著者
寺田 澄江
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国際日本文学研究集会会議録 = PROCEEDINGS OF INTERNATIONAL CONFERENCE ON JAPANESE LITERATURE (ISSN:03877280)
巻号頁・発行日
no.27, pp.69-80, 2004-03-01

From the Ancient to the Middle age, the fundamental poetical structure progressively shifts from a linear discourse, represented by "pillow word (makura kotoba)" or "introductive word (jo-kotoba)", to a "compositive" one, illustrated by "associated words (engo)". This evolution in the discourse strategy takes form, in terms of waka's versification, the establishment of a very clear double structure―splitten into kami no ku (l7syllables) and shimo no ku (14syllables)―which is related itself with the development of the short linked poetry (tan renga) in the later Heian period. This marginal poetical category, generally treated as a simple transitive form between the waka and the linked poetry, has its part in the important changes in the organization principle of the waka.Minamoto no Toshiyori, to whom the originality in the composition was his great concern, devoted himself to the short linked poetry, considering it as a sole poetical form which one can be proud of among the literary works of his time. According to Kenshô, he difined himself as follows:"I'm not a poem teller (or poem singer: uta yomi) but a poem maker (uta tsukuri). I mean, what I do is, rather than regarding fine effects (fuzei), combining exquisite words and structuring them."I will try to clarify in what way Toshiyori's keen concern to the originality is related with this manifesto-- a very expression of the "compositive" discourse-- and with his interest to the short linked poetry.
著者
千葉 基次
出版者
一般社団法人 日本考古学協会
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
vol.6, no.7, pp.1-24, 1999

1895(明治28)年の"鳥居龍蔵第1回南満州地域踏査"は,支石墓研究の幕開けである。鳥居氏は,析木城の「姑嫂石」という「石室」をヨーロッパでいう"ドルメン"とみなした。現在の卓子形(式),北方式支石墓である。さらに,後年に鳥居氏は朝鮮半島にも踏査をひろげ,現在南方式とも分類される碁盤形の支石墓を認めた。鳥居氏は,卓子形と碁盤形二種の存在と分布の違いを指摘し,そして碁盤形を古式と考えた。一系一統論による支石墓研究は,ここに始まる。以後これは,1960年代末から有光教一,甲元眞之,石光濬氏等の一つの母体から複数の形が生まれると考える一系多統論による研究が提示されるまでの枠組みである。しかし,一系一統論による支石墓研究は,終焉していない。<BR>筆者は,遼東地域の積石墓,土器あるいは青銅器の資料をとおして得た知見をふまえ,朝鮮・韓半島地域では同型の磨製石剣が複数の形態の支石墓に副葬されることから,伝統的研究法に疑問を説いた。それは,卓子形は始めから卓子形であり,南方式・碁盤形は元をたどれば遼東半島地域の積石墓にまで遡れるとの指摘であり,"〓石墓"と名付けた。<BR>本文は,卓子形(式)・北方式支石墓を"支石墓"とする。支石墓は,左右の支石に対し,後支石の位置が分類の要であると考え,後支石を左右支石の小口外側に置く小関屯型と,小口内側に置く興隆型とに分けた。両者は,各々に付加要素を持つ支石墓があり,原型・古式の支石墓の推定,そして複数の形態が並行して作られている可能性の変遷と年代について述べてある。支石墓は,構造を共通にして遼寧省,吉林省,朝鮮・韓半島地域の複数の文化の中で作られたと考えられ,地域分離での論議は適切ではないと考える。共通の文化・社会が存在すると考えるのではなく,共通の原型を持ちながら幾つかの地域文化に作られ,固有化の変遷が示されていると考察した。
著者
吉中 みちる 齋藤 陽子 佐々木 恵理
出版者
岐阜女子大学
雑誌
岐阜女子大学紀要 = BULLETINOFGIFUWOMEN’SUNIVERSITY
巻号頁・発行日
no.50, pp.27-34, 2021-02-25

発話能力が未熟な段階の乳幼児と手話やジェスチャーを使ってコミュニケーションするベビーサイン(乳幼児用手話)について,0~24ヶ月児の母親を対象とし,アンケート調査を実施した。育児不安感,子どもとの関係,子どもに対する感じ方,育児幸福感についての回答を分析し,ベビーサインとの相関関係を調べた。その結果,ベビーサインを育児に取り入れた母親は,取り入れなかった母親に比べると,「赤ちゃんが泣くと不安になる」「泣いている理由がわからなくて困る」「自分の育児に自信が持てない」などの項目の数値が有意に低く,母親の育児不安感を低減させている可能性が示唆された。
著者
松本 修 Osamu Matsumoto
出版者
Groupe Bricolage
雑誌
Groupe Bricolage紀要
巻号頁・発行日
no.26, pp.1-7, 2008-12-01
著者
山本 峻平 髙橋 彰 佐藤 弘隆 河角 直美 矢野 桂司 井上 学 北本 朝展
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

デジタル技術とオープンデータ化の進展によりデータベースの活用が注目されている。近年では、インターネット環境の充実により画像や写真に関するデータベースの制作が多くなってきている。例えば、横浜市図書館や長崎大学図書館における古写真データベースなどがあげられる。これらの写真は明治・大正頃の写真や絵ハガキを中心に構成されるが、当時の都市景観がわかるデータベースとして貴重である。発表者らも立命館大学において戦後の京都市電を主な題材とした『京都の鉄道・バス写真データベース(以下京都市電DB)』を公開している(http://www.dh-jac.net/db1/photodb/search_shiden.php)。京都市電DBの活用策としては市電車両を被写体としながらも当時の都市景観が背景として写りこんでいることから、景観研究や都市研究に活用できること、また、年代が戦後から廃線の1978年までの時代であり、記憶の呼び起こし、まちあるきや観光への応用が期待できる。<br>近年、まちあるきが人気を集め、テレビや雑誌などで特集が組まれ、関連する書籍が多く出版されている。その中で、景観の変化や復原、相違点を探すことが行われているが、過去の景観を示す資料は探しだすことは容易ではない。そのような資料の一つとして京都市電DBを活用することが期待される。<br>写真データベースに収蔵されている写真を現地に赴き照合することで、当時の景観との差異が発見でき、まちあるきのアクティビティとして楽しむことができる。また、まちあるきの利用だけではなく、当時の景観との比較から眠っていた当時の記憶が呼び起こされ、記憶のアーカイブなどの研究へも活用できる。<br>本研究は、写真データベースのまちあるきツールとしての有用性の検証を行うとともに、記憶を呼び起こすツールとしての有効性についても検証を行なう。<br>本研究では、国立情報学研究所の北本氏を中心とした研究グループが開発を行っている、アンドロイド・スマートフォン用アプリ、「メモリーグラフ」をアレンジし、「KYOTOメモリーグラフ」アプリを作成し、使用する。アプリには当時の写真が位置情報を持った形で収蔵されおり、それを基に撮影された場所に赴く。次に、スマートフォンの画面に当時の写真を半透明で表示することが出来るので、今昔の写真を重ね合わせ、当時と現在の同アングルの撮影が可能となる。また、撮影された写真には位置情報が付加され、撮影場所の地図による表示やGISと連動することができる。さらに、撮影した写真にはタグが入力でき、コメントや思い出などを入力することができる。これらのデータはスマートフォン内部だけでなく、サーバーに保存することができ、撮影された今昔の写真データや付加されたコメントなどのメタデータをアーカイブし蓄積することができるようになっている。また、当時の写真を現在の風景と重ねる行為は撮影位置や傾きなど撮影時の条件に近づけなくてはならず、当時の撮影者の追体験が得られる。現在、実証実験と位置づけ、プロジェクトメンバー及び近接の関係者数人を被験者として「KYOTOメモリーグラフ」を利用したまちあるきを数回実施する予定である。被験者にはこちらで用意したスマートフォンを貸与するほか、各自のスマートフォンを用いる。今回の実験は、グループで実施し、機器やアプリへの習熟度、安全性、行動観察などを検証する。
著者
HURLER G.
雑誌
Kinderheilk
巻号頁・発行日
vol.24, pp.220-234, 1919
被引用文献数
1 186
著者
切田 正憲 松井 敏夫
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.281-286, 1993-09-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
8
被引用文献数
1

1.ノリ幼芽が乾燥によって受ける障害は1時間では極めて少ないが, 乾燥時間がより長くなるにつれて, しだいに大きくなった。2.ノリ幼芽を淡水に浸漬すると, 30時間浸漬より影響があらわれ, 72時間浸漬ですべての幼芽が枯死した。3.乾燥前に浸る海水比重が1.015からノリ幼芽に障害がではじめ, 1.012では障害が大きくなり, 1.010以下では比重が低くなるにしたがって, 障害がさらに大きくなった。4.乾燥前後に浸る海水比重のうち, 乾燥前に浸漬する海水比重の影響のほうが極めて大きかった。5.ノリ幼芽の生長は, 乾燥前後に浸漬する海水比重が正常海水の1.024よりも, やや低い側で効果的であった。
著者
牧野 鉄雄 藤枝 大 渡川 洋人
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.J29-J36, 2016 (Released:2015-12-21)

放送局で使用される放送事業用連絡無線はディジタル・ナロー方式に変更されたが,音声の明瞭度が低く,音質の改善が望まれていた.そこで,ディジタル連絡無線に使われているボコーダの音質を大幅に改善するボコーダを用いたディジタル連絡無線の音声改善技術を開発.FPGAのソフトウェアで対応できることから,すでに販売された製品にも導入でき,全国の放送事業用連絡無線の改善に大きく寄与する.同様の方式は自治体無線や消防無線にも採用される予定であり,広範な活用も期待される.
著者
村上 幸二 村上 晴美
雑誌
情報学 (ISSN:13494511)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, 2007

件名標目は言葉から目録情報にアクセスするための重要なツールとしてあげられるが,我が国には主要な2つの件名標目表が存在する。本研究では,NDCカテゴリを用いて基本件名標目表(BSH)と国立国会図書館件名標目表(NDLSH)を統合した手法を提示し,同手法を実装した主題検索システムを開発した。提案する手法は3段階で構成する。第1段階はパターンマッチに基づくキーワード入力型検索機能である。第2段階はNDCカテゴリのブラウジング機能である。第3段階は関連するNDCカテゴリの提示機能である。特に第3段階では,第1段階でのノーヒット問題,第2段階でのカテゴリ選択ミスの問題といった弱点を補うための関連カテゴリ提示機能を実装した。
著者
本屋敷 美奈 杉原 亜由子 永井 仁美 高山 佳洋 森定 一稔 柴田 敏之 森脇 俊 笹井 康典 田中 英夫
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.174-185, 2021

<p><b>目的</b>:大阪府における自殺未遂者相談支援事業(以下同事業)を評価し,自殺未遂者本人(以下本人)の支援者との関係の改善につながる効果的な支援方法と内容を明らかにする.</p><p><b>方法</b>:本研究は二段階で実施した.第一段階ではフォーカスグループインタビューにて介入の効果についての仮説とアウトカム指標を定義した.第二段階では仮説に基づく評価を行った.調査対象は2014年 4 月から2015年 6 月の間に府内 5 つの保健所において同事業への同意が得られた自殺未遂者192人のうち,支援が終了した113人の中で,支援記録が入手できた102人とした.調査期間は2015年10月から12月とした.調査方法としては支援記録からケースワーカーが情報を抽出した.分析方法では,援助希求行動,信頼関係,支配性を個々の支援者との関係に影響を与える要素と定義した上で,個々の本人と支援者との関係について各要素を0-4点で数値化し,得点の合計が 6 点以上の場合を支援者との良い関係があるとした.過去の自殺未遂歴や精神科受診歴,保健所相談歴,年齢,性別を調整した上で支援(方法・内容)を説明変数とし,支援者との良い関係の介入後の増加を従属変数としてロジスティック回帰にて分析を行った.</p><p><b>結果</b>:対象者の平均年齢は40.7歳,女性は67.6%であった.良い関係を持つ支援者の数が増えた対象者は64人(62.7%)であった.ロジスティック回帰分析にて有意となった支援は,方法では本人・家族両方への面接(調整オッズ比(以下AOR)13.33;95%信頼区間(以下95%CI)2.44-72.81),内容では本人心理支援の内,ニーズの傾聴(AOR5.87;95%CI2.00-17.22),支援方針の説明と合意形成(AOR5.69;95%CI1.88-17.23),心理教育(AOR3.26;95%CI1.13-9.36),医療機関に関する支援では治療継続支援のみを行った場合(AOR4.72;95%CI1.42-15.71)であった.受療支援・治療継続支援両方ありに該当した 5 人の対象者全員に良い関係のある支援者数の増加が見られた.</p><p><b>結論</b>:仮説及びアウトカム指標の設定は本人の支援に関しては妥当であった.保健所での支援において,本人・家族両方との面接,本人との共同した意思決定,丁寧な受療支援の必要性が示唆された.今後は自殺未遂者・支援者関係の質的評価や対照を設けての評価が課題である.</p>
著者
松中 亮治 大庭 哲治 井手 秀
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.63-72, 2021-04-25 (Released:2021-04-25)
参考文献数
20

近年、日本の地方都市では公共交通の利便性低下や中心市街地の空洞化といった問題に直面している。そのような状況下で、「コンパクト+ネットワーク」は都市を持続可能なものとする方策のひとつとして注目されている。本研究では、日本の36地方都市を対象として現地調査により賑わいを定量化し、その要因について人口規模別に分析した。その結果、人口規模によらず賑わいは自動車密度とほとんど相関がみられないこと、自動車到達圏人口は賑わいにほとんど影響をしないのに対し公共交通到達圏人口は強く影響することを明らかにした。