著者
金 春姫
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.100-109, 2021-01-07 (Released:2021-01-07)
参考文献数
13

このケースでは,中国の外食チェーン海底撈を取り上げる。四川式火鍋料理を提供する同社は,その突出したサービスで中国消費者から熱烈な支持を得ている。これまでサービス品質の向上に苦心してきた中国の外食産業に同社が与えた影響は大きく,業界全体の底上げに貢献している。さらに,高品質なサービスを支える従業員の満足と積極性を引き出すための仕組みにも各界から関心が集まっている。近年はグローバル展開も進めており,世界で最大の中華料理チェーンとも言われている。本稿は,前半で同社の概要,海底撈サービスの特徴と発展の歴史を振り返ってから,後半で高品質サービスと高速成長を両立させる背後の仕組みについてみていく。最後に,コロナ禍への対応を含めた最近の動向と今後の課題についても言及する。
著者
Daiju Fukuda Phuong Tran Pham Masataka Sata
出版者
Japan Atherosclerosis Society
雑誌
Journal of Atherosclerosis and Thrombosis (ISSN:13403478)
巻号頁・発行日
pp.RV17059, (Released:2021-07-12)
参考文献数
82
被引用文献数
4

Sterile chronic inflammation causes cardiometabolic disorders; however, the mechanisms are not fully understood. Previous studies have demonstrated the degradation of cells/tissues in the vasculature and metabolic organs in lifestyle-associated diseases, such as diabetes and hyperlipidemia, suggesting the release and/or accumulation of nucleic acids from damaged cells. DNA is indispensable for life; however, DNA fragments, especially those from pathogens, strongly induce inflammation by the activation of DNA sensors. Growing evidence suggests that DNA-sensing mechanisms, which are normally involved in self-defense against pathogens as the innate immune system, are associated with the progression of inflammatory diseases in response to endogenous DNA fragments. There are several types of DNA sensors in our bodies. Toll-like receptor 9 (TLR9)—one of the most studied DNA sensors—recognizes DNA fragments in endosome. In addition, stimulator of interferon genes (STING), which has recently been extensively investigated, recognizes cyclic GMP-AMP (cGAMP) generated from DNA fragments in the cytosol. Both TLR9 and STING are known to play pivotal roles in host defense as the innate immune system. However, recent studies have indicated that the activation of these DNA sensors in immune cells, such as macrophages, promotes inflammation leading to the development of vascular and metabolic diseases associated with lifestyle. In this review, we discuss recent advances in determining the roles of DNA sensors in these disease contexts. Revealing a novel mechanism of sterile chronic inflammation regulated by DNA sensors might facilitate clinical interventions for these health conditions.
著者
井門 彩織 足立 樹 楠田 哲士 谷口 敦 唐沢 瑞樹 近藤 奈津子 清水 泰輔 野本 寛二 佐々木 悠太 伊藤 武明 土井 守 安藤 元一 佐々木 剛 小川 博
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.257-264, 2014 (Released:2015-01-30)
参考文献数
19
被引用文献数
1

チーター(Acinonyx jubatus)において,種を保存するうえで飼育下個体の繁殖は極めて重要である.しかし,飼育下での繁殖は困難とされ,繁殖生理の解明が重要となっている.本研究では,飼育下での環境変化がチーターの発情に与える影響と要因を探ることを目的として,4頭の飼育下雌チーターの行動観察及び糞中エストラジオール-17β含量の測定を行った.各放飼場には,1日に2~3個体を交代で放飼し,雄の臭いや鳴き声などが雌の行動と生理にどのような影響を与えるのか調べた.その結果,4頭中1頭で,放飼方法を雌2頭交代から雌雄2頭交代に変化させることによって,行動の増加と糞中エストラジオール-17β含量の上昇が見られた.また,一部の雌の繁殖状況が同時に飼育されている他の雌の発情に影響を与えるのかを調査するため,育子中個体の有無で期間を分け,各期間で行動数と糞中エストラジオール-17β含量を比較した.その結果,同時飼育の雌に育子中個体がいた期間では,行動数と糞中エストラジオール-17β含量が発情と共に増加した.しかし,育子中個体の育子が終了した後の期間では,糞中エストラジオール-17β含量の変化と関係なく行動数に増減が見られた.以上のことから,雌チーターにおいては雄との嗅覚的接触が発情を誘発するとともに,同一施設で飼育される雌の繁殖状況が他雌個体の繁殖生理と行動に影響を与えている可能性が考えられた.
著者
岡野 英之
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.19-38, 2019

<p>アフリカ諸国の紛争を扱った政治人類学および政治学の研究において、社会の統治過程に見られるパトロン=クライアント関係の分析は重要な課題の1つとなってきた。これらの議論では、パトロンとクライアントとの間に取り結ばれるインフォーマルな人間関係が統治のツールとなっているという理解が前提となっている。政治学ではパトロン=クライアント関係に対して議会制民主主義と官僚制が対置され、両者を導入することにより、統治の場からパトロン=クライアント関係を払拭できると考えられる。では、官僚制や民主主義が組織運営に導入されると、パトロン=クライアント関係を支えるモラリティは失われるのだろうか。本稿では、内戦後のシエラレオネでバイクタクシー業を統括する全国規模の職業団体「全国商業モーターバイクライダー協会」(以降、「全国バイク協会」と略称する)を取り上げ、その日常業務について考察する。内戦末期に隆盛したバイクタクシー業では、その管理・運営においてある種のパトロン=クライアント関係が重要な役割を果たした。しかし、民主主義と官僚制に基づく組織運営を求める国際社会の潮流ともあいまって、全国バイク協会が設立される際には、官僚制的な仕組みや役員選挙制度が導入された。ただし、これによって従来のパトロン=クライアント関係が払拭されたというわけではない。ライダーたちは、官僚的で非人格的な業務を行うべきである執行役員に対してクライアントシップをもって接する。それに対して執行役員もパトロンシップをもって応えようとする。全国バイク協会の日常的な活動から見えてくるのは、執行役員がパトロン=クライアント関係のモラリティと官僚制のロジックの両者を翻訳しながらライダーとの関係性を築いていることである。</p>
著者
田島 正浩 細川 江利子
出版者
公益社団法人 日本女子体育連盟
雑誌
日本女子体育連盟学術研究 (ISSN:18820980)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.55-73, 2017 (Released:2017-05-18)
参考文献数
8

本研究では,教員養成系G大学におけるダンス実技授業において,履修学生を対象としてサンバの授業を2回(「はじめの段階」 と 「やや進んだ段階」) 実践し,質問紙調査により授業後の学生の意識や学習達成感の変容を考察することによって,立案したサンバの授業の有効性について検証することを目的とした。実施した2回の授業は,各回とも,指導者によるサンバの授業実践,指導案を参照しながら指導内容の振り返り,指導実習(学生が教師役となった展開部の模擬指導など)の3つの内容で構成した。また,各回のサンバの授業の内容と指導については,①基本である 「リズムに乗って友達と関わりながら自由に踊る力」 を身につけることを主軸とし,②サンバのリズムの特徴を感じ取れるような言葉がけや指導法を工夫し,③教師リードと学習者リードという双方向の活動を重層的に組み込んで授業を構成し,途切れのないスムーズな学習の流れを重視して授業を展開するよう工夫した。その結果,授業後の質問紙調査の結果は以下の通りであった。 ①「サンバのリズムで自由に踊ることができそうだと思うか・難しいと思うか」 という質問に,授業前はほぼ半数の学生が 「難しい」,3割強の学生が 「どちらともいえない」 と回答したのに対し,第2回授業後は9割強の学生が 「踊ることができる」 と回答し有意に肯定的な変化が認められた。また,②「サンバのリズムで踊る楽しさ」,③「サンバのリズムの特徴の理解」,④「サンバの授業の組み立て方や展開方法の理解」 については,第1回授業後と第2回授業後では有意な傾向(②)ないし有意に(③④)肯定的な変化が認められ,第2回授業後には全員が「楽しかった」「理解できた」 と回答した。以上より,本研究で実践した教員養成系大学の学生を対象とした授業構成,サンバの授業内容と展開,サンバのリズムの指導法については,対象とした学生たちのサンバのリズムダンスの学習において有効であったと推察された。
著者
熊本 俊秀
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
サルコイドーシス/肉芽腫性疾患 (ISSN:13450565)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.25-31, 2008-10-01 (Released:2010-08-12)
参考文献数
19
被引用文献数
1

筋肉サルコイドーシス, 特に腫瘤型における筋崩壊機序は, マクロファージ, 類上皮細胞及びリンパ球などの炎症性細胞が非壊死性筋線維内に直接浸潤してそこに小肉芽腫を形成し, 直接筋線維を崩壊することが主因であり, 機械的圧迫や虚血によるものではない. さらに類上皮細胞やマクロファージ由来のカテプシンB, m-カルパイン, ユビキチンープロテアゾームが筋の崩壊に重要な役割を果たす. 文献を基に急性筋炎, 慢性ミオパチーを呈する筋肉サルコイドーシスについて述べる. これまで腫瘤が四肢全体あるいは体幹の広範囲に進展した腫瘤型の報告例があるが, いずれも長期間にわたって筋力低下及び筋萎縮を認めていない. このことは, 慢性ミオパチーにおける筋の崩壊機構は腫瘤型と異なっている可能性がある. 急性筋炎, あるいは慢性ミオパチーの臨床所見, とくに進行性の筋力低下と筋萎縮を示す筋肉サルコイドーシスの中には皮膚筋炎, 筋炎-オーバーラップ症候群, 重症筋無力症などの自己免疫性ミオパチーと関連したものがある.
著者
瀬沼 花子
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.34-42, 2004-03-10 (Released:2017-06-30)
参考文献数
13

It is very important to know the "needs of society" for mathematics, and to incorporate them into mathematics curricula. A survey on "The degree of requirement and expectation for mathematics" was conducted for 2060 companies by mail from January to February 2002, and 399 companies replied. From an analysis of the results, it is revealed that the general image of a person as expected by companies is "Being able to know numbers, to do calculation, to make predictions based on data, to consider things logically, to make judgments, to know statistics, and to express things briefly" as a result of mathematics education. From an analysis of opinions about mathematics education, it is revealed that "Improvements of mathematics teaching" such as applications to everyday life, lessons which emphasize interest, etc are expected. In addition, "Logical thinking" and "Creativity" are also expected. Making predictions based on data has not attracted attention up to now and should be emphasized more. Although companies' expectation for statistics is very high, statistics has been shifted to the upper secondary mathematics from the lower secondary in the new courses of study. Moreover, companies pay attention to not only the contents of mathematics but also the ways of teaching.
著者
松田 博嗣
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.691-694, 2011-09-05 (Released:2019-10-22)

1961年,基礎物理学研究所の長期研究会として,Dynamical Problems in Statistical Physicsが取り上げられ,それに付随する短期研究会として,不完全結晶の格子振動,振動子系の力学過程が4年間各地で開かれた.戸田先生は終始この研究会の指導的役割を果たされ,参加者も研究方向に対する意見を自由に述べあい,格子振動グループと呼ばれるようになった.当時の雰囲気や戸田格子の発見などこのグループがその後の統計力学や数学の諸分野に及ぼした影響について概観する.