著者
西村 文宏 牛島 智子 三嶋 あかね 杉野 由起子 柳 茂樹 宮村 重幸 鬼木 健太郎 猿渡 淳二
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.438-444, 2019-11-01 (Released:2019-11-01)
参考文献数
35

【目的】心臓血管外科手術患者における術後せん妄発症のリスク因子を抽出し,せん妄チェックシートを作成する。【方法】心臓血管外科手術を施行した患者267例を対象に,せん妄のリスク因子をロジスティック回帰分析により抽出し,術前に確認可能な因子をもとにせん妄チェックシートを作成した。さらに,2017年度の心臓血管外科で手術を施行した患者131例に本チェックシートを適用し,検証した。【結果】緊急手術,ICU入室期間の延長,高齢,ヒドロキシジンの単剤投与が有意なリスク因子であった。ヒドロキシジン未使用患者を対象としたサブ解析では多剤併用,低体重がリスク因子であった。せん妄を発症した患者の2例に1例はせん妄チェックシートでせん妄高リスクに該当し,本チェックシートの有用性が示唆された。【結論】本研究で作成したせん妄チェックシートを用いることで,術前にせん妄高リスク患者を効率的に把握できることが示唆された。
著者
田岡 洋子 近藤 信子 中川 早苗 H. Taoka 京都短期大学 中国短期大学 広島国際学院大学 Kyoto Junior College /
出版者
京都短期大学成美学会
雑誌
京都短期大学紀要 (ISSN:13483064)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.11-27, 2005-03

施設介護に携わる介護者のための被服について検討するため、京都府・岡山県・大分県内の施設で介護に携わっている人を対象に配票留置法による質問紙調査を1999年および2000年の8~10月に実施した。施設への配布数は314票で、回収率82%である。介護服の評価に関する23項目への評定尺度得点を基に因子分析を行って主要な因子が抽出され、介護療養型医療施設(療養)では「素材特性」「標識性」、介護老人福祉施設(特養)では「審美性」「デザイン性」、介護老人保健施設(老健)では「活動性」の因子得点が高い値を示した。望ましい介護服のイメージについては、形容詞対18組のSD尺度への評定を基に因子分析を行い、特養は「落ち着き」と「容儀性」、老健は「カジュアル性」と「ファッション性」、療養は「親しみやすさ」「ファッション性」「カジュアル性」の因子得点が高い値を示した。望ましい介護服の色では、ピンク・水色・白などの明るく淡い色。望ましい介護服の柄は無地と回答する割合が多かった。望ましい介護服のアイテムとして、特養では、冬はトレーナー・夏はTシャツ・春秋はポロシャツなどの上衣に、下衣はジャージと回答する割合が大きかった。療養では、トレーナー、Tシャツ、ジャージの下衣、ハーフパンツの着用希望が多かった。以上のように三施設における成り立ちや歴史、施設の機能、役割が異なり、介護服に対する考え方も異なることが分かった。
著者
車 相龍
出版者
The Tohoku Geographical Association
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.241-253, 2004-12-31 (Released:2010-04-30)
参考文献数
19

農村地域であった大田は, 鉄道, 高速道路などの内陸交通の要地として都市化を経験した。韓国の科学技術拠点はそういう大田の近隣にある大徳で開発された。この大徳研究団地が大田に編入されたことで, 大田は科学技術都市としての新たな発展の転機を迎えた。国の経済危機の影響で大徳研究団地の雇用が不安定化し, 起業家の道を選んだ研究員が増えたことで, 大田では大徳研究団地を中心とするベンチャー企業集積地である大徳バレーが形成された。これは先端技術産業地域として発展し始めた大田の地域変化を意味する。このような大田における地域変化には, 国や自治体による多様な地域政策的な介入が作用してきた。さらに, 近年, 大田では大徳バレーに基づく革新の持続・強化を目指す新たな地域政策が展開されつつある。ここで革新とは「知識創造による新価値の創出をもたらす新結合」を指す。大田が空間的・主体間・政策的な新たな結合を繰り返しながら経験した地域変化は, 革新を支える関係の構造, すなわち「革新の地域構造」の形成と発展をもたらしたといえる。
著者
荒井 康智 前田 辰郎
出版者
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、近年性能限界が明らかになってきたCPUのSiトランジスタより更に移動度が高い、CPU高速動作が可能なSiGeトランジスタに利用する高品質SiGe結晶育成方法を研究した。主な課題は、Si種子結晶からSiGeが育成する際に、SiとSiGe の熱膨張率差でSiGe結晶に発生するモザイク構造を抑制する事であった。研究の結果、熱膨張率差緩和を期待したSiGe結晶を種子結晶とする方法は、成長SiGe結晶に多結晶が多くみられ、高品質化が困難である可能性が高いことが判り、新しくダブルゾーンでの解決方法を模索する事とした。
著者
石原 久代 橋本 令子 内藤 章江 井澤 尚子 成田 巳代子 橘 喬子 芦澤 昌子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.63, pp.244, 2011

目 的 社会において色は重要な情報伝達手段であるが、色弱者への配慮は一部を除いてほとんどされていない。特に衣服は、コーディネートの観点から色そのものを把握する必要がある。そこで、我々は色弱者に配慮した衣服の色表示を提案するために、これまで色票を用いて色弱者の色認識や色弱模擬フィルタを用いた判別、色名の認知について検討してきた。本報では衣服の色を想定して布地の色の認識について実験を行い、検討した。方 法 試料は、前報の結果から選出した125色に「色覚の多様性に配慮した案内・サイン・図表等用のカラーユニバーサルデザイン推奨配色セット」の20色を加えた145色の綿ブロードを用いた。被験者は、正常色覚者14名、色弱者6名、色弱模擬フィルタを装着した正常色覚者7名で、実験は各試料の色名を回答させる方法で行った。色名はJISの基本色名に推奨配色セットの色名を加えた赤・黄赤、黄、黄緑、緑、青緑、青、青紫、紫、赤紫、白、灰、黒、茶、ピンク、水色、肌色、紺色、クリーム、焦げ茶、ねずみ色、空色、ベージュの23語とし、付与できる修飾語は、うすい、濃い、明るい、暗い、鮮やかなの5語とした。結果及び考察 色弱者は、正常色覚者や色弱模擬フィルタ装着者に比べ、修飾語の使用率が高かった。修飾語について正常色覚者は「うすい」を多く用いているのに対して、色弱者は「明るい」「鮮やかな」の使用率が高く、模擬フィルタ装着者は「暗い」が多かった。色名について、色弱者はピンクや赤紫の使用が多かった。また、色弱者には本来識別しにくいとされる赤や橙、緑、青緑などの使用率も正常色覚者や色弱模擬フィルタ装着者より多く使われた。なお、色名の選択については色弱模擬フィルタ装着者について有意な差が認められた。
著者
徳尾 健一郎 有冨 俊亮 臼井 悟史
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集B編 (ISSN:18848346)
巻号頁・発行日
vol.77, no.779, pp.1542-1549, 2011 (Released:2011-07-25)
参考文献数
7
被引用文献数
3 3

Direct injection (DI) is becoming increasingly popular among gasoline automotive engines, due to its benefits for fuel consumption and engine output. A key component of a DI system is the fuel pump, which must deliver fuel at much higher pressures than a conventional spark ignition (SI) engine. For a DI fuel pump, maximum fuel flow rate, maximum operation speed, electrical power consumptions and noise are conflicting requirements. This paper describes the development of a compact single-cylinder DI fuel pump which achieves increased fuel flow rates while consuming decreased electrical power and generating less noise, compared to conventional DI fuel pumps currently in the market. This is achieved by the introduction of a new concept for the flow rate control valve, so called normally close valve. The construction of this valve allows it to have smallest air gap between magnetic surfaces at valve open position, which makes it possible to generate high magnetic force with less electrical energy. Moreover, the magnetic force is used for handling hydraulic force, which makes it possible to handle higher flow rate. In addition, the flow rate control valve moves passively by the hydraulic forces, such that the impact noise at valve opening is reduced significantly.
著者
近田 拓未
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究は、核融合炉ブランケットなどをはじめとした先進エネルギープラントで開発課題とされている金属の水素脆化および水素の透過損失をセラミックスの薄膜を設置することによって軽減する技術に関して研究を行っており、薄膜の微細構造と水素透過挙動より薄膜中の水素透過機構を解明することを目的としている。最終年度となる本年度は、より詳細な水素透過機構を解明するために、前年度までの研究で基礎的な透過挙動が得られている酸化エルビウムを薄膜材料として用い、固溶や拡散といった透過の素過程について検討した。続いて、普遍的な透過挙動の理解を進めるために薄膜中の水素透過機構のモデル化を行い、計算値と実験値の比較や他の手法への適用可能性を調べた。また、他の薄膜材料の検討として炭化ケイ素を用い、薄膜組織分析と透過試験より炭化ケイ素薄膜中の透過挙動を調べた。透過の素過程の検討においては、基板片面に成膜した場合と両面に成膜した場合の透過試験結果を比較した。両者で拡散律速が確認されたが、両面成膜試料では基板に比べて最大1/100000に透過を低減することがわかり、固溶・拡散過程を繰り返すことによる透過防止性能の大幅な向上が示唆された。透過機構のモデル化においては、基板被覆率や薄膜結晶の平均粒径をパラメータとして計算を行うことで実験値との良い一致を示した。また、結晶構造の違いや不純物等の影響を考慮することにより、他の成膜手法においても適用可能性の向上が期待できることがわかった。炭化ケイ素薄膜においては、マグネトロンスパッタリング法による均一な薄膜の作製が可能であることが示され、基板との熱膨張率差によって生じるクラック等、酸化エルビウム薄膜で得られている挙動と類似性が見られた一方で、表面における吸着の効果といった相違点が存在した。
著者
浅井 禎吾 塚田 健人 橋元 誠 藤井 勲 五味 勝也 大島 吉輝
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, 2014

<p> 生物が作り出す二次代謝物、いわゆる天然物は、その化学構造の多様性は言うまでもなく、合成ライブラリーとは異なるケミカルスペースを占有していることから、依然として新規医薬品開発における魅力的な資源である。そのため、天然物をベースとした新しいケミカルスペースの開拓が重要な課題の一つとなっている。例えば、休眠遺伝子を活用した新規二次代謝物の創出に加え<sup>1,2</sup>、コンビナトリアル生合成<sup>3</sup>や天然物を起点とした多様性指向型合成<sup>4,5</sup>によるpseudo-natural productの創生などの研究も盛んに行われている。</p><p> 天然物の構造多様性は、一次代謝から供給される基本構成要素を原料とした骨格構築に始まり、続く多段階の修飾や転位反応を経る分岐的な生合成経路に起因する(図1)。すなわち、生合成上流の中間体が代謝過程で様々な構造へと変化していくことで、分子多様性が生み出されている。例えば、糸状菌のazaphilone類やmeroterpenoid類の生合成において、非還元型ポリケタイド合成酵素 (NR-PKS) が作る単環式の芳香族中間体は、実に様々な化合物へと変化する(図2)<sup>6,7</sup>。しかし、このような中間体 (multi-potent intermediate<sup>8</sup>)の活用は、もともとの生物資源での代謝だけでは、限定的なものにとどまる。そこで、生合成工学および化学反応を用いた人工的な手法により、multi-potent intermediateを多様なpseudo-natural productに変換できれば、新たなケミカルスペースの開拓に繋がると考えた (図1)。</p><p> </p><p> </p><p> </p><p> 本発表では、"Chemical Epigenetics"を利用する天然物探索法を用いて取得した構造多様なchaetophenol類<sup>9</sup>の、生合成における最初の中間体であるPM-1をmulti-potent intermediateとして着目し、Aspergillus oryzaeでの異種発現系や簡便な化学反応を用いた、多様性に富んだ新規pseudo-natural productへの展開について報告する(図3)。</p><p>① Aspergillus oryzae異種発現系を用いたポリケタイドオリゴマーの作成</p><p> これまで、Chaetomium indicumのドラフトゲノム解析およびAspergillus oryzaeでの異種発現により、 pksCH-2がPM-1の生合成NR-PKS遺伝子であることを明らかにしている<sup>9</sup>。A. oryzae−pksCH-2高発現株を各種条件にて培養し、培養液中の生成物を追跡したところ、PM-1からイソクロメン型環化体PM-2への変換が確認された。さらに、いくつかの条件では、二量化したPO-1およびPO-2の蓄積が認められた。PM-1とPM-2の野生型A. oryzae培養液への添加実験の結果、PM-1からPM-2への環化はA. oryzae内因性酵素により、PO-1およびPO-2はPM-2が非酵素的に二量化することで生成することがわかった。一方、ジアセチル化体PM-2aは二量化しなかった。また、PM-2からPO-1</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>
著者
関野 祐子 諫田 泰成
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.42, pp.S1-6, 2015

オールジャパン体制でのヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)研究への取り組みの中、研究成果の出口としてiPS細胞の創薬応用に対する関心が近年急激に高まっている。特に、医薬品の安全性評価法の開発が期待されており、政府の「健康・医療戦略」には「新薬開発の効率性の向上を図るため、iPS 細胞を用いた医薬品の安全性評価システムを開発する。」と掲げられている。<br> ヒトiPS細胞由来の分化細胞は、誘導条件、培養条件などの違いにより異なる薬理学的特性を示すために、学術論文発表データだけからでは安全性評価法への応用可能性を判断することは難しい。分化心筋細胞は、種々のiPS細胞由来の組織細胞の中でも最も創薬プロセスへの実用化が早いと期待されているが、実際に利用可能かどうかの判断を行うには、多施設間で再現性を確認した頑健な実験プロトコルを用いた検証実験が必須となる。そのためには催不整脈性リスクを評価するための客観的指標を定め、評価法を決定しておくことが必要である。そして、催不整脈性リスクの陽性化合物と陰性化合物により予測性を検証する。<br> 我々は、平成24年度から「ヒトiPS分化細胞を利用した医薬品のヒト特異的有害反応評価系の開発・標準化」研究にとりかかり、多点電極上に高密度に培養した心筋細胞シートを使った実験プロトコルよる実験結果の再現性を検証し、現在多施設大規模検証実験に取りかっかっている。<br> 米国ではICH E14の廃止とICHS7Bの改訂の議論がすでに開始されているが、S7B改訂の科学的根拠を提出するために、Comprehensive in vitro Proarrythmia Assay (CiPA)という日米欧規制機関による国際研究チームを結成している。我々は、科研費研究班を中心に、Japan iPS Cardiac Safety Assessment (JiCSA)を結成して、CiPAと協調している。昨年夏から急激に激化した心臓安全性薬理試験法改訂に関する国際開発競争に対応し、日本の技術のグルーバル化と日本の分化細胞を海外に展開するための研究の強化が望まれる。
著者
叶内 晨 北川 善彬 荒牧 英治 岡崎 直観 小町 守
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.363-395, 2015-12-14 (Released:2016-03-14)
参考文献数
49

ソーシャルメディアサービスの普及により,人々や社会の状況を調査する新しいアプローチが開拓された.ひとつの応用事例として,ソーシャルメディアの投稿から疾患・症状の流行を検出する公衆衛生サーベイランスがある.本研究では,自然言語処理技術を応用して,ソーシャルメディアの投稿から風邪やインフルエンザなどの罹患を検出するタスクに取り組んだ.最先端のシステムのエラー分析を通じて,事実性解析と主体解析という重要かつ一般性のあるサブタスクを見い出した.本研究では,これらのサブタスクへの取り組みを行い,罹患検出タスクへの貢献を実証した.
著者
谷口 匡史 建内 宏重 森 奈津子 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ca0198, 2012

【目的】 腰痛発生要因の約60%が体幹回旋と関連しており、腰痛と回旋動作には深い関係がある。腰痛患者では、体幹回旋時に骨盤回旋に対して脊柱回旋による回旋の割合が増加しており、相対的な脊柱回旋可動性の増加と腰痛が関連することが示されている。また、体幹回旋中の筋活動量に関する研究では、脊柱起立筋や外腹斜筋の異常筋活動が報告されており、この異常な筋活動状態で繰り返される回旋動作が腰痛を引き起こす可能性があるが、脊柱可動性と筋活動の関連は明らかではない。本研究の目的は、腰痛患者における脊柱可動性と筋活動の関連を明らかにすることである。【方法】 対象は、健常群15名(男性9名、女性6名:年齢25.2±5.5歳)および腰痛群15名(男性9名、女性6名:年齢22.5±2.4歳)とした。腰痛群は、Visual Analogue Scale(以下VAS)で30mm以上の腰痛が過去に3カ月以上続いた者とし、測定課題実施時には痛みのない者とした。神経症状を伴う腰痛や内部疾患および精神疾患による腰痛は、除外した。腰痛群における最近1カ月の疼痛は、VAS:平均35.6±23.3mm、腰痛群の健康関連QOL(Oswestry Disability Index)は平均15.1±10.5%であった。測定課題は、立位での体幹回旋動作とした。開始肢位は、両踵骨間距離を被験者の足長および足角10度とし、上肢は腹部の前で組んだ姿勢とした。対象者には、約2m前方で目線の高さに置かれたLEDランプを注視させ、LED点灯の合図にできるだけ速く回旋を開始するよう指示し、約1秒で最大回旋角度の75%以上体幹を回旋させ、その終了肢位で3秒間静止させた。数回の練習後、左右ランダムにそれぞれ5回ずつ実施し、非利き手側への回旋動作を解析に用いた。回旋角度の測定には、三次元動作解析装置VICON NEXUS(VICON社製)を使用し、サンプリング周波数200Hzにて実施した。体幹回旋角度は胸郭セグメントの回旋、脊柱回旋角度は胸郭セグメントと骨盤セグメントの回旋差により算出した。これより最大体幹回旋時における脊柱回旋可動性は、脊柱回旋角度を体幹回旋角度で除した脊柱回旋比として求めた。また、筋電図測定には、表面筋電図TeleMyo2400(Noraxon社製)を使用し、サンプリング周波数1000Hzにて三次元動作解析装置とLED信号を同期したパソコンに記録させた。3秒間の最大等尺性収縮時(MVC)より得られた筋電図波形は、全波整流平滑化し、この値を100%として各課題実施時における筋活動量(%MVC)を求めた。測定筋は、左右両側の脊柱起立筋腰部、多裂筋、腹横筋(内腹斜筋)、外腹斜筋、腹直筋、広背筋上部・下部線維、大殿筋上部線維の計16筋とした。解析区間は回旋開始から終了までとし、体幹回旋角度により規定した。なお、これらの分析にはMathWorks社製MATLABを使用した。統計学的検定は、群間比較にはMann-Whitney検定、腰痛群における脊柱回旋比と筋活動の関連はSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。有意水準は5%とした。【説明と同意】 本研究は、倫理委員会の承認を得て実施した。対象者には本研究の目的を十分に説明し、書面にて同意を得た。【結果】 最大回旋時における脊柱回旋比は健常群28.6±5.9%に対し、腰痛群32.9±4.6%と腰痛群で有意に増加していた。また、筋活動量は、非回旋側外腹斜筋が腰痛群4.92±2.19%に対して健常群では3.42±1.69%であり、腰痛群の筋活動量が有意に増加(p=0.04、効果量: 0.77)し、非回旋側多裂筋の筋活動量が減少する傾向(p=0.09、効果量: 0.64)にあった。腰痛群における脊柱回旋比と筋活動の関連は、両側多裂筋(非回旋側: r=-0.732、p<0.01、回旋側: r=-0.604、p=0.02)と脊柱起立筋(非回旋側: r=-0.514、p=0.04、回旋側: r=-0.557、p=0.03)で有意な負の相関関係が認められた。【考察】 腰痛群では健常群に比べ、相対的な脊柱回旋可動性が増加し、外腹斜筋の筋活動量増加がみられた。また、腰痛群では脊柱回旋比と多裂筋・脊柱起立筋に有意な負の相関関係が得られたことから、回旋時の脊柱回旋可動性が高いほど多裂筋や脊柱起立筋の筋活動が低下していることが示唆された。腰痛群では外腹斜筋の筋活動量増加がみられたが、脊柱回旋比と関連を示さなかったことから、この筋活動増加は脊柱安定化筋の機能低下を代償し、回旋主動作筋としてだけではなく脊柱を安定させる固定補助筋として作用している可能性がある。以上より、腰痛患者の脊柱可動性増加は、主動作筋の過活動ではなく、多裂筋や脊柱起立筋の脊柱安定化作用の機能低下によって生じている可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】 腰痛患者における脊柱回旋可動性と体幹筋活動の特性を明らかにした研究であり、臨床場面における評価・治療の一助となる。
著者
百瀬 あずさ 永井 良治
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.113, 2009 (Released:2009-12-01)

【目的】 脳血管疾患による片麻痺患者を担当し,前鋸筋と腹筋群を中心に理学療法を実施することで肩関節屈曲の可動域やADLに改善がみられた.このことから,上肢挙上動作での前鋸筋による肩甲骨の上方回旋を生じさせるためには,腹筋群による胸郭の安定性が必要ではないかと考えた. そこで,胸郭の安定性に着目し,上肢挙上動作における前鋸筋と腹筋群の筋活動の関係について研究を行ったので報告する.【方法】 対象者は健常男性6名(年齢:21.7±0.5歳,利き手:右)とした.対象者には研究内容を説明し同意を得た.開始肢位は骨盤中間位の坐位姿勢で,肩関節屈曲90度,肘関節伸展位とした.体重の0%,5%,10%の重錘を前腕遠位部に負荷し, 5秒間姿勢を保持した.2回ずつ行い,積分値を算出した.被験筋は前鋸筋,外腹斜筋,腹直筋とした.測定機器は表面筋電図(DELSYS The Bagnoli EMG System)を用いた.徒手筋力検査の肢位において抵抗を加え各筋の最大随意収縮(Maximum Voluntary Contraction,以下MVC)の積分値を算出した.各筋のMVCの積分値を100%とし,各動作における積分値で除した%MVCを算出した. 統計的処理は,一元配置分散分析,多重比較検定,ピアソンの相関係数の検定を行い,有意水準を5%未満とした.【結果】 前鋸筋と外腹斜筋の%MVCは負荷量0%と比較して10%で有意に高値を示した.腹直筋では有意差を認めなかった.また,前鋸筋と外腹斜筋の筋活動,外腹斜筋と腹直筋の筋活動において正の相関を認めた.前鋸筋と腹直筋の筋活動においては相関を認めなかった.【考察】 前鋸筋の起始部である胸郭の安定性が十分な状態で前鋸筋の求心性収縮が生じると,肩甲骨上方回旋が起こる.しかし,起始部である胸郭の安定性が不十分であると,胸郭の反対側への回旋が生じることになる.つまり,同側の外腹斜筋により胸郭が安定することで前鋸筋による肩甲骨上方回旋が可能になると考えられる. 本研究では負荷量増加に伴い前鋸筋と外腹斜筋の活動が増加し,正の相関を認めた.このことから,上肢挙上動作において負荷量増加による前鋸筋の活動増加に伴い,前鋸筋の起始部である胸郭を安定させるために同側の外腹斜筋の活動も増加したと考えられる.次に,前鋸筋の活動増加時において腹直筋の活動増加,相関がない理由を筋線維の走行から考える.前鋸筋と外腹斜筋においては,筋線維走行が一致しているが,前鋸筋と腹直筋に関しては一致していない.このため,負荷量増加により前鋸筋の活動量が増加すると,筋線維走行が一致している外腹斜筋の活動は増加するが,腹直筋の活動は増加せず,正の相関を示さなかったと考えられる. 本研究から,上肢挙上動作における肩甲骨の上方回旋には同側の外腹斜筋による胸郭の安定性が必要であることが確認された.
著者
水岡 良彰 中田 康太 折原 良平
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

テレビ視聴者の長期的な視聴パターンの推移に関する調査・分析は,シーズンやイベント,ライフステージといった視聴者の長期的な習慣の変化を考慮した番組やCMの制作に有効と考えられる.近年のネットワーク対応テレビの普及により,ユーザの利用許諾を得たテレビ機器から視聴データの取得が可能となっている.本研究では,まず視聴パターンにクラスタリング手法を適用することで特定の期間から典型的な視聴パターンを抽出する.次に抽出した視聴パターンをテンプレート化し,特定の期間以上の長期間に渡ってテンプレートに合致するか判定する.さらに判定結果を再度クラスタリングすることで多くの視聴者に共通する視聴パターンの推移を抽出し,抽出した視聴パターンの長期的な推移を分析する.この推移は,長期間継続する習慣や習慣が変化したタイミングなどを一目で把握できるよう可視化して観察する.1年以上に渡る実データの分析結果を示し,本アプローチがテレビメディアの魅力向上に活用できる可能性を示す.
著者
伊東 義信
出版者
The Sessile Organisms Society of Japan
雑誌
付着生物研究 (ISSN:03883531)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.15-18, 1984-03-20 (Released:2009-10-09)
参考文献数
5
被引用文献数
5 7
著者
石原 靖子 奥村 浩
出版者
Japan Society of Corrosion Engineering
雑誌
防食技術 (ISSN:00109355)
巻号頁・発行日
vol.39, no.8, pp.432-440, 1990-08-15 (Released:2009-10-30)
参考文献数
10

Recently, scientific interest to plastic materials has been grown as the important materials in the various fields of biology. However, these materials are not always utilized efficiently. There are various levels of utilization among various fields of biology. In this paper, present situation and problems of the utilization of plastic materials was discussed concentratedly focusing in the fields of neural cell culture and fish farming.
著者
吉田 正夫
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンピュ-タ (ISSN:02854619)
巻号頁・発行日
no.681, pp.160-163, 2007-06-25

経済産業省は、ユーザー企業がシステム開発をITベンダーに委託する際に用いる契約書のひな型「モデル契約書」を策定、この4月に公開した。「"阿吽の呼吸"や"以心伝心"に依存した日本型の契約は、もう通用しない。ユーザー/ベンダー双方の役割・責任分担を契約段階から明確にすべきだ」と、策定委員長を務めた吉田正夫弁護士は強調する。