著者
松川 寿也 中出 文平
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.362-369, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
7

本研究では、地域未来投資促進法による特例措置に着目し、特例扱いによる土地利用調整の実態と課題を明らかにしている。同法は、工場や流通施設に限らず大規模商業施設を含めた幅広い施設誘致のために活用されており、8年縛り農地での農振除外など農村活性化土地利用構想と同じ理屈で同法の特例措置が求められていた。また、上位計画の土地利用方針と即地的に整合しない特例措置の活用も見られ、上位計画の方が同法の特例措置による開発に追認して策定されている。さらに、同法の特例措置による開発は、立地適正化計画制度の運用にも影響を与えている。
著者
久保庭 真彰
出版者
岩波書店
雑誌
経済研究 (ISSN:00229733)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.246-262, 2007-07

本稿は,転換点にあるロシア経済の成長を供給サイドと所得サイドの両面から分析することを主要なテーマとした試論である.まず,ロシア経済成長の油国際市場価格の動向への依存という側面と,独立性という側面をもつことを確認する.次に,伝統的成長会計によって供給サイドの考察を行う.これは,(1) Goldman-Sachs の BRICs レポートの批判的考察,(2) 独自のデータ構築にもとづくマクロ成長会計分析,(3) 再編成された産業連関表と資本ベクトルを利用した多部門成長会計分析から成る.さらに,倉林・クルビス・ステューヴェル・作間による交易条件効果の議論を理論的に整理し,ロシアにおける所得 (GDI) と GDP の成長連関を実証分析する.最後に,供給サイド成長予測からみると,ロシア経済が高成長を持続する潜在力を有していることを示唆する.
巻号頁・発行日
vol.[1], 1000
著者
新谷 裕 中谷 壽男 平出 敦 行岡 秀和 森田 大 西内 辰也 池内 尚司 林 靖之 松阪 正訓 木内 俊一郎
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.131-137, 2003

病院外心停止(OHCA)症例に関する検討は盛んに行われてきたが,小児のOHCAに関する検討は不十分である。われわれは大阪府全域で発生したすべての病院外心停止患者(OHCA)の蘇生に関わる事項をウツタイン様式を用いて網羅的に集計しているが,このデータを用いて小児に関する集計結果を報告する。1998年5月から1年間にOHCAは5,047例記録されたが,うち小児(15歳以下)は147例であった。その発生頻度は10万人当り年間10.3で大人(16歳以上)より有意に少なかった。しかし,乳児の発生頻度は10万人当り年間79で,大人より有意に多かった。心原性心停止,目撃のある心停止の割合が大人より少なかったが,bystanderによるCPRの割合は多かった。1か月生存率は大人より高かった。小児のOHCAのおよそ半数が乳児であるが,そのうちの41例に乳幼児突然死症候群(SIDS)の疑いがもたれた。この数値は従来の死亡統計に基づく17という値より多かった。小児のOHCAの内訳は,乳児(0歳)が68例,幼児(1-6歳)が43例,学童(7-15歳)は36例であった。乳児では内因性の心停止が多く,幼児,学童と年齢が上がるにつれ外因性が多くなった。小児のOHCAの内容は乳児,幼児,学童で明らかに異なっていた。このことは小児のOHCAのデータを解析する上で重要である。
著者
伊藤 道哉
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.923-925, 2013

医療技術の高度化,分子標的薬等新薬の保険収載は,画期的な治療効果につながる可能性をもたらしながら,窓口負担の増加・国民医療費の増大をまねき,中医協でも費用対効果の議論が活発化している.国民皆保険制度も半世紀,制度疲労によるほころびを医療者の気合いで持ちこたえるには限界がみえており,東日本大震災の深刻なダメージは,医療崩壊を加速させる.神経内科の領域は,「難病」制度のなかで保険診療をおこなうかぎりにおいて,患者の自己負担をおさえることができたが,高額療養費を巡る議論,がん対策基本法等疾病対策の法制化の潮流の前に,大きな転換点を迎えている.法制化による難病対策の安定財源確保が喫緊の課題である.
著者
渡辺 正澄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.534-539, 1968-05-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
8

かってドイツのガイセンハイム研究所でブドウ酒の研究をした経験のある著者が, 最近のドイツのブドウ酒醸造の技術的進歩を紹介したものである。日本の場合にあてはめても参考になる点が多いと思われる。
著者
萩田 賢司 森 健二 横関 俊也 矢野 伸裕
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_1023-I_1030, 2014
被引用文献数
2

交差点における自転車事故の実態を把握するために,事故当事者の進行方向別の事故発生頻度を明らかにした.千葉県東葛地域の交差点自転車事故を分析対象として,緯度経度情報,当事者の進行方向矢印と事故類型などをもとに,自動車と自転車の相対的な進行方向を求めた.その結果,信号の有無により自転車事故の発生形態が大きく異なっており,信号交差点では,自転車と平行して道路を走行している自動車の右左折に伴う事故が大半を占めていた.無信号交差点では,自動車が交差点を通過する際の手前側の交錯点を走行している自転車との事故が多発していることが示された.また,夜間においては,自動車は交錯する自動車と逆方向から進入してくる自転車と衝突しやすいことが示された.
著者
古川 俊治
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.47-53, 2019

<p>公的医療給付費は40兆円を超え,一般会計からの繰り入れも11兆6000億円(2018年度予算ベース)を超えている。世界的にも突出した水準で公的債務が累積を続ける財政状況の中,今後の社会保障費の伸びは,主として医療・介護費の伸びに起因すると予測されている。高額な医療技術はその原因と考えられており,保険適用のある医薬品の薬価に関して「費用対効果」の考え方の導入が始まった。今後は,革新的ではあるが高価な新医療技術の公的医療保険における取り扱いは,財政に及ぼす影響を考慮せざるを得ないと考えられる。</p><p>限られた財の配分の問題は,「配分の正義」として語られてきた医療倫理学上の古典的課題である。基本的視座としては,平等主義的な考え方と功利主義的な考え方が対立する。広く用いられ,中医協でも採用されたQALY(Quality-adjusted life year)は,後者の1例であるが,マクロの議論と現場の臨床との整合性や,「効果」の評価の仕方などに多くの議論がある。</p><p>今後は,医薬品に限らず,医療行為も「費用対効果」の議論を免れないであろう。終末期医療だけではなく,超高齢者に対する高額な手術や,ADLの低下した患者の透析導入など,実施している医師も問題を感じることは少なくない。専門家集団である学会には,率直な議論を期待したい。</p>
著者
清田 勝彦
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.139-160, 1984 (Released:2017-03-30)

The purpose of this paper is to study the essential characteristics of the contemporary-type juvenile delinquency in relation to its social back-gorunds. First, the author referred to the differences between the traditional and the contemporary types of juvenile delinquency. Secondly, the author pointed out that distinctive tendencies of the contemporary-type juvenile delinquency are "generalization of delinquency" and the increase of "play-type delinquency", and analized the characteristics of each tendency in connection with its social backgrounds. In this paper, the author defines the contemporary-type juvenile delinquency as "the characteristic form of juvenile delinquency in contemporary society and the form of juvenile delinquency which sharply reflects the contemporary social situations". By defining in this manner, it is clear that the form of juvenile delinquency which has the distinction of "generalization" and "play-type" is a tapical form of the contemporary-type juvenile delinquency. But traditional-type juvenile delinquency which is committed by boys with handicaps in their dispositions and/or environments, remains firmly in this society, and the author would like to define much of this type as another contemporary-type juvenile delinquency. Recent tendency of juvenile delinquency is the strong dichotomy between the middle-class, play- and escape-type juvenile delinquency and the traditional, violent- and aggressive-type juvenile delinquency. The author analized this in relation to the duality of contemporary social structures and the social situations of administrated society.
著者
西 慎一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.5, pp.1010-1015, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
10

微小変化型ネフローゼ症候群は,原発性糸球体腎炎の一つである.好発年齢は小児と若年者であるが,高齢者においても発症が認められる.ステロイド薬に対する初期反応性は良好である.しかし,再発率が高い点が問題であり,頻回再発型,ステロイド依存性の症例もある.通常,腎機能低下はみられないが,低蛋白血症が顕著であると循環血漿量が低下しているため急性腎不全を呈する場合もある.
著者
中村 愛 島崎 敢 伊藤 輔 三品 誠 石田 敏郎
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.126-131, 2013
被引用文献数
2

この研究の目的は我々が開発したハザード知覚訓練ツールの効果を評価することである.訓練ツールはタブレット端末と専用ソフトウエア,およびドライブレコーダによって撮影された事故映像を組み合わせてできている.13名の若年の実験参加者は訓練前後に実路上の実験コースを走行した.訓練には,自動車が交差点の左死角から出現する自転車と衝突する事故類型を用い,4場面を3回繰り返した.交差点を左折する時の運転行動が訓練前後でどのように変化するか比較した.実験の結果,訓練後は,交差点の通過時間が増加し,一時停止率が上昇し,歩道の延長エリア進入時の左確認率が上昇し,確認回数が増加し,合計確認時間が増加した.これらは全て統計的に有意差があった.
著者
樋口 克彦 樋口 雅彦
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.72, pp.2847, 2017

<p>最近我々は、外部磁場が印加された超伝導体に適用可能な電流密度汎関数理論を開発した。本理論では、系の熱平衡状態を一意的に決める基本変数として、電子密度、常磁性電流密度の横成分、およびスピン一重項のみならずスピン三重項超伝導体にも適用可能な一般的な超伝導秩序変数が選ばれている。これら基本変数に対するホーヘンベルグ・コーンの定理の証明には、v-表示可能性の問題を回避するために、有限温度の拡張された制限付き探索理論を用いた。今回開発した理論を用いれば、超伝導転移温度や臨界磁場の予言のみならず、超伝導状態におけるドハース・ファンアルフェン効果の議論も可能になる。講演ではその詳細を発表する。</p>
著者
阿部 史佳
出版者
大分大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

性差による口腔扁平上皮癌の病態の違いをみるため、まず40歳未満の若年口腔癌患者を26人(男性15人、女性11人)対象に、生活歴、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染率、エストロゲン受容体α(ERα)とエストロゲン受容体β(ERβ)の発現に差があるか否かを検索した。喫煙者は男性77%、女性患者18%と圧倒的に男性患者に多く、HPV感染率は男性 53.3%、女性63.6%(全体は57.7%)とやや女性に多かった。ERαは癌細胞の細胞質と一部の細胞核に、ERβは癌細胞の細胞核に陽性を示し、両者の発現パターンに男女間での違いを認めなかった。若年口腔癌では性差による差を捉えることができなかったため、次に口腔多発癌患者に対象を変え、口腔潜在的悪性疾患OPMDの有無を検討した。この結果、OPMDを73.3%の症例に認め、その内訳は口腔扁平苔癬OLPが最も多く(46.7%)、次いで口腔白板症(20%)であった。またOLPを併発した口腔多発癌患者の71.4%が女性であったことから、OLPが女性の口腔多発癌の発症と関連することが示唆された。そこで女性の口腔多発癌と男性の単発口腔癌では口腔発癌過程の違いがあるものと仮説をたて、まず早期癌18例(男性12例、女性6例)を対象に癌周囲粘膜における異型上皮の有無を検索したところ、女性では4例(66.7%)、男性では1例(8.3%)で口腔癌から離れた部位にスキップした異型上皮を認めた。このことは女性では多中心的に口腔発癌が生じやすい傾向を示しており、OLPを前駆疾患とする口腔多発癌が女性に多いことと合わせて注目すべき所見と考える。現在、口腔発癌の初期に高頻度に生じることが報告されている遺伝子変異(9p21と3p14領域のヘテロ欠失)に注目してさらに検索を進めている。
著者
山口 拓
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.329_3, 2019

<p> 1991年の東西冷戦構造の終焉によって期待された世界平和の願いは、各地の被支援者が抱える開発課題に切り込むなど、多様な支援事例を増加させた。その際、これまで着手されなかった多くの取り組みが導入された。「スポーツを通じた開発(IDS)」もその一つである。</p><p> 現在、加速度的な成長を遂げるIDSであるが、文化要素を多く含むスポーツを通じた開発を検討するには、文化接合の諸現象を明らかにした上で支援効果の議論を重ねていく必要がある。しかし、幾つかの研究は散見されるものの、スポーツの文化接合に関する研究は極めて少ない。またUNESCOは、古典的なIDSである体育の新たな概念「質の高い体育(QPE)」を打ち出して国際的な支援を開始しているが、応用論的な議論に留まり、その世界展開を考察する際に行なわれるべき文化接合、或いは、その基盤となる文化史研究の蓄積に着手できていない。</p><p> そこで本研究では、フランス及びカンボジアの公文書図書館に所蔵されている史料を分析し、近代教育導入前期(1925年)のカンボジアに関する教科体育の文化史を叙述した。</p>
著者
柳瀬 徹夫
出版者
社団法人 可視化情報学会
雑誌
可視化情報学会誌 (ISSN:09164731)
巻号頁・発行日
vol.17, no.64, pp.18-22, 1997-01-05 (Released:2009-07-31)
参考文献数
4
被引用文献数
1
著者
斉藤 知洋
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.44-56, 2018

<p>本稿では,「就業構造基本調査」の匿名データ(1992・2007年)を用いて,1990年代から2000年代にかけてのひとり親世帯内部の所得格差とその変容について時点間比較を行った.</p><p>分析の結果,以下の知見が得られた.第1に,有子世帯の所得格差は,過去15年間で拡大傾向にあり,とくに独立母子/父子世帯内部で所得格差が大きい.第2に,高学歴化によりひとり親の教育水準が急速に向上したものの,ひとり親世帯の低学歴層への偏りは安定的に維持されている.第3に,要因分解法の推定結果より,世帯所得の学歴間格差が独立ひとり親世帯の所得格差の拡大に寄与しているが,他の成人親族との同居はひとり親世帯の階層差を緩衝させる役割を持っていた.</p><p>以上より,ひとり親世帯内部の所得格差は階層差を伴って緩やかに拡大しており,家族・世帯の「自助努力」を強調する福祉政策は,低学歴層のひとり親世帯の経済状況を悪化させる可能性が示唆された.</p>