著者
秋田 英万 濱 進 水口 裕之 原島 秀吉
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.126, no.11, pp.1047-1057, 2006-11-01 (Released:2006-11-01)
参考文献数
53
被引用文献数
1 1

For the development of efficient gene vector, intracellular processes such as cellular uptake, endosomal release and nuclear delivery must be overcome. Viruses have also evolved and have developed sophisticated mechanisms for controlling intracellular trafficking for the efficient delivery of their genomes to nuclei in host cells for symbiosis. In the light of these mechanisms, various kinds of artificial devices have been developed to overcome the intracellular barriers. However, in the majority of studies, variation of the transfection activity before and after the modification of devices was evaluated, and intracellular trafficking remained unclear. Therefore, it is understand to recognize which of the intracellular barrier should be intensively improved to enhance the transfection activity. To clarify the rate-limited process in the current non-viral vector, we compared the intracellular trafficking between adenovirus and LipofectAMINE PLUS. As a result, we found that difference of the transfection efficiency between adenovirus and LipofectAMINE PLUS was dominantly derived from the differences on transcription activity. Therefore it is essential to consider the regulation of the intranuclear events to improve the transfection activity of artificial vector.
著者
戸田 正直
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.2_31-2_41, 1994-11-30 (Released:2008-10-03)
参考文献数
24

The urge theory, that has been developed by the author, intends to achieve a comprehensive model of human emotion, cognition, and individual and social behaviors. Any model that pursues as remote a goal as this has to employ, as a means to its verification, computational formalizations of whatever parts of the theory that allow them. In this paper, a few possibilities of such partial computational formalization are demonstrated, even though none of them is hardly complete as yet.The urge theory starts with an explication of emotions. Because of the inherent ambiguity of the everyday notion of emotions, the theroy introduces three basic concepts of its own: urge activity plan, mood-state, and emotional attitude. The major content of this paper consists of, first laying foundational remarks on these three major concepts, and then going on somewhat more in detail to discuss appraisal, attention and the structure of the urge activity plan. With this last topic, a new concept, the versatile system structure, an elaboration of the idea used by Minsky in his Society of the Mind model, is introduced.
著者
下 和弘 松原 貴子
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.260-266, 2020-07-25 (Released:2020-09-04)
参考文献数
13

疼痛の悪循環を形成する「不活動・機能障害・抑うつ・社会生活への不適応」は「フレイル」状態と一致するところが多く,高齢者の疼痛を予防・改善する取り組みはフレイルを予防・改善する取り組みと共通している.すなわち,低活動量,低栄養,不活発な生活を是正する必要があり,運動療法と栄養療法,それらを組み合わせたライフ・スタイル管理が基本となる.運動療法では対象者の身体機能や身体活動レベルを評価し,対象者に応じた運動や身体活動を適切に選択する必要がある.
著者
今 尚之 進藤 義郎 葛西 章 佐藤 馨一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.183-190, 2002-05-15 (Released:2010-06-15)
参考文献数
4

北海道遺産に認定され, 一部が登録有形文化財である旧士幌線のコンクリートアーチ橋梁群においては, 第6音更川橋梁のみ河川洗掘防止工の破損から安全性に懸念が生じ, 地元上士幌町による取得, 保存対象から除外されてきた。この度, 改めて技術的な検討がなされ, 安全性に問題無いことが確認されたことにより, 他の橋梁と同じく上士幌町による取得が決定された。土木遺産の保存や利活用に向けては, 合意形成を待っていては手後れとなることが多く速やかな判断が求められる。このためにも確固たる技術的なバックデータが重要であるが, 財政規模の小さな地方公共団体や市民活動団体が担い手となるときには, 財源, 技術, ネットワークなどの資源が少ないことからその確保に関しては課題が多い。本稿では, 旧士幌線第六音更川橋梁保存における事例をもとにそれらの課題について報告し, 課題解決の一つとして土木技術者が土木遺産の保存, 利活用の専門知識を得る仕組みづくりの必要性を述べる。
著者
菅野 純 梅田 ゆみ 鈴木 正明 武田 知起 後藤 裕子 山野 荘太郎 平井 繁行 竹内 哲也 高橋 祐次
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第46回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.S6-4, 2019 (Released:2019-07-10)

架橋型アクリル酸系水溶性高分子化合物(以下、ポリマー)の包装作業に従事した労働者6名が肺繊維化、間質性肺炎、肺気腫、気胸等を発症した事から、2017年4月に、同種事案の防止のため、厚生労働省労働基準局安全衛生部からプレスリリース(1,2)があった。6名は曝露開始から2年前後の短期間に発症し、年齢は20代~40代であった。このポリマーは、アクリル酸を直鎖重合し、更に網目状に架橋した巨大分子で、一次粒子はナノ粒子の定義に該当すると考えられる。外観は白い微細粉末である。肺に対する毒性文献情報は確認されていない。吸湿吸水性が高く難分解性で、消化管から吸収されず経口毒性は殆ど無いとされる。 ここでは、当該ポリマーの肺毒性の成立過程と発生機序の解明を目的とした研究のうち、ラット及びマウスの肺曝露実験の中間報告を行う。曝露経路は、ポリマーが惹起する生体反応の概略を把握する目的での気管内投与(IT)、ヒトで生じた肺病変の成立過程と発生機序と定量的用量作用関係を明らかにする目的でのTaquann直噴全身曝露吸入(WB)の二通りを採用した。IT検体(1.5g/L)は懸濁し光顕下で細菌大の粒子を認めた。単回IT(ラット100~300μg/匹、マウス15~45μg/匹)の直後より(分布に偏り大)ポリマー貪食マクロファージ(PLMφ)の崩壊像と共に肺胞内に強い炎症細胞浸潤を認め、1週に最大となり4週に向けて減弱した。それに交代して肺胞内PLMφ集簇巣形成、Ⅱ型肺胞上皮の増加(TTF1、Tm4sf1 陽性反応性過形成)の出現を認めた。以上、ポリマーの肺胞内半減期は長く組織反応を伴う炎症の遷延を認めた。IT反復26週観察、及び、全身曝露吸入の結果を合わせて報告する。1.https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11305000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu-Kagakubushitsutaisakuka/0000163637.pdf2.同/0000163635.pdf
著者
光石 亜由美
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.58, no.11, pp.34-44, 2009-11-10 (Released:2017-08-01)

一九一〇〜二〇年代のモダニズムの一面を変態や異常を消費する人々の出現として捉え、<女装><変態><犯罪>というキーワードで谷崎潤一郎「秘密」(一九一一年)に描かれた女装を分析した。「秘密」では、セクソロジーの言説を背景に、<女装すること>ではなく、<女装という変態を演じること>に快楽を見出し、女装をロマン化する。しかし、同時に、着脱可能な<表層>のドラマとしての女装が「秘密」以後の映画や探偵小説の中で消費されることも暗示している。
著者
内藤 朝雄
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.165-175, 2021-02-15

抄録 学校のいじめをモデル現象として,1) 群生秩序:集合的活性化輪郭が畏怖すべき規範の準拠点となる利害権力政治の秩序,2) 秩序の生態学モデル:複数の秩序が互いを環境として関係し合い位置付けあう生態学的な説明モデル,3) 人を生徒らしい生徒に変える自己裂開を伴う変換の連鎖としての学校らしい学校のコスモロジー,4) 自己裂開規範:自己を自発性の核心部分から裂け開いてしまうかのようなふるまいを倫理秩序の中心として強制し違背を許さない規範,についての理論を提示する。次にこれをもとに,構成要素を個体水準よりもミクロな内的メカニズムに設定し,それが個体水準を越えて,直接複数個体水準でまとまる現象を含めて説明するのに適した,IPS(inter-intra-personal-spiral)理論枠組とその可能性を展望する。ネットいじめは,1) 閉鎖空間の人間関係にネットが加わってブースター効果を及ぼすタイプと,2) 見ず知らずの被害者を不特定多数で攻撃するタイプに分ける必要がある。
著者
山崎 雅英
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.357-364, 2005 (Released:2005-12-31)
参考文献数
11
被引用文献数
7 5 2

反復性血栓症と不育症を特徴とする自己免疫性血栓性疾患である抗リン脂質抗体症候群の中に,微小血栓により短期間に多臓器不全をきたす予後不良の一群があり近年注目されている.このような疾患群を「劇症型抗リン脂質抗体症候群(CAPS)」という.CAPSは感染症や抗血栓療法の変更,手術(抜歯などの小手術を含む)を契機に,SLEや原発性抗リン脂質抗体症候群症例に多く発症し,脳血管系・呼吸器系・腎臓・皮膚などのほか,全身のすべての臓器に微小血栓をきたす.確立した治療法は無いが,強力な抗凝固療法と大量ステロイド療法がおこなわれるほか,血漿交換も併用されることが多い.我々の経験では,抗リン脂質抗体や抗二重鎖DNA抗体(抗ds-DNA抗体),補体などを選択的に吸着する血漿吸着療法を血漿交換の代わりに用いることにより良好な成績が得られている.血漿吸着療法は血漿交換と比較して新鮮凍結血漿などの血液製剤の補充が不要であり,輸血関連合併症もないことからCAPSを含む抗リン脂質抗体症候群に対し考慮すべき治療法の1つと考えられる.
著者
岡 千紘
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.105-114, 2019-04-23 (Released:2019-04-19)
参考文献数
17

本論文では,離散選択実験を用いて野菜売り場での「生産者の顔写真の掲示」が消費者の購買意欲を増すことができるのか分析を行った.分析結果によれば,生産者の顔写真が掲示された野菜を購入する傾向があるのは,①主に男性,②野菜を買いに行く頻度が月に1.2回~週に1回程度の人,③野菜売り場に掲示されている顔写真が生産者本人だと信じている人,④トレーサビリティ・システムについての知識がない人であった.直売所で購入する傾向がある人は,①ほとんどの世代の男性,②40代の女性,③週に1回~3回程度野菜を買いに行く人,④野菜売り場に掲示されている顔写真が生産者本人だと信じている人,⑤トレーサビリティ・システムについて知識があるが利用したことはない人であった.これらの結果から,①男性向けのマーケティングを行う,②直売所,③トレーサビリティ・システムが充実するまでの補完と充実してからの代替といった条件のもとで生産者の顔写真の掲示は消費者の購買意欲を増すことができる.
著者
塚脇 涼太 深田 博己 樋口 匡貴
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.43-51, 2011 (Released:2011-08-30)
参考文献数
38
被引用文献数
3 2

本研究の目的は,ユーモア表出が表出者自身の精神的健康に及ぼす影響過程を検討することであった。3類型のユーモア表出が,表出者自身のユーモア感情喚起と周囲からのソーシャルサポートに影響し,さらに,その2つの変数が表出者自身の精神的健康に影響を及ぼすと仮定するモデルを構成し,共分散構造分析による解析を行った。その結果,遊戯的ユーモア表出と自虐的ユーモア表出は,周囲からのソーシャルサポートを促進することを通して,不安を低減することが示された。さらに,遊戯的ユーモア表出は,表出者自身に対してユーモア感情を喚起させることでも不安を低減することが示された。一方,攻撃的ユーモア表出は,周囲からのソーシャルサポートを阻害することを通して不安を高めることが示された。これらの結果から,ユーモア表出の類型によって,精神的健康に及ぼす影響過程が異なる可能性が示された。
著者
峯木 眞知子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.297-302, 2017 (Released:2017-06-20)
参考文献数
22
被引用文献数
1
著者
尾本 惠市
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.197-213, 1996-07-31

本論文は、北海道のアイヌ集団の起源に関する人類学的研究の現況を、とくに最近の分子人類学の発展という見地から検討するもので、次の3章から成る。