著者
小林 優
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ホウ素は植物の生育に不可欠の元素であり、欠乏すると組織の壊死や不稔など多様な生理障害が発生する。しかしホウ素が不足することでそれら障害が発生するメカニズムは明らかでない。このメカニズムを解明するため、植物の培地からホウ素を除去したときに生じる応答を詳細に解析した。その結果ホウ素が欠乏すると細胞に活性酸素が蓄積し、それが原因で細胞死に至ることが明らかとなった。また植物細胞は培地からのホウ素消失を直ちに感知することも明らかとなった。
著者
植松 茂男 里井 久輝
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では小学校英語活動の開始年齢が、中学校における英語学習や情意面での発達にどのような影響を与えるかを調査した。2007学年度から2009学年度に得られたデータの分析によると、小学校英語活動の開始年齢が下がり、履修時間が増加すると、中1の英語力テスト成績がリスニングを中心に全体的に向上し、さらに中2のみで実施したスピーキングテストスコアも毎年大幅に向上した。しかしながら、情意面への影響はほとんど検出できなかった。
著者
筒井 義郎 大竹 文雄 藤田 一郎 晝間 文彦 高橋 泰城
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

時間割引は多くの経済実験において、少額を早く受け取るオプションと多額を遅く受け取るオプションのどちらを選択するか、というタスクで測定される。本研究課題は、(1)遅れ(現在から最初のオプションまでの時間)と期間(2つのオプションの間の時間)を明示的に分離して、それぞれが時間割引に与える効果を特定する、(2)喫煙が時間割引に対してもたらす効果について明らかにする、という2つの課題を主たる目的とする。(1)については、これまでに行った実験の結果を論文にまとめ、本年度6月にJournal of Risk and Uncertaintyに掲載した。(2)については、昨年度早稲田大学で行った、非喫煙者と喫煙者、断煙者と非断煙者を比較する実験の結果を分析した。その結果、喫煙者は非喫煙者に比べて高い時間割引を示すことが明らかにされた。また、断煙者は非断煙者よりも、お金に対しては高い割引率を示すが、タバコについては、むしろ忍耐強くなるという結果を得た。この後者の結果の頑健性については疑問があり、詳細な実験条件設定に問題がある可能性を検討して、それらを改良した実験を本年1月と2月に大阪大学において実施した。その結果は現在解析中であるが、おおむね、喫煙者は非喫煙者に比べて高い時間割引を示す点にでは早稲田実験と同じである。断煙者と非断煙者を比べると、お金については両者の時間割引には差がなく、タバコについては、断煙者の方がよりせっかちになるという結果が得られた。今年度の実験結果の方が直観に整合的であるが、両方の結果をどのようにまとめていくかは検討中である。一方、fMRI実験については、早稲田大学健康科学部の正木教授の協力が得られ、本年2月と3月に、異時点間選択を行っている喫煙者の脳画像を撮像した。引き続き、行動実験の結果をまとめつつ、断煙者および非喫煙者についても撮像していく。
著者
澤田 むつ代 高橋 裕次 丸山 士郎 浅見 龍介 西山 厚
出版者
独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

東京国立博物館が所蔵する「正倉院頒布裂」を中心に、正倉院関係の「裂帖」、模写と模織、さらに正倉院関連資料について、研究成果報告書を制作した。これには各作品の名称、素材、技法、用途等の基本情報に加え、織物では文丈、〓間幅を、染物にあっては文様一単位の寸法も付して作品本体を立体的、かつ詳細に掲示した。各作品については、染織品の微妙な色合いを重視して、カラーで掲載した。これらの公開は今後の正倉院裂研究には欠かせぬものとなる。
著者
三吉 一光
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

市販の4倍体コチョウラン品種3点ならびに2倍体品種5個体を供試して、半数体を誘導する条件の検討を行った。コチョウランでは体細胞多倍数性(polysomaty)が観察されるので、倍数性の検定は根端約1mmの若い組織を用いた。4倍体から偽受精胚珠培養によって得られた幼植物体の半数近くが2倍性半数体であり、染色体の半減が認められた。2倍体を供試した場合、得られた個体の殆んどが2倍体であったが、コチョウランにおいて初めて人為的に誘導した半数体を一個体獲得した。
著者
谷口 円香
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究は、ランボーの詩がもつ強いイメージ喚起力に焦点をあて、詩表現そのものに内在する絵画性を文体論および記号論的アプローチから解明することを目的とする。詩的言語の働き方と絵画の表現構造の共鳴を探り、19世紀後半から20世紀初頭にかけての詩と絵画の関係の変遷という広い視野から、ランボー詩の言語記号の自律が絵画の分野での線と色彩という記号の働き方の刷新に先行し、影響を与えているという領域横断的な考察を提示する意義を持つ。本年度はまず、ランボーのイメージ造形が、昨年度考察したロマン主義的ピトレスク詩、および高踏派の詩の絵画的イメージ造形とどう違うのか分析した。その結果、それら先行詩人の手法を学んだ上でその主観性を批判し、当時の政治戯画といった同時代の視覚イメージの暗喩に満ちた表象の2層構造を意味伝達のレベルにおいて抽出し、手法に取り込むことで、語る自己を巧みに隠し、意味伝達記号として自律した言語表現が喚起するイメージが浮き上がる表現構造が構築され、それが詩的イメージの視覚性を強め、ランボー詩に内在する絵画性を形成していることが明らかになった。ついで、ランボー詩における言葉という記号の革新的使用方法がどの程度後世に認識されていたのか、詩人のみならず画家にも具体的な影響が見られるかを検討した。既に先行研究のある19世紀末の象徴主義の再評価を確認した上で、20世紀初頭の受容に注目し、キュビスムの画家、ロジェ・ド・ラ・フレネが詩人コクトーを通してランボーの詩を知り、『イリュミナシオン』に挿絵をつける予定で制作した版画の存在に着目した。画家のカタログ・レゾネにも載っていない、フランス国立図書館に所蔵されている貴重なリトグラフを参照し、キュビスムと抽象の間で揺れる画家の創作上の進化の過程でランボー詩に対する考察が大きな意味を持っていたことを見出した。その成果をカナダの学会にて発表した。
著者
恵多谷 雅弘 下田 陽久 坂田 俊文
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

砂漠下に埋もれたエジプト王朝時代遺跡を対象として、乾燥した砂漠地域における遺跡探査での衛星SARの有効性の検証を行った。具体的には、JERS-1とSIR-CのLバンドHH偏波のSARによりその存在が確認されているサッカラ(Saqqara)の未発掘遺跡SiteNo.29およびSiteNo.39をテストサイトとして、入射角、観測方向の異なるALOS/PALSAR(LバンドHH偏波)画像から、両遺跡の検出におけるSARの観測パラメータの影響を検討した。また、PALSARの観測日と連動し、テストサイト地点を主体に土壌水分率を計測することで、地表の誘電的性質がSARの後方散乱係数に与える影響を調査した。その結果、オフナディア角35度のJERS-1/SARで発見されたSiteNo.29に関しては、上昇軌道(Ascending)、2偏波(HH/HV)、オフナディア角34.3度の観測モードで撮影されたPALSARで同定できる可能性が認められた。大入射角(オフナディア角61.5度)のSIR-Cで発見されたSiteNo.39に関しては、オフナディア角50.8度のPALSARで検出を試みたが、PALSARのセンサ特性に起因する問題から、同遺跡発見における入射角の影響については結論に至っていない。その一方で、SARの観測方向が両遺跡発見に影響している可能性は少ないとの結論が得られた。SARの後方散乱係数と土壌水分率の関係に関しては、PALSARの観測画像と同観測日に計測した土壌水分率データを比較検討した。計測された土壌水分率は最大で8.3%、最低は0.0%であり、SiteNo.29、SiteNo.39地点における後方散乱係数と地表の土壌水分率の間に特徴的な関係は見られなかったことから、両遺跡発見において地表の土壌水分率が影響した可能性は少ないと考えられ、この見解は2時期のJERS-1/SARの比較検討結果とも一致していた。
著者
永野 真理子
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

全身疾患を有する患者に対して,緩和精神安定材を用いる静脈内鎮静法は有効であるが,薬剤静脈内投与の場合,過量投与や覚醒遅延などの問題が生ずることがある.最近では,緩和精神安定剤の拮抗薬フルマゼニルが市販されるようになった.これを有効に利用することは,静脈内鎮静法のリスクを低くするばかりではなく,患者の帰宅可能時間の短縮,帰宅時のさまざまな問題の解決にもつながる.フルマゼニルについては多くの研究があるが,実際の応用方法は,歯科麻酔領域での基準確立には未だ至っていない.また,フルマゼニルの副作用として,頭痛,興奮などの精神神経症状や血圧上昇,頻脈などの循環器系症状が知られている.本研究では,静脈内鎮静法をより安全に行なうためのフルマゼニル投与法の確立を目的とし,今回は虚血性心疾患を有する患者に対するフルマゼニルの投与を行なって投与後の循環器系副作用について検索した.虚血性心疾患を有する患者のうちミダゾラム(ドルミカム^<(8)>)による静脈内鎮静法を行う患者のうち,本研究に対しての充分な理解と承諾を得られた症例を対象とした.ドルミカム^<(8)>による静脈内鎮静法下治療終了後フルマゼニル(アニキセート^<(8)>)0.5mgを静脈内投与した.術中および術後2時間は,BP,ECGなどをモニタリングし,バイタルサインを記録,帰宅許可時にホルターECGを装着し,術後24時間のECG変化を記録した.なお,帰宅許可にあたっては,平衡機能計(1G06SP)を用いた重心動揺を測定、平衡機能回復をもって帰宅許可した.以上より,虚血性心疾患患者に対するフルマゼニル(アネキセート^<(8)>)0.5mg静脈内投与は,術後24時間心電図上では影響を及ぼさなかった.虚血性心疾患患者に対するフルマゼニル使用は,術後平衡機能回復時間を短縮させ帰宅時間を早くするのみならず,安全に使用できると考えられた.今後は,症例数を増やし,安全な投与方法についてさらに多方向から研究する予定である.
著者
石村 宇佐一
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究は大別して二つになる。A. トランポリン選手における心理的スキルトレーニングの縦断的検討。トランポリン選手に対する長期間のメンタルトレーニングの効果を明らかにする目的で、全日本選手権9連覇しているFuru Akiko選手を対象に、心理的スキルについて検討した。その結果は以下のとおりであった。1. 心理的スキルトレーニングの一つである目標設定の成果は、自己動機づけのレベルも高まり、自分の目標と練習すべきか活動がより明確になった。2. 六年間に渡る三つの心理検査(PPI,DIPCA2,POMS)は、自己の心理的スキルの効果やオーバートレーニングの状態を把握することができた。さらに、自分の進歩に関する情報の活用と自己認識を見直し、継続的改良に取り組むことが認められた。B. バスケットポール選手におけるFoulshot時とイメージ想起時の脳波活動の検討。本研究の目的は、金沢大学女子バスケットボール選手を対象に、バスケットボールのFoulshot時とイメージ想起時の脳波活動を脳波含有量から検討することであった。Foulshot時とイメージ想起時の脳波を頭頂部(C3,C4)後頭部(O1,O2)において、α1、α2、α3,β波の4帯域に関して測定した。同様に、安静時の脳波含有量も測定した。結果を要約すると以下のとおりである。1. バスケットボールのFoulshot時の脳波はイメージ想起時及び、安静時と比較して、頭頂部、後頭部すべての部位でβ波に有意な増加が認められた。2. イメージ想起時の脳波は、安静時と比較して後頭部位においてα2が常に有意な増加を示し、α-blockingは認められなかった。
著者
植田 晃次
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

2005年度には、報告書(1)『朝鮮語教育史人物情報資料集』を研究代表者および3名の研究協力者が分担執筆して作成した。本資料集は、19世紀末から21世紀初の日本において、朝鮮語教育・学習に関わった人物に焦点をあて、各種データを採録したものである。具体的には、様々な教育機関の卒業生(在学生)、外務省・文部省・熊本県による留学生、朝鮮語奨励試験等の試験合格者、朝鮮総督府の『朝鮮語辞典』・「諺文綴字法」に関与した人々、NHKの朝鮮語講座の講師等にっいての各種データを収録した。また、巻末には1880年から1945年に至る時期に刊行された、朝鮮語学習書の目録も収めた。2006年度には、前年度の研究成果を踏まえつつ研究を進め、研究成果報告書『日本近現代朝鮮語教育史』を研究代表者および3名の研究協力者とともに編纂した。ここでは、日朝関係に大きな関わりを持つ近代以降の日本人への朝鮮語教育を取り上げ、「教育機関等における朝鮮語教育」、「朝鮮語の講習と試験の制度」、「朝鮮語の研究・教育・通訳に携わった人々」、「朝鮮語の学習書・辞書と規範」、「朝鮮語を考える」の5つの側面(44項目)から考察・総合し、その全体像を実証的に解明した。また、2006年度韓国社会言語学会・国立国語院共同国際学術大会で、各自が研究発表を行った。さらに、各年度に研究代表者・研究協力者が、それぞれ個別の論文等を発表した。この他、本研究の成果発表のひとつとして、以下のウェブサイトを開設した。http://wwwl.doshisha.ac.jp/~tmitsui/collaborating_research/seika.html
著者
河合 渓 西村 知 小針 統
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

人と自然の関係を解明するため海洋生物学、海洋学、経済学という異なる視点から解明を進め、各成果を金銭化することで各研究を有機的に融合する学融的研究の試みを行った。3年間の調査において西村知は経済社会学的視点を持ち調査を行った。西村知は主にキャッサバを通して農村社会システムを捉えると共に、地域社会を住民参加型プロジェクトと比較しその社会システムを捉えた。一方、小針統、河合渓は理系的視点を持ち調査を行った。小針統は環境条件とプランクトンと魚類相を、河合渓は貝類の調査と総括を主に行った。この調査の3年間の結果は3回の学会発表と4編の学術論文としてすでに発表し、現在いくつかの項目については論文の準備中である。また、調査開始時から情報公開としてホームページを立ち上げその成果を公開した(http://cpi.kagoshima-u.ac.jp/project-fiji.html)。これらすべての成果は平成20年2月3日にシンポジウムという形で報告会を行った。本プロジェクトは南太平洋大学とフィジー水産研究所をとおして地元地域社会へと還元を行っており、大きな社会貢献ができつつあると考えられる。
著者
高橋 学 渡部 祐司 岡部 永年 野村 信福 堤 三佳
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

切離手術時間を短縮するための切離技術の一つとして,肝臓ガン局部凍結技術の開発を目的として,(1)将来肝臓の冷凍技術として提案している音波を用いた熱音響冷凍技術の開発,(2)冷却切離抵抗の研究および(3)肝臓冷凍針の開発と冷却特性の3つの実験が実施された.熱音響冷凍では汎用スピーカー(最大出力70W)を駆動源として使用した簡易型音響冷却装置を用いて冷却実験を実施した.内径26mm,長さ1500mm(約1/4波長)の真鍮円管を共振管とし,スタックには内径1mmの絶縁管を100本束ねたものを用い,作動流体に空気およびヘリウムガスを用いて常温常圧下で冷却実験を行った.その結果ヘリウムでは空気の場合の約3倍増の冷却効果が得られた.また,スタック表面積,内部圧力,および振動振幅は冷却効果に強い影響を与え,本実験で用いた簡易型装置でも,1mm^3程度の肝細胞であれば冷凍することが可能となる.冷却切離抵抗の実験では,ロボットによる肝臓の切離を行う際,正常な部位まで損傷させることは望ましくなく,正確な切離開始位置の決定が求められる.また,切離中に加わる抵抗が小さい程,滑らかな切離動作が実現でき,さらに刃物の損傷を防ぐことが可能である.視覚情報を用いた正確な切離開始位置の決定,及び,力覚情報により切離抵抗を低減するロボットシステムを提案する.視覚情報を用いた切離開始位置の決定手法では,肝臓の色の変化と温度の関係から,半冷凍部分(-1〜-3℃)の決定を行っている.また,力覚情報を用いた切離動作においては,インピーダンス制御を用いることで刃物の側面方向からの加重を低減し,目標とする切離抵抗による切離動作を実現している.肝臓の冷却特性および物性値を調べるため,豚の肝臓を用いた.血流を模擬して肝臓内に生理水を流し,その際の血管寸法の相違による熱伝導率の変化を実験データから逆解析することにより明らかにした.また,冷却温度,時間,冷却針からの位置をパラメータとした実験式を導出し,冷却予測が可能となった.
著者
阿部 隆 石澤 孝
出版者
宮城学院女子大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

名古屋市の都心ならびに都心周辺地域の既知利用の分布について、全市域的に修正ウィーバー法による土地利用の組合せの分析を行なって都心地域を画定し、画定された地域については、その中の建物の用途と階数を悉皆調査した。そして建物階数の分布や街区を代表する建物用途の分布の分析などを総合すると、名古屋市の都心ならびに都心周辺地域の土地利用の分布構造とその変化は、一部の用途に特化した核心地域と、それらの用途の周辺への拡大ならびにそれらの用途との機能的関係にもとづく土地利用変化によってもたらされていると考えられる。その用途による核心地域とは名古屋市の場合には、次の5種類が考えられる。1、シビックセンター(三の丸地区)、2、ビジネスセンター(名駅、錦、栄地区)、3、コマーシャルセンター(名駅、栄地区)、4、エンターテインメントセンター(錦、栄地区)、5、トランジットセンター(椿、金山、今池地区)次に近年の都心地域の土地利用の分布ならびにその混合構造の変化について建物用途現況図を資料として分析した。混合構造分析の結果は、ほとんどの用途の組合せにおいて、有意な混合・分離関係が認められず、名古屋市の都心地域の土地利用の分布が非常にランダムであることが明らかとなった。しかし、1967年と1986年には娯楽と教育との間に、1976年には官公庁と教育との間に弱い分離関係がみとめられた。また1986年には工業と工業的サービス、1986年には工業ならびに工業的サービスと公園との間に弱い結合関係が認められた。カナダのトロント市の中心地域の土地利用分布についても混合構造分析を適用した結果、住居を中心とする居住系の土地利用グループと工業を中心とする生産系の土地利用グループについて、グループ内の強い混合関係とグループ間の分離関係が明らかとなった。
著者
小原 春雄 大石 幹雄 洞口 正之 丸岡 伸 本間 経康
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

通常使用している診断用X線装置のX線管は、熱電子放出を利用した熱陰極X線管であるのに対し、試作したX線管は電子の電界放出を利用した冷陰極X線管(フラッシュX線管)である。高エネルギー放電によるフラッシュX線装置は、直流高電圧発生装置、高容量コンデンサ、フラッシュX線管、エアーギャップスイッチ、トリガ発生装置、高真空排気装置で構成され、フラッシュX線管は陽極、陰極、トリガ電極で構成される。このフラッシュX線管のもとで発生するフラッシュX線装置の諸特性は、電極(陽極、陰極)の材質、陽極-陰極間距離、陰極-トリガ電極間距離、真空度の四つの因子により異なる。電極の材質の検討では、セリウム(Ce:原子番号58)、イッテルビウム(Yb:70)、タングステン(W:74)で検討したが、充電電圧90kV、真空度(6.65×10^<-3>Pa)の条件のもとで、Wが他と比較し1.3倍のX線強度が得られた。X線出力の測定は応答の速い液体シンチレータ(応答時間:10^<-9>sec)で検出し、デジタル・オシロスコープで測定し、波形解析を行った。充電電圧90kVの放電時のX線曝射時間はパルス幅10%で1μsec.以下となり、管電流は4×10^4A(瞬間大電流)であった。フラッシュX線管の焦点の大きさは、ピンホールカメラを用い焦点測定を行った。電極間距離を小さくすることで小焦点の傾向にあったが、電極間距離0,9cmで最小の焦点となり、2.0×2.3mmの大きさを得た。模擬被写体(メトロノーム、タングステンワイヤの振り子、コップに落下する造影剤、プラスチック弾の物体への衝突)の撮影では、完全静止画像の確保を可能とし、高鮮鋭度の画像が得られた。模擬被写体を通して得られた結果から、試作した本装置を用いることで、新生児・小児撮影および高齢化に伴う老人、脳卒中・脊髄損傷者を含む機能障害・能力障害等の動作停止不可能な被験者の撮影では完全静止画像の確保が可能となることを確証した。
著者
井上 勝夫 福島 寛和 冨田 隆太 橋本 修 吉村 純一
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は,集合住宅を対象として,以下に示す4項目について検討を行ったものである。(1)住宅購入予定者が住宅に要求する性能の調査(2)住宅広告に記載されている住宅性能項目と内容に関する調査(3)住宅販売に携わる営業担当者の住宅性能に関する知識及び説明方法に関する調査(4)消費者が理解し易い音環境性能(遮音性能)の表現方法に関する検討その結果,(1)については,1都3県の23物件,315人を対象とし、直接面接方式による調査を行なったところ,1位:音環境性能,2位:光環境性能,3位:耐震性能の結果を得,音環境性能に関する要求が最も高いことが判った。(2)については,732枚の集合住宅に関する広告を調査した結果,住宅性能に関する記載は全ての広告においてあるが,その記述方法・内容は定性的または建築仕様による表現が多く,性能を定量的かつ具体的に消費者が捕らえることができない状況にあることが判った。(3)については,マンション販売に携わる営業担当者の住宅性能に関する知識はかなり低く,消費者が彼らの説明によって性能を理解するのは難しい状況にあることが判った。よって,今後,営業担当者に対して住宅性能に関する徹底した教育を行う必要性を示した。(4)については,集合住宅の居住者に対し,遮音性能に関するアンケート調査結果(311票)から,遮音性能を消費者が理解しやすい生活実感として表現する方法・内容を検討し,その具体的内容を提案した。
著者
菊地 泰二 野島 哲 田中 雅生
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1988

岩礁潮間帯では、高潮帯に生息する小型蔓脚類イワフジツボについて個体群生態を研究し、異なる潮位にすむ分集団間では繁殖特性と個体群の人口学的諸過程に顕著な差を見出した。全繁殖量(幼生放出量)と幼生の定着加入量を各分集団別に推定し、全地域個体群に対するそれぞれの繁殖貢献度を推定し、個体群維持機構について検討した。大型、長寿命のクロフジツボ、カメノテについても生活史特性、個体群動態の研究を継続中である。一方強力なグレイザ-であるヒザラガイは活撥な摂餌活動によりフジツボ等の固着動物等を死亡させ群集組成にも影響を与える。野外における囲い込み、排除実験により種間相互作用の内容と強度について評価した。転居地の植食性貝類のギルドについても、各種の空間分布、食物利用について研究を続けている。海藻上に生息する端脚目甲殻類ワレカラについては、付着基質である海藻現在量の著しい季節変動に対応したワレカラ類の個体群維持を研究した。殊に海藻流出季における葉上動物の行動的反応、流れ藻上の種構成の変化、個体群の運命について人工流れ藻を作って実験し、流失時の行動に種特異的な差があるとを確かめた。またふ化した幼体を保育する習性をもつワレカラ数種を発見し、繁殖諸特性との関連について考察した。分布北限に近い九州沿岸における造礁サンゴ群集の研究では、周年の潜水調査により種類相と生態分布の実態についてほぼ明らかにすることができた。有性繁殖の可能性については野外及び飼育観察によって13種2変種について有性生殖を確認し、繁殖季、生殖活動の太陰周期との関連について検討した。幼生の定着加入、サンゴの種内・種間の群体間の相互作用、サンゴと他生物との相互関係についてもある程度の知見を得たが今後もひき続き研究を行う必要がある。
著者
石田 祐三郎 田中 克 坂口 守彦 吉永 郁生 左子 芳彦 内田 有恒 深見 公雄
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1988

有用魚類の稚仔魚の成育、変態、着定などの生理およびそれらを促進する細菌および微細藻の生理活性物質を究明し、さらにそれら有用因子の遺伝子導入技術を応用し、魚類生産に貢献するとともに、魚類生理態学や水産微生物学の発展に資することを目的とした。得られた成果は下記の通り。1.ヒラメの変態期には、胃や幽門垂の分化・甲状腺の顕著な増加・胸腺組織の成熟など消化系・内分泌系・リンパ系諸器官に顕著な変化が観察された。変態後期コルチゾルの濃度上昇に続いて甲状腺ホルモン(T_4)濃度が著しく上昇した。これらの器官の発達やホルモンレベルには顕著な水温依存性が確認された。以上の知見より、ヒラメの変態期には多くの器官の分化や体の仕組みの変化とホルモンレベルの一過性の急上昇が集中して生じることが明らかとなった。2.ヒラメ稚仔魚の着定を促進する微生物をPVAに固定して探索し、微細藻としてChattonella antiquaを、細菌としてAcinetobacter sp.SS6ー2株を得た。それぞれを分画し、着定促進が認められたのは、C.antiquaのエタノ-ル不溶画分とSS6ー2株のアセトン不溶性画分であった。3.稚魚の摂餌誘引や成長促進をする微細藻の探索を行い、渦鞭毛藻類、とりわけCrypthecodinium cohniiが有効であり、その成分がジメチル・スルフォプロピオン酸(DMSP)であることを見出した。DMSPはメチオニンから脱炭酸酵素によりメチルチオプロピオン酸(MTP)を経て生合成されることを明らかにし、現在本酵素の精製を行っている。4.C.cohniiに、PEG法によってカナマイシンの耐性遺伝子とGUS遺伝子をもつプラスミドpUC19の導入を試み、耐性株にGUS活性の上昇がみられた。5.緑藻アナアオサのプロトプラストを調整し、それを再生し、葉状体形成型と仮根葉状体形成型の2タイプを得た。それらプロトプラストに遺伝子導入を試みているがまだ成功していない。
著者
鈴木 亮平
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

平成21年度は,当初の研究実施計画を拡張し,ノードのリアルタイム性を意識した転送ノードのスケジューリング手法(RT-Pipe)とシンクノードから任意の地点へのpipelineの構築手法(BS-Pipe)を提案した.上記提案手法の概要を以下に述べる.1.RT-Pipe:センサデータ送信元ノードとシンクノードとの間でデータ配送を行う配送ノードの往復時間と,ノードの加減速にかかる消費電力を考慮し,送信元ノードのストレージオーバフローによるデータロスを最小にする中で、消費電力を最小とする配送ノードのスケジューリング手法を提案し,平成20年度に提案したセッションプロトコルへの拡張を行った.2.BS-Pipe:平成20年度提案したセッションプロトコルは要求される転送レートが比較的大きいデータを送信する場合を想定しており,温度のモニタリング等,転送レートの小さいデータを送信するノードが比較的多い環境では,有効とは言えなかった,そのためBS-Pipeでは,シンクノードから事前に決定し地点への経路上に配送ノードを並べたpipelineを複数構築することで,領域全体に広がるセンサノードのデータ配送効率を向上させる提案を行った.ここで,BS-Pipeでは,利用可能な配送ノードの数と領域の広さ等のパラメータを元に最適なpipelineの長さ,また数を決定するアルゴリズムを提案した.また,平成21年度は,RT-Pipe,BS-Pipeに平成20年度に提案したセッション管理における経路統合アルゴリズムを加えた統合シミュレーションを行い,評価と議論を行った.さらに平成21年度は,SunSpotを基盤としたプロトタイプロボット7台の作成により、実験環境の構築と簡易実験を行った.
著者
高橋 篤司
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

性能とともに信頼性を従来よりも格段に向上させた集積回路を設計,製造するための設計方法論を確立することを目的とし,回路の遅延分布をできる限り精度を保ちつつ,より高速に得るための遅延分布見積もり手法を開発するとともに,遅延エラー検出回復方式に基づき様々な回路の可変レイテンシ化した場合の性能および性能向上率などを評価することで,高性能高信頼性集積回路を効率良く実現するための指針を得た.
著者
桧垣 博章
出版者
東京電機大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

移動無線ノードが疎に分布する無線ネットワークでは, エンドエンドの接続を維持した無線マルチホップ通信を行なうことは困難である. しかし, 車載コンピュータを無線ノードとする ITS ネットワーク等の多くのアプリケーション環境では, ノード密度が必ずしも高くないこと, ノード分布が経時変化する場合には偏在することがしばしばであることから, 耐遅延ネットワーク(DTN)通信手法の導入が必要となる. しかし, 各中継移動無線ノードが隣接ノードを持つ機会が少ないために全域的な状況把握は困難であり, 適切なルーティングの実現が求められる. 本研究課題では, 各無線ノードの変更可能な移動計画を隣接無線ノード間で局所的に交換することによる広告手法の導入による高性能 DTN 通信を実現した. また, これを活用した ITS 支援, 広域被災地における安否情報交換, 快適な歩行支援といったアプリケーションへの応用を行なった.