著者
保坂 秀子
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.43-50, 2000-12-31 (Released:2017-04-27)

3世紀から8世紀までの日本において,日本人は言語の異なる諸国の人々とどのようにコミュニケーションをはかってきたのだろうか.通訳,使節,漂流者などをキーワードに文献から収集した記事を主要なエピソードを中心に歴史背景も含め紹介する.
著者
鈴木 公啓
出版者
日本応用心理学会
雑誌
応用心理学研究 (ISSN:03874605)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.113-122, 2018-11-30 (Released:2019-08-15)
参考文献数
23

This study investigated the influence of male pattern baldness on the impression of men among adult Japanese men and women. Participants were 79 men and 87 women (mean age = 39.17, SD = 10.75, range: 20-59). They rated 4 types of photographic stimuli based on the Modified Norwood-Hamilton Scale (Takashima et al., 1981) on several dimensions of impressions. Analysis showed that the amount of cranial hair influenced impressions of photographic stimuli. Results showed that baldness was perceived to be a sign of senescence. Furthermore, baldness was perceived to demonstrate several features (e.g., social maturity), an attribute relevant to senescence. Neither sex nor age of the participant influenced the differences in impression of photographic stimuli.
著者
成川 真隆 三坂 巧
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.1-8, 2020-01-25 (Released:2020-02-18)
参考文献数
43
被引用文献数
6 2

日本は世界に先駆けて超高齢社会に突入した.日本の高齢化の特徴として,平均寿命と健康寿命の差が平均で10年にも及ぶことがあげられる.健康寿命を延伸させためのアプローチのひとつに,栄養バランスのとれた食事摂取があげられる.一般に老化に伴い,食事摂取量の低下や摂取品目の偏りなど,食事の質が低下してしまう傾向がある.食事の質の低下は体力低下を招き,次いで食欲の減退を招くという悪循環に陥る.したがって,食事の質を保つことは健康を維持する上で鍵になり得る.では,なぜ食事の質が低下してしまうのか?その原因として,老化による味覚機能の低下があげられる.しかし,老化によってなぜ味覚機能が低下してしまうのか,その詳細なメカニズムは不明である.本稿では,まず哺乳類の味受容機構について概説したのち,加齢依存的な味感受性変化の発生要因を検討した我々の取り組みについて紹介する.
著者
Udai Shimada Munehiko Yamaguchi Shuuji Nishimura
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
SOLA (ISSN:13496476)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.1-5, 2020 (Released:2020-01-28)
参考文献数
42
被引用文献数
6 8

Japan Meteorological Agency (JMA) best track data indicate that the number of rapid intensification (RI) tropical cyclone events in the western North Pacific increased from 1987 to 2018. To clarify whether this increase is due to climatological changes or qualitative changes in the data, the long-term trend of RI events in JMA operational Dvorak data, which have been used as the first guess for best track analysis, was investigated. Because the JMA Dvorak analysis procedure has remained almost unchanged since 1987, the temporal homogeneity of the Dvorak data is expected to be much better than that of the best track data. The results showed no discernable trend in Dvorak-based RI events over the 32 years. Although the frequency distribution of 24-h intensity changes changed slightly in the Dvorak analysis, that of the best track data changed significantly; as a result, the frequency of best track-based RI events increased after 2006. JMA started using microwave satellite imagery for best track analysis in 2006. This change likely affected the temporal homogeneity of the best track data. These results suggest that the increase in best track-based RI events was due mainly to qualitative changes related to advances in observational techniques.
著者
岡本 光佑 金藤 公人
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.7, pp.1365-1372, 2018-07-10 (Released:2019-07-10)
参考文献数
6

45歳,男性.3年前よりエソメプラゾール20 mgを内服中であった.後頸部痛と両手の攣り(つり)を主訴に救急搬送され,著明な電解質異常(K 1.7 mEq/l,Ca 9.1 mg/dl,Mg 1.0 mg/dl)を認めた.各電解質の補正と共に低Mg血症の原因をプロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor:PPI)と疑い,中止した.長期PPI内服で低Mg血症を,二次的に低K血症,低Ca血症も来たし得る.
著者
小方 武雄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.61-71, 2013 (Released:2013-05-20)
参考文献数
9

7世紀後半~11世紀初頭にかけて,律令体制の整備に伴い駅伝制が行われ,駅路が全国展開することとなる.神奈川の地においても,駅路が整備されたが,具体的に何処を通っていたかについては従来様々な説がある.今回はそれらの視点に加え,古墳や地域の豪族,「延喜式」に掲載された式内社,直線道路のさらなる活用などの視点を加えて検討を行い,各時代における駅路のルートを求めた.ルートの検討に当たっては明治迅速図を使用したが,この地図には等高線が細かく入っているので縦断の比較も行うことが出来た.さらに,駅家の位置についても比定を行い,駅家間の距離について調査を行ってその妥当性について検討を行った.他の府県において,駅路のルートがはっきりしていないものがある場合には,今回のような視点が参考になればと思う.
著者
松永 伸太朗
出版者
日本労働社会学会
雑誌
労働社会学研究 (ISSN:13457357)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.1-25, 2016 (Released:2017-09-01)
参考文献数
34
被引用文献数
1

The aim of this paper is to reveal why animators working in Japan don’t regard their low-paid and long-time work as problems. Previous studies haven’t theoretically considered animators’labor process. Instead, this paper revealed relations between their occupational norms and their logic of acceptance of bad work conditions with ethnomethodological analysis of interviews.The conclusion of this paper is as follows: Firstly, there are two types of norms in animators’workplace. One is“artisan”norm, which means that animators should follow instructions of upstream workers, the other is“creator”norm, which means that animators should show their originality. Artisan norm is superior to creator norm. Secondly, understanding and using skillfully these norms is a kind of requirement to be a competent animator. Thirdly, both norms have a common feature, which means that animators should have high-level techniques. Sustained by this common feature, animators compete for higher skills. However, their competition has been intensified because there are many cases that high skill workers can’t earn appropriate wages by some institutional factors. As a result, animators who earn wages to manage to make their living become relative winners. However low-paid their labors are, animators who can make their living are winners, and so they don’t tend to regard their work condition as problems.
著者
山嶋 哲盛 及川 伸二 山下 竜也
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、世界的に様々な疾患モデルで追試されて来た研究代表者提唱の「カルパイン-カテプシン仮説」に基づき、オメガ6系の食用油を多量に摂るヒトに好発するアルツハイマー病や非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)及び2型糖尿病などの病因を、ヒドロキシノネナール(HNE)などの過酸化脂質に着目して究明する。すなわち、『酸化損傷(カルボニル化)とカルパイン切断がもたらすHsp70.1の異常に起因するリソソーム膜の破綻』をサルモデルで検証し、生活習慣病の根本原因を見直す。
著者
津本 忠治
出版者
大阪大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1989

1.目的 大脳皮質で主要な興奮性伝達物質候補であるグルタミン酸は脳虚血などの病的状態においては神経毒として作用し、神経細胞の壊死を起こすことが知られている。さらにこの作用はN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体の賦活によりCa^<2+>の過剰流入を引き起こすことによって生じると推定されている。最近、トリプトファン代謝産物であるキヌレン酸が脊髄においてNMDA受容体に作用しグルタミン酸に拮抗することが報告された。キヌレン酸は内因性物質であるから脳内でグルタミン酸の興奮毒性に拮抗し神経細胞死の抑制等、重要な機能的役割を担っていることが想定される。本研究では、このような内因性物質の存在様式と機能的役割を明らかにするため、グルタミン酸、キヌレン酸及びその類似アミノ酸が大脳皮質にどの程度存在するのかを明らかにしようとした。2.方法 麻酔したネコの大脳皮質視覚野にプッシュプルカニュラを設置し、人工脳脊髄液で視覚野を潅流し回収した潅流液を高速液体クロマトグラフィにて測定した。次に、光刺激を与えた場合、あるいは外側膝状体を電気刺激した場合、各種アミノ酸の濃度が変化するかどうかも解析した。さらに、潅流液をCa^<2+>フリ-とした場合この変化が生じなくなるかどうかを観察した。3.結果 回収した潅流液より17種のアミノ酸の濃度を測定できた。このうち外側膝状体電気刺激によって有意に増加したものは、グルタミン酸、アスパラギン酸及びガンマアミノ酪酸(GABA)のみであった。但し、アスパラギン酸の増加は変動が大きく光刺激の場合は必ずしも有意ではなかった。また、これらの増大Ca^<2+>依存性であることが判明した。4.結論 ネコ大脳皮質視覚野でグルタミン酸が興奮性伝達物質らしいことが示された。キヌレン酸等は計測できず今後の課題として残った。
著者
千葉 知史 中本 達夫 飯嶋 千裕 綿引 奈苗 伊達 久
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.288-296, 2019-10-25 (Released:2019-11-08)
参考文献数
36

超音波ガイド下神経ブロックは,神経とその周辺組織,ブロック針や注入薬液などをリアルタイムに描出できる安全確実な手技として普及しつつある.通常透視下で行われていた仙腸関節ブロックも超音波ガイド下に行われることが多くなってきた.仙腸関節ブロックとは,仙腸関節障害症例に診断的・治療的目的に行われる手技である.仙腸関節ブロックは,仙腸関節内注入と後仙腸靱帯内注入の2種類に大別できるが,それらの方法の成功率や注入時の放散痛の研究,カダバーを用いた仙腸関節知覚枝の解剖の知見などから後仙腸靱帯内注入が確実で効果が高い方法として推奨されている.仙腸関節知覚枝は,posterior sacral network(PSN)という神経叢から分枝するが,PSNはS1,S2,S3の後枝外側枝に由来することが多い.S1,S2,S3後枝外側枝は,同名の後仙骨孔の外側に存在する外側仙骨稜を横切るように走行するため,同部位を穿刺目標とすると効果的なブロックとなる.神経ブロック的手技のなかで比較的浅い位置でのブロックであり周囲に動脈や重要臓器などの組織も存在しないため,腰下肢痛症例の診療に積極的に導入してもよいと思われる.
著者
和田 崇
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100309, 2014 (Released:2014-03-31)

映画制作業は文化・コンテンツ産業あるいは創造産業の一つであり,都市への集積が顕著にみられる。その一方で近年,芸術的および経済的な理由から撮影工程がハリウッドから離れた国内外の他都市で行われるケースが増加しており,映画産業の空洞化をもたらす「逃げる生産問題(Runaway production)」として認識されている。撮影工程の空間的分離は,撮影隊の滞在に伴う経済的効果に加え,映画公開を通じた知名度および地域イメージの向上,住民らによる地域魅力の再発見とまちづくり機運の高まり,撮影地を訪れる観光客数の増加など,撮影地に多面的な効果をもたらす可能性がある。そのため近年,自治体や経済団体はフィルム・コミッションを組織し,映画撮影の誘致および支援,映画公開に乗じた観光振興に積極的に取り組むようになっている(Beeton 2005ほか)。 以上を踏まえ本報告は,映画制作業にみられる撮影工程の空間的分離とそれへの地域的対応の実態を報告することを目的とする。具体的に,制作本数(2010年)が世界最多で,近年は「バージン・ロケーション」を求めて海外での撮影が急増しているといわれるインド映画をとりあげ,2013年から新たな撮影地の一つとして注目されつつある日本における撮影実態を日本のフィルム・コミッションによる誘致・支援活動とあわせて報告する。 富山県では2013年4月,タミル語映画の撮影が行われた。富山で撮影が行われることになったきっかけは,2012年9月に駐日インド大使が富山県知事を表敬訪問した際に,同大使が知事にインド映画の富山ロケ誘致を提案したことにある。知事がその提案に関心を示すと,インド大使館は東京でICT関連事業と日印交流事業などを営むMJ社を富山ロケーション・オフィスに紹介した。MJ社がインド人社員N氏の知人であるチェンナイ在住の映画監督を通じてタミル映画界に富山ロケを働きかけたところ,U社が上記映画のダンスシーンを富山で撮影することを決定した。2013年3月に事前調整のために監督などが富山に滞在したのに続き,同年4月に27名の撮影チームが富山を訪問し,9日間にわたり富山市内のほか立山や五箇山合掌造り集落などで撮影を行った。この映画は2014年6月からタミル・ナードゥ州はもとより隣接3州,海外の映画館でも2か月以上にわたって上映され,公開後3週間はタミル語映画売上ランキング1位を記録するなど,興行的に成功した。一方,富山ロケによる地域波及効果は,撮影チームの滞在に伴う経済効果として約360万円が推計されるほか,日本とインドのメディアによる紹介,俳優らによるFacebook記事,映画および宣伝映像を通じた風景の露出などを通じて,相当のPR効果があったとみられている。映画鑑賞を動機とした観光行動については,インド本国からの観光客は確認できないものの,在日インド人による富山訪問件数が若干増加しているという。 大阪府では2013年8月にタミル語映画,同年11月にヒンディー語映画の撮影が行われた。大阪とインド映画の関わりは,大阪府と大阪市などが共同で運営する大阪フィルム・カウンシルがインドの市場規模と映画が娯楽の中心であることに着目し,2012年度からインド映画の撮影誘致活動を展開するようになったのが始まりである。具体的には2013年2月にムンバイを訪問し,映画関係者に大阪ロケを働きかけたが,そこでは十分な成果を挙げることができなかった。一方で同じ頃,神戸で日印交流事業などを営むJI社のインド人経営者S氏が大阪フィルム・カウンシルにインド映画の撮影受入の可能性を打診しており,2013年5月にはいよいよタミル語映画の撮影受入を提案した。大阪フィルム・カウンシルはこの提案を受け入れ,撮影チームとの調整業務についてJI社と契約を締結した。2013年8月に25名の撮影チームが大阪と神戸を訪れ,水族館や高層ビル,植物園などで撮影を行った。その後,JI社からヒンディー語映画の撮影受入が提案され,同年11月に約40名の撮影チームが大阪城公園などで撮影を行った。 大阪ロケによる地域波及効果については,富山ロケと同様に,撮影チームの滞在に伴う経済効果と各種メディアを通じたPR効果があったとみられるが,映画鑑賞を動機としたインド人観光客数の増加は確認されていない。 2つの事例に共通する点として,①フィルム・コミッションがインドからの観光客増加を目指して撮影受入・支援に取り組んでいること,②実際の撮影受入・支援には在日インド人が重要な役割を果たしていること,③現段階ではインド人観光客数の増加は確認できないこと,が挙げられる。この他,両フィルム・コミッションとも撮影支援を通じて日本とインドのビジネス慣行や文化の違いが浮き彫りになったと指摘している。
著者
入宇田 能弥 竹田 安孝 橘内 博哉 今井 実 辻 賢 若林 義規 石関 哉生 藤田 征弘 安孫子 亜津子 羽田 勝計
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.686-690, 2010 (Released:2010-10-15)
参考文献数
11

症例は65歳,男性.2008年6月21日,関節痛に対して近医でプレドニゾロンを処方された.その後口渇,多飲,多尿が出現.8月10日に意識レベルの低下あり当院受診.JCSI-2,血糖値1023 mg/dl,尿ケトン体(4+),血中ケトン体高値,血液ガス分析でpH 7.269, Base Excess -20 mmol/lであり,糖尿病ケトアシドーシス(DKA)の診断で即日入院となった.輸液とインスリン持続静注でアシドーシス,高血糖は改善.翌日に血清アミラーゼ,リパーゼ値の上昇を認めた.腹部CTで急性膵炎,腹部大動脈血栓,右腎梗塞の所見.膵炎に対して絶飲食としメシル酸ガベキサートを投与,血栓・腎梗塞に対してヘパリン,アルガトロバン,ワーファリンを投与し軽快した.経過中腹痛は認めなかった.退院約9ヵ月後に施行した75gOGTTは正常型であった.
著者
永井 隆 根岸 哲夫 冨沢 貴 道又 敏夫 森 昌朋
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.12, pp.959-964, 1995-12-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
14
被引用文献数
2

患者は76歳の男性. 46歳時より糖尿病で当院通院していた. 71歳時より糖尿病網膜症出現.73歳時より足底部にしびれ感を自覚し, 糖尿病性神経障害と診断した. 75歳時より上腹部に腹満感を自覚したが, 胃内視鏡では表層性胃炎であり, 腹部超音波では肝, 胆, 膵に異常は認めなかった. 72歳以後のHbA1cは7.0~7.5%であった. 1994年3月22日, 歩行障害出現. 3月24日, 左不全片麻痺のため当院受診. 脳梗塞と診断した. 入院時軽度の腹部膨隆を認めた. 第4病日, 突然の嘔吐後, ショック状態となり, 腹部X線上, 胃拡張を認め, 胸部X線上, 肺炎, 肺水腫を認めた. 急性胃拡張症によるhypovolemic shock, 嚥下性肺炎, 多臓器不全を併発したと診断し加療したが改善せず, 第7病日死亡. 本例の急性胃拡張症は消化管の器質的病変によるものよりもむしろ糖尿病性神経障害による胃麻痺が基礎にあたるために生じたと思われた.