著者
安藤 雅孝 BART BAUTUST RAYMUND S. P 山田 功夫 伊藤 潔 渋谷 拓郎 尾池 和夫 BAUTISUTA Bart PUNOGBAYAN Raymund S. GARCIA Delfi PUNONGBAYAN
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

当研究の目的は,(1)西太平洋超高性能地震観測網計画の一環としてフィリピン国に観測システムを設置し,記録の収録と解析を行うこと,(2)フィリピンの地震危険度の推定と地震発生機構・テクトニクの研究を行うことである。以上(1),(2)の順で成果の概要を述べる。(1)超高性能地震計は,平成3年度にフィリピン火山地震研究所のタガイタイ観測点に設置し順調に記録の収録が開始された。記録の解析は現在進められており3カ月以内の報告できるものと思う。地震の収録は,連続収録とトリガー収録の二つの方式を取っている。連続収録は1点1秒,トリガー収録は42点1秒サンプリングを行っている。トリガー記録は,1年で約200点収録されている。現在の問題は,時刻較正と停電対策の2点である。現システムはオメガ電波を用いて時刻較正を行っているが,受信状況等多くの難点を持っている。このため,GPSを用いて時刻較正を行う予定であるが,市販品は高価なため,渋谷(分担者)が手づくりで作製する計画を持っている。停電はフィリピンでの大きな社会問題である。経済的な進展のみられないフィリピンでは,この1〜2年に電力事情が急激に悪化してきた。昼間に5時間程度の停電は普通である。自動車用バッテリーで停電対策を取っているが,長期間の停電を繰返すとバッテリーは回復不可能となる。このため,停電時はファイル書き込みを止め,復電時にも電圧回復まで収録を待つような対策を取る必要がでてきた。これらは,平成5年度5月頃に2名が訪問し実施する予定である。計画立案時や設置の際には予想されなかったことではあるが,発展途上国での研究計画は万全の対策を取る必要があることを示している。(2)地震危険度等 フィリピンは,1990年にフィリピン地震が発生し,1991年にピナツボ山が大噴火,1993年1月にはマヨン山が噴火をした。このようにフィリピンはルソン島を中心に地震火山活動が活発になっている。河高性能地震計を置いているタガイタイ観測所はタール火山の外輪山にあり,マグマ性の地震活動の監視も兼ねている。タール火山の近年の地震活動は高く,噴火の可能性が高いと言われている。火山の噴火や災害の防止軽減のためには,噴火規模の推定が必要である。この基礎資料として,マグマ溜りの位置,深さ,規模,および部分溶融面の位置や深さの情報が欠かせない。平成5年2月末から2週間にわたり,人工地震を用いた地殻構造調査が行われた。平成4年12月に研究協力者の西上がフィリピン火山地震研究所の研究者と共に,発破点の選定,地震計の設置点の調査,業者の折衝等を行い,2月末の本調査へ向けての準備を完了させた。深さ50mの発破孔を2本掘削し,200kgのダイナマイトを人工地震源として,地震探査を実施する予定を立てた。発破点はタール湖(カルデラ湖)西岸に置き,観測点を東岸沿いに南北に展開し,扇状放射観測を行った。発破を2度に分けた理由は,収録システムが日本側とフィリピン側と併せて16組しかなく,1回で東岸域に並べると間隔が荒くなり,マグマ溜り検出には適さないことがわかったためである。本調査では,1回目の発破では東岸の北側に,2回目の発破では南側に展開した。これにより32組の収録システムにより地震探査が行われたと同じくなり,かなり詳しい調査が可能となった。日本から8名,フィリピン側から10名の参加があり,かなりハードなスケジュールをこなし調査・観測を成功させることができた。観測点へは陸路から近づくのは難かしく,ボートを用いて観測システムや観測者の輸送を行ったが,観測期間中は風が強く波が荒かったようだが,これらの困難に果敢に立ち向かい実験を成功に導いた。今年度の研究実績をまとめると,(1)超高性能地震計が稼動し,順調に記録が取れ始めたこと,(2)フィリピン国では始めての研究を目的とした人工地震を用いた地震探査が行われたことがあげられる。後者の探査は,フィリピン側に大きな影響を与えると共に,日本側研究者にも種々の困難を乗り越え共同研究を行う重要さを教えてくれた点は貴重であった。平成5年度からも更に発展した形で国際学術研究が行われる予定である。
著者
曽根 悟 笠井 啓一
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

1960年代末以降民鉄各社は相次いで電力回生ブレーキを用いた車両を導入し、現在ではJRを含めて新造車のほとんどが回生車となっている。この変化に合わせて、饋電システムの設計・回生車の制御を見直したのが本研究で内容的に直流饋電システムと交流饋電システムとに分けて記述する。1.直流饋電システムの回生車運転線区向け設計・制御回生失効確率を減らすための有効な方策として、変電所無負荷送出電圧の低減または電車線許容最高電圧の増加、変電所の電圧変動率の低減または定電圧制御、饋電線抵抗の低減を明らかにした。回生余剰エネルギーの吸収設備として変電所等へのインバータ・抵抗・蓄積装置等の導入は、これらの設備が有効に活用できる条件が複雑で、必ずしも一般性がないことも明らかにした。2.回生車を導入する線区向けの交流饋電システムのあり方直流饋電システムは原則として全部並列饋電されるので停電はないが、交流では横流防止、保護上の観点から単独饋電となり、異電源セクションで停電することが多い。この場合回生車のセクション通過を可能とするために、多くの可能性の中から、以下の方式有望なものとして選定し、開発を進めた。セクション制御方式としては(1)微小並列切替え方式、(2)瞬時切替方式、(3)微小時間切替方式、(4)抵抗セクション方式、これらに対応する車両の制御としては、(5)、(1)〜(3)に対応する架線側PWM制御変換回路の主変圧器偏磁防止機能付制御、(6)(4)に対応する自励回生電圧位相制御3.PWM制御交流回生車のビート・トルクリプル抑制制御将来の交流回生車の主流となる標記の方式の実用上の最大の妨げである、複変換器間干渉を除去し、トルクリプルを低減する制御方式を開発した。
著者
奥村 与志弘
出版者
(財)阪神・淡路大震災記念協会(人と防災未来センター)
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

今世紀前半にも東南海・南海地震の発生が確実視されている.本研究では,地震の規模の観点から,想定される将来の津波来襲特性の不確実性について明らかにした.また,地域性や長期的効果を考慮した津波防災対策のあり方について考察した.具体的には,海外の津波復興状況調査や東南海・南海地震時における関西・四国の被災社会シナリオの構築を試みた.
著者
小島 美咲 出川 雅邦
出版者
独立行政法人農業生物資源研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

雄の血中アンドロゲン濃度(Ad)が顕著に異なる2品種のブタとその交配で得たF1を用いて、肝臓における薬物代謝酵素の構成的遺伝子発現の性差を調べるとともに、性差発現における血中Adの関与を追究した。その結果、構成的発現に性差が見られる肝薬物代謝酵素の遺伝子発現は、Adにより閾値をもって抑制的に制御されていること、また、Adの高発現形質は常染色体性に優性遺伝することを明らかにした。
著者
佐藤 昌子 濱 裕光 和知 孝雄 土井 正 岡田 明
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究課題は高齢化社会において高齢者自身が自活して生活するため,画像による情報伝達の効果を明らかにし,有効な利用方法を探索することを目的としている。薄暮時や夜間では,特に視覚や運動能力の機能低下している高齢者にとって危険度が増すことから交通安全施策が早急に必要とされる課題である。道路交通標識や高齢者衣服の設計に資するため,高輝度反射材料の構造特性と反射特性の関係を明らかにした。また,視覚刺激として伝えられる情報を記憶する場合,色と形がどのように影響するかを検討した(佐籐)。多機能化かつタッチパネル化した駅の切符券売機を例にとりあげ,その操作画面をシミュレートする装置を開発し,高齢者を含むユーザによる操作性評価の可能性について検討した(岡田)。大規模災害時の避難経路における照明の確保について、神戸、静岡、大阪を対象に広域避難所周辺の住宅地域において、街路照明の設置状況や路面照度の実態調査と非常時の街路照明の確保についての住民の意識調査を行った。その結果、街路照明について日常の防犯照明としての機能は最低限確保されているものの、広域停電を伴うな非常時には、照明の確保は困難で、避難経路を指示できる自照式案内表示も未整備であることが明らかになった(土井)。高齢者に多く見られる関節部位の疾患は、直ちに高齢者の歩行、寝起き、衣服の脱着、食事、排便、入浴など日常生活に必要な動作に障害を与える。そこで,股関節の障害で同病院に通院、入院する患者の歩行動作を3次元コンピュータ・モデル・シミュレーションで画像表示する方法を開発し,これらの画像情報から患者の個人差を配慮した生活補助システム,住宅や生活用具の開発などに有効利用しうることを示唆した(和知)。ヒトの3次元知覚原理を明らかにするため,あるシーンを撮影して3次元画像処理を行うことによりカメラ位置(ヒトの目の受光に対応)を理論的に検出する方法を検討した。その結果、基準となる三角形を導入し、その三角形からの相対位置を計算することによって世界座標を求め,カメラの動き検出が可能となることを明らかにした(濱)。
著者
笹森 崇行
出版者
仙台電波工業高等専門学校
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

送電線や鉄塔等の送電設備が電磁環境に及ぼす影響の1つとして,中波ラジオ放送所の近傍にある送電設備の工事や保守点検を行うときに,送電線に高い誘導電界が発生する場合があることがあげられる.普通は工事や保守点検時にも停電を避けるために,作業を行う側の回線は送電を停止するが,もう一方の回線は送電したまま行うのが一般的である.しかしこの状態のままでは,隣の送電線を流れる電流からの誘導によって,作業を行う送電線に誘導電流が発生して危険である.そこで,この商用周波数の誘導電流を防止するため,作業をする側の送電線は鉄塔に接続することになっている.しかしながら,中波ラジオ放送所の近傍にある送電設備においては,送電線と鉄塔が接続されることによってできたループがラジオ放送波と共振して高い誘導電界が発生する場合があることが報告されている.本研究では,隣の送電線を流れる電流による誘導と放送波による誘導の両方を低減するための対策として,送電線と鉄塔の接続部にコイルを取り付ける方法を提案した.また,理論解析によって効果的なコイルの値や取付場所について検討し,実測によってその効果を確認した.その結果,適切な値のコイルを適切な位置に取り付けることによって,放送波による誘導電界は大きく低減できることが確認できた.さらに,送電線にコイルを取り付けても誘導電界強度が低くならない径間があることも明らかになってきた.このような問題点があることなどから,本研究を押し進めて送電設備が電磁環境に及ぼす影響の解析と対策をさらに明らかにしていく必要があると考えられる.
著者
アッタウィリヤヌパープ パトム
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、「信頼性向上」を目指して、「信頼性保険」という系統運用者と需要家がWin-Winの関係となる新しい仕組みを提案する。提案した信頼性保険は系統運用者が保険業者として提供し、需要家は保険契約者として自己の信頼性ニーズを考慮したうえで、自由に保険に加入できる。高い信頼性を必要とする需要家あるいは遮断不可能負荷を持つ需要家は系統運用者に保険料(プレミアム)を支払うことによって発電機や送電線の故障時に停電にならないように特別に守られる。万一停電が起こった場合は系統運用者と事前に決めた停電の補償金が支払われる。一方、事前に契約した遮断可能負荷を持つ需要家は電力系統全体及び他の需要家の信頼性を維持するために、自己の負荷を遮断する代わりに系統運用者から停電の補償金が支払われる。短期的に信頼性保険は系統運用者の立場から見ると、電力設備故障時に適切な負荷遮断できるというメリットがある。そのうえ需要家の信頼性ニーズを把握することができれば、系統運用者は長期的な視点から適切な系統増強ができると考えられる。本研究は、信頼性保険の定式及び適用例を紹介する。また、電気学会西10機系統モデルを用いて信頼性保険の有効性を明らかにし、電力系統への影響を検討する。
著者
後藤 幸弘 成田 憲一
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

新潟地区の日本海沿岸において、冬季雷の観測が、磁鋼片、ディジタル電流波形記録システム、フィールドミル、静止カメラやビデオ記録システムを用いて継続している。昭和62年度の冬より、新たに静電アンテナ(スローアンテナ)を試作し、互いに数百m離れた3地点に設置して、バイポーラ雷撃に伴う雷雲中の電荷領域の消滅の様相を測定するようにした。しかしながら、研究期間中には、一度もバイポーラ雷が発生せず、観測できなかったが、冬季雷特性の総合的な観測は継続して行われ、観測結果の解析、検討も引続いて行われた。磁鋼片の測定では、昭和51年10月より平成元年1月までの期間に65例のデータが得られた。その内8例は磁鋼片の測定範囲未満の小電流で残りの68%は負極性雷、32%が正極性雷であった。昭和57年冬より、ロゴスキコイルを電流センサにしたディジタル波形記録システムを導入し、これまで60例の波形を得た。このうち15%がバイポーラ雷であった。一方地上静電界変動と冬季雷発生の気象条件も検討された。冬季雷襲来時は、夏期と大きく異なり、非常に激しく正負に振れるものであった。また地表面附近の空間電荷の影響が大きいことが確認された。輪島の高層気象データと巻地点の観測鉄塔でのデータおよび日本海の海洋ブイステーションでのデータより、冬季雷の発生条件を求めることができた。ビデオカメラによる雷放電撮影も順調で、昭和59年より2方向、昭和61年より3方向の撮影となり、これまで115例のデータが得られた。ほぼ全てのチャンネルは上向き放電の様相を呈している。バイポーラ雷の波形は大きく2種類に分類された。特に正の電流に負の電流パルスが重量している例が観測されたが、その発生要因については、今後継続される予定の観測に依存している。特に今回の補助金で導入できた3地点スローアンテナによる雷界測定のデータがその原因解明の糸口となるであろう。。
著者
鏡味 洋史 鈴木 有 宮野 道雄 岡田 成幸 熊谷 良雄 中林 一樹 大西 一嘉 多賀 直恒
出版者
北海道大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

本研究では地震災害事象について発災を出発点とし、緊急対応、復旧対応、復興、そして次の災害に対する準備に至る時系列の中で、対象としては個人・世帯を出発点とし、地域社会、地域行政体、国、国際に至る空間軸でできる限り広く問題設定を行った。個別の災害情報管理の問題を情報の受信者である被災者・被災地の側からのアプローチと情報発信側となる行政体など各組織・セクターからのアプローチで展開し、情報管理のあるべき姿、ガイドライン構築を目指した。各分担課題は、全体の枠組みを整理するもの、情報システムの視点を被災者側におく課題、視点を対応組織の側におく課題の3種類に区分してすすめ、最終年度には研究の総括を行った。被災者側の視点からは、被災者の住環境からの情報ニーズの把握、災害弱者を対象とした情報伝達・収集システムの提案、郵便配達システムを活用した情報システムの提案、地域の震災抑制情報の有効性、住民主体の復興まちづくりにおける情報ニーズの把握がなされた。対応組織の側からは、地方行政体による被災情報の収集状況に関する時系列モデル化、地震火災については消防活動訓練システムの構築、災害医療情報については阪神・淡路大震災の事例を分析したシステム化の方向、ライフライン停止に伴う生活支障を計量化の提案、都市復興期における情報の役割、が明らかにされている。各課題では、既往の地震災害に基づく情報ニーズの整理、それに基づく情報管理のあるべき姿の提示、プロトタイプシステムの提案へ統一した形で進めた。課題によっては、問題の大きさ、複雑さなどにより到達度の差は大きいが、大きな方向を示すことができたと考えている。本計画研究は単年度の申請であるが継続して4年間研究を行い、最終年度には報告書の刊行を行った。
著者
山元 寅男 中村 桂一郎 和佐野 公二郎
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1987

血管内皮細胞は、血液と直接に接する内皮層を構成し、細胞間は接着しており、連続する細胞層をなす。このために、血液と内皮外組織との物質交換のバリアーの役割を果している。一方、血液に対しては、その凝固防止の他に種々の機能を行っている。これらの機能がどのような構造的基盤に基いて営まれているかを明らかにする目的で本研究を行った。内皮細胞に見られる小胞は、大部分は連続する小胞管として存在しており、自由小胞は非常に少いことがわかった。したがって、小胞による物質輸送よりは、胞体を貫く小胞管を通る輸送が主要なものと考えられた。また、これら小胞は、一般に滑面小胞であるが、新鮮急速凍結割断エッチングレプリ力法で観察すると、小胞の細胞質側膜表面にアクチン分子と思われる縞構造が認められた。この構造から、小胞は可動性を持ち、隣接小胞と結合し小胞管を形成するものと考えられた。内皮細胞の内腔側細胞膜の凍結割断レプリ力像を観察すると、P面膜内粒子の配列に一定の規則性は見られなかった。これらの膜内粒子は、膜タンパク質を表すものと考えられているから、膜に局在するレセプターや酵素の分子配列にも特異性はないものと思われた。内皮細胞に見られる小胞陥入と膜内粒子の配列との特別な関連性は認められなかった。内皮細胞に、特に、有窓毛細血管に見られる窓構造は恒常的なものではなく、たとえば、糖尿病などの場合には、小腸の有窓毛細血管で窓構造は著しく減少することが明らかとなった。内皮細胞の細胞骨格であるアクチンは、蛍光顕微鏡的に平滑筋細胞のアクチンとは異なる性質が明らかとなった。超薄切片法で多数の中間径細糸の存在を認めたが、細胞内での分布様式を蛍光顕微鏡的に検索したが成功しなかった。細胞骨格と内皮細胞機能との関連を今後、電顕的、光顕的に解明していきたい。
著者
三浦 房紀
出版者
山口大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1991

札幌市、仙台市、新潟市、福井市、千葉市、長野市、静岡市、高知市の道立、県立図書館を訪れ、戦後起った地震(1968年十勝沖地震、1982年浦河地震、1978年宮城県沖地震、1964年新潟地震、1948年福井地震、1987年千葉県東方沖地震、1984年長野県西部地震、1978年伊豆大島近海地震、1946年南海地震)の地震体験記を収集した。地震体験記には子供の作本、教師の報告、行政の対応記録、被害報告などがあるが、これらを地震時の心理・行動パタ-ン、情報の流れ、被害のパタ-ン、必要とされた情報・物質、教訓と対策等に分類し、それぞれキ-ワ-ドを作成してデ-タベ-スを作成した。今年度は時間の関係で市販のソフトを用いたが、将来的には独自の検索ソフトを開発する方向で検討を進めている。デ-タベ-スの作成と平行して、学校の立地条件、規模、校舎の形態、地震活動度などを考慮して、地震発生という緊急時に最も適切と考えられる対応を指示するためのソフトウェアの開発を行った。このソフトは日常の対策と心構えも含め、地震発生から無事生徒・児童を保護者へ手渡すまでの過程を時系列にフォロ-するものであり、それぞれの局面で対応できるものとなっている。地震発生後は停電になる可能性が高いので、バッテリ-で作動するラップトップ型のパ-ソナルコンピュ-タを使うことを前提として開発を行った。本研究で開発したデ-タベ-スはさらに深く地震防災について学習したいと思う者への便宜を図るものであり、また対応指針ソフトは緊急時に実際の活用を目的としたものである。両者を有効に活用することにより、格段の防災力の向上が期待できるものと思われる。
著者
高橋 勲 蘇 貴家 近藤 正示
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

フライホイールをバッテリーに代るエネルギー貯蔵要素とした高性能長寿命無停電電源を試作、開発することを目的とする。主な成果は、1.10kw1分のシステムについては本予算以外の物で、試作は完了しているがまだ、真空システムに問題があり実験には入っていない。2.真空の問題についてはチタンから高性能のジルコニウムゲッタに変更し、3ヶ月ほど運転試験を行なったがOリング、容器(鋳物製)よりのリークが確認され現在ステンレス等用いて対策中である。3.IGBTを使用し16kHzのスイッチングで無騒音化し(従来品の5dB減)、かつソフトスイッチングで損失を減らしフアンレス、長寿命化を図った。その結果、フィン温度を13℃下げることができた。4.寿命が短く大型の電解コンテンサを除去するため、電解コンテンサレスインバータを採用した。コンテンサ容量は停電時からの立ち上げでも200μF以内で可能でフイルムコンテンサの使用が可能となった。5.電流追従速度の改善の結果、整流器負荷で出力電圧歪を1%にでき、かつ中性点電圧制御の結果トランスレス化が可能となった。6.上記の手法を用い入力力率99%以上が1/5負荷以上の領域で達成できた。7.寿命に関係のあるフォトカプラをパルストランスと放電回路を併用したもので取り換え全システム15年以上の長寿命化を達成できた。8.効率94%が目的(市販品90%以下)で、スイッチング損失回収回路、アモルファスリアクトルなど採用したが93%が限度であった。9.フライホイール電動発電機に直接トルク制御を用い回転センサレス化を図り、真空容器の設計を簡単にし真空度を高められる構造にできた。などの成果が得られた。試作予算、真空系に問題はあり主に5kWのシステムで実験を行なったがほぼ所定の目標を達成できた。
著者
林 幹治 坂 翁介 北村 泰一 湯元 清文 田中 義人 國分 征 山本 達人
出版者
東京大学
雑誌
試験研究(A)
巻号頁・発行日
1990

グローバル地球変動磁場観測システムの開発を行なった。リングコアーによるフラックスゲート磁力計に組み合せるディジタルデータロガーのタイプ、設置地域の違いによる次の3タイプがある;モデルA(オーロラ帯など高緯度用、委託観測による1カ月週間毎のテープ交換)、モデルC(中緯度を中心とした日本周辺用、委託観測による3週間毎のテープ交換)、モデルE(赤道地域でのデータ取得のために半無人記録装置、一部フラッシュメモリーカードの導入)。記録感度とサンプリングレイトはA、C、Eモデル各々について、125pT-1Hz,50pT-1Hz,7.5pT-3秒とした。開発の仕上げとして、各地でのフィールド観測を実施した。想定した問題が実地観測では予想以上の複雑さで現れた。電源関係(停電対策,蓄電池充電,データ取得の停止と再開),機器温度環境(過剰対応),機器の操作ミス(合理的な操作性)など,各モデルとも,半年以上の期間に渡り,問題への対応を現地との連携で(主にプログラムROMの改良交換)進めた結果,不可抗力と思われる(落電,盗難,重機器による地下埋設部の破損)を除けば,安定にデータが取得することのできる水準に達した。遠隔地データ取得の将来を目指した実験として,静止衛星(ひまわり)を利用して北海道(女満別)よりの磁場データの取得実験を開始した(郵政省通信総合研究所,運輸省気象庁地磁気観測所の関係者の協力を得る)。観測データは,貴重な高時間分解能データとして超高層物理研究に各分担者が利用するとともに一部は学術情報ネットワーク上に公開され,国内外の研究者の利用に供されている。
著者
河村 勝久 平野 葉一 柴田 正憲 淺香 隆
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究では1.教育研究所がHUB局となり、インターネットを利用したe-Learning活用のためのコミュニティーシステムを作り、教員同士で疑問に思ったことを互いにぶつけ合い、協同的に探求しあいながら共同のe-Learning構築を目指す。2.大学教員及び高校教員に対するe-Learningシステム活用支援システムを開発し、学習を情報と捉え、情報理解能力・情報選択能力・情報批判能力・情報生成能力・情報伝達能力を支援する。3.数学教育においては「生きる力の教育」を「数学を活用する力」と捉え、体験的作業的学習と問題発見解決型学習を推し進めるため、学生たちの視覚的理解を可能にする教材モデルの作成と実践。を研究目的として、多数の関係者の協力得て研究活動を展開してきた。この結果、目的1に関しては、東海大学学部学生・志内伸光君(現在名古屋大学大学院院生)と東海大学代々木電子計算機センターの技術員の協力のもと、e-Learning学習システムをサーバ機上に構築した。初年度はサーバ上にメールサーバを構築し、外部からの転送の確認と安全生の確認時間を費やした。その後、簡易的であるがホームページを立ち上げ簡単なコミュニティーシステムを試みた。目的2に関しては、平成14年から16年にかけて、定期的に研修会を開催し、e-Learning教材の開発およびプレゼンティションの仕様書などの作成行った。これに関しても、多数の資料が得られ、教員の意識改革の可能性の示唆を得ることができた。目的3に関しては、東海大学の数学教員の協力のもと、教材の検討、実際の授業での活用を踏まえた共同授業などを試みた。今後は、平野葉一氏が掲げる「機械仕掛けの数のマジック」のe-Learning化を目指し、学習者が数学教材・教具を見たり触ったりして観察や実験を行い、それらを作り、そこから「不思議」を感じ、体験的に「納得」し、その結果に「驚き」、「感動」する場を提供することができたように発展させたいと思っている。これも新しい教育改革に呼応することになるだろう。
著者
森村 道美 木内 望 高見沢 実
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

本研究では、「地区別計画」と「住宅マスタープラン」の策定状況に関して、東京都23区の担当者にアンケートとヒアリングを行った。「住宅マスタープラン」については、参加したコンサルタントにも行った。アンケートの内容は、(1)プラン策定のプロセス、(2)プランの自己評価、(3)より展開すべき視点、(4)プラン運用上の問題点、等である。23区は、計画に係わる諸条件がそれぞれ異なることから、同一の尺度で比較することは難しいが、結果から次のことが判った。(住宅マスタープランについて)-I・II章i)1区を除いた22区が、'93年末までに、極めて短期間で策定を終了している。ii)プランの策定作業の出発点、あるいは途中の段階で、すべての区で住宅に係わる専管組織(5〜10名)を発足させている。iii)策定されたプランについては、区もコンサルタントも一応の出来と自己評価しているものが多いが、住宅市街地像・地区別住宅像の明確化、用途地域などの都市計画との関係については、今後の課題としている指摘も多い。iv)プランの運用を評価するための委員会や審議会等の常置組織を持っている区は3区(予定を含めると6区)しかなく、プランの運用はひとえに担当部局の力量に掛かっている。(地区別計画について)-III・IV章v)研究を開始した'92年(平成4年)6月に都市計画法が改正され、都市計画マスタープランの一環として「地区別構想」の策定が義務づけられることとなった。vi)23区の殆どすべてが、法改正以前に、企画部がとりまとめる「総合計画」や、都市計画部がとりまとめる「まちづくり方針」等の中で「地区別計画」を検討していた。vii)「総合計画」と「まちづくり方針」との調整には、各区がさまざまな工夫を行っている。V・VIは、都市計画マスタープランに関して、(社)日本都市計画学会(市町村の都市計画マスタープラン研究小委員会、研究代表者が主査)でとりまとめたものである。
著者
江口 啓
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究においては、パックテストの水の変色の度合いを数値に変換する比色計を開発した。提案の比色計は、試薬と試験水を注入した廃品のプラスチックカップに光をあて、その光の透過度を電圧値として取り出すものであり、色覚異常というハンディキャップを背負った生徒に対する環境教育補助ツールとして活用できる。また,廃プラスチックを再利用しているため、水質調査だけでなく再利用という面でも環境教育を行うことができる。提案教材については、試作評価と実践授業を行うことで、その有効性を明らかにした。
著者
川瀬 博 井上 公 茂木 透 倉本 洋 山崎 文雄 吉嶺 充俊
出版者
九州大学
雑誌
特別研究促進費
巻号頁・発行日
2006

2006年5月27日インドネシアのジャワ島のマグニチュード(M)6.3の地震によって、死者は5,700名以上、倒壊家屋14万戸以上という大被害が生じた。今回の地震被害の特徴は、地震規模が小さい割には極めて大きな人的、物的被害が発生していることである。そこで本研究では、震源位置を含めた震源特性や地盤構造・地盤特性を明らかにし、構造物の耐震性や被害状況からこのような大きな被害を引き起こした原因を解明することを目的として研究を実施した。研究体制は大きく地震・地震動チーム、地盤構造チーム、被害概要・人的被害調査チーム、建築系調査チーム、土木系調査チームに別れ、現地調査および国内での解析作業を実施して検討に当たった。まず地震・地震動チームでは余震観測を実施して余震の発生域を同定するとともに、地震観測データを利用して、詳細な震源メカニズムを推定した。その結果震源域は被害集中地域の直下もしくはその西側と推定され、Opak断層にはつながらないことが指摘された。地盤構造については、地磁気・地電流法によって基盤形状を含めた堆積構造を明らかにするとともに、微動計測によって表層地盤構造を明らかにした。その結果、場所による被害の差は主に表層地盤構造にあることが指摘された。建築構造物に関しては、まず地震前後に撮影された衛星画像を用いたリモートセンシング技術により、広域被害分布を明らかにした。また建物の地震被害について、実際の施行実態や地盤状況などから分析を行い、特にRC造および煉瓦造のいくつかの建物について原位置での強度試験を行うなどして、建物の耐震性を詳細に調査した。また土木系構造物・地盤・ライフライン等の被害状況も調査しその被害原因について考察した。以上の検討結果から、今回の地震では最大でも震度6弱レベルでそれほど大きな入力ではなかったが構造物が脆弱なために大被害が生じたものと推察された。
著者
釜井 俊孝 田村 昌仁
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

都心の宅地斜面の地震災害は, 自然の斜面とも人工斜面とも確かには判定しかねる斜面で発生することが多い。こうした斜面を"崖っぷち"と呼び, その実態の解明と災害リスクを表現した地図"崖っぷち"マップのプロトタイプを東京の目黒川下流域を対象地域として作成した。調査の過程で, 地域の開発史を反映した災害・環境汚染リスク(大谷石の不良擁壁, 重金属汚染盛土)の存在も明らかになり, "崖っぷち"が内包する問題の広がりと深さを具体的に明らかにする事ができた。
著者
平野 美樹子
出版者
長岡赤十字看護専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

災害急性期において第一線で活動する被災地における救援者のストレス経験を明らかにし、効果的な組織的支援体制のあり方を探ることを目的に、平成16年10月の新潟県中越地震で、自らも被災した保健福祉医療従事者(保健師・助産師・看護師・救急隊員等)317名を対象に調査研究をおこなった。調査紙においては、勤務状況、被害の程度、人口統計データ等を収集するとともに、先行研究およびインタビューを通して抽出した「ストレス項目」53項目、「組織的支援項目」47項目(6段階リッカート尺度)を用いた。高いストレス得点を示した項目は、「近親者の死」がきわめて高く、次いで「発災直後に勤務できなかったことを非難されること」「地震発生後しばらく家族の安否が確認できなかったこと」「自分の家族が危険にさらされたこと」「友人・知人の死」「仕事に行くことに家族からの理解を得られなかったこと」などであった。組織的支援項目の得点は、「家族の安否をできるだけ早く確認すること」が最も高く、次いで「家族の無事を直接目で確認すること」「トイレが使用できること」「電話などで家族や子どもと話をすること」「上司・同僚の間で、何でも言える良好な関係があること」などであった。組織的支援項目については、尺度全体の得点、および各項目別得点、項目間相関係数などを確認した後、因子分析(主因子法・バリマックス回転)をおこなった。因子分析の結果、8因子が抽出され、累積寄与率は64.19%であった。8因子すべてが固有値1.00以上であり、各因子でそれぞれ解釈可能なまとまりを得た。クロンバックのα係数は全体、各因子で、いずれも0.7以上を確保できた。今後、成果を2008年日本トラウマティック・ストレス学会、日本災害看護学会等で発表するとともに、ストレス項目および組織的支援項目得点の組織等属性による差、探索的因子分析などをすすめていく予定である。
著者
金子 隆之 安田 敦 青木 陽介
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

東アジアにおける噴火監視と噴火研究の基礎となる活動データの大規模収集を行うために,MODISとMTSATデータを利用した「複数の衛星を利用した準リアルタイム東アジア火山観測システム」の構築を行い,主要147活火山の常時監視を行った.これらのデータの解析結果に関して,ウェッブサイトを通じて広く公開すると共に,より詳しい噴火状況を知るため,高分解能衛星データや地上観測データを組合せて,統合的解析を試みた.