著者
永田 晋治
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

昆虫の摂食行動に関わる生体内分子の探索を行なった結果、カイコ(Bombyx mori)の幼虫から新規のペプチド性因子を2 つ見出すことができた。ともに機能は未知であるが、脂肪体で発現し体液中に分泌するペプチドであり摂食行動や栄養要求に関連することが示唆された。
著者
三村 治 出澤 真理 石川 裕人
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

平成17年度は弱視モデルの作製・骨髄間質細胞のドーパミン産生神経細胞への分化誘導・弱視モデルへの細胞移植方法の検討を行った。弱視モデルは生直後より暗室下で飼育することにより作製した。骨髄間質細胞はDezawaらの報告と同様にドーパミン産生神経細胞への分化誘導が可能であった。弱視モデルへの細胞移植は脳脊髄液経由で細胞懸濁液を第4脳室に注入することにより可能であった。平成18年度は17年度に続いて弱視モデルへの細胞移植を行い、抗体アレイやPCRを用いた解析を行った。抗体アレイでは弱視モデルのタンパク発現を網羅的に解析することが可能であり、種々のタンパクとりわけ、ドーパミン前駆タンパク(Tyrosine hydroxylase;Th)が脳において発現が増強していたが、網膜では既報のようにThの発現は減少していなかった。Apoptosis関連タンパクやMAP kinaseに関するシグナルタンパクなどは脳・網膜共に発現の減少傾向を認めた。これらの結果は既報と同様であり弱視に伴う発現変化を捉えている。抗体アレイの結果をうけPCRを用いた確認実験を行った。PCRではThが弱視網膜においてdown regulationを認め、既報と合致した。細胞移植された弱視脳ではMAP kinase関連タンパクやNeurofilament、GFAPなどの神経グリア系のUp regulationを認めた。この結果から弱視モデルに対するドーパミン産生神経細胞の脳脊髄液経由移植は、弱視モデルによって惹起された様々なシグナル回路に作用し、アポトーシスの回避や神経・グリアの選択的生存をもたらし、さらには弱視モデルにおけるドーパミン量を増加させることとなった。今後、既存のLevodopaの投与と本研究で行った細胞移植の効果との比較検討を行う必要性があり、大型動物での安全試験等も施行していきたい。
著者
岩見 雅史
出版者
金沢大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

インスリンは、線虫や昆虫での研究により、個体の生き残り戦略の要となる分子であることが示されつつある。これは、従来の「血糖調節・代謝調節」に係わるホルモンとしての機能を大きく展開させるものである。昆虫におけるインスリン分子(ボンビキシン)の全貌を明らかにし、Cペプチドの新規機能を明らかにするため、本年度は、新規ボンビキシン遺伝子の発現解析およびアミド化CペプチドのMAPキナーゼに対する作用を検討した。(1)発現解析の結果、Vファミリー遺伝子は脳、Wファミリー遺伝子は脳及び卵巣、Xファミリー遺伝子は脂肪体、Yファミリー遺伝子は脳及び卵巣、Zファミリー遺伝子は脳、脂肪体及び卵巣で発現が見られた。(2)アミド化Cペプチドとして、(1)N-GAQFASYGSAWLMPYSEGRamide-C、(2)N-DAQFASYGSAWLMPYSAamide-Cを用いた。また、非アミド化Cペプチドとして、(3)N-GAQFASYGSAWLMPYSEGRG-Cを用いた。体液ボンビキシン濃度の低い5齢2日と高い5齢10日幼虫からマルピーギ管と脂肪体を摘出し、前培養後、Cペプチド存在、非存在下で培養を行った。MAPキナーゼとしてErk及びp38のリン酸化亢進の有無を、抗リン酸化抗体を用いたウエスタンプロット解析により検討した。マルピーギ管、脂肪体いずれにおいてもアミド化、非アミド化を問わず、Cペプチド投与によるリン酸化Erk及びp38の増加は見られなかった。各実験区においてデータのばらつきが多いため、条件等の再検討が必要である。また、今後、他の組織、PI3キナーゼ等の他のシグナルカスケードで検討も必要である。
著者
高橋 儀宏
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2001

新規ボレート系非線形光学結晶LiBGeO_4が析出した透明結晶化ガラスを用いて、LiBGeO_4の二次非線形光学定数をMakerフリンジ法により評価した。その結果LiBGeO_4はd_<33>〜1.3pm/Vと見積もられ、β-BaB_2O_4単結晶に匹敵することを初めて見出した。Fresnoite型構造を有するBa_2TiGe_2O_8(BTG)結晶化ガラスの非線形性の再評価および他のfresnoite型結晶Ba_2TiSi_2O_8(BTS)およびSr_2TiSi_2O_8(STS)について透明結晶化ガラスを作製し、fresnoite型結晶の非線形性を体系的に評価した。またそれら結晶構造と非線形性の起源について研究を行った。BTG結晶化ガラスの非線形性についてはd_<33>〜22pm/VというLiNbO_3単結晶のそれに匹敵する非線形性を確認した。これはガラス材料で報告されている二次線形性の中では最大である。この試料は、BTGが配向薄膜状に生成しており、平面導波路として機能することも確認し、新たな波長変換素子や光スイッチなどの光デバイス材料として提案した。またBTSおよびSTS結晶化試料のd_<33>はそれぞれ12pm/Vおよび7.2pm/Vと見積もられた。Fresnoite型結晶の格子定数比c/aはd_<33>と同様にBTG, BTS, STSの順に大きく、これはBaやGeなどより大きなイオンが導入されることでc軸が伸張し、自発分極が増長された結果、非線形性も増大したものと結論付けた。目的結晶の量論組成を有するガラスは、結晶化することで不純物相が析出しない、密な配向結晶を得ることが可能である。LiBGeO_4やfresnoite型結晶は単結晶育成が極めて困難な結晶である。しかしながら、結晶化を利用することで非線形性が評価できることを初めて実証した。この手法は非線形光学分野の材料探索において非常に有用である。
著者
鹿川 修一 吉田 清英 寺岡 靖剛
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本研究は,ディーゼル排ガス中の炭素微粒子(パティキュレート;PM)と窒素酸化物(NOx)の有害成分を同時に除去,無害化する新しい排ガス浄化システムの開発を目指したものである.1.触媒とPMの混合物を反応ガス中で連続昇温しながら反応を追跡する昇温反応法を用いて,ペロブスカイト型酸化物(ABO_3),K_2NiF_4型酸化物(A_2BO_4),スピネル型酸化物(AB_2O_4)のPM-NOx同時除去活性を調べた.(1)PM-NOx同時除去活性は,ペロブスカイトおよびK_2NiF_4型酸化物のBサイト,スピネル型酸化物のA,Bサイトに入る遷移金属イオンの種類に大きく依存し,CoやMnを含むものは活性は高いがNOxのN_2への還元選択性が低く,CuやFeを含むものが適度な活性と高い選択性を示す.(2)アルカリ金属,特にKの添加により活性と選択性が同時に向上し,高性能なPM-NOx同時除去触媒を得るにはKの添加が必須である.(3)複合金属酸化物は遷移金属単独酸化物やそれらの機械的混合物および担持白金触媒よりもNOxの還元能が高く,PM-NOx同時除去反応に対して複合金属酸化物が有効である.2.反応の速度論的検討から,NOの酸化によるNO_2の生成,NO_2の解離吸着による原子状吸着酸素の生成,PM表面での原子状吸着酸素により活性化された中間体(C^*[O])の生成,気相酸素の関与によるC^*[O]中間体濃度の増加をキ-ステップとするPM-NOx同時除去反応機構を提案した.3.ぺロブスカイト型La_<0.9>K_<0.1>CoO_3をハニカムフィルターに担持し,実排ガスから直接PMを捕集した後に,SO_2,H_2Oを含む模擬ディーゼル排ガス中でのPM-NOx同時除去特性を測定した.PM/触媒混合物を用いた基礎研究と比較して,着火温度が約100°C高くなり,またNOx還元率も低下したが,比較的良好な同時除去特性を示し,本プロセスの実用化の可能性が強く示唆された.
著者
渡邉 敏行
出版者
東京農工大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

二次の非線形光学材料を用いて効率よく第二高調波を発生させるためには位相整合条件を満たさなければならない。位相整合法にはバルクによるものと導波路を利用したものがある。非線形光学高分子はこれまで導波路を用いた位相整合法のみが研究されてきた。高分子は延伸、ポーリングにより屈折率を変化させることが可能である。その屈折率を制御することができれば任意の波長において非臨界位相整合をとることができる。本研究の目的は非線形光学高分子の各誘電主軸の屈折率制御とその屈折率制御を利用したバルク位相整合SHGの実証である。本実験で用いたポリウレアは縮重合により合成した。このポリウレアは主鎖にベンゼン環が入っており、分子鎖方向の分極率が最も大きくなると考えられる。キャスト法により作製した膜を異なる倍率で延伸した後、172℃(Tg=175℃)、8KVでコロナポーリングを行った。m-ライン法により各延伸倍率の屈折率の測定を行い、メーカ・フリンジ法により波長(1064nm)の非線形光学定数を求めた。1.7倍延伸ポーリングした膜の非線形光学定数はd_<11>=1.4、d_<13>=0.6、d_<12>=0.2pm/Vとなった。d_<13>≠d_<12>となるのは延伸、ポーリングすることにより点群mm2の対称性を持つようになるからだと考えられる。この高分子の二次の非線形特性は尿素基に由来するものである。尿素の非線形光学感受率はβ_<xzz>>β_<xyy>≒0となっており、延伸とポーリングにより膜のd_<13>に対してβ_<xzz>が有効に作用するようになりd_<13>>d_<12>になると考えられる。1.7倍延伸した試料の位相整合特性を調べた所、θ=90、φ=49.2において高分子材料では初めてバルク状態で位相整合が達成されていることが確認できた。
著者
高田 清式
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

院内感染の理解を深めることを目的に研修医における処置時の手袋着用状況と白衣の汚染状況を調査した。当大学病院での研修医に焦点をあて、感染教育により向上するかどうかを年次的に検討した。手袋着用率が平成20年度の59.6%に比べ、平成22年度は63.8%であり、白衣のMRSA汚染も平成20年度に2例検出されたが以後は検出されなかった。感染対策の実践において感染教育にて年次的に幾分の改善傾向が示されたと考える。
著者
原田 慶恵 谷 知巳 三木 俊明
出版者
(財)東京都医学研究機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

切断された神経軸索は神経成長因子(NGF)存在下で再生することが知られている。我々はこれまでに蛍光色素Cy3で標識したNGFを1分子イメージングする技術を使って、成長円錐におけるNGFの受容と成長円錐の運動反応の連関や、NGFと受容体の複合体形成に引き続く細胞内への取り込みの過程を、NGF1分子単位の精度で明らかにしてきた。そこで、本年度は神経軸索の再生過程とNGFの受容、取り込みの関係を調べる実験を開始した。ニワトリ7日胚から脊髄後根神経節を取り出し、ポリリジンコーティングしたカバーガラス上で2pMのNGFを加えて一晩培養した。神経節から多くの神経軸索が伸長する。カバーガラスで作製したガラスナイフでこの神経軸索を一気に数十本切断し、微分干渉顕微鏡で神経軸索の再生を観察した。神経軸索の再生には、NGFの添加が必須であることやRNA合成阻害剤の添加によって再生が阻害されることなどを確認した。次に微小ガラス針を使って神経軸索を一本ずつ切断し詳しく観察した。観察の結果、再生までの過程は切断後30分以内に神経軸索の切断部先端に小さな塊ができ、そこから成長円錐が再生した後に神経軸索の再生、伸長がおこっていることがわかった。神経軸索の再生には成長円錐の再生が不可欠で、成長円錐のNGFを取り込む機能が神経軸索の伸長に重要だと考えられる。このことから、再生に伴い、成長円錐のNGFを取り込む機能がどのように獲得されていくのかが今後の課題である。そこで今後の研究方針としては、蛍光標識したNGFを用いてこれらの再生過程のメカニズムを調べていく予定である。
著者
高木 興一 瀧浪 弘章 青野 正二
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究では,TTS(騒音性一過性域値変化)の予測手法の原理を取り入れて,実際の騒音により生じるTTSを計算するシステム(TTSメータ)を考案することを目的としてた。そこで,今年度は,昨年度行ったTTSの予測精度に関する検討結果を基に,TTSを実時間で予測するシステムを開発した。このシステムは,1/3オクターブバンド分析機能を備える騒音計と,汎用のパーソナルコンピュータで構成した。騒音計からは,1/3オクターブバンドレベルのサンプリング値(最小データ取得間隔200ms)をパーソナルコンピュータにシリアルデータ転送(RS-232C,最大ボーレート38400bps)する。パーソナルコンピュータのWindows上で動作するアプリケーションが,転送された1/3オクターブバンドレベルを基にTTSのテスト周波数に対応する臨界帯域スペクトルレベルを合成して求め,時々刻々変化するTTSの予測値を表示する。ここで,実時間での動作を可能とするために既存の予測手法の計算手順を検討する中で,TTSのテスト周波数に対応する臨界帯域スペクトルレベルとTTSの予測値の関係が,予測式から導出されるインパルス応答との畳み込み和の形で表せることを示した。また,高木らの予測式を用いた場合,定常音の暴露と同様の方法で適用条件を処理すると予測するTTSに時間遅れが生ずるので,それを解消するための処理方法について検討した。さらに,TTSメータを使って,いくつかの環境音によりどの程度のTTSが生じるかを測定し,TTSの観点からそれらの音を評価した。
著者
早川 邦弘 星長 清隆 日下 守 佐々木 ひと美
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

年齢60歳以上と50歳から59歳までの腎臓で高血圧の既往または脳血管死亡の群における心停止ドナーからの腎臓は、レシピエントとして30歳未満の若年者ではなく、55歳以上の高齢者か女性に移植した方が生着率や期間などが有意に優れていると結論した。
著者
藤原 晴彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

ヒトなどの高等な生物の染色体で最もメジャーな転移因子の一種LINE(非LTR型レトロトランスポゾン)の転移機構を、特定の位置にのみ転移する因子(部位特異的LINE)を用いて詳細に調べた。その結果、「LINEの蛋白質の翻訳がどのように制御されるのか」、「LINEの蛋白質とmRNAの複合体がどのように組み立てられるのか」、「その複合体がどのようにして核内の標的に近づくのか」というLINEに特有な未知の機構を解明した。
著者
三輪 錠司
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

私たちは日常幾多の有害物質に曝されている。また生体内では代謝によって活性酸素などの有害物質が必然的に生成されている。これらは解毒酵素によって無害化され体外へ排泄される。本研究の目的は有害物質が体内で無毒化されていく経路を分子レベルで解明することである。モデル動物C.elegansを使った実験の結果、XREP-1/XREP-3が無毒化に極めて重要な働きをしていることを発見した。XREP-1/XREP-3は、ヒトなどのKeap1/Nfr2と酷似しており、C.elegansでの結果はヒトにも当てはまると期待できる。
著者
藤井 光男 藤井 治枝 大西 勝明 丸山 惠也 趙 玉志 古賀 義弘 ZHAO Yu-Zhi 李 占祥 趙 亨済 李 占国 とう 必きん 加茂 紀子子 高久保 豊 劉 永鴿 柴崎 孝夫 菊地 進 大橋 英五 小林 英夫
出版者
日本大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

我々の国際学術共同研究は、日本企業のアジア進出に伴う国際分業の進展と、技術移転・労務問題との関連を調査・解明することを目指している。このため第1年度(平成8年度)ではまず韓国・中国の研究者(複数)を招請して、日本の自動車と同部品企業や浜松テクノポリスを訪ねて研究交流を図り、また他方では中国東北部長春の有力国有自動車企業、第一汽車のほか、大連経済開発区の日系三資企業を調査して、実態解明に努めた。次に第2年度(平成9年度)では、引き続いて前述第一汽車の補足調査を進める一方で、北京地域の首鋼日電など電機・電子企業や、さらに上海・蘇南地域の電機や繊維・アパレル関連日系三資企業や郷鎮企業の調査を実施した。そして第3年度(平成10年度)では、韓国蔚山地域の現代自動車や同重工業、ついでソウルの現代電子など財閥系企業の資料採訪を行い、最後に上海蘇南地域の郷鎮ビッグビジネス数社を調査して実態分析の締めくくりとした。こうして我々は冒頭に掲げた研究課題に沿い、東アジアの代表的諸産業の企業研究に関してかなり詳細な資料を収集し、実態を解明し得たと考えるので、今後は理論的・実証的検討によってこれを体系化し、研究書として刊行することを企画している。
著者
米森 敬三
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

マイクロマニピュレータを用いて、数種果樹の果実から単一細胞の液胞液を採取し、その糖含量及び組成を分析することで、果実内での糖蓄積機構をインタクトな単一細胞レベルで解析することを目的として、以下の実験を行った。1.果実の単一細胞からマイクロマニピュレータにより採取した液胞液を用いて、その糖含量と糖代謝を測定する分析法を検討した。その結果、カバーガラス上のパラフィンオイルで覆った酵素液ドロップ中で糖特異的な酵素反応を促し、生じるNADPH量を倒立顕微鏡に装着した顕微測光装置で測定することにより、ブドウ糖・果糖・ショ糖・ソルビトール含量およびインベルターゼ活性をそれぞれ高精度で測定することが可能であることが確かめられ、単一細胞中の糖含量・代謝の測定法を確立することが出来た。2.果実の単一細胞中の浸透圧調節機能を解析するため、浸透圧、無機イオン(カリウム)含量をマイクロマニピュレータにより採取した単一細胞の液胞液によって測定する方法を検討した。その結果、ピコリッターオズモメーターにより浸透圧を、X線マイクロアナライザーを装着した走査型電子顕微鏡によりカリウム含量を定量する方法を確立した。3.上記の方法により、カキ・ブドウ・モモ・ナシ・リンゴについてそれぞれの果実の1つの柔細胞における糖組成、浸透圧、カリウムイオン濃度を成熟期前後に測定し、樹種間での糖蓄積過程の差異とともに同一果実内での部位別による糖蓄積過程の差異を細胞レベルで解析した。その結果、何れの樹種でも果実全体を用いて測定した糖組成と単一細胞中の糖組成はパラレルであること、および成熟に伴う細胞の浸透圧上昇が糖含量の上昇に起因することが細胞レベルで確かめられた。また、樹種によって、果実の部位により細胞の糖組成に差異がみられる場合とそうでない場合があり、樹種によって糖蓄積機構に違いがあることが示唆された。
著者
DARRYL Macer
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

様々な職業の人を対象にしたインタビューやアンケート調査が日本で行われた。オープンコメントの分析方法が検討され、書き込み式のアンケートと、対面式のインタビューとの方法の比較が行われた。結果から、社会を構成する全ての人が、科学に関する議論に様々な見解を持って参加できることが示唆された。利益やリスク、道徳的容認度等に重点を置く人には、統計学的傾向があるように思われる。生命倫理の教科書に、どのような内容を含めるか、というプロジェクトが、研究の第二段階として開催された。これは、諸外国における生物・社会科の教師や、生命倫理の専門家との対話を基に行われる。医療倫理への関心が依然として強いように思われるが、環境問題への関心も増加しているようだ。生命倫理教育のためのチャプターが20篇執筆され、現在編集中である。チャプターには次のトピックが含まれる。チャプターが執筆され、改変、編集されるに伴い、それぞれのチャプターが異なる国々で、先生達によって試行される。2004年2月13日から16日にかけて、つくばにおいて専門家や先生方が意見を交わした。オーストラリア、中国、韓国、インド、日本、メキシコ、ネパール、ニュージーランド、フィリピン、ポーランド、そして台湾の先生方、およびコーディネーターとの意見を交換した。数名の先生が大学および高校において授業を実践した。プロジェクトの主な産物は1)生命倫理教育のための教材2)生命倫理の問題について学校および大学で使用することの出来る教科書3)異なる国々の先生同士のネットワークである。生命倫理教育の成功はいくつかの方法で量ることが出来る。1)生命の尊重が増加2)科学と技術の利益とリスクのバランスを取る3)異なる人々の多様性をより良く理解する。これら全てを達成しなければ成功したと呼べないわけではない。また、教師によって、重きを置くゴールが異なってくるであろう。
著者
立木 美保
出版者
独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

エチレンは果実の成熟・老化を促進させるため、果実の鮮度を保持するためには、その作用を抑制させる必要がある。1-MCPはエチレン受容体に作用する強力なエチレン作用阻害剤であるが、その効力が樹種によって異なることが報告されており、本剤によるエチレン作用阻害機構について分子レベルでの解明が求められている。昨年度の研究結果より、1-MCP効果による鮮度保持効果が高いリンゴ果実では、1-MCP処理後エチレン情報伝達系を負に制御しているエチレン受容体が蓄積していることが明らかとなった。そこで、今年度は1-MCPの効果が低いモモ果実を用いて解析した。1-MCP処理したモモ‘あかつき'の果肉硬度は、収穫3日後まではやや高い傾向を示したが、5日後には無処理区と同じレベルに低下した。また、エチレン生成量は、1-MCP処理した果実において処理2日後に一過的な増加を示したことから、処理後1〜3日までは、硬度、エチレン生成量とも1-MCPの影響を受けていると推測された。従って、モモにおける1-MCP効果が低い原因として、エチレン受容体と1-MCPの親和性が低いという理由は当てはまらないと考えられた。モモよりエチレン受容体遺伝子Pp-ETR1およびPp-ERS1を単離し、1-MCP処理した収穫後果実における発現様式を解析したところ、無処理区および1-MCP処理区においてPp-ETR1及び年Pp-ERS1の発現量は大きな変化を示さなかったことから、エチレン受容体の発現制御において、モモではリンゴほどエチレンの影響を受けないと推測された。1-MCP処理期のエチレン生成量が、1-MCP効果に影響を及ぼす可能性が考えられたが、リンゴ果実では収穫直後ならばエチレン生成量が多い場合でも、1-MCPの効果は高いことが明らかとなった。
著者
土田 健次郎 SEONG Hyun Chang SEONG HyunChang
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

朱子学とは言うまでもなく、南宋の朱熹(朱子)の思想であるが、これは朱熹個人を超えて、朱子学という教学として圧倒的な権威を東アジア近世で持った。また東アジアの近代化がこの朱子学を抜きにして語れないのも周知の通りである。中国に誕生し、広く東アジアに展開した朱子学に関しては、膨大な研究の蓄積がある。それも、朱熹自体、中国朱子学、朝鮮朱子学、日本朱子学、ベトナム朱子学の研究というように、国を超え時代を超えた研究群である。本研究は、この膨大な研究を収集し整理し、さらにその成果を研究者に便宜を提供することを目的としている。朱子学の研究には、中国語、韓国語、日本語、英語、ドイツ語のものなど各国語のものがあるが、今回は、中国語、韓国語、日本語のものを収集し、整理した。その一端は、「韓国と日本における朱子学の研究史的発展のための予備的考察-日本における朱子学研究の動向を手掛りとして」(韓国語)(『東洋哲学研究』45)、「韓国における朝鮮儒学研究の課題-「朱子学的心学」をめぐって-付・朱子学研究文献目録(韓国篇)」(日本語)(『近世儒学研究の方法と課題』)、「韓国における朱子学研究の動向-二〇〇〇年から二〇〇五年六月まで-」(日本語)(『東洋の思想と宗教』23)、という形で公表した。これらは韓国語で書かれた中国朱子学と朝鮮朱子学に関する研究史的整理が中心であるが、将来は中国語と日本語の朱子学研究も整理して公表する予定である。特に今回は、研究文献のデータベース化の作業を遂行した。これは各研究論文、研究書、資料の、著者、表題、掲載誌、巻号頁、発行所、発行年月、キーワードなどを採録し、そのいずれからも引けるものである。現在まだ作業の途中であるが、今までの分だけでもかなりの蓄積になっている。特にキーワードは、一定の基準を定め統一的に採ったものであって、将来完成したあかつきには、朱子学研究の膨大な資産が多方面から検索できることになろう。
著者
荒 このみ
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

アメリカ合衆国の宗教組織「ネイション・オブ・イスラム」の前史から今日に至る<イスラーム>の文化表象を調査・研究し、その主要人物マルコムXについての考察を深めた。その成果を部分的にはすでに紀要論文に発表しているが、総まとめとしての研究成果は、単行本として発表することになっており、今年中に刊行予定である。
著者
長田 俊樹 高橋 慶治
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1998

インド東部のムンダ語族やチベット・ビルマ語族の文献収集のために、まず最初に文献収集リストを作成する必要がある。そこで、従来ある文献目録を使用して、コンピューターに打ち込むことからはじめた。具体的には、Franklin E.Huffman.Bibliography and Index of Mainland Southeast Asian Languages and Linguistics.Yale University Press.1986.を使用した。打ち込みに必要なコンピューターは長田用と高橋用の二台購入する予定であったが、高橋は研究室にある、設置済みのコンピューターで、対応することになった。現在、長田はムンダ語族の文献目録を作り、高橋はチベット・ビルマ語族の文献目録を別個に作成中である。なお、打ち込みのさいには研究協力者に打ち込んでもらっている。打ち込みの際には、トピック(または、キーワード)、著者、書名(または論文名)、出版年、出版社名などを項目別に打ち込み、文献目録が完成したあかつきにはそれぞれの項目別の索引を作るための便宜をはかった。そのため、所期の計画よりも打ち込みに若干時間がかかった。一方、長田は別の科研でインドへ行く機会があったので、その際文献の収集を行った。とりわけ、ムンダ諸語で書かれた出版物を中心に収集を行った結果、かなりの数購入することができた。こちらについては来年度に文献目録に順次追加していく予定である。初年度については、順調に研究は経過しており、本年度の研究計画についてはほぼ達成できたと考えている。
著者
朝倉 政典
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

代数的サイクルと混合モチーフについて研究している。混合モチーフは数論的代数幾何学における壮大な構想であり、理論として確立されたあかつきには、代数幾何学のみならず整数論へも数多くの深い応用をもつことが期待されている重要な分野である。しかし多くの優れた研究者の努力にも関わらず、混合モチーフはいまだ定義すらない極めて研究の困難な分野でもある。私は特に複素数体上の混合モチーフの理論を確立することを目的として研究してきた。これまでに、数論的ホッジ構造という概念を導入し、代数曲面上の0-サイクルや、代数曲線のK群についてのブロック予想について研究してきた。本年度の研究では、代数曲線のK群に関して新しい方向へ踏み出していった。より詳しく説明すると、これまで研究によって代数曲線のK群の研究にはベイリンソン・ホッジ予想が鍵となることが分かっているが、その予想を管状近傍型多様体に対して一般化することを試み、肯定的な結果を得ることができた。但し、予想そのものは未だ解決されておらず今後の研究の進展が待たれる。更にこの研究から派生する問題として、クレメンス・シュミット完全列に関する研究結果を得た。これは既に投稿済みであり掲載が決まっている。