著者
西堀 すき江 並木 和子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.36, no.11, pp.845-850, 1985

一般に食用に供することの多い海藻類 (緑藻類1種, 褐藻類3種, 紅藻類3種) のヘキサン : エタノール (79 : 21v/v) 抽出脂質区分に抗酸化性を認めた.抗酸化力は経時的な酸素吸収量による重量法および生成過酸化物のロダン鉄法による測定で調べた.海藻類では, 青のり, わかめの抽出脂質が既存の抗酸化剤BHA, α-トコフェロールに匹敵する抗酸化性を示した.<BR>脂質をTLCで5分画した場合, 2, 4のフラクションに抗酸化性が強く認められ, わかめではフラクション3にも活性が示され, 抗酸化性を示す複数の物質の存在の可能性が認められた.<BR>海藻の抽出脂質類の食品抗酸化剤としての利用の可能性を調べた結果, リノール酸を用いたマヨネーズ, ドレッシング状エマルジョンでは抗酸化性が認められ, 食品抗酸化剤としての利用の可能性があると考えられた.しかし, ラードを用いたクッキーでは顕著な効果は認められなかった.<BR>海藻の抗酸化性物質については, Fujimotoらの海藻リン脂質区分の抗酸化性の報告がある.また, 一般的に天然抗酸化剤として知られているトコフェロール類も海藻中に存在している.そこで, これらとの関連について検討したところ, 本実験で示される抗酸化性物質はTLC, 且PLC等からリン脂質, トコフェロール類とは別個のものであると考えられる結果が得られた.これについては次報に述べる.
著者
星川 啓慈
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.813-836, 2009-12-30 (Released:2017-07-14)

ウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』(『論考』)における「人は、語りえないものについては、沈黙しなければならない」という文番号七を、『原原論考』(『原論考』以前のもの)にまで遡り、その原形を確認すると、それはもともと「価値」との関わりで書かれた可能性が高い。『論考』出版後は、最初「自戒」であった文番号七が、公言となって彼に付きまとい、彼の「神や信仰や宗教について語りたい」という欲求・衝動とこれを抑えることとの間で、ドラマが展開された。すなわち、次のようなことである。ウィトゲンシュタインはこの公言を意識しつつ、哲学的著作では自分自身の神や信仰や宗教について書くことは控えたが、その裏で、この欲求・衝動を捨てきれなかった。そこで、「倫理学講話」で文番号七の公言を覆すことを示唆し、哲学者として論述するのではないところでは、生涯にわたって神や信仰や宗教について書いたり話したりし続けた。『哲学宗教日記』にはそのドラマが反映されている。
著者
林 友直 高野 忠 市川 満 橋本 正之 鳥海 道彦 斉藤 宏 小坂 勝 栄元 雅彦 藤久保 正徳
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
宇宙科学研究所報告 (ISSN:02852853)
巻号頁・発行日
no.62, pp.p1-102, 1989-03

臼田宇宙空間観測所の64mφアンテナ設備は1984年10月に竣工し, 人工惑星「さきがけ」・「すいせい」のハレー彗星観測や同人工惑星を利用した太陽オカルテーション観測をはじめ, TDRSを用いたスペースVLBI実験等にも利用され, 数々の成果をもたらしている。さらに, 1989年8月の「ボイジャー2」海王星オカルテーション観測実験や1990年の「MUSES-A」追尾運用に使用される予定である。臼田局周辺の気候は, 強風によるアンテナ運用停止や大雨による伝送条件の低下等, 局の運用に少なからぬ影響を及ぼす。特に, 「MUSES-A」で用いられるX帯における影響は, 現用のS帯におけるそれより遥かに大きく, より深刻である。これらの気象条件の把握と解析のために, 気象観測システムはきわめて有用かつ必要不可欠なものである。臼田観測所における気象観測は1983年に始まり, 恒久的な『気象観測装置』を1987年3月に設置した。そして, 翌1988年にはこれまでの経験を元に, コンピュータシステムを中心とする『気象データ処理部』を付加し, 全体として『気象観測システム』として機能するようにした。この『気象観測システム』は, (1)雨量(雪量), (2)気温, (3)気圧, (4)風速, (5)風向及び(6)湿度(将来計画)の各データを収集し, その処理を行うものである。このシステムの基本コンセプトは, 次の点にある。「(a)臼田観測所でデータ収集からデータ整理までできるほか, 相模原キャンパスでもモニタ可能にする, (b)気象統計データを帳表形式に整理できる, (c)臼田局の運用管理情報の一つとして利用できるようなデータ表示を行う, (d)軌道決定のための大気補正データとして利用できる道を開く」。今回, 開発した気象データ処理システムは, 各パーソナル・コンピューターにおける処理を最適分散させ, 各機能をフルに生かせるシステム構成とする一方, 将来の拡張性も考慮した。そして, パーソナル・コンピュータを中核とするマルチタスク処理機能を基本に, 現行計算機システムではまれなオペレート・ガイド・システムやデータファイルの自動ハンドリング機構等を導入した省力化システムとした。また, 処理システムの各項目を階層構造のメニュー内容に登録し, メニュー選択時に「次にどの操作をすればよいか」等の基本操作方法を前もって表示するほか, 誤入力に対しても十分なプロテクトと丁寧なメッセージを用意し, 初心者でも運用できるシステムとした。さらに, 自動運用を推進するため, データファイルの自動ハンドリング機構を導入した。この機構では, データファイルの確保・削除等の領域管理をはじめ, ファイル管理まで全自動化した。また, データ取得しながら, メニュー選択によりフロッピーディスクヘデータ退避できるようなマルチタスク処理機能も有している。本報告書では, 『気象観測システム』の概要を述べると共に, 操作手引書としても使用できるように操作例を交えながら紹介する。資料番号: SA0166276000

1 0 0 0 遊魚集

著者
内田誠 著
出版者
小山書店
巻号頁・発行日
1941
著者
倉賀野 妙子 北尾 敦子 山田 光江
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.39, no.7, pp.665-670, 1988
被引用文献数
1

クッキーの食味とショートネス, 硬さとの関係を把握するために嗜好度官能検査を行い, 同時に定速圧縮破断特性値と対応させて検討した.<BR>1) クッキーの嗜好度官能検査をもとに, 総合評価および各評価項目間の単相関係数, 偏相関係数を求めた.その結果から, ショートネスが, 甘味, 風味と並んで総合評価に貢献する官能的要因として欠かせないことが認められた.硬さはショートネスと大きな相関があり, クッキーにとっては, 両者は切り離せない性質であり, 硬さも総合評価に影響を及ぼす要因と推定される.<BR>2) クッキーのもろさの嗜好度評価 <I>K<SUB>B</SUB></I> とみかけの破断エネルギー <I>E<SUB>n</SUB></I> (×10<SUP>6</SUP>erg/cm<SUP>3</SUP>), および硬さの嗜好度評価 <I>K<SUB>H</SUB></I> とみかけの破断応力 <I>P<SUB>f</SUB></I> (×10<SUP>7</SUP>dyn/cm<SUP>2</SUP>) の関係は, おのおの, <I>K<SUB>B</SUB></I> =-0.147<I>E<SUB>n</SUB></I><SUP>2</SUP> + 0.666<I>E<SUB>n</SUB></I> + 0.551, <I>K<SUB>H</SUB></I> =-0.209<I>P<SUB>f</SUB></I><SUP>2</SUP>+ 0.979<I>P<SUB>f</SUB></I> + 0.141 で示すことができた.クッキーのもろさは, みかけの破断エネルギー 2.27×10<SUP>6</SUP>erg/cm<SUP>3</SUP>, 硬さはみかけの破断応力 2.35×10<SUP>7</SUP>dyn/cm<SUP>2</SUP>を有するものが, 嗜好度評価が最も高いことが推定された.これらの破断特性値を有するクッキーを調製できる材料配合比を明らかにした.
出版者
日経BP社
雑誌
日経ア-キテクチュア (ISSN:03850870)
巻号頁・発行日
no.666, pp.38-49, 2000-05-15

sメディアージュは五感で感じる自然をテーマにやすらぐ空間を演出。客の滞留とリピーター獲得を狙う。 東京・新橋から東京臨海新交通「ゆりかもめ」に乗ってレインボーブリッジを渡ると,フジテレビビルが見えてくる。その手前に横たわる,黄,緑,ピンクなどパステルカラーに塗られた低層の建物が,「アクアシティお台場」だ。
著者
佐藤 誠治 小谷 和徳 片岡 正喜
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.181-186, 1987-10-25 (Released:2020-08-01)
参考文献数
3

Following five elements constitute the living consciousness of inhabitants. (1) On what kind of merits of the city lives do they decide the residential place? (2) Do they hope the lives of the centre of the city positivery, or not? (3) How the people who have lived in the cetre of the city valuate their living place? (4) Do they want to continue to live there? (5) In case they want to move, to where? Well this paper clarify how the inhabitants valuate synthetically the livies of the centre of the city.
著者
根無 新太郎
出版者
東洋文庫
雑誌
東洋学報 = The Toyo Gakuho (ISSN:03869067)
巻号頁・発行日
vol.99, no.4, pp.1-27, 2018-03

There were two types of military force used to suppress rebellions during the late Qing period: bing (兵), or regular troops consisting of the Green Standard Army and the Eight Banners, and yong (勇), or temporary volunteer troops organized into Yongying (勇營), mainly under governors-general and governors, in addition to tuanlian (團練) units on the village level. In Zhili (直隸) Province during the outbreak of the White Lotus Rebellion of the 1860s, bing, yong and tuanlian forces were deployed together to quell the insurrection, but the lack of discipline on the part of the bing-yong troops during the operation merely added to the civil unrest caused by the Rebellion. The Qing Court, in consideration of the effects of the worsening law and order on the capital of Beijing, reorganized the Green Army at the hands of the governor-general of Zhili in order to strengthen the government's control, thus leading to the formation of Zhili Lianjun (直隸練軍).However, after the outbreak of the Nian Rebellion led to the further deterioration of law and order in Zhili Province, and as it became necessary to reinforce Zhili Lianjun with Yongying, the Court designed a new capital defense plan under which Yongying were deployed to limited areas, including southern and coastal areas of Zhili, either far away from Beijing or at the spot of the actual fighting, while Zhili Lianjun was stationed around Peking. This new capital defense plan was partly based on the Court's, especially its Board of War's (Bingbu 兵部), suspicion of Yongying, which included former rebels who had surrendered, and were thus deemed untrustworthy to serve around the Capital. This suspicion was further deepened due to the fact that Yongying also served as the governors-generals' militia. As well, the Board of War had intervened several times during the establishment of Zhili Lianjun, owing to its concern over its close relationship with the governor-general of Zhili. The author takes up the Board as an excellent example of how the center's attitudes toward the periphery began to change during the late Qing period.
著者
上出 良一 松尾 光馬
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.108, no.3, 1998

全国大学付属病院108施設ならびに日本臨床皮膚科医学会(日臨皮)東京支部会員554名を対象に,人工的タンニング装置に起因する健康障害のアンケート調査を行った.249施設から回答を得,うち75施設で計119名の健康障害患者を診察していた.男女比はほぼ1:1で,10代と20代が8割近くを占めた.障害の内容(150件,重複あり)は急性障害であるサンバーン様症状84件(UVA蛍光ランプによるもの79件,PUVAによるもの4件,UVBランプによるもの1件),疼痛10件,瘙痒7件,光線過敏症5件,発熱2件,嘔気1件あった.慢性障害である黒子様色素沈着,花弁状色素斑などの色素性病変が16件,その他16件(うち皮膚乾燥6件),眼障害では表層角膜炎が2件にみられた.また病状の記載のないものが7件あった.人工的タンニングに対する意見を寄せた皮膚科医106名中,日焼けサロンに否定的な意見85件,肯定的な意見7件,賛否不明14件であり,否定的意見が約80%と大多数を占めた.皮膚科医としてUVA照射による人工的タンニングの危険性を一般に啓蒙していく必要がある.
著者
多湖 淳
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.2_13-2_35, 2017

<p>国連は第二次世界大戦後の世界において, きわめて重要な意味をもつ国際制度であり続けてきた。特に安全保障理事会 (安保理) は武力行使容認決議によって, 頻繁に軍事制裁行動を加盟国に許可してきた。数多くの軍事行動を行ってきたアメリカも例にもれず, たびたび国連安保理の 「お墨付き」 を得てきた。しかし他方で, すべての事案で決議を得たわけではなく, 場合によってはその決議を得ずに武力行使を行うこともあった。こういった経緯を踏まえ, 本稿は国連の授権決議がもたらす, 功利主義的な観点から 「帰結」 を論じる。そして, ここでは特に拒否権の行使が 「驚き」になり, ゆえに特別の情報を提供するという可能性について検討を行う。友好国である英国やフランスの拒否権が驚きとなり, アメリカの武力行使そのものの評価に大きく影響することをサーベイ実験のデータで示す。</p>
著者
野口 有佑美
出版者
慶應義塾大学法学研究会
雑誌
法学研究 = Journal of law, politics and sociology (ISSN:03890538)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1, pp.215-241, 2021-01

はじめに一 日本のヘイトスピーチ規制法 1 歴史的・社会的背景 2 法成立当時の政治的要因 3 法的側面二 フランスのヘイトスピーチ規制法 1 プレヴァン法 2 ゲソ法終わりに大森正仁教授退職記念号