独自のエスニック・ビジネスを展開している。出入国在留管理庁のデータによると,とくに中国人が増加していることがわかる。山下(2010)は中国の農村には強固な地縁・血縁社会が残っており,親族の中の一人が海外に出稼ぎや留学に行き,ビジネスに成功すると、それを頼って郷里から人々が集まるようになり、異国の地に同郷グループが形成されていくと述べている。 大阪においても,このような強い繋がりをもつ中国人グループが存在すると予想される。とくに中国系の店舗は,同胞向けにビジネスを展開し,宣伝方法の利活用も変化させている。本研究では,大阪「ミナミ」周辺におけるエスニック・ビジネスに着目し,その集積状況を把握し,集積の背景を検討した上で,同胞向けビジネスの新動向として,新たな宣伝方法のあり方についても言及する。Ⅱ 対象地域の概要大阪中央区南部(以下、ミナミ)は近年エスニック系店舗の増加・集積が顕著な地域であり,外国人向けに観光地化されたエスニック・タウンとは異なり,主に同胞向けにビジネスを行っている。出入国在留管理庁のデータによると,2022年6月末時点で大阪市の24区では,在留中国人が最も多い区は浪速区で,次いで中央区となっている。2018年以降は,中央区の在留中国人の数の伸び率は浪速区よりも高くなっている。中央区における在留中国人の数が浪速区を抜いて1位になるのは時間の問題だと思われる。 このようにエスニック・ビジネスの集積が進むミナミだが,その実態は粉河(2017)による報告があるのみで,それからわずか5年で大きく変化している。本研究では,そうした変化にも注目しつつ,特に成長著しい中国系ビジネスを取り上げる。Ⅲ 結果と考察現地での観察調査とGoogle Mapおよびインターネット情報から,ミナミには270軒のエスニック系店舗が確認され,そのうちの6割を中国系店舗が占めていることが分かる。アンケートおよび聞き取り調査により,これまでのところ合計21軒から情報を得ることができている。 対象地域では,もともと韓国系の飲食店が多く立地していたが,2017年ごろから中国からのインバウンド需要が急増したことで,空き店舗には,中国人経営による観光客向け免税店が多く入居するようになった。2020年からのコロナ禍によって,訪日観光客は激減したが,中国人による日本製品への需要は衰えず,インターネットで注文した日本の商品を中国へ発送するための国際物流店が増加した。一方,飲食店は大阪に居住する同胞向けのものが多く,コロナで影響を受けながらも店舗を維持している。このように,コロナ禍を挟んだ時期でも中国系店舗数は増加・維持されながら,その業種・業態の変化が見られることが分かった。 ミナミおける中国系店舗の集積については,2つの要因が考えられる。1つは,中国系不動産や富裕層が同地域に多くの土地や建物を保持しているという点である。2点目として,この地域周辺には日本語学校などの教育機関や企業が集積しており,定住中国人も多く,難波や心斎橋といった一大観光地にも隣接していることから,定住者と観光客の双方をターゲットとしたビジネスを展開できる場所であるといえる。 集積の手段や顧客の誘致については,SNSが発揮した効果が大きいと考えられる。聞き取りをした21軒の店舗のすべてが中国系SNSのWeChatを利用して店のメニューやキャンペーンを宣伝している。また,やはり中国SNSである小紅書(RED)を利用して宣伝している店は12軒,抖音(TikTokの中国版)の利用は4軒あった。これらは決済機能もついており,宣伝だけでなく商品売買にも利用される。今後も複数の中国系SNSを利用したビジネス拡大の動きは容易に予想できる。参考文献粉川春幸 2017. 大阪市中央区南部における複数のエスニック集団によるエスニック・ビジネスの実態.人文地理69(4): 447-466. 山下清海 2010. 『池袋チャイナタウン 都内最大の新華僑街の実像に迫る』株式会社洋泉社出版.
著者
長井 彩綾 根元 裕樹 松山 洋 藤塚
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2023年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.256, 2023 (Released:2023-04-06)

2011年に発生した東日本大震災の,地震後の津波は甚大な被害をもたらした.高田ほか(2012)は,東日本大震災の津波による神社の被害調査によって,スサノオノミコトを祀る神社,熊野系,八幡系の神社の多くは津波被害を免れた一方,アマテラスオオミカミを祀る神社や稲荷系の神社の多くが津波被害を受けていたことを明らかにした. 長井ほか(2022)では,先行研究で挙げられた「スサノオノミコトを祀る神社は津波被害を回避できる」という点に着目し,東京都を対象にスサノオノミコトを祀る代表的な神社である氷川神社の鎮座地の地形的特徴を調査した.氷川神社は武蔵一宮であり,埼玉県にも多い神社であることから,本研究では旧武蔵国を対象範囲を広げて氷川神社鎮座地の立地特性を調べた.さらに,神社と洪水浸水想定区域との位置関係を調べることで氷川神社の被災リスクについて考察した.本研究では,埼玉県神社庁ホームページ,『東京都神社名鑑(上・下)』(東京都神社庁1986),神奈川県神社庁ホームページに記載された神社のうち,旧武蔵国に該当する埼玉県、東京都、神奈川県横浜市と川崎市の土地条件図がある範囲に鎮座する2,848社(うち氷川神社195社)を対象として分析を行った(東京都の島しょ部,他社の境内神社を除く). 対象とした神社の鎮座地住所を緯度経度へ変換した後,ArcMapにて,航空写真を用いて社殿の位置へ合わせた.傾斜地に関する分析は,基盤地図情報数値標高モデル5mメッシュを用いて,神社が傾斜地付近に鎮座するか確認した.高低差を調べるために,ArcMapのフォーカル統計機能を用いて半径10メッシュ(50m)の標高の最大値と最小値を算出し,比高を求めた.比高1m未満は平坦地とした.地形分類は,数値地図25000の土地条件図を用いて,神社鎮座地の地形分類を抽出した.神社から河川までの距離は,現在の国土数値情報河川データの他,地形分類のうち,低地の一般面,凹地・浅い谷,頻水地形,水部を河川として神社との距離を算出した.洪水浸水想定区域との位置関係は,国土数値情報の関東地方整備局,埼玉県,東京都,神奈川県のデータを用いて,洪水浸水想定区域と重なる神社があるかを調べた.旧武蔵国の神社は比高の大きい場所に沿って鎮座していたが,氷川神社は,その他の神社と比較すると,鎮座する場所の比高は特別大きいものではなかった.地形分類の分析で,旧武蔵国の神社は,台地・段丘や低地の微高地といった浸水しにくい場所に多く鎮座しており,氷川神社は特に台地・段丘に鎮座するものが多かった.河川までの距離について,旧武蔵国の神社の多くが河川まで100m未満に鎮座しており,氷川神社とその他の神社で平均値の差の検定を行ったところ有意差はなかった.神社と洪水浸水想定区域との位置関係では,荒川沿いの低地や大宮台地より東側の低地で多くの神社が浸水した.氷川神社は,荒川沿いの低地にも多く鎮座する.そこでは,浸水するおそれのある氷川神社がその他の神社よりも多く,浸水深も深い場所にあることが明らかになった.なお,荒川の支流沿いの氷川神社は浸水しにくいことがわかった.
著者
本多 忠素
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2023年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.122, 2023 (Released:2023-04-06)

1. はじめに近年,日本において墓は多様化しており,樹木葬墓地や合葬による永代供養墓など選択肢が増えている.こうした変化は,都市の墓地のあり方にも表れている.特に都市部において新規墓地の開設は,一定の広さを持つ土地を確保したり,設置のための法的要件を満たしたりする必要があるため容易ではない.その一方で,遺骨を収蔵する施設である納骨堂は増加しつつある.こうした墓の多様化のほか,近年では信仰の希薄化も進行しており,これらは墓石や宗教用具の市場動向にも表れている.墓石を含む石工品製造業の出荷額や,仏壇などの宗教用具の販売額は,1990年代以降大幅に減少している.また,宗勢調査からは多くの寺院が,檀家の減少により財政的苦難にあることが明らかになっている.これらを踏まえ本研究は,都市の納骨堂の増加を,1990年以降の墓地・納骨堂の供給主体の動向から把握することで,利用者による墓需要だけでなく,供給主体の経営的状況を踏まえた墓の多様化の動向を考察することを目的とする.2. 先行研究 現代の墓地に関する研究は,民俗学や社会学などの分野で墓制や祭祀性等の議論があるほか,地理学においても墓地の立地をはじめとした研究がなされてきた.しかし,墓の選択が多様化する中で,墓石が配された墓という形態以外の「墓」の空間的様相は十分に論じられてこなかった.加えて,行政や民間,他学問分野における今日の墓需要の分析はしばしばみられるものの,その供給主体から論じたものは少ない.こうした先行研究の傾向を踏まえ,本研究では都市部における納骨堂の増加の背景を,供給主体に着目して検討した.3. 研究対象と調査方法本研究の調査対象地域は,近年の納骨堂の施設数の増加率が著しく動向がより観察しやすい大阪市とした.研究対象については,納骨堂の施設増加は宗教法人による設置が大半であり,そのなかでも多くが仏教寺院によるものであることから,公営や財団運営などのものを除いて仏教寺院に絞った.そのうえで寺院や石材店,仏具店,納骨壇製造業者等への聞き取りを行い,それら供給の様態と納骨堂の増加が進む背景を把握することとした. 4. 結果と考察聞き取りからは,寺院,石材店,仏具店の三者で,各事業の財政的状況を改善しようとする工夫が確認された.そうした供給側の工夫が,利用者による多様な墓需要以外での,納骨堂の増加の一要因となっている.また,こうした納骨堂を所有する寺院の内訳からは,宗旨や祭祀性といった寺院の宗教性と納骨堂の所有との間の関連を認めることはできなかった.これは東京都23区を対象とした横田・八木澤(1990)の指摘とも符合する.しかし,30年前の東京などの都市において,納骨堂は一時的な遺骨の預け先という旧来のイメージ(横田・八木澤 1990:264)であったが,今日では恒久的な利用が一般化している.このように墓地や葬送のあり方は,半世紀足らずで既に異なる様相を呈しており,それらの研究分野ではこうした今日的変化に対して,より一層の注意が必要であると思われる.今後は,大阪府の郊外・農村部にも調査対象範囲を広げることで,納骨堂の増加の地域的特徴を明らかにし,加えて納骨堂を墓地と比較して,その景観的,形態的特徴を考察することを課題としたい.参考文献 横田 睦, 八木澤 壮一 1990. 納骨施設の現状からみた,東京都区部における墓地以外の祭祀空間に関する考察. 都市計画論文集25: 259-264.
著者
原田 歩
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2023年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.244, 2023 (Released:2023-04-06)

1.はじめに 日本の都市はその成立と発展の基礎を都や港町,門前町や宿場町におくなど、その起源は様々である。なかでも近世城下町は、県庁所在地をはじめとする多くの主要な都市の起源となっているため、その空間構造や都市計画の変化などに着目して研究されてきた。近世城下町は、侍町・町人町・寺院地を主要な構成要素とし、各要素の相互関係や配置の変化から支配者層の意図に迫ってきた。 本研究は、城下町を形成する3つの要素の中でも寺院地に着目し、近世城下町の成立から藩政の終焉にかけて,寺院配置の変遷を分析することによって,藩主の都市設計の意図の変化を明らかにすることを目的とする。藩主の治世ごとに寺院の分布図を作成し、藩政や周囲の大名との関係、江戸幕府の支配と関連付け、藩主の意図やその変化の特徴を考察する。 2.近世城下町研究における寺社地の位置づけ 既往の城下町研究では、都市の消費地である「侍町」と生産地である「町屋」を研究対象としたものが多くみられる。その一方で寺社地は、寺院集積地である「寺町」が防御機能を担っていることが指摘されていた(矢守1974;久保2013)。 大阪城下町を事例に寺院と「寺町」型・「町寺」型・「境内」型に類型化し、その役割を考察した研究(伊藤1997)や江戸城下町において寺院が呪術的役割から余暇空間機能に変化したことを示した研究(松井2014)、江戸の明暦の大火後の寺社地と都市構造の変化を考察したもの(黒木1977;岩本2021)など防御的機能に留まらない寺院の役割が明らかになっている。しかし、こうした研究は一事例にとどまっており、今後さらなる事例の蓄積が求められている。 これらの研究は城下町整備が整った後の時代に描かれた絵図を用いて分析されることが多く、城下町形成期の変化を分析することはできていない。 城下町形成期に焦点を当てて分析することは、城下町を整備した藩主の都市計画に迫るうえで有効であり、戦乱の世から泰平の世に移り変わるなかで、軍事的役割が重視された時代から経済活動の場としての役割が重視 されるようになるまでの変化に迫ることが可能となる。 3.名古屋城下町における「寺社地」 名古屋城下町は,1609(慶長14)年,家康の九男義直の居城として,天下普請によって築城された。清須城の軍事的脆弱性や中世以降の無計画な発展に伴う城下町拡大の限界を補う目的で,清洲城に代わる新たな近世城下町として整備された。 他の城下町が中世山城に代わる新たな城として整備されたのに対し,名古屋城下町は近世城下町の代替として整備されたため,あらかじめ家臣団や町人の規模を把握することが可能であり,綿密な計画に基づいて建設されている。 その構造は次のようになっている。町人町が碁盤割で城下の中心に配置され,侍町は町人町を覆うように位置している。寺社地は外延部の特定の場所への集積地および碁盤割の町人町の中心(会所地)に置かれた。 名古屋城下町にみられる寺社地の特徴として,宗派ごとに形成された寺院集積地(寺町)が形成されたこと, 町人町の会所地に寺院が置かれたことが指摘できる。これらの特徴は他の城下町にもみられる特徴(宗派ごとの寺町は広島城下町,会所地の寺院は熊本城下町にみられる。)であり,名古屋城下町における配置意図を明らかにすることは,他の城下町の分析にも示唆を与える。特に、名古屋城下町は複数の寺院集積地を持ち、他の城下町で指摘される防御的機能だけでは説明できない寺院配置がみられる。 そこで前述のとおり,名古屋城下町は清須城からの移転が多く,初代義直と2代光友の治世に多くの寺院が建立されているため、本研究では,この時代に注目し,清洲からの移転寺院,他からの移転寺院,創建寺院と分類し,宗派の特徴や熱田神宮との関係とともに考察する。 参考文献 伊藤 毅1997.近世都市と寺院.吉田伸之編.『日本の近世 第9巻都市の時代』81-128中央公論社. 岩本 馨2021.『明暦の大火「都市改造」という神話』,吉川弘文館. 久保由美子2013.城下町・熊本の街区要素の一考察. 熊本都市政策2:63-68. 矢守一彦1974.『都市図の歴史 日本編』, 講談社.
著者
福留 惟行 駄場中 研 横田 啓一郎 石田 信子 上村 直 並川 努 井口 みつこ 戸井 慎 花﨑 和弘
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.703-711, 2019-12-01 (Released:2019-12-28)
参考文献数
41

症例は59歳の女性で,神経性食思不振症に対して精神科入院中,経鼻胃管による栄養投与を受けていた.胃管挿入後8日目に生じた腹痛に対して撮影したCTで胃壁全体の浮腫,胃壁内気腫と門脈ガス血症(hepatic portal venous gas;以下,HPVGと略記),縦隔気腫,皮下気腫を認めた.上部消化管内視鏡検査で,胃体上部大彎に限局性粘膜壊死を認めた.縦隔気腫,皮下気腫に関しては原因の特定はできないものの気腫性胃炎からのHPVGの診断で胃全摘術を施行した.BMI 10 kg/m2と低栄養状態であったが,術後経過は良好であった.本症例は,胃管留置による胃粘膜傷害からの感染が原因で気腫性胃炎を発症,それに伴いHPVGを生じ,同時に低栄養状態による組織の脆弱性を背景として,胃管挿入の刺激で気道内圧の上昇,肺胞の破裂が起こり,縦隔気腫と皮下気腫が発生したと考えられた.このような二つの病態が同時に起こったと推測されるまれな症例を経験したため報告する.
著者
辻野 亮
出版者
奈良教育大学自然環境教育センター
雑誌
奈良教育大学自然環境教育センター紀要 (ISSN:21887187)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.45-50, 2015-03-20

現地踏査と航空写真解析によって、奈良公園平坦部と若草山における地表植生図を作成した。公園地の平坦部と近接する緑地におけるニホンジカの採食場所として有効と考えられる草地の面積は32.2 haであり、若草山の草地面積は28.2 haであった。
著者
釜我 昌武 成 慶〓 大橋 弘通
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.128, no.5, pp.569-576, 2008-05-01 (Released:2008-05-01)
参考文献数
31
被引用文献数
1 6

In this paper, a power converter in combination of 1200V Si-IGBT and SiC-SBD is investigated for decrease of devise loss in compare with Si-PiN diode. To use device simulation which is based on considering of switching experimental results and static characteristics is employed to estimate device loss. In device simulation, also, we adjust an anode injection efficiency of Si-IGBT to increase switching speed and optimize trade-off relation between on-state voltage and switching loss of Si-IGBT due to minimize total device loss. As the device simulation result, the switching frequency of in combination optimized Si-IGBT and SiC-SBD has approximately three times as high as Si-IGBT with Si-PiN diode. Moreover, in this paper, the limitation of switching frequency by comprehensive total device loss with present heat cooling ability is discussed.
著者
桑名 杏奈
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.295, 2023-05-15

本稿では,大西可奈子監修『超実践! AI人材になる本 プログラミング知識ゼロでもOK』を紹介する.この書籍では,技術者とビジネス現場の人がコミュニケーションエラーを起こさないことこそが,AIの導入,そして成功のために重要であるということが繰り返し訴えられている.AI技術に詳しくない人を主な対象として書かれているが,技術者がビジネス現場を理解するために読むのにも適している.異なる知識を持つさまざまな立場の人々を繋ぐことのできる書籍だと思う.特に予備知識なしでAIプロジェクトに放り込まれた非エンジニアの方には,ぜひこの書籍を手に取ってほしい.