著者
熊本 光 白倉 尚貴 高松 淳 小笠原 司
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集 2020 (ISSN:24243124)
巻号頁・発行日
pp.1A1-B11, 2020 (Released:2020-11-25)

Marine debris causes deleterious effects on the environment and economy. It is still a difficult task to efficiently collect marine debris floating on the sea surface. We previously proposed a semi-automatic collection system of marine debris using an underwater robot. However, the success rate is low due to the complicated operations required to collect marine debris. In this research, we propose to use a suction mechanism to simplify the operation of collecting marine debris that enables the underwater robot to collect just by approaching it. The experiments verify the effectiveness of the proposed system with respect to the success rate and time of collection.
著者
中塚 武
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

年輪年代法は、考古学で用いられている最も精度の高い年代決定法の1つである。それは、同じ気候条件下にある地域内の同じ種類の樹木であれば、気温や降水量などの共通の環境因子の変化に応じて、年ごとの成長量、すなわち年輪幅の変動パターンが同じになるという原理に基づいている。年輪幅は測定が容易なので、世界中の様々な地域で年輪年代の決定や気候変動の復元に活用されているが、日本のように森林内に生息する樹木の種類が多く個体数密度が高い温暖で湿潤な地域では、第一に、年輪幅の変動パターンの比較の際の物差しになる標準年輪曲線を、全ての樹種に対して作ることは難しく、第二に、隣接する樹木個体間での光を巡る競争などの局所的な要因によって、年輪幅の変動パターンの個体間相関が低くなるという問題があり、日本ではヒノキやスギなどの年輪数の多い一部の樹木に対してしか適用できなかった。それに対して、年輪に含まれるセルロースの酸素同位体比の変動パターンは樹種の違いを越えて高い相関を示すことから、年輪数の多いヒノキやスギから得られた年輪酸素同位体比のデータを、広葉樹を含む他のあらゆる種類の木材の年輪年代決定に利用できる。この酸素同位体比年輪年代法は、未だ誕生から10年にも満たない新しい手法であるが、この間、標準年輪曲線の構築・延伸とさまざまな技術革新を重ねてきた。ここでは、その原理と課題、未来について、包括的に報告したい。年輪セルロース酸素同位体比の高い個体間相関性は、セルロースの原料が作られる葉内の水の酸素同位体比が、降水(水蒸気)の同位体比と相対湿度という2つの気象学的(日生物学的)因子によって決まることに由来している。また、そのメカニズムを介して、年輪酸素同位体比は夏の気候の感度の良い代替データになることが分かっており、先史時代を含むあらゆる時代の気候変動について、他では得られない高解像度のデータを提供できる。年代決定や気候復元を進めるためには、できるだけ多くの地域でできるだけ古い時代までさかのぼって、年輪酸素同位体比の標準年輪曲線(マスタークロノロジー)を構築する必要があるが、これまでに日本各地で現代から紀元前3000年前まで遡れる年単位で連続的な約5千年間のクロノロジーができ上がっており、それを使って縄文時代から現代までの日本各地、さらに韓国まで含めた様々な地域・時代の遺跡出土材や建築古材の年代決定が成功裏に行われてきている。その中では、膨大な数の年輪の迅速な分析技術、劣化した出土材からのセルロースの確実な抽出技術などが開発され、着実に年代決定の成功率を向上させてきた。また残された課題であった、考古学の研究に資する長周期の気候変動の復元や、遺跡出土材の大部分を占める年輪数が10年程度の小径木の年代決定が、最近になって可能になってきている。以降は、その技術革新の現状を踏まえて、未来の研究の可能性を議論したい。年輪を使えば文字通り年単位の気候復元が可能であるが、考古学では年単位の気候データよりも百年単位の気候データの方が重宝される。一方で年輪には生物学的な樹齢効果が長周期の気候情報と干渉することも分かっていて、一般に年輪から百年、千年単位の気候変動を復元することは難しいと考えられてきた。しかし近年、年輪セルロースの酸素と水素の同位体比を組み合わせて、あらゆる周期の気候変動を正確に復元する技術(Nakatsuka et al., 2020: https://doi.org/10.5194/cp-2020-6)が開発され、さまざまな時代や地域への応用が期待されている。一方でセルロースの酸素(水素)同位体比は、年層内の季節(春から夏の)変動パターンを測定することもでき、気候復元の高解像度化と共に、年代決定情報の高精細化が進められている。これまでに弥生後期や古墳前期といった年単位での年代決定が歴史の解釈の鍵を握る時代を対象に、近畿地方などでセルロース酸素(水素)同位体比の年層内変動のデータベース作りを始めており、その成果は小径木の年代決定に実際に利用され始めている。こうした技術革新の先にある酸素同位体比年輪年代法の考古学への最大の貢献とは何であろうか。遺跡から出土する杭や板、柱などのあらゆる小径木の年代が年単位で決定できるようになると、そのデータの年代別ヒストグラムを作ることで、土器の型式編年に依拠している日本の考古学では難しかった「単位時間当たりの人間活動の定量的な指標」を作成することができる。その知見を、あらゆる周期で正確に復元可能な年輪の酸素・水素同位体比に基づく気候変動の情報と照らし合わせることで、気候変動が人間社会の動態にどのように影響したのか(しなかったのか)を客観的に示すことが可能になる。このように全く新しい視点からの考古学の誕生が期待されている。
著者
岸野 光司 中木 陽子 小野崎 文子 進藤 聖子 大槻 郁子 小林 美佳 小幡 隆 田村 光子 菅野 直子 藤原 慎一郎 松山 智洋 森 政樹 小澤 敬也 室井 一男
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.456-462, 2012 (Released:2012-07-13)
参考文献数
17

ABO血液型主不適合同種骨髄移植では,溶血を防ぐためドナー骨髄液より赤血球を除去する必要がある.今回,自動細胞分離装置SEPAXTMを用いて骨髄液から単核細胞を分離し,得られた単核細胞を移植(骨髄移植)したので報告する.SEPAXは,無菌閉鎖回路で自動的に細胞処理を行う卓上型の機器である.2009年から2011年,ABO血液型主不適合のためSEPAXを用いて単核細胞を移植した骨髄移植13例を解析した.骨髄液の容量が880mlを超える場合,遠心後血漿を除き総量を880ml以下に調整した.先ず,所定のキットを装着したSEPAXを用いて骨髄液からバフィーコートを分離した.次に,SEPAXを用いてFicoll比重遠心法によって単核細胞を分離した.得られた単核細胞は,直ちに移植前処置の終わった患者に輸注された.骨髄液処理前のCD34陽性細胞数は154.6±74.1×106個,分離した単核細胞中のCD34陽性細胞数は73.6±47.8×106個,CD34陽性細胞回収率は49.1±22.8%であった.移植されたCD34陽性細胞数は,患者体重あたり1.43±0.78×106個/kg.骨髄移植後,1例は生着前に感染症で早期死亡したが,残り12例は全例生着した.SEPAXは,骨髄液からのCD34陽性細胞を含む単核細胞の分離に有用である.
著者
渡邉 明
出版者
一般社団法人 日本総合病院精神医学会
雑誌
総合病院精神医学 (ISSN:09155872)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.165-170, 2013-04-15 (Released:2016-11-18)
参考文献数
19
被引用文献数
1

The Confusion Assessment Method(CAM)は簡便なせん妄スクリーニングツールで,世界的に広く使用されている。今回われわれはCAM日本語版を作成し,2012年1月1日から7月31日までに大腿頸部骨折で整形外科入院となった53症例を対象に有用性を検討した。せん妄患者は12例で認め,有病率は22.6%だった。CAM陽性は11例(せん妄10例,非せん妄1例)で,CAM陰性は42例(せん妄2例,非せん妄40例)だった。CAM日本語版は感度83.3%で特異度97.6%,コーエンのκ係数0.83,φ値0.78と十分に高く,せん妄のスクリーニングツールとして優れていると考えられた。日本語版を含むCAMには著作権があり,原著者のサイト(http://www.hospitalelderlifeprogram.org/private/cam-disclaimer.php?pageid=01.08.00)から入手できる。
著者
中井 泉 由井 宏治 阿部 善也 木島 隆康 星野 真人
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

色材の分析で最も信頼できる物質情報を与える、絵画分析に適した世界最先端のポータブル粉末X線回折計と、日本画の染料の分析に有用な光分析装置を開発した。その応用として小布施の北斎館に収蔵の葛飾北斎の浮世絵、男浪、女浪の実地分析を行って、色材の概要を明らかにし、成果はNHKでTV放映された。優れた回折計の開発により、ノルウエーのオスロ国立美術館に招待され、開発した回折計を用いて、世界的な名画、ムンクの「叫び」を分析しムンクが用いた色材について、重要な知見をえることができた。さらに放射光を使った絵画の透過イメージング法を開発し、大原美術館のマティスの絵を分析し、塗り込められた下絵を解き明かした。
著者
赤城 沙紀 阿部 善也 和泉 亜理沙 平山 愛里 村串 まどか 中井 泉 下山 進
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.519-525, 2019-07-05 (Released:2019-08-03)
参考文献数
26

A portable spectrometer capable of measuring both an ultraviolet-visible absorption (UV-vis) and a fluorescence emission spectrum was developed with the aim of nondestructive onsite analysis of be the cultural heritage and artwork. To demonstrate the availability of the spectrometer, we brought it to Hokusai Museum to carry out the analysis of original drawings by Katsushika Hokusai (1760-1849), a Japanese Ukiyo-e painter and printmaker of the Edo period. His two drawings, “Waves” and “Chrysanthemums”, were investigated by means of the UV-vis/fluorescence spectrometer together with portable instruments of other analytical techniques (X-ray fluorescence spectrometry, X-ray powder diffractometry, and micro Raman spectroscopy), in the nondestructive manner. As the results, UV-vis and fluorescence emission spectra revealed that Hokusai had used several kinds of organic pigments and dyes in these two paintings. Generally, it is difficult to identify these organic painting materials by X-ray analytical techniques. Our analytical results demonstrated that Hokusai had created beautiful and deep colors in drawings by a mixing or a recoating of various pigments and dyes such as indigo, laccaic acid, safflower.

1 0 0 0 結婚

著者
宮里 和子 鎌田 久子 坂倉 啓夫 末光 裕子 菅沼 ひろ子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.634-637, 1985-07-25

§続・初体験 前号において問題にした破瓜の習俗は,今日のモラルからみれば,許されることではないと決めつけがちであるが,一種の性教育とみなされていたことを見落としてはならない。 島根県東部の漁村での話に,12,3歳の娘が,まだ娘にならん前に,50歳以上のごけじいさんにオセ(大人)にしてもらうことがあったという。西石見地方でも娘が13歳になると,親が部落内の男衆に頼んで大人にしてもらうのをスケワリと呼んでいたという。福井県でもこのような習俗をアナバチといい,特定の者が,12,3歳の女子を一人前にして,若者(青年男子)の仲間に告げる風があった。破瓜したことを公表するわけで,前記の島根県でも,若連中(青年男子)にオセになったことをふれてもらったというが,これで名実共に一人前になったことで,婚姻可能な成女であることを公表し,結婚でぎることを願ったのである。
著者
拜藤 繁彰 奥谷 拓真 石濱 崇史 末廣 健児 谷埜 予士次 鈴木 俊明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0423, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】着地動作におけるpreactivationは,着地の事前に生じる筋活動で,下肢の関節安定化を担う作用があると言われている。膝前十字靭帯損傷患者では,しばしば着地直後からknee-in&toe-outなどの膝関節不安定性に起因する動的アラインメントの変化が起こる。これらの患者では,筋力低下や関節可動域制限の影響も受けて,安静時の下腿回旋アラインメントの異常を呈することが多く,着地後の動的アラインメント異常を誘発する要因にもなる。着地動作に関しては,着地後の筋活動変化や下肢各関節角度変化の影響について検討されたものが多く,着地動作のpreactivationと下腿回旋アラインメントの関係を検討されたものはない。この関係を検討することで,着地動作における動的アラインメントについて筋電図学的に考察することができると考える。そこで本研究では,筋力低下や関節可動域制限などの機能障害を有さない健常者を対象に,テーピングにより人為的な下腿回旋アラインメント変化が,着地動作における膝関節周囲筋のpreactivationに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は神経外科学的,整形外科学的な既往を有さない健常男性12名(平均年齢25.4±4.2歳,身長171.6±4.3cm,体重61.0±6.2kg)とした。また,ニトリート社製のテープEB50mmを用いて(このテープを貼付するためのアンカーテープにCB38mmも使用)対象者の左下腿を膝関節20°屈曲位で可及的最大の内旋位および外旋位になるように固定した。このときの下腿回旋角度は,上前腸骨棘と膝蓋骨中央を結んだ線と膝蓋腱のなす角度とした。また,上記のアラインメントを保持する際,テープの貼付によって膝関節伸展制限が生じるため,対象者の下腿回旋アラインメントを中間位に保ったまま膝関節伸展を制限するテープの貼付も行った。これらのテープの貼付はランダムに実施した。その後,対象者には上肢の影響を除くため両上肢を胸の前で組ませ45cm台からの左片脚着地動作を十分に練習させ3回実施した。着地動作はメトロノームに合わせて1秒間で実施した。この時,対象者の左内側広筋,左外側広筋,左内側ハムストリングス,左外側ハムストリングよりテレメトリー筋電計MQ-air(キッセイコムテック社製)を用い双極導出法にて筋電図を記録した。そして,重心動揺計(ユニメック社製)からの信号も筋電図と同期収録し,それをもとに接地の100ms前の筋電図積分値を算出し,本研究でのpreactivationとした。また,左側の上前腸骨棘,大転子,膝関節外側裂隙,外果,第5中足骨頭の計5箇所にマーカーを貼付し,側方からデジタルビデオカメラを用い動作を60Hzのサンプリングで収録し,解析ソフト(imageJ)を用いて股・膝・足関節の矢状面角度を算出した。中間位の各筋の筋電図積分値を1とした相対値を求め,内旋位・外旋位の各筋の相対値について検討した。そして各筋の相対値について正規性の検定を行い,正規性を認めたことから内旋位・外旋位のデータを対応のあるt検定により比較した。有意水準は5%とした。【結果】下腿の平均回旋角度は中間位16.1°±1.2に対し,内旋位12.7°±1.4,外旋位19.4°±1.4となった。また各実験後において,テーピングの緩みによる下腿回旋角度変化は生じなかった。preactivation時の矢状面上における下肢各関節の角度変化も認めなかった。筋電図積分値相対値は,外旋位に対して内旋位での内側・外側ハムストリングスに有意な増加を認めた(p<0.05)。【考察】本結果では下腿を内旋位にした際,内側・外側ハムストリングスの筋活動に有意な増加を認めた。Andrewsらは下腿を内旋位にすることで,脛骨前方引き出しなど膝前十字靭帯の緊張を介した筋活動がハムストリングスにみられると報告している。また,浦辺らは着地初期では下腿は内旋し,直後から下腿が外旋運動に変わると述べている。したがって,今回観察された下腿内旋位でのpreactivationにより,着地動作において外側ハムストリングスが着地初期の下腿内旋の制動に,また内側ハムストリングスがその後の下腿外旋の制動に作用しやすくなり,着地後の動的アラインメント変化を軽減させることができる可能性も考えられた。【理学療法学研究としての意義】本研究では45cm台からの着地動作であるが,下腿回旋アラインメント変化によって着地動作のpreactivationに相違を生じることが明確になった。本結果より下腿回旋アラインメントの調整は着地動作においても関節安定化に貢献できる可能性が示唆された。
著者
山田 美喜 沢田 圭佑 飯島 洋介 日野 峻輔 金子 貴広 堀江 憲夫
出版者
社団法人 日本口腔外科学会
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.256-260, 2020-05-20 (Released:2020-07-20)
参考文献数
15

Plerocercoid of Nybelinia surmenicola is found mainly in common squid. Plerocercoid of Nybelinia surmenicola is less recognized and has fewer clinical studies than Anisakis, which is highly pathogenic. However, understanding the clinical and histological features of plerocercoid of Nybelinia surmenicola is extremely important for differential diagnosis. We describe a case of plerocercoid of Nybelinia surmenicola invasion that occurred in the oral mucosa with clinical photographs and histopathological findings. The patient was a 65-year-old woman who presented with foreign bodies of the tongue and buccal mucosa with pain. Biopsy of the foreign bodies was performed to confirm the diagnosis. Symptoms improved after 1 week without active treatment except for antibiotic administration. At the same time, the search results for plerocercoid of Nybelinia surmenicola obtained from commercial squid were added to the findings of this study.
著者
山本 可奈子 横井 裕一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0305, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】反張膝(Genu Recurvatum)は膝関節の障害リスクを高める要因となる。ACL損傷者は女性に多く反張膝を呈する例が多い。近年,若年女性は反張膝傾向にあるが,反張膝を呈する者の各アライメントの特徴を明記している研究は見当たらない。反張膝の有無による骨盤・下肢のアライメント,及び足底中心の差異を調べることとした。【方法】対象は下肢に整形外科疾患を有さない健常女性54名を,反張膝(GR)群15名(21.1±0.6歳),非反張膝(CR)群を39名(20.8±0.8歳)の2群とした。GR群の取り込み基準は膝関節伸展可動域が0°以上且つGeneral Joint Laxity Test(G Test)の膝関節が陽性と定義し,対象肢は膝関節伸展角が高値を示す方とした。(1)膝関節伸展可動域 被験者は背臥位にて,大腿遠位部を把持し膝関節伸展させ,大転子・外側膝蓋裂隙中央・外果を結ぶ線を測定した。(2)足圧中心計測 重心動揺計(Zebrisインターリハ社製)を使用し,被験者は開眼立位で3m先を注視し,測定時間は10秒を3回施行,10秒間の休息を入れた。X方向動揺平均中心変位(X軸変位),Y軸方向平均中心変位(Y軸変位)を指標に用いた。第2趾と踵中央を結ぶ線を左右方向,踵後縁を前後方向0mmの位置に設定し,内側・前方方向を+と定め,X・Y軸変位の値を計測時の足圧中心の座標とした。(3)G Test 肩・肘・手・股・膝・足関節と脊柱の7箇所の弛緩性を対象とし,陽性となる関節の数を加算した7点満点のG scoreを算出した。(4)骨盤・下肢アライメント計測 立位姿勢を1m先に設置したデジタルカメラ(Canon社製)で前額面及び矢状面から撮影を行った。撮影した画像をImage Jにて骨盤傾斜角(PT)・Q-angleを算出した。Leg Heel Angle(LHA)は下腿1/3・アキレス腱中央・踵骨上縁を結ぶ線のなす角度を腹臥位・座位・立位にて計測した。基準値を±0°とし正の値を踵骨回内とした。統計処理には2群間の各項目の差はスチューデントのt検定,2群の各項目にピアソンの相関係数を用い,有意水準は5%とした。【結果】2群の膝関節伸展角はGR群7.4(5.4),CR群1.1(2.7)であった。GJL scoreはGR群4.6(1.3)CR群2.5(1.1)とGR群はGJL test陽性であった。2群間でY軸変位に有意差を認めGR群81.8(12.4),CR群93.6(13.0)とGR群が後方偏位していた。GR群で膝関節伸展角とG score及びX軸変位で0.3,0.63と正の相関,臥位LHAで-0.3と負の相関を認めた。CR群において膝関節伸展角と相関は認めなかった。また,GR群のY軸変位とPTに0.48と正の相関を認めた。【結論】GR群では距骨下関節可動域が大きく,荷重と関節弛緩性の影響で立位LHAでは踵骨回内位となった。GR群の足圧中心は内側かつ後方へ偏位しており,反張膝を呈する者は内側アーチの減少が示唆された。GR群のY軸変位とPTに正の相関を認め,反張膝による後方重心を骨盤前傾増強させ代償している可能性が考えられる。GR群の特徴から反張膝に伴い膝関節及び足部の変形を及ぼす可能性が示唆された。
著者
松代 平治 田知本 正夫 福富 雅夫
出版者
石川県公立大学法人 石川県立大学
雑誌
石川県農業短期大学農業資源研究所報告 (ISSN:09153268)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.22-31, 1989 (Released:2018-04-02)

石川県の水田転換畑の主要作物であるダイズの共生窒素固定活性を,加賀地方の主要な三つの土壌型について比較した.窒素固定量の評価には二組の根粒着生,非着生の等質遺伝系統(A62-1,A62-2;T201,T202)を用い,根粒着生系統との比較に奨励品種"エンレイ"も供試した.またその活性に影響する要因を明らかにするために,各土壌のダイズ根粒菌群の共生窒素固定活性を,土壌の理化学性の影響を除いた条件で調べた.更に各土壌から分離した純粋培養のダイズ根粒菌の窒素固定力も測定した.その結果,ダイズの共生窒素固定活性の土壌間の順位は,等質遺伝系統と"エンレイ"とでは異なった.なお"エンレイ"の場合,その順位は灰色低地土&gt;黒ボク±≧黄色土となり,しかも窒素固定量は等質遺伝系統よりもかなり多かった.これらの結果から,等質遺伝系統の選定には"エンレイ"と生育期間,草型の同じ系統を選ぶ必要があることがわかった.次に土壌のダイズ根粒菌群の共生窒素固定活性は,灰色低地土と黒ボク土の間ではほとんど差がなく,黄色土の活性だけが劣った.しかしこれら三つの土壌から分離した大部分のダイズ根粒菌の窒素固定力には差がなく,黄色土から分離された1菌株だけが特異的に窒素固定力が高かった.以上の結果から,供試土壌でのダイズの共生窒素固定活性に対しては,土壌条件の影響のほうが根粒菌本来の窒素固定活性の影響よりも強く,その土壌条件の中で生物的要因についても調べる必要のあることが明らかになった.
著者
大井 次三郎
出版者
公益社団法人 日本植物学会
雑誌
植物学雑誌 (ISSN:0006808X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.673, pp.1-20, 1943
被引用文献数
1

のぼたん科<br>本邦産のぼたん科ノ植物ハ決シテ澤山ノ種類ガアル譯デハナイガ, 先年筆者ガ臺灣デ採集族行シタ際ニ, 最モ心ヲ引カレタモノノーツデ, 此科全體トシテノ美シイ花ト色々ナ形ノ葉ハ目ヲ樂マセルニ充分デアツタ。北西<b>ニユーギニヤ</b>ノのぼたん科ノ採集品ヲココロヨク貸與サレタ金平&bull;初島兩氏ニ厚ク謝意ヲ表スル。<br>本邦ト共通ノ種類ハ一ツモナク, <i>Otanthera, Melastoma, Medinilla, Astronia</i> ノ四屬ハ臺灣及ビソレ以北ニモアルガ <i>Poikilogyne, Sonerila, Phyllapophysis, Dissochaeta</i>, <i>Astronidium, Kibessia, Pternandra, Memecylon</i> ノ諸屬ハ本邦ニハ未知デアル。採集品ハ <i>Medinilla</i> ガ最モ多クテ18種ニ達シ, 從來同島ニ56種ガ知レテ居タガ, 此所デ11種ガ附加サレタ。ソレニ次イデハ <i>Astronia, Memecylon, Poikilogyne</i> ガ各3種ヅツアリ, 殘リハ各一種ヅツデアツタ。
著者
青山 克実 豊嶋 明日美 小林 暉尚
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.96-102, 2019-02-15

要旨:今回,筆者らは生活行為向上マネジメント(以下,MTDLP)を用いて,統合失調症の40代男性(以下,A氏)の地域生活移行支援を経験した.MTDLPの補助ツールとして,運動技能とプロセス技能評価(AMPS)を用いた.我々は,多職種連携支援をマネジメントし,A氏が退院後に必要で大切な食事の準備に焦点をあてた介入や,退院後の再発予防に対する心理教育などを行った.その結果,生活に対する有能性や認知機能障害が改善し,地域生活にスムーズにつながった.MTDLPは,統合失調症者の地域生活移行支援として有用なマネジメントツールだと考えられた.