著者
辻 洋志 臼田 寛 河野 公一
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.33, 2011 (Released:2011-04-06)
参考文献数
16

米国の公衆衛生大学院における産業医養成システムと日本の課題―ハーバード公衆衛生大学院専門職修士課程を通じて―:辻 洋志ほか.大阪医科大学衛生学・公衆衛生学教室―目的:世界経済の急速なグローバル化により労働者を取り巻く環境は大きく変化してきている.わが国の労働安全衛生制度は,法律に準拠する形で戦後一貫して充実強化されてきた.しかし,社会の変化に伴い企業や労働者が産業医に求める内容も多様化し,対応を迫られている. 対象と方法:米国は結果責任を伴う自主対応型の労働安全衛生制度を取っている.本稿では体系的なトレーニングを行い,変化する社会の需要に柔軟に応えることができる基礎を持つ産業医を養成する,米国の公衆衛生大学院のシステムを紹介する. 結果および考察:今後の日本の労働安全衛生の維持向上を模索するに当たり,多様化する社会の需要に応えるには体系的トレーニングによる個々の産業医や関連職の技能の向上が不可欠であり,米国における公衆衛生大学院による産業医養成システムは一つの参考になると思われる. (産衛誌2011; 53: 33-38)

9 0 0 0 OA 補講(4)

著者
編集委員会
出版者
一般社団法人 日本ゴム協会
雑誌
日本ゴム協会誌 (ISSN:0029022X)
巻号頁・発行日
vol.83, no.4, pp.109-116, 2010 (Released:2010-08-25)
参考文献数
9
著者
山室 亮介 萩野 昇
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.97, no.1, pp.1-5, 2023-01-20 (Released:2023-01-20)
参考文献数
10

抗原定性検査と逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR:Reverse Transcription-Polymerase Chain Reaction)の新型コロナウイルス検出に関する比較試験はこれまでにも行われているが,感染性を有する患者の特定に関する差については分かっていない.抗原定性検査,RT-PCR検査を入院時に同時に採取し,2021年2月21日から2021年10月8日に入院した患者1,101人に対してスクリーニングを行ない,それぞれの検査が感染性を有する患者の特定にどのように寄与したのかを後ろ向きに検討した.検査結果が乖離した症例は7例あり全て抗原定性検査陰性,RT-PCR検査陽性だった.いずれの検査も陽性が9例,いずれも陰性が1,085例だった.抗原定性陰性,RT-PCR検査陽性となった7例中6例が最終的に感染性はないと判断された.また,7例中1例が感染性あると判断され,この症例は肺炎を伴っていた.研究期間内の感染性を有する患者の検出に関して,症状や暴露状況から新型コロナウイルス感染の事前確率が高い場合は抗原定性検査よりRT-PCR検査が有用だった症例が1例あったが,無症状かつ暴露がない場合には抗原定性検査とRT-PCR検査は同等だった.
著者
小島 貢利
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.78-83, 2021-06-25 (Released:2021-06-25)
参考文献数
31

近年,リニア中央新幹線の名古屋以西の建設ルートに関して活発な議論が行われている。伊勢湾地域(愛知県,三重県)では,三重県の亀山市周辺に新駅設置が噂されているが,最も適切であるのか疑問が残る。本研究では,リニア中央新幹線の新駅を,中部国際空港(セントレア)と鈴鹿市周辺に建設することを提案する。セントレアと鈴鹿市を経由することで,伊勢湾地域に限らず,リニア中央新幹線沿線住民の利便性の向上や,経済効果が期待されることを説明する。また,本研究の提案が実現すれば,成田および羽田空港の過密解消や,首都圏や関西圏の災害時の旅客輸送のバックアップにも貢献するため,国策として検討する価値があることを主張する。
著者
平塚 広 竹野 健次 佐々木 健
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.105-111, 2004-06-15 (Released:2010-06-08)
参考文献数
7

鉄瓶は古くから茶器として利用されて来たが, 最近, 粗悪で安価な鉄瓶が出回り, 市場が混乱している.我々は鉄瓶の品質を科学的に解明する一つの方法として, 加熱の際での水質変動を追跡し, さらに味との関係の検討を行った.南部製と外国製の鉄瓶に水道水を入れ, LPGガス加熱調理器で加熱し水質変動を追跡した.南部鉄瓶 (三笠および丸南部) の場合では水質に変化はそれほど認められなかったが, 外国製の鉄瓶では硬度, pH, 重炭酸イオンの上昇などの急激な水質変化が認められた.すなわち, 外国製のある鉄瓶では30分加熱で硬度が19.00mg/Lから53.00mg/L, pHが7.00から9.40, 重炭酸イオンは14.00から30.40mg/Lに変化した.さらに南部, 外国製双方の鉄瓶で沸騰させたお湯で, 抹茶を立て成分分析をしたところ, 南部鉄瓶では抹茶のアミノ酸溶出が外国製に比べ速やかであることが確認された.
著者
西浦 博
出版者
公益社団法人 日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術学会雑誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.1485-1491, 2010-11-22 (Released:2010-11-19)
参考文献数
19
被引用文献数
3 8

Understanding inter-observer variability in clinical diagnosis is crucial for reliability studies. As the statistical measurements of reliability, the kappa statistic and its extensions have been widely adopted in medical research, but it has been discussed that kappa is vulnerable to prevalence and presence of bias. As an alternative robust statistic, AC1 has attracted recent statistical attentions. This article describes fundamental ideas and quantitative features of AC1. The reliability of infrared thermoscanner as an application in detecting febrile patients of pandemic influenza is discussed by means of Monte Carlo simulation. AC1 adjusts chance agreement more appropriately than kappa and is regarded as a more useful measurement for assessing inter-observer agreement, especially when prevalence is small.
著者
西野 友年 大久保 毅
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.702-711, 2017-10-05 (Released:2018-08-06)
参考文献数
52

原子・分子スケールの微視的な物理は,我々が目にする巨視的な測定量に,どう現れるのだろうか.微視的なものとして,例えば磁性体を構成するスピン自由度を考えてみよう.結晶格子中で,幾つかのスピン自由度を含む“ブロック”に着目すると,これを新たに「1つの有効的な自由度」とみなすことが可能だ.このような「自由度の抽出」はカダノフによって半世紀前に提唱されたもので,ブロックスピン変換と呼ばれている.この変換を繰り返せば1つのブロックに対応する領域が指数的に大きくなり,やがて巨視的な大きさへと到達する.このように物理系を粗く眺める粗視化や,逐次的なスケール変換のアイデアはウィルソンによって整理され,繰り込み群の概念が生まれた.巨視系には普遍的に現れる相転移と臨界現象を,繰り込み群は定量的に説明する.ただ,ブロックスピン変換を用いる実空間繰り込み群によって,相転移を特徴付ける臨界指数を正確に求めることは困難であった.粗視化に伴う相互作用の変化である「有効ハミルトニアンの流れ(flow)」を,精密には追えなかったのだ.実は,ブロックから抽出する自由度の選び方に問題が潜んでいたのである.本稿で紹介するテンソルネットワーク形式では,隣接するブロック間の結合に着目し,相互の連絡に「物理の本質」を見出す.ブロックの境界(辺や面)に並んでいるスピン自由度をまとめ,1つの多状態自由度として取り扱うのだ.例えば立方体のブロックを考えるなら,それぞれの面にi,j,k,ℓ,m,nの,合計6つの多状態自由度を割り当てる.他方,境界に面していないブロック内のスピンは,配位和を取り消去してしまう.このような手続きを経て粗視化を行うと,系が持つ相互作用や相関を全て,局所的な重率テンソルAijkℓmnへと押し込んでしまえるわけだ.この自由度抽出を,系の持つエンタングルメントを保ちつつ,行列の特異値分解(SVD)によって効率的に行うことが,テンソルネットワーク形式の特徴である.本稿では,磁性体の模型であるイジング模型を例に取り,同形式の概要を紹介し,最近のマルチスケールな発展についても触れる.テンソルネットワーク形式は行列積状態(MPS)に,その原型を見ることができる.イジング模型の相転移を導出するクラーマース・ワニエ近似に端を発し,菊池の近似を経て,半世紀前にバクスターが確立した角転送行列(CTM)の手法は,実質的には3脚テンソルAiαβの縮約で転送行列の固有ベクトルを近似する変分法だ.1次元スピン鎖のAKLT状態,デリダによる非平衡定常状態の記述,密度行列繰り込み群(DMRG)による数値計算など,MPSは何度も「再発見的に」用いられて来た.近年では,高次元系への拡張であるテンソル積状態(TPS/ PEPS)が,2次元量子系の基底状態解析に応用されつつある.テンソルネットワーク形式は,数値解析に適した物理系の表現手段なのだ.
著者
松村 志真秀 神保 泰雄
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密機械 (ISSN:03743543)
巻号頁・発行日
vol.49, no.9, pp.1195-1201, 1983-09-05 (Released:2010-05-07)
参考文献数
14
被引用文献数
3 3

This paper deals with large deflections of cantilever beams to develop fishing scientifically in the field of so called sports-leisure. The fundamental equations can be obtained in a state of equilibrium under concentrated loads at free end and calculated strictly by means of numerical solution method. From numerical results, fundamental properties for various mechanical quantities are obtained as follows: (1) The large deflections of cantilever beams can be described with dimensionless loads μeq, ratios of diameter D2/D1 and angles β respectively. The shapes of deflection curves are dependent of D2/D1 considerably. (2) Maximum curvature kmax and the displacement of free end xl in x direction are also functions of μeg and D2/D1. The location lM and lk where σMxmax and kmax occur do not coincide and the distance lM is smaller than lk. (3) The stiffness of fishing rods is proposed and discussed as the magnitude of resistance with respect to the large deflections.
著者
和田 誠 古賀 聖治 野村 大樹 小達 恒夫 福地 光男 Makoto Wada Seizi Koga Daiki Nomura Tsuneo Odate Mitsuo Fukuchi
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.271-278, 2011-11-30

2009年に就航した新「しらせ」には,改造した20 ftコンテナを船上実験室として搭載するスペースが確保された.第51次日本南極地域観測隊では,このコンテナ実験室の内部に大気中の硫化ジメチル濃度を測定するためのプロトン移動反応質量分析計を収納し,観測を実施した.本稿では,コンテナ実験室の概要と今後改良すべき点等について報告する.
著者
古川 健司 桂川 秀雄 重松 恭祐 岩瀬 芳江 三上 和歌子 亀田 孝子
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.201-206, 2019 (Released:2019-11-15)
参考文献数
10

がん細胞では,グルコースから乳酸が作られ,好気的呼吸と嫌気的呼吸(解糖)の両方が使われている.さらに,好気的条件でも解糖系の抑制がかからないというWarburg効果は,正常細胞とは大きく異なる性質の1つとされてきた.また,がん細胞が増殖するには,細胞内へのブドウ糖の取り込みを行うグルコース・トランスポーター(GLUT)というタンパク質を増やし,莫大なエネルギー産生と核酸や細胞膜の合成が必要であるため,がんの栄養療法としては,ケトン食(糖質制限)が有効となる可能性がある. 欧米では,ステージ4の進行がん患者に対し,ケトン食の有効性の臨床研究がなされているが,食事療法単独では,時間の経過とともにがんが増悪し,がんのコントロールは不良である.そのため,われわれはケトン食と化学療法の併用療法を1年間行い,その後2年フォローを行った.今回,われわれの研究成果を中心に,進行再発癌に対するケトン食の可能性について報告する.

9 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1924年01月10日, 1924-01-10

9 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1923年08月10日, 1923-08-10
著者
森本 和滋 川崎 聡子 吉田 易範
出版者
日本薬史学会
雑誌
薬史学雑誌 (ISSN:02852314)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.64-77, 2015 (Released:2020-12-03)

For 20 years, the Ministry of Health, Labour and Welfare (MHLW, formerly Ministry of Health and Welfare (MHW)) has been trying to increase transparency of the review process for approving reports in order to promote the rational use of newly approved drugs and medical devices. The first Summary Basis of Approval (SBA) was published by MHW in 1994. In 1999, evaluation reports were prepared by MHW and the Pharmaceuticals and Medical Devices Evaluation Center to make them available to the public. In 2005, a notice from the Chief Executive of the Pharmaceuticals and Medical Devices Agency (PMDA) made procedures for public release of information on reviewing applications for new drugs. In 2006, 90 review reports of newly approved drugs and eight medical devices were revealed on PMDA websites. The dissemination of information by the United States Food and Drug Administration (FDA) and that of the European Medicines Agency (EMA) were studied and compared with that of the MHLW and PMDA. While common technical documents (CTD) for new drugs and summary technical documents (STED) for new medical devices have been released by PMDA, such documents are not released by the FDA and EMA. The European Public Assessment Report (EAPR) summary for the public is an interesting questionnaire approach that uses the What, How and Why format. Finally, future proposals for the next decade are also outlined. PMID: 26427100 [Indexed for MEDLINE]
著者
臼田 春樹 和田 孝一郎 岡本 貴行 田中 徹也 新林 友美
出版者
島根大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

腸粘膜バリアの慢性的な低下(leaky gut syndrome: LGS)は全身疾患の発症に深く関与することが示唆されている。しかし、ヒトに使用可能で適切にLGSを評価する方法は確立していない。本研究では、軽度、中等度、重度のLGSを呈するマウスモデルを確立し、これらを用いてLGSの新規診断指標(試薬K)を確立した。また、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)とクローン病を誘発したマウスでは、発症初期の段階でLGSが生じることが試薬Kによって判明した。特にクローン病の小腸ではLGS状態と炎症の両方に関連する内因性因子の発現が増加しており、LGSがクローン病の発症に関与する可能性が示唆された。
著者
高橋 徹
出版者
日本神経感染症学会
雑誌
NEUROINFECTION (ISSN:13482718)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.49, 2020 (Released:2020-05-13)
参考文献数
30

【要旨】重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia symdrome、以下SFTS)は、 2011 年に中国から報告された SFTS ウイルスによるマダニ媒介新興ウイルス感染症である。日本でも流行しており、西日本地方で年間約 80 人が発症していて致死率は約 20%と高い。臨床像は高熱、血小板減少、白血球減少、下痢や嘔吐が特徴で、「ボーッとして理解が緩慢な感じ」の意識障害もよく伴う。AST、LDH、CK は上昇し、骨髄で血球貪食像をみる。特異的治療はなく、抗ウイルス薬のファビピラビルの治療開発が期待されている。マダニのほかに SFTS 発症ネコによる咬傷が新たな感染経路として注目されている。ヒト−ヒト感染もあり、患者を扱う医療者には標準・接触予防策が必須である。
著者
衣本 啓介
出版者
日本地図学会
雑誌
地図 (ISSN:00094897)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.4_7-4_14, 2010 (Released:2012-03-28)
参考文献数
3
著者
大隣 辰哉 大田 慎三 関原 嘉信 西原 伸治 大田 泰正 佐藤 倫由 田中 朗雄
出版者
産業医科大学、産業医科大学学会
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.231-242, 2015-09-01 (Released:2015-09-12)
参考文献数
25

脳脊髄液漏出症は特発性または時に外傷性に発症し,起立性頭痛や誘因のない慢性硬膜下血腫(CSDH)の原因となる稀な疾患である.我々はこの連続20例の治療経験があり,この疾患の現状と問題点も含め報告する.2006年4月から2014年3月までにCTミエログラフィー(CTM)または脊髄MRIで硬膜外髄液漏出を確認した連続20例(女性11例,年齢44.7±12.1歳,22-65歳)の臨床的特徴を後ろ向きに調査した.症状は,起立性頭痛のみが10例,起立性頭痛にCSDH合併が6例,体位と無関係の頭痛にCSDH合併が4例であった.治療は,2例で直達術での縫合またはフィブリン糊による瘻孔閉鎖を施行した.14例で硬膜外自己血パッチ(EBP)を施行(うち1例は上記直達術),後半9例は血管内カテーテルを用いた腰椎からの単回アプローチでの広範囲EBPを施行した.穿頭血腫ドレナージ施行の1例を含む残る5例は,輸液のみで治療した.症状が頭痛のみの10例中9例は,この消失または軽減が得られた.CSDHを合併した10例は,1例で穿頭血腫ドレナージ後に輸液のみで治療,9例でドレナージ後にEBPを施行して全例再発を抑制できた.脳脊髄液漏出症はいまだ病態が不明だが,CTMおよび脊髄MRIにて的確に診断し,点滴加療が無効,起立性頭痛が高度またはCSDHを繰り返す症例には,血管内カテーテルを用いた広範囲EBPでほぼ治癒可能とわかった.