- 著者
-
武田 利明
- 出版者
- 日本看護技術学会
- 雑誌
- 日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
- 巻号頁・発行日
- vol.3, no.1, pp.66-70, 2004-04-30 (Released:2016-10-25)
- 参考文献数
- 13
- 被引用文献数
-
3
筋肉内注射用薬剤が皮下組織に投与された場合の組織傷害性の有無について, 実験動物を用い検討した. 使用薬剤として, 筋注用製剤である硫酸カナマイシン, 硫酸ストレプトマイシン, アタラックス-P, アスドリンの4剤を選択した. 動物の種差による生体反応の特性や違いについても考察できるように, ラットとウサギの2種類の動物を実験に供した. 投与部位を除毛した後, 筋肉内および皮下組織に薬剤を投与し, 肉眼的検査と組織学的検査を実施した. その結果, 硫酸カナマイシンあるいは硫酸ストレプトマイシンを皮下組織または筋肉内に投与した場合, いずれの投与部位においても限局性で軽度な組織傷害が認められた. 一方, アタラックス-Pあるいはアスドリンを投与した筋肉内には重篤な炎症巣が認められ, 皮下組織では, 疎な組織内を薬剤が拡散し広範囲に潰瘍が認められた. このような傷害像は, ラットとウサギの両者に認められたことから, ヒトにおいても同様の組織傷害が認められる可能性が高いと考えられた. また, アタラックス-Pとアスドリンについては, いずれにもベンジルアルコールが添加物として含まれており, 特にこの添加物を含む筋注用製剤については, 確実に筋肉内に投与することが重要であると考えられた.