著者
安達 祥子 笠井 陽介 熊野 七絵
出版者
国際交流基金
雑誌
国際交流基金日本語教育紀要 = The Japan Foundation Japanese-Language Education Bulletin (ISSN:24359750)
巻号頁・発行日
no.19, pp.15-30, 2023-03

「いろどり日本語オンラインコース」は、教材『いろどり生活の日本語』をオンラインコース化したもので、様々な制約により日本語学習の機会が得られない学習者が自学自習できるコースである。開発のコンセプトは、①生活場面で必要な日本語が学べる、②学習者が必要なところだけカスタマイズして学べる、③ストレスなく学べるの3点とし、これらを実現するため、動画や練習コンテンツの制作などを行った。また、コースサイトやページを、だれでも迷わず使えるようにデザインした。コンセプトが実現できているか確認するため分析を行ったところ、ユーザー属性から、想定していたユーザー層が利用していること、ユーザーの行動フロー分析やユーザーアンケートの回答から、それぞれのコンテンツがねらい通りに利用されていることが確認できた。また、ページの閲覧回数やアプリのインストール数から、動画や練習コンテンツのアプリが活用されていることもわかった。
著者
半田 康 吉岡 英治 佐々木 成子 岸 玲子
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

食肉中のエストロゲン濃度について、日本産とフィリピン産、アメリカ産の牛肉、鶏肉を対象として国別に比較を行った。エストラジオール濃度、エストロン濃度ともに牛肉ではアメリカ産、フィリピン産、日本産の順に高濃度で、鶏肉ではアメリカ産、日本産、フィリピン産の順に最も高濃度だった。フィリピン産牛肉の脂肪部位のエスラジオール濃度は日本産よりも8倍高濃度で、日本産鶏肉の脂肪部位のエストロン濃度はフィリピン産の鶏肉よりも12倍高濃度だった。これらの違いは外的に投与されたホルモン剤の残留によると考えられた。ヒトの脂肪組織中エストロゲン濃度の比較は日本とフィリピンの2カ国で行った。閉経後女性の皮下脂肪中のエストロン濃度、エストラジオール濃度は、フィリピン人女性(n=6)が日本人女性(n=15)よりも高濃度であった。食事頻度調査においては、日本、フィリピンの2国間で食肉摂取の違いが見られた。このヒトの皮下脂肪中エストロゲン濃度の違いは、食肉中エストロゲン濃度、食事頻度調査のみからは説明が困難で、症例数が少ないためBMIの違いを補正できないことに起因する可能性を否定できなかった。本研究では、ホルモン剤使用食肉の摂取とヒト組織中エストロゲン蓄積との関連、ホルモン依存性癌の発生率の関連について、結論を出すことはできなかった。今後、ヒトの検体数を増やして再度検討を行う必要がある。
著者
永井 佑紀
出版者
分子シミュレーション学会
雑誌
アンサンブル (ISSN:18846750)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.31-39, 2021-01-31 (Released:2022-05-14)
参考文献数
27

自己学習ハイブリッドモンテカルロ法(Self-learning Hybrid Monte Carlo Method (SLHMC))法とは, 「第一原理分子動力学法と同じ精度が保証された」機械学習分子シミュレーションである. この手法について解説を行う. 第一原理分子動力学法(密度汎関数理論によって計算されたポテンシャルを用いる手法)は計算コストが高いために, 最近では機械学習分子動力学法が使われ始めてきている. この手法は広く用いられてきているが, 実行される結果の精度が用いた人工ニューラルネットワークの質に左右されるために, どのくらいのデータを学習すればよいのか, どこまで学習すれば十分な精度が得られるのか, 等を判断することが難しい. また, 第一原理分子動力学計算では計算が難しいより大きな系に機械学習分子動力学法を用いる場合, そもそもその領域で正しい結果となっているのか, 注意深く調べなければならない. 本原稿では, 機械学習分子動力学法の概略と問題点について述べたあと, これらの問題を解決するために,SLHMC 法の紹介を行う.
著者
井上 達朗
出版者
一般社団法人 日本老年療法学会
雑誌
日本老年療法学会誌 (ISSN:2436908X)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-6, 2023-05-29 (Released:2023-05-31)
参考文献数
8

現段階で,栄養サポートチーム(NST)での理学療法士の役割に関する最適解は存在するのだろうか。高齢化,病態の多様化,医療技術の高度化等に特徴づけられる現代医療の変革の中で,その役割を現在進行形で確立していく必要がある。手がかりはある。「リハビリテーション・栄養・口腔の三位一体」に代表されるキーワードは,我々がこの新領域で他職種と協働するためのヒントとなる。本稿では,未だ確立されていないNSTでの理学療法士の役割について,決して最先端とは言えない筆者の経験を基にあえてナラティブに解説,紹介する。
著者
高嶋 美穂 谷口 陽子
出版者
独立行政法人国立美術館国立西洋美術館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、美術作品や歴史資料に用いられている膠着材(展色材、接着剤)の同定を目的とした研究である。これまでに研究を進めてきたELISA法(酵素結合免疫吸着法)、LC-QqQ/MS法(液体クロマトグラフ-三連四重極型質量分析法)の改善と検出不可能なパターンの把握に加え、新たに高感度LC-QTOF/MS法(液体クロマトグラフ-四重極飛行時間型質量分析法)の導入、樹脂フィルムを用いたサンプリング法の検討などを行い、同定の精度を上げるとともに必要サンプル量を減らす。さらに国立西洋美術館所蔵の美術作品や、遺跡における壁画、そのほか歴史資料の膠着剤分析を実施をする。
著者
須田 義大 青木 啓二
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.809-817, 2015-02-01 (Released:2015-02-01)
被引用文献数
11 7

現在,2020年までの自動運転の実用化を目指して日本,米国および欧州において技術開発が進められている。自動運転は人間に代わり認知,判断,操作を行う必要があり,高度な情報処理や走行制御が求められる。このため自動運転として,数台の車両が車群を構成して走行する隊列走行システムが開発された。この隊列走行システムを通じ,白線に沿って自動操舵する車線維持制御技術や車車間通信技術を用いた車間距離制御技術が開発された。隊列走行システムの後,現在一般道での自動運転を目指した技術開発が行われており,キー技術として,制御コンピューターの故障時における安全を確保するフェイルセーフ技術や障害物を確実に認識するためのローカルダイナミックマップ技術およびAI化を中心とした自動運転アーキテクチャーが開発されている。
著者
小野 盛司 吉野 守
雑誌
2019年度 人工知能学会全国大会(第33回)
巻号頁・発行日
2019-04-08

将来AI/ロボットが大半の雇用を奪ってしまうと言われている。そのときはベーシックインカムという方法が提案されているが、巨額の財源が必要になる問題と労働意欲の喪失が欠点とされている。その両者を解決するために解放主義社会を提案する。
著者
後藤 淳 高田 毅 末廣 健児
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.25-40, 2002 (Released:2005-05-21)
参考文献数
2
被引用文献数
11

There are various movements in our daily life. In this chapter, we considered standing-up from the following viewpoints: 1) Consideration of the literature: We consider normal "standing-up" from the kinematical viewpoint as mentioned in the each literature. 2) Consider the analysis of "standing-up" with the emphasizes on movement (the accent): We understand the influence of the other parts on the body with the emphasis on "standing-up", and we understand the difference between the normal "standing-up" and emphasized "standing-up". 3) Consideration from the "standing-up" analysis of each disease: After analyzing "standing-up" ralated to each disease, we compared it with emphasized movements and considered each relationship (similarity, common points, points of difference). There are various movements in our daily life. If we can understand "standing-up" which is common in our daily life. we can predict the other normal movements and the movements of patients with various diseases, and we can treat diseases early. Although "standing-up" is the basic movement in locomotion, we must not limit understanding to this. Because we can understand whole movements in more detail by considering the abovementioned viwepoints.
著者
熊谷 公男
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.179, pp.229-268, 2013-11-15

最北の城柵秋田城は,古代城柵のなかでも特異な存在であり,また歴史的にも大きく性格が変化する点で興味深い存在である。本稿は,秋田の歴史への登場から元慶の乱まで秋田城の歴史をたどり,秋田城の歴史的特質を明らかにしようとするものである。秋田城の起源は天平五年(733)に出羽郡から秋田村に移転した出羽柵である。この秋田出羽柵は,律令国家の版図のなかで北に突出した場所に位置し,北方交流の拠点であったが,通常の城柵とちがい領域支配は著しく未熟であった。その後,仲麻呂政権の城柵再編策によって桃生城・雄勝城が造営されると,出羽柵は秋田城と改称され,陸奥国と駅路で結ばれて,孤立した立地はある程度改善されるが,領域支配の強化が蝦夷との対立をまねいて防備が困難となり,宝亀初年には出羽国から秋田城の停廃が要請される。中央政府もそれを承認するが,まもなく三十八年戦争が勃発し,城下住民が南の河辺郡への移住を拒んだために廃城は先送りされる。山道蝦夷の制圧を前提とした桓武朝の城柵再編が秋田城の歴史の大きな転機となる。胆沢城・志波城の造営によって陸奥国の疆域がようやく秋田城と同じラインまで北進し,また払田柵(第二次雄勝城)が造営されたことで,秋田城の孤立した立地が解消される。さらに秋田郡が建置されて,通常の城柵のように城司―郡司の二段階の城柵支配が行われるようになる。その後,城司の支配がおよぶ「城下」が米代川流域にまで拡大され,秋田城の支配体制が飛躍的に強化される。その結果,百姓の「奥地」への逃亡や,城下の蝦夷村の収奪強化などの新たな矛盾が生まれる。これは一方で「奥地」(米代川流域・津軽地方)の社会の発展を生み出すが,もう一方で城下の蝦夷村の俘囚たちの反発をまねき,やがて元慶の乱が勃発する。
著者
山崎 仁朗
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.424-438, 2012-12-31 (Released:2014-02-10)
参考文献数
36
被引用文献数
1

鈴木榮太郎は, 『日本農村社会学原理』において, ミクロな相互行為の次元から全体社会を捉える高田保馬の見方から示唆を得て, 自然村論を展開した. これは, 自らの多元的国家論の立場とも符合した. しかし, 晩年に「国民社会学」を構想するようになると, かつて依拠した高田の全体社会論や多元的国家論を批判し, 国家権力による統治活動こそが社会的統一を創り出すという認識に至った. これにより, 鈴木は, 聚落社会一般を権力の視点から捉え直すことになり, 聚落社会の発生にとって, むしろ「行政」が本質的な契機であり, 行政的集団が自然的集団に転化して質的な変容を遂げるという動態的な見方にたどり着いた. 晩年の鈴木が獲得したこの視座は, 「自然」と「行政」とを二項対立的に捉え, もっぱら前者を強調する従来の見方に修正を迫るものであり, 「コミュニティの制度化」によって地域コミュニティの自治をどう保障するかという課題設定に, 理論的な根拠を与える. 今後は, このような視座に立って, 国際比較の視点も取り入れながら「地域自治の社会学」を追究する必要がある.
著者
三浦 理代
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.97, no.4, pp.253-256, 2002-04-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
11
被引用文献数
2

醸造物 (味噌, 醤油など) をはじめ, 食品 (パン, クッキー, 麦茶, コーヒー焼き肉など) の加熱・調理・加工・熟成, 貯蔵中の複雑な反応 (メイラ-ド反応) は芳しいフレーバーの生成と共に着色 (非酵素的褐変) を起こす。メイラード反応の最終生成物はメラノイジン (褐色色素) である。本号では, 食品とくに醸造物にとって身近な成分であるメラノイジンの生理機能について, 筆者らの研究成果を紹介・解説していただいた。