著者
大仲 恵 越山 雅文 上田 匡 山西 優紀夫 浮田 真吾 菱川 賢志 奈倉 道和 金 共子 廣瀬 雅哉 小笹 宏
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.88-93, 2011 (Released:2011-06-27)
参考文献数
9

taxane系薬剤2剤にてアナフィラキシー(薬剤有害事象grade3~4)が出た2例を報告する.症例1は63歳の卵巣癌IIIc期.卵巣癌の手術後,paclitaxel-carboplatin (TC) 療法としてpaclitaxelの2回目投与を行った際,開始4分で血圧低下・呼吸困難・意識消失(有害事象grade4) が出現したため,気道を確保しながら酸素投与を開始すると同時に,コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウムの急速点滴,エピネフリンの反復投与の治療を行った.48分後には意識は回復し,呼吸症状・血圧も平常値に戻った.TC療法は中止とし,後にcyclophosphamide-adriamycin-cisplatin (CAP)療法(4コース),cisplatin/irinotecan療法(2コース)を施行した.さらに,docetaxel-carboplatin (DC)療法としてdocetaxelを投与したが,投与開始5分後に呼吸困難(有害事象grade3) が出現したため中止となった.症例2は42歳の卵巣癌IIIc期.術後,初回のpaclitaxel投与開始3分後に呼吸症状(有害事象grade2) が発症し中止となった.その後docetaxelを投与したが,やはり投与開始後5分に重度の呼吸困難(有害事象grade3)が出現したが同様の応急処置で軽快した.paclitaxel投与にて薬剤過敏症状が出現した患者に対してdocetaxelを投与する場合には,同様の過敏症再発を念頭に慎重な管理が必要であると考えられた.〔産婦の進歩63(2):88-93,2011(平成23年5月)〕
著者
菊澤 研宗
出版者
日本経営学会
雑誌
經營學論集 第87集 日本の経営学90年の内省と構想【日本経営学会90周年記念特集】 (ISSN:24322237)
巻号頁・発行日
pp.42-49, 2017 (Released:2019-09-26)

かつて世界で輝いていた日本企業は,変化の速いグローバルな環境に適応できず,現在,凋落している。なぜか。これまでさまざまな原因が指摘されてきたが,本論文では,今日,多くの日本企業が誤った新古典派的な資本主義理論とオーディナリー・ケイパビリティにもとづく経営を展開している点に注目する。何よりも,日本企業復活にとって必要なのは,正しいシュムペーター流の資本主義理論とデイビット・ティースによって展開されているダイナミック・ケイパビリティにもとづく経営であることを説明する。
著者
岩田 博 三木 淳史 磯谷 敦子 宇都宮 仁
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.2, pp.90-97, 2007-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
16
被引用文献数
3 2

清酒鑑評会の公開きき酒でカビ臭を経験した方が多くおられることと思う。筆者らは最先端の分析機器を駆使して, そのカビ臭の原因物質がTCAであること, 1.7ng/l (1.7×10-9g/l) という大変微量な含有量でカビ臭が感知されることを解明し, 醸造工程におけるTCAの生成機構やその生成防止方法について研究された。本総説はその研究成果を解説していただいたもので, 醸造現場において大変有益な内容でありぜひ一読をお願いしたい。
著者
中井 専人 横山 宏太郎
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.69-74, 2009-02-28
参考文献数
21
被引用文献数
4
著者
棚谷 綾介 田浦 太志
雑誌
日本薬学会第140年会(京都)
巻号頁・発行日
2020-02-01

【目的】カンナビノイドはolivetolic acid(OLA)とモノテルペンから構成される二次代謝産物であり、近年、欧米各国で医薬品応用されるなど高い注目を集めている。本研究ではカンナビノイドの生合成に関与するプレニル転移酵素(CsPT4)1)の基質特異性を検討した。【方法】Pichia pastorisのCsPT4発現株よりミクロソーム画分を調製し、これを粗酵素として各種芳香族基質およびプレニル基質を組合せたアッセイを行った。【結果および考察】CsPT4はOLAのゲラニル化を触媒し、cannabigerolic acid(CBGA)を生成する酵素であるが、前回我々は本酵素がFPPおよびGGPPに対しても活性を示し、プレニル鎖長の異なるCBGAアナログを合成することを報告した2)。今回芳香族基質に対する基質特異性を再検討した結果、CsPT4はOLA以外に、アルキル鎖長の異なるdivarinic acidおよび6-heptylresorcylic acid、フロログルシノール誘導体のphlorocaprophenone、さらにdihydropinosylvin acidを受容し、ゲラニル基の転移を触媒することを確認した。このうちdihydropinosylvin acid からはビベンジルカンナビノイド3)前駆体の3-geranyl dihydropinosylvin acidの生成を確認した。以上からCsPT4は多様なカンナビノイド関連化合物の酵素合成に応用可能と考えられる。1) Luo et al., Nature 567, 123 (2019)2) 棚谷ら、日本生薬学会第66回年会講演要旨集p863) Chicca et al., Sci Adv 4, eaat2166 (2018)
著者
為栗 健 Sukir MARYANTO 井口 正人
出版者
The Volcanological Society of Japan
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.273-279, 2007-10-31 (Released:2017-03-20)
参考文献数
15
被引用文献数
1

桜島火山において発生するハーモニック微動のモーメントテンソル解析を行った.B型地震群発後に発生する微動(HTB)と爆発的噴火直後に発生する微動(HTE)のモーメントテンソル成分に大きな違いはなく,等方成分は50%以上,CLVD成分は20~30%,DC成分は20%以下であった.鉛直方向のダイポール成分が大きく,鉛直方向の力が優勢な震源が推定される.震源は火口直下の浅部であり,爆発的噴火発生前に火口底直下に形成されているガス溜まりが微動の発生に関与していると考えられる.
著者
米田 稔 瀬戸口 浩彰 原田 浩二 福谷 哲 高橋 知之
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

福島第一原発事故で放射能汚染された地域の復興では、森林活動の復活が欠かせない。本研究では、実際に被災した村が考える森林を活用した復興のあり方を実現するための知識の普及、技術の確立、村有林等を対象としてモデル事業を実施した場合の有効性の検証を行う。その研究内容は大まかには以下に分類される。1.森林を活用した住民の生活時間パターンの把握とそのパターン毎の被曝量評価2.現地での天地返し法を主たる除染法とした線量削減効果の評価3.様々な健康リスクを考慮した森林活用健康生活モデルの提案4.村有林を対象としたパイロット除染事業の可能性検討と効果の予測これらの研究を実施し、帰還地域の復興加速化に貢献する。
著者
柴田 修子
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
ラテンアメリカ・レポート (ISSN:09103317)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.17-29, 2023 (Released:2023-01-31)
参考文献数
2

2022年に行われたコロンビア大統領選挙で、グスタボ・ペトロ候補が当選した。コロンビア初の左派政権誕生であることや副大統領候補がアフロ系女性であること、従来の伝統的政党の潮流を汲んでいないことなどから、今回の選挙は歴史的転換ととらえられている。そこで本稿では、歴史的転換がなぜ起こったのかを分析する。まず選挙制度改革によって左派勢力が参加する余地が生まれたことを概観し、選挙プロセスをたどりながらペトロの勝因を分析する。勝因として既成勢力への批判、左派勢力の一本化、社会運動の影響があったことを明らかにし、おわりに今後の展望を述べる。
著者
長野 公則
出版者
国立大学法人 東京大学大学院教育学研究科 大学経営・政策コース
雑誌
大学経営政策研究 (ISSN:21859701)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.67-83, 2021 (Released:2022-03-31)
参考文献数
39

Over the past 18 years, the endowments of leading American universities have shown rapid growth. The purpose of this study is to clarify new patterns of revenue structures of such top-ranking universities. Accordingly, this study considers the revenue structures of seven leading universities, the University of California, and six of its peer comparison group institutions. This study analyzes the following four aspects. The first aspect is the growth of endowments of seven universities during the 18 years from 2001 to 2018. The second topic is the endowment payout rule of each university, which determines the amount that should be paid out annually into the current revenue. The third topic is the total student income and current year gifts of each sample university from 2006 to 2018. Finally, based on the findings, this study clarifies the new revenue structure types of top- ranking American universities.
著者
豊田 義博
出版者
株式会社 リクルート リクルートワークス研究所
雑誌
研究紀要 Works Review (ISSN:24350699)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.1-14, 2013 (Released:2019-12-09)

アジア主要国およびアメリカの大卒者を対象とした調査セットを用いて,各国のキャリア選択行動の特徴を分析したところ,日本の大卒就職市場の抱える構造的課題の根源は,「大学前期までに進路決定する比率が他国に比べて著しく低いが,大学卒業までに進路決定している比率はいずれの国よりも極めて高いこと」「幹部候補対象の大卒採用市場とエントリーレベル採用市場が一体になってしまっていること」であることが見えてきた。
著者
松本 信廣
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:24240508)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.99-108, 1948 (Released:2018-03-27)

Of the southern languages which have to some extent been incorporated within Japanese, Mon-Khmer ranks first and Malayo-Polynesian ranks second in the number of words which have influenced the Japanese language. This influence involves many important nouns for all parts of the human body, human relations, heavenly bodies, climate, as well as verbs, adjectives, etc. Moreover, a close morphological relationship can be seen. The prefix plays an important part in the Mon-Khmer and Malayo-Polynesian language groups. Characteristically, causative verbs are formed by the addition of the pa type of prefix. The same usage of p can be found in old Japanese, where the addition of p forms words or causative and emphatic character. Other prefixes, such as ma, which has an honorific meaning in Mon-Khmer, ka, ta, sa, and ya, are common to both languages. This use of the prefixes, which is never found in the old Ural-Altaic languages, has been inherited by Japanese from the southern languages. This is important to bear in mind in studying the origins of the Japanese language.
著者
十時 忠秀 森本 正敏 谷口 良雄 平川 奈緒美 谷口 妙子 峯田 洋子 加藤 民哉 原野 清
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.3-11, 1994-04-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
12

(1) 遺体で星状神経節の位置を肉眼解剖学的に検討したところ, 大部分の例で, 第1胸椎の高さで肋骨頸部に位置していた.(2) 星状神経節節前線維の起始細胞は第1胸髄から第10胸髄まで認められた.(3) 星状神経節の節後線維が分布する皮膚領域は, C3~T12で, 最も多く分布している領域はC6~T5であった.(4) 心臓における交感神経支配は, 両側性で, 中頸神経節の関与が最も多く, 星状神経節の遠心性線維は, 主に洞房結節, 心房に終止していた.洞房結節に至る遠心性線維は, 右の中頸神経節および星状神経節からの方が多く, 右の星状神経節ブロックの方が, 左のブロックよりも心拍数, 心リズムに与える影響が多いと思われた.(5) 内頸および外頸動脈には, 星状神経節の節後線維は分布しておらず, 主に, 上頸神経節の節後線維が分布していた.(6) 上腕骨の骨髄には, 星状神経節の節後線維が多数分布していることがわかった.(7) 星状神経節には感覚神経が投射していることがわかった.(8) 上頸神経節, 中頸神経節, 星状神経節には, 相互投射があることがわかった.(9) C6-SGBは, 上頸, 中頸神経節ブロックが適応となる顔面, 頭部の疾患に, C7-SGBは, 上肢の交感神経遮断が必要な疾患に行った方がよいと考えた.