著者
コーカー ケイトリン
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020

本発表の目的は、ポール・ダンスの実践に焦点を当てて、エンスキルメントの中でフィーリングと想像力がいかに働くのかを明らかにすることにある。とくに、ポール・ダンスの危険性に着目して論を進める。そこで、運動に関わるフィーリングは自己受容性感覚(プロプリオセプション)だけではなく重力や抵抗の原理、遠心力などと共に、三次元的に動くための方向付けおよびエフォートとなり、想像力は繰り返される動きがスキルに変容する鍵となると論じる。
著者
樋澤 吉彦
雑誌
人間文化研究 = Studies in Humanities and Cultures (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
no.34, pp.45-57, 2020-07-31

本稿は、日本精神保健福祉士協会(協会)より提案されている"Psychiatric Social Worker"(PSW)から"Mental Health Social worker"(MHSW)への名称変更の妥当性について、「社会福祉士」とは別建てで制度化した精神保健福祉士法(P法)制定時の根拠に焦点化したうえで、ごく基本的な事項の整理検討を行うことを目的としている。名称変更についてはむろん様々な意見があるものの、その契機として総じていえることはすなわちPSW の活動領域が「メンタルヘルス」領域全般に拡大しているという点である。この点は名称変更に対する是非とは別に概ね肯定的に了解されていた。この点をふまえたうえで、P法制定の経緯、及びその根拠について当時の厚生省の見解をもとに整理を行った。P法制定議論のなかで「求められていた人材」とはすなわち「医師、看護婦等の医療関係の有資格者」しかいない精神病院において「病棟を離れて病院内外を行き来するパイプ役として精神障害者の社会復帰を支える専門職種」、「精神障害者の社会復帰のために必要な医療的なケア以外の支援を行う人材」であった。またその「対象」は、「社会福祉士」との「住み分け」を意識されたうえでの、主に精神科病院に入院しているか、あるいは地域において生活しているかに関わらず「社会復帰の途上」(社会復帰を遂げていない)にある精神障害者であった。さらにその「業務の範囲」は、あくまで「社会復帰の途上」にある精神障害者が主として治療/支援を受けていることが想定される精神科病院、社会復帰施設、そして保健所等の行政機関が想定されていた。協会によるMHSW への名称変更の根拠の一つとして、精神保健福祉士の業務が「医療的支援」及び「メンタルヘルス課題をもつ国民」全般に対する領域にまで「拡大」してきている点があげられているが、当時の厚生省が明言しているように、少なくともP法制定時の議論ではメンタルヘルスは国家資格としての「精神保健福祉士」の活動領域としては想定されていなかった。その後、2010(平成22)年の障害者自立支援法改正の一つとしてP法改正がなされたが、本改正に至るP法改正検討会では精神保健福祉士の領域拡大がうたわれており、結果的に従来役割に「精神障害者の地域生活を支援する役割」が加えられる方向で改正が行われた。すなわち「社会福祉士」とは別建てで必要とされた精神保健福祉士は端的に「メンタルヘルス」領域における「ソーシャルワーカー」となったのである。P法制定時の経緯とともに「社会福祉士」との「住み分け」の課題を棚上げしたうえで、現時点におけるPSW の活動をそのまま表すのであれば、「MHSW」の略称は正しいという結論となる。
著者
土屋 敏夫 松原 行宏 長町 三生
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.6, pp.900-907, 1997-12-15 (Released:2017-09-25)
参考文献数
16
被引用文献数
1

対象事例に対して一般化された木構造を生成するために, ファジィ決定木の構造学習に遺伝的アルゴリズムを適用した決定木生成手法(FDTGA)を提案する.FDTGAは, (1)遺伝的アルゴリズムを決定木の構造学習に適用する, (2)決定木の構造を染色体へ間接的にコーディングする(3)学習中に複数の解を獲得可能であるなどの特徴を有している.したがって, 多くの属性で記述されるような複雑なデータに対してもコンパクトで精度の良いファジィ決定木を獲得できると考えられる.本論文では, 提案手法の概要とアルゴリズムの説明の後, 数値シミュレーションを行い, 対象事例に対する決定木の構造とファジィ分類ルールの獲得を試みる.獲得されたルールは他の手法によって得られたルールの結果と比較する.その結果において, 獲得された構造と推論ルールを対象事例との関連から考察し, 提案手法の有効性を示す.
著者
矢部 三雄
出版者
一般財団法人 林業経済研究所
雑誌
林業経済 (ISSN:03888614)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.1-16, 2018-07-01

我が国における動力車での牽引を前提とする森林鉄道の嚆矢は、明治42(1909)年に竣工した津軽森林鉄道である。その幹線の延長は67 kmに及び我が国の森林鉄道の中で最長を誇った。我が国最初で最大の森林鉄道が津軽半島に建設された背景は、山林局国有林において、首都圏をはじめとする大都市部で十分な市場評価を受けていなかった青森ヒバの需要拡大が課題とされていた中で、河川流送の脆弱性から国有林に賦存する膨大な青森ヒバの運材が不安定であった状況を解決することだった。このため、津軽、下北両半島から集荷可能な青森市に貯木場が建設され、まずは貯木場から至近であった津軽半島全体の青森ヒバ運材を目的とする津軽森林鉄道が建設された。本論は、津軽森林鉄道が我が国最初の森林鉄道となった背景について、山林局国有林における青森ヒバの置かれた位置及び森林鉄道建設前における青森ヒバの河川流送条件等から明らかにするものである。
著者
山本 博之
出版者
田園調布学園大学
雑誌
田園調布学園大学紀要 = Bulletin of Den-En Chofu University (ISSN:18828205)
巻号頁・発行日
no.11, pp.23-36, 2016

1987(昭和62)年に社会福祉士及び介護福祉士法が制定され、社会福祉士の国家資格化が実現した。その流れを受けて、精神保健福祉士法が1997(平成9)年に制定され、精神保健福祉士の資格化がなされた。社会福祉士及び介護福祉士法制定から30年の年月が経過し、社会福祉士の活躍する場も当時のそれと比較しても格段に増すようになった。社会福祉士及び介護福祉士法はその後2007(平成19)年12月に改正され、その改正とともにソーシャルワーカー養成カリキュラムもその質及び量ともに大幅な見直しがなされて現在にいたっている。「新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン」(2015(平成27)年)や「ニッポン一億総活躍プラン」(2016(平成28)年)といった未来志向の福祉政策プランが提言されている。本稿において、わが国におけるソーシャルワーカー養成課程の歴史を踏まえつつ、北米のソーシャルワーカー養成課程を紹介しながらソーシャルワーカー養成の現状と今後の課題への提言を行う。
著者
尾山 大知 加藤 柊也 丸山 智朗 乾 直人
出版者
アクオス研究所
雑誌
水生動物 (ISSN:24348643)
巻号頁・発行日
vol.AA2021, pp.AA2021-2, 2021 (Released:2021-02-06)

渥美半島太平洋岸の7河川において水生動物の採集調査を行った結果、魚類30種、十脚甲殻類21種、腹足類5種を確認した。また、そのうちの注目すべき14種については標本に基づき詳述した。特に、ユゴイKuhlia marginata、オカメハゼEleotris melanosoma、ミナミテナガエビMacrobrachium formosense、コンジンテナガエビM. lar、コツノテナガエビM. latimanus、トゲナシヌマエビCaridina typus、ヤマトヌマエビC. multidentata、タイワンヒライソモドキPtychognathus ishii、フネアマガイSeptaria porcellanaの9種は愛知県からの初記録となった。これらはいずれも近隣地域では既に確認されていた種であるため、本地域の小河川での調査記録が少なかったことが、初記録種が多かった一因であると考えられる。一方、これら9種にはより南方の地域を主な生息地とする通し回遊種も含まれていたため、地球温暖化の影響によって近年愛知県内で確認されやすくなった可能性も考えられる。
著者
須磨崎 真 磯谷 正敏 原田 徹 金岡 祐次 前田 敦行 高山 祐一
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.58-62, 2015 (Released:2015-07-31)
参考文献数
20
被引用文献数
1 3

症例は30歳,男性.下腹部痛を主訴に来院した.Multi Detector-row Computed Tomography(以下MDCT)所見より病変は上腸間膜動脈により栄養され,回腸の腸間膜付着部に位置することから重複腸管を疑い,同日腹腔鏡下回腸部分切除術を施行した.回腸末端から約80cm口側の回腸に付着する嚢胞性病変を認め,体外にて病変を含めた12cmの回腸を部分切除した.病変部は回腸壁の腸管膜側に付着した6×4cm大の球形の嚢胞性病変であり,消化管内腔との交通は認めなかった.組織学的所見では小腸粘膜と粘膜下層,固有筋層よりなる嚢胞壁を有し,筋層の一部を腸管と共有していたことから回腸重複腸管と診断した.成人発症の重複腸管は比較的稀であり,臨床像も生じる部位によって様々であることから術前診断は容易ではない.本邦における成人発症の小腸重複腸管の臨床的特徴を検討する.
著者
大賀 優 須田 真紀 坂居 隆
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.399-407, 2009-12-31 (Released:2011-01-05)
参考文献数
23

近年Mariën ら (2004) は脳血管障害に起因する成人右利き交叉性失語において通常失語と異なるいくつかの特徴が存在することを主張している。本研究では,彼らの基準である (1) 右利き,(2) 病変が右大脳半球に限局,(3) 小児期の脳損傷なし,(4) 左利きの家族歴なし,(5) 十分な言語検査の遂行評価あり,を満たす当施設6 症例に対し,疾患・年齢・性別・失語型・解剖学的相関 (鏡像型/異常型)・重症度・音声─書字言語乖離・機能予後・言語以外の認知障害の有無,を調査分析した。その結果,(1) 非流暢な失語が多いわけではない,(2) 通常失語でいわれる臨床型─年齢との相関は明らかでない,(3) 機能予後は必ずしも良好ではない,(4) 随伴症状として左半側無視が多い,等の点は彼らの主張する特徴と一致する反面,(5) 男性が圧倒的に多いわけではなく,(6) 発語失行が少ない,等異なる点もみられた。彼らの主張の妥当性に関しては,その分析手法も含め今後さらなる症例の蓄積検討が待たれる。
著者
木村 克己
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.105, no.3, pp.208-226, 1999-03-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
60
被引用文献数
6 7

犬山地域に分布する美濃-丹波帯のコヒーレントなチャート・砕屑岩ユニット(犬山シーケンス)には, 付加に伴って形成されたさまざまなタイプのスラストが発達している.これらの剪断帯の特徴とスリップ方向を南北3kmの木曽川沿いのルートで検討した.観察したスラストは20本であり, うち19本は断層条線, 残り1つはデュープレックスのファブリックからスリップ軌跡を求め, 非対称変形構造に基づいてスリップセンスを決定した.スラスト以外の縦走系断層として, 左横ずれ断層が認められるが, 断層条線の方位や剪断帯の特徴の相違からスラストと区別できる.スラストのスリップ方向の平均値は, 褶曲・傾動の補正後, N60°E-S60°Wの地層の一般走向に直行するS30°Eを示す.西南日本のアジア大陸からの回転変位と大規模屈曲構造を復元した際に, このスリップ方向は, ジュラ紀最後期~白亜紀最初期にかけてアジア大陸下に直交方向に沈み込んだイザナギプレートの相対運動方向にほぼ平行である.

1 0 0 0 OA 波斯紀行

著者
古川宣誉 著
出版者
参謀本部
巻号頁・発行日
1891
著者
中井弘 著
出版者
避暑洞
巻号頁・発行日
vol.巻上, 1878
著者
江幡 眞一郎
出版者
東洋史研究会
雑誌
東洋史研究 (ISSN:03869059)
巻号頁・発行日
vol.11, no.5-6, pp.401-422, 1952-07-25

One of the most important changes, social and political, in the history of ancient China was the birth of a centralized state with the provinces and prefectures under its full control (the chun-hsien system), which had replaced the feudalism (the fengchien system) of the Chou dynasty. It was in the reign of Emperor Wu-ti that the chunhsien system became a firmly established institution. In view of the fact that this system of centralized despotic government with the bureau-cracy as its backbone became a pattern for the succeeding dynasties, this change deserves the historian's close examination. The present article deals with the nature and the political significance of the bureaucracy of Western Han. According to the author's view the two different ways of selecting and appointing the government officials, i.e., jen-tzu (任子) and hsuan-chu (選舉), were antipodal, but complementary, making it possible to keep the class of big clans vigorous by recruiting from among the lower literati. It was in the reign of Emperors Chao-ti and Hsuan-ti that this dual system of appointing the government officials was most effective and fruitful. As time elapsed, however, the high government officials turned into a privileged class with a definite social status, thus paving way to the control of government by the powerful clans in the Eastern Han period. Here may be sought the origin of the social stratification into the landlord-bureaucracy on the one hand and the peasant class on the other in post-Han ages.