著者
松本 和浩 加藤 正浩 竹村 圭弘 田辺 賢二 田村 文男
出版者
園芸学会
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.339-344, 2010 (Released:2011-05-27)

秋季の窒素施肥量の違いがニホンナシ‘二十世紀’と‘豊水’の耐寒性と脂質含量に及ぼす影響を調査した。‘豊水’は‘二十世紀’に比べ、多肥による影響を受けやすく、施肥後、樹体内窒素の増加が著しく、耐寒性の上昇が抑制され、春季の生長も阻害された。脂質およびPC含量は‘二十世紀’に比べ‘豊水’で少なかった。両品種とも多肥処理により、脂質およびPC含量の増加が抑制され、脂質の不飽和度の上昇も抑制された。このように、窒素多肥による脂質含量や脂質不飽和度の低下が、耐寒性の低下に影響を及ぼしていると考えられた。
著者
増田 亮一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.218-219, 2017

<p>大豆を磨砕し水に分散させた豆乳は最近,いわゆる "豆乳" とは違った加工素材としての利用が発展している.2015年大会の研究小集会大豆部会では,豆乳ベースの素材開発の背景となる大豆成分の分離技術の原理とその応用を扱った.長年,豆腐凝固過程の解明に取り組まれてきた小野先生には,豆腐用と飲用では豆乳の加熱処理条件が異なり,豆乳コロイド分散系の凝集に関わるタンパク質,オイルボディや共存する凝固剤や各種成分の働きに相違が生じる現象を解説して頂いた.次いで,食品工学的な観点から豆乳を解明し,脂質·油滴に着目されている藤井先生には,豆乳コロイド分散系の構造と凝集過程の挙動の解説,さらに豆乳中の安定なオイルボディをプロテアーゼと加熱処理によって変性させるとクリーム様素材となる実例を示して頂いた.</p>
著者
平島 賢一 樋口 由美 柳澤 幸夫 鶯 春夫 澁谷 光敬
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.21-030, (Released:2021-11-10)
参考文献数
34

目的 近年,高齢ドライバーの免許証自主返納者は増加しているが,自動車は地方都市における住民の主な移動手段としての役割を担っており,免許証返納後の身体機能や生活に対する影響は大きいと考える。そこで本研究では,徳島県内の高齢ドライバーを対象に,免許証自主返納が活動性低下を招き,運動機能および認知・精神機能の低下を惹起するという仮説を予備的検証することとした。方法 対象者は,免許証の返納日まで日常的に週2回以上の運転を継続していた高齢者17人(平均年齢80.2歳,返納群)と,運転を継続している高齢者23人(76.9歳,運転継続群)とした。調査測定はベースラインと3か月後に実施し,活動性の評価は活動量計による3か月間の実測とLife Space Assessment(LSA)を用いた。運動機能と認知・精神機能の評価は,握力,Timed Up and Go testおよびMini-Mental State Examination(MMSE),Geriatric Depression Scale(GDS)を用いた。返納群には免許証返納に関するアンケート調査も実施した。統計解析は評価時期と2群に対して二元配置分散分析を実施した。結果 活動性の指標としたLSAの合計得点は有意な交互作用(P<0.01)を認め,返納群では3か月後に有意に低下した。一方,活動量計による歩数は有意な変化を示さなかった。運動機能および認知・精神機能のいずれの指標にも有意な交互作用を認めなかったが,MMSEとGDSで群の有意な主効果を認め,返納群が運転継続群に比して不良な成績であった。結論 徳島県在住の高齢ドライバーにおける免許証返納3か月後の変化は,日常生活における行動範囲の狭小化を認めた。運動機能および認知・精神機能の低下は観察されなかった。免許証を返納した高齢者は,自動車に代わる移動手段の速やかな確保が必要であると思われた。
著者
北川 源四郎
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能 (ISSN:21882266)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.300-307, 2001-03-01 (Released:2020-09-29)

For automatic extraction of essential information and discovery from massive time series, it is necessary to develop a method which is flexible enough to handle actual phenomena in real world.That can be achieved by the use of general state space model, and it provides us with a unified tool for analyzing complex time series.To apply these general state space models, development of practical filtering and smoothing algorithms is indispensable.In this article, the non-Gaussian filter/smooother, Monte Carlo filter/smoother and self-organizing state space model are shown.As applications of the method, problems of detecting sudden changes of the trend and nonlinear smoothing are shown.
著者
齋藤 仁藏 兼常 康彦 岡崎 芳夫 原田 直 藤本 敬胤 根角 博久
出版者
東北農業経済学会
雑誌
農村経済研究 (ISSN:2187297X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.65-71, 2016

<p>山口県周防大島町KG地区で取り組まれている団地型マルドリ方式を,この方式に最初に取り組んだ香川県観音寺市K組合と比較することによって,その導入条件を明らかにした.K組合は園地整備事業を経て,12戸の農家が参画したパターンであり,共同利用するために大型の施設を導入している.一方,KG地区は現地実証試験の終了後,その園地に設置した施設から周辺の3農家の園地に送水管を延長し,段階を踏んで成立したケースである.既存の施設の仕様は,個別利用を条件としたものであったため,適用園地を拡張しても1日にかん水できる面積は限られており,その範囲には制約がある.また,既存施設を拡張利用するKG地区の取り組みをモデルケースとした場合,K組合との相違点として明らかにしなければならないのは,第1導入者が共同利用への展開を許容する要因である.その要因として,軽微な初期負担,共同利用においてもコンフリクトがほとんど生じない技術的特質産地力を強化することが自身の利益にもつながることの3点をあげられる.以上から,その導入条件として①先導的にマルドリ方式を導入する中核的農家の存在,②周辺農家が技術の特徴や導入効果を観察する期間を設け,段階を踏んで普及を進めること,③周辺の園地条件,④共同利用への展開を想定した施設の仕様,⑤関係機関の支援,⑥事業導入する場合の事業要件の整備,⑦担い手の育成を指摘できる.</p>

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著者
原田 敏丸
出版者
滋賀大学経済学会
雑誌
彦根論叢 (ISSN:03875989)
巻号頁・発行日
no.48, 1958-10
著者
原子 栄一郎
雑誌
環境教育研究 : 東京学芸大学環境教育実践施設研究報告 (ISSN:13416464)
巻号頁・発行日
no.6, pp.33-42, 1996-07-10

1. はじめに/2. RDDAアプローチ : 環境教育を国際的に推進するストラテジー/3. 理論は実践に応用される : RDDAアプローチに見られる理論と実践の関係/4. オルタナティブな理論と実践の関係/5. おわりに
著者
北川 眞也
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.39-39, 2003

1990年代前半のイタリアは激動のときであった。冷戦期の「第一共和制」と呼ばれる政体が崩壊し、既成政党の消滅や経済危機などに直面した。イタリアはグローバル化する世界において、その位置付けを見失った状況にあったのである。それゆえ「イタリア」をめぐって、さまざまな言説が生み出された。政治のレベルでは、新政党が「第二共和制」を構築していくこととなったが、その中でもっとも「イタリア」を問題化したのは、北部に自治を求める北部同盟という政党であった。北部同盟は、既存の政治システムを批判し、国家の連邦制改革を訴えることで、1990年代前半に躍進した。だが1996年には北部をイタリア内のリージョナルな場所から、それとは異なる「パダニア」というナショナルな場所として表象し、分離を目指した。しかも1996年の総選挙で過去最高の躍進をみせ、中央に対する不満を募らせるイタリア経済の中心である北東部から多くの支持を得た。一方で、1996年はイタリアのEUの通貨統合へ向けての国家改革の端緒とも言える。通貨統合への参加が危ぶまれていたイタリアにとっては、かなりの困難が予想されていた。国内からの北部同盟の分離への訴えと、国外からのヨーロッパ統合の圧力は、いずれもしばしば近代性の欠如として特徴付けられるイタリアを「普通の国」へと適合させていくための挑戦と考えられる。発表では、北部同盟による地理的スケールの政治が、イタリアの政治に及ぼす効果に注目する。なぜならこの表象によって、ユーロをめぐる重要な時期にイタリア北部の意味が問題化されるからである。他の政治勢力が、この北部同盟の「パダニア」・ナショナリズムからどのようなことを読み取ったのか。そしてそれが「イタリア」の言説にどのように節合されたのかということを明らかにする。またここから、グローバル化の中で活躍する「イタリア」へ向けての道のりの困難さが伺えるだろう。
著者
北村 光二
出版者
Japan Association for African Studies
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.48, pp.19-34, 1996-03-31 (Released:2010-04-30)
参考文献数
24

In anthropological studies of Africa, hunter-gatherer societies are commonly thought of as being egalitarian. This paper, however, opposes such understanding and regards such as related to the nostalgia held by those who recognize inequality in modern society. This paper reinterprets the so-called egalitarian society by examining the social life of the San, huntergatherers of the Kalahari desert, doing so by considering the evolution of cognition, thought and communication as originating in monkeys and continuing through to modern man.In this evolutional transition from monkeys to man, it is assumed that two of the more important changes in social life concerned the reduction in the significance of dominant-subordinate relationship, and the emergence of food sharing. Among the San, the former is evident in diminishing forms of both dominant arrogance and subordinate self-restraint. With increasing individual independence, reaching agreement with another in a symmetrical role arrangement becomes an increasing important aspect of communication. One voluntarily and adaptively conducts interactions on grounds justified by eventual mutual agreement with the other.With regard to the latter issue, the San, believing it proper, share foods as well as other things of daily use. The formation of an “ownership” concept is important for the emergence of sharing. Any interest in a desired object is mediated by mutual cognition that the object belongs to the “owner” and others are inhibited from direct access to it. Given such a cognitively based indirect relation with an object, one tries to realize agreement with the other's desire by means of sharing that object. As such an action is named “sharing”, it becomes a definite category of social conduct based on social reality, which ultimately gener ates an ideology directing people to share.So-called “egalitarianism” is an ideology held by those who think that a bulwark against egoism, the selfishness of individuals, is needed. Egoism, however, is not a true character of humans, nor of animals. Egoism, and by virtue of contrast, egalitarianism, are ideologies not formulated until the emergence of modern society.
著者
笹川 尚紀
出版者
京都大学大学院文学研究科附属文化遺産学・人文知連携センター
巻号頁・発行日
2020-03-14

京都大学総合博物館 2019年度特別展 文化財発掘 VI 「幕末・近代の出土文字資料」関連講演会資料
著者
八杉 佳穂 Yoshiho Yasugi
出版者
大修館書店
雑誌
梶茂樹・中島由美・林徹編.
巻号頁・発行日
pp.576-579, 2009-04-20

事典世界のことば141
著者
長田 俊樹
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.184-169, 1996-03-31

筆者は、主に言語学以外の自然人類学や考古学、そして民族学の立場から、大野教授の「日本語=タミル語同系説」を検討した結果、次のような問題点が明らかとなった。
著者
ウォン K.
出版者
日経サイエンス ; 1990-
雑誌
日経サイエンス (ISSN:0917009X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.66-74, 2017-11

2015年,ある国際研究チームがケニアのトゥルカナ湖北西岸のロメクウィ3遺跡で330万年前の石器を発見したと発表した。これまでの定説によると,人類は300万年前から200万年前にかけての気候変動に適応するなかで技術に依存するようになり,現生人類と同じホモ属が石器を生み出したとされる。
著者
大内 誠 菊地 拓也 尾崎 千尋 関 喜一 岩谷 幸雄
出版者
視覚障害リハビリテーション協会
雑誌
視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.21, pp.95, 2012

<B>【研究の背景と目的】</B><BR> 白杖を持って歩道を歩いているとき、視覚障害者が最も危険を感じるのは、近づいてくる自転車であると言われている。事実、視覚障害者が自転車と衝突したり、接触して白杖を折られたりする事故が多発している。このような事故から自分自身を守るためには、自転車などの移動障害物がどの方向からどれくらいのスピードでこちらに近づいてくるのかを認識し、とっさに回避する能力を身につける必要があるが、そのような訓練手段はほとんど存在しない。そこで、私たちは、仮想聴覚ディスプレイの技術を応用し、移動物体の位置や移動方向を音像だけで表現するゲームを開発した。これを用いて訓練することにより、移動障害物の回避能力を安全に効率的に向上させることが本研究の目的である。<BR><BR><B>【開発ゲーム概要】</B><BR> プレーヤはWiiリモコンを搭載したヘッドホンを装着し、手にもWiiリモコンを持つ。プレーヤは向かってくる移動物体の音像を聞き分け、自動車(今回は自転車ではなく認識し易い自動車の音を用いた)ならば回避行動を取り、アイテムならば腕を振ってそれを取得する。アイテムを取得できると得点が加算され、自動車に当たると減点される。移動速度は自動車もアイテムも時速25キロメートルである。<BR><BR><B>【訓練効果の検証と結果】</B><BR> 訓練効果を検証するため22名の晴眼者に対して実験を行った。この内半数の11名に対して7日間~10日間の訓練を実施した。訓練は1日当たり3ゲーム(1ゲーム当たり60秒のプレイ時間)連続で行った。また、22名全員に対して訓練の初日と最終日に、転がってくるボールを目隠しした状態で回避する実験を行った。その結果、訓練を行ったグループの衝突回避猶予時間が有意に短縮され、移動障害物が近づいて来た際にとっさに回避行動に移れるようになったことが証明された。なお、訓練を行っていない残りの11名のグループでは衝突回避猶予時間に変化はなかった。以上の点から、本ゲームは移動障害物を認知回避する能力を向上させるために有効であることが明らかとなった。
著者
柴田 立 室町 泰徳 曹 雪慧
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.377-384, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
19

本研究では,撮影対象までの距離が20m以下という限界はあるものの,写真撮影の際に,撮影者の位置,撮影方向と共に,撮影対象までの距離,すなわち撮影対象の位置情報が得られるスマートフォンカメラアプリを開発し,アプリを使用した写真投影法による調査を実施して,機能の確認を行った.また,撮影された写真の撮影者の位置,撮影対象の位置,撮影方向をArcGIS上にプロットし,アプリで得られた情報が地図上に容易に表現できることを示した.最後に,撮影対象の位置情報とモデルの活用により,実測を伴わなくても,異なる撮影対象に対する評価が混在することをある程度避けることが可能となり,撮影対象とその評価データをより良く関係付けられ,撮影対象の位置情報が得られるアプリの有用性の一部が示された.
著者
片山 茜 菊池 雅彦 岡野 圭吾 谷口 守
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.370-376, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
19

2000年代から「目標管理型事後評価システム」が日本の公共部門に導入された。ここには都市計画分野も含まれている。この評価システムは短期的なものであるが、他分野の研究では、この評価システムの長期的な問題を示しているものもある。本研究では、都市計画分野における目標管理型事後評価システムの問題を明らかにするために、過去の評価を題材として、長期的な観点から再評価することにより問題を検討する。そこで、ケーススタディとしてまちづくり交付金の過去の評価を用いて、長期的な観点から評価指標の計測を実施した。その結果、長期的な評価の結果は短期的な評価システムと同様の傾向を示さず、長期的な計画マネジメントが必要であることを明らかにした。