著者
山本 晃之 上村 直樹
出版者
一般社団法人日本医薬品情報学会
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.295-300, 2017 (Released:2017-03-17)
参考文献数
10

Objective: The dispensing fee revision of April in 2016 made a review of the assessment of inquiries about prescriptions.  The requirement was added by articles that seemed to be pharmaceutically necessary, showing an increase of responsibility for pharmacists.  Based on this, we performed a discussion while collecting the cases of inquiries about prescriptions.Method: Among the inquiries about prescriptions performed at Jinjo Pharmacy for 4 months starting from April in 2016, we selected 83 cases where a prescription was changed by the pharmacist’s recommendation, based on pharmaceutical information such as drug duplication or drug interaction and confirmation of leftover medicine.  Then, we compared them with the study of inquiries about prescriptions performed by the Japan Pharmaceutical Association in 2015.Result/Consideration: Inquiries about dose were the leading content, followed by those about duplication with other drugs of same indications and appropriateness of dose considering the adjustment of number of days due to residual drug, which showed the importance of medicinal history and prescription records.  It is considered necessary to renew the contents of the prescription record properly, based on the information acquired, while at the same time changing the pharmaceutical history based on those records.  It is thought that an inquiry about prescriptions will be performed appropriately by making a judgment based on such information. In order to do that, updated knowledge about medicine and updated information about drugs is necessary.  In comparison of the two studies, both showed that the drug information on “safety” and “dose and dose regimen” accounted for a large part of inquiries.  Further consideration on them will be necessary.
著者
高山 憲之
出版者
公益財団法人 年金シニアプラン総合研究機構
雑誌
年金研究 (ISSN:2189969X)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.3-31, 2015-12-18 (Released:2017-04-06)
参考文献数
15
被引用文献数
1

世代間問題研究プロジェクトが2011 年に実施した「くらしと仕事に関するインターネット調査」を利用して第3号被保険者の実態を調べた結果、次のような新たな知見が得られた。すなわち (1)女性の場合、年金加入期間の年金被保険者カテゴリー別構成をみると、若い世代では総じて第2号期間が最も長い。この第2号期間の相対比率は年配の世代ほど低い。 (2)年金加入期間のすべてが第3号ないし第1号であり、第2号期間がゼロであるという女性のサンプル割合は総じて5%程度であり、きわめて少ない。 (3)女性の場合、第3号被保険者割合は25 歳以降40 歳前後まで加齢に伴って上昇していき、その後、少しずつ低下する(加齢効果)。さらに同一年齢でみた第3号被保険者割合は総じて若い世代ほど低い(世代効果)。 (4)女性の場合、20 歳台前半時には第2号被保険者が最も多い。ただ、世代が若くなるにつれて20 歳台前半時の第2号被保険者割合は低くなってきている。25 歳以降40 歳直前まで第2号被保険者割合は加齢に伴い総じて徐々に低下していく。 (5)結婚または出産直後からしばらくの間は第3号となる女性が依然として少なくないものの、34 歳以前においては第2号が女性の多数派を占めている。女性のライフコースは多様化しており、第3号期間は全体として若い世代ほど短くなっている。 (6)男性の第3号被保険者は1999 年度からの16 年間に4 万人から11 万人強に増加した。その人数が最も多いのは50~59 歳層である。 (7)男性第3号は本人が倒産等で失職、あるいは健康を害して離職、その後も離転職を繰り返し、現在、パートやフリーランス・嘱託等で就業中または失業者として求職中 の人が多い。病気等で無職の人もいる。その世帯年収は全体として必ずしも高くない。 (8)税制上、103 万円の壁は今や存在しない。ただし、配偶者手当(配偶者控除ではない)の支給基準が実質的に103 万円の壁を形成している。さらに、通勤手当を考慮すると130 万円の壁も実在している可能性が高い。 (9)非正規で働く女性第3号は週20 時間勤務の人が突出して多い。 (10) 夫の年収が高いほど、妻の第3号被保険者割合も総じて高い(夫の年収600万円まで)。 (11)夫の年収は共働き世帯よりも専業主婦世帯の方が全体として多い。他方、世帯ベースの年収に関するかぎり、専業主婦世帯が共働き世帯よりも裕福であるとは必ずしも言えない。専業主婦世帯の中には世帯年収の低い世帯も、それなりに多く存在する。 (12)夫の年収が900万円以上になると、そのすべてを正確に把握していない妻が少なくない。
著者
葛谷 健 伊藤 千賀子 佐々木 陽 清野 裕 田嶼 尚子 土井 邦紘 布井 清秀 松田 文子 上畑 鉄之丞
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.173-194, 1992-02-29 (Released:2011-03-02)
参考文献数
66
被引用文献数
4

1) 疫学データ委員会では, 日本人における糖尿病の有病率と発症率に関する既発表の資料を収集し, 日本人糖尿病の有病率と発症率を推定し, それらの資料のデータを利用しやすい形にまとめて提供することを目的とした. 主要資料を選択して表にまとめた.2) 地域調査による成人の糖尿病調査から得られる情報はNIDDMの有病率にほぼ限られる. 尿糖二などで一次スクリーニングを行って陽性者のみに糖負荷試験を行う方法と, 全員に糖負荷試験を行う方法とがあるが, 糖尿病の有病率は後者で高い傾向を示した.1984年以前の報告では1970年の日本糖尿病学会基準で判定されているものが多く, 40歳以上の有病率は一次スクリーニングを行う方法では, 多くは1.3~4.7%であった. 1985年以後にはWHO基準で判定されるようになり, スクリーニングを行った場合, 40歳以上の有病率は2.1~5.4%, 直接糖負荷試験を行う方法では4~11%程度となった. 男女比は2: 1ないし1: 1で糖尿病は男に多かった. WHO基準では1970年の糖尿病学会基準よりも糖尿病と判定されるものの率は少なくなるはずであるが, それでも1990年代には約10%という高い値が報告されている.3) 18歳未満発症の糖尿病の発症率は10万人あたり年間0.8~2.3人で, 10~14歳に発症のピークがあった. 有病率はIDDMでは, 1万人あたりほぼ1.0人, NIDDMは約0.5人で, 両者を区別しない場合は0.9~1.5人程度であった.4) 原爆被爆者は約10万人が継続的に検診を受けており, 糖尿病に関してもよく調査されている. 糖尿病の発症について被爆の影響は否定されているので, そのデータは地域調査と同等のものと見なされる. 被爆者は現在43歳以上となり, その有病率は現在男9.9%, 女8.0%と推定される. 糖尿病有病率はあきらかに経年的増加傾向を示している.5) アメリカ (ハワイ, ロスアンゼルス, シアトル) に移住した日本人1世, 2世では日本在住者に比べて糖尿病が15ないし2倍に増えている. 8最近のシアトルでの調査では45歳以上の2世で男21.5%, 女16.0%が糖尿病であった.6) 政府刊行物の中では厚生省が定期的に行っている患者調査と国民生活基礎調査 (以前は国民健康調査) のデータに糖尿病が含まれている. これらは医療機関を受診中のものを対象としており, 得られた推定有病率は, 地域調査で得られた数値よりも低いが, 全年齢を扱っていると, 長年にわたり同じ方法で調査されているので経年的な推移が分かる点に特徴がある. 糖尿病の推定有病率はこの30年余りの間に激増した. 1987年の患者調査では副疾患としての糖尿病も加えると1.4%(全年齢), 1989年の国民生活基礎調査では1.1%であった.7) これまでの文献を通覧して, 今後の調査, 報告では特に留意すべき点として, 対象集団の年齢構成, 性別などを明確にすること, 既知糖尿病患者の取扱をはっきりさせること, 検査した集団が対象集団をよく代表しているかどうかの検討, 75g GTTで判定すること, 空腹時血糖値, 2時間血糖値の分布を示すこと, 受診しないものについても情報を集めること, などが望まれる.
著者
丸山 道生
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.191-198, 2015 (Released:2016-02-25)
参考文献数
10
被引用文献数
5 2

「術後の食事」に関して,「手術後,消化管運動が回復してから,流動食から開始し,徐々に通常の食事にステップアップして行く」と考え方は全世界共通であった.これまで,世界各国には,それぞれの国や地域の食文化を反映した独自の術後食があり,術後食は流動食から常食までのステップアップがある段階食が一般的であった.近年,NST活動や入院期間の短縮の必要性とクリニカルパスの普及の影響などで,術後食の改革の必要性が増していた.それに加え,術後早期回復を目的としたERAS が普及することで,本邦でも術後早期の経口摂取の開始,段階食の見直しが進んでいる.これには手術が安全に行われ,かつ低侵襲化されたことが前提となっている.今後,術後栄養管理は経口栄養が主流となっていくと予想され,術後食の科学的検討が望まれる.
著者
関根 一希 渡辺 直 東城 幸治
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.119-131, 2020-12-25 (Released:2021-10-21)
参考文献数
65

Ephoron of polymitarcyid mayflies in East Asia includes three species, E. shigae, E. limnobium, and E. eophilum, but the former two species are not separated on their molecular phylogenetic trees. All-female automictic parthenogenetic reproduction is known only in Japanese E. shigae in which bisexual and unisexual populations are distributed across Japan without any clear biogeographic boundaries. Population genetic structure studies show the parthenogenetic origin occurred only once in western Japan and then expanded all over Japan. In some rivers, both reproductive types coexist, and parthenogenetic females occupied the population within 20 years after unisexual introduction. Ephoron shigae has univoltine life cycles, and adults emerge synchronously in early autumn in bisexual or unisexual populations. It is a future problem for this ecologically interesting mayfly to inhabit the same rivers with both reproductive types.
著者
加賀 勝 細谷 聡
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.25-30, 1994-03-30 (Released:2012-11-27)
参考文献数
18

The purpose of this study was to clear mechanical characteristics of the Japanese bow, and find the energy transfer efficiency. The exeperiments were made by five classes of bows, arrows and strings heights. The potential energy(PE)was calculated on every bows.And the kinetic energy (KE)was calculated from shooting experiment according to arrows and strings heights.Then, the energy transfer efficiency was obtained on KE/PE X 100.The results were as follows:1, Relation between the drawing length and the drawing force shows a inverted S curve. This characteristic is constant regardless of the bow's strength and strings height.2, The potential energy is increased by the drawing length. The general tendency that the strong bow has high potential energy was evident.3, The minimum of the energy transfer efficiency lies on 15cm of the strings height in the experiment according to five classes strings height.4, In this study, the energy transfer efficiency is increased until 29g of the mass of arrow. And more than that, the energy transfer efficiency was decreased. It seems that there is a matching point of bow and arrow.
著者
川口 良
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.144, pp.121-132, 2010 (Released:2017-04-15)
参考文献数
13

動詞否定丁寧形の「ません」と「ないです」の2形式の併存を「言語変化」の視点から捉え,規範形の「ません」形が「ないです」形へシフトする要因を探った。発話行為に着目して自然談話を分析した結果,「ないです」形へのシフトは,「情報要求(疑問文)」より「情報提供(平叙文)」において大きいことが分かった。情報提供の「ないです」形は,相手の示した「肯否」の対立について,「否定」の判断を伝達するのに使われる傾向が窺えた。これは「聞き手の理解しやすい形式を作り出す」という言語変化の要因と考えられる。情報要求における「ないです」形へのシフトは,やはり「否定」の意味が顕在化する命題否定疑問文において確認されたが,発話行為が「質問」→「確認要求」→「勧誘・依頼」へと話し手の意図の実現要求へ向かうにつれて消滅していった。これは,聞き手への配慮を示す必要性に伴い,丁寧辞が先行する「ません」形がシフトしにくくなるためと思われる。
著者
松尾 洋
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第51回日本生態学会大会 釧路大会
巻号頁・発行日
pp.829, 2004 (Released:2004-07-30)

樹木の種子生産数の年変動は、その種子を産卵場所とする昆虫の個体群動態に多大な影響を及ぼす。特に、ほとんど種子生産がなかった年は致命的である。昆虫の休眠遅延(1年以上の休眠)はそのような予測不可能な変動環境に適応した現象として、様々な分類群で知られている。エゴノキの種子に産卵する年1化のエゴヒゲナガゾウムシもまた終齢幼虫の段階で休眠遅延を示す種である。これまでの研究から、1)室内・野外環境において同じコホート内で休眠年数に1〜4年の変異が存在し、2)2年目に羽化した個体は1年目に羽化した個体よりも大きいことがわかっている。大きな個体ほど休眠遅延する傾向は他の昆虫でも報告されているが、体サイズと相関のある他の要因が重要である可能性も残されている。本研究では、体サイズだけでなく、産卵時期および幼虫期の食物の質・量が休眠遅延率(休眠延長個体の割合)に与える影響を調べた。7月28日、8月1日、10日、20日の4回、果実のついた枝に網をかけ、雌10〜21個体に個別に産卵させた。終齢幼虫の生重および幼虫が発育した種子の体積を測定し、室内環境下で飼育し、羽化させた。また、幼虫の体サイズに影響をおよぼす、種子の体積・生重・乾重を繁殖期間を通して測定した。その結果、次の事が明らかになった。1)羽化個体と休眠延長個体が同じ母親から生じた。2)繁殖期後期に産卵された幼虫は前期に比べて終齢幼虫サイズが増加し、休眠延長率も増加した。また、3)繁殖期間中、種子の体積はほとんど変わらなかったが、種子の乾重は3倍以上に増加した。これらの結果から、エゴヒゲナガゾウムシでは、繁殖期後期に、十分成熟した種子に産卵された個体ほど休眠遅延する傾向があることがわかった。「寝る子は育つ」ではなく「育った子はよく寝る」である根拠を示すとともに、なぜ大きな個体が休眠遅延するのかを考察する。
著者
佐々木 大介
出版者
成蹊大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

被験者への聞き取り調査から、日本から派遣された日本人教員を中心に教育が行なわれていたようで、被験者が教わった教員は日本人であったというケースが非常に多かったようである。授業では手話が多用されていたようであり、被験者の手話言語能力には確かなものがあった。その教育においては(書記)日本語の獲得が決して軽んじられていたということではないようである。一方、語彙比較研究に関しては、「同一」と「類似」を合わせた割合が、日台・日韓の各手話言語間で48-55%で、北朝鮮手話・韓国手話間では約56%と高かった。
著者
中野 毅
出版者
筑波大学
巻号頁・発行日
2001

筑波大学博士 (文学) 学位論文・平成13年3月23日授与 (乙第1707号)
著者
八木橋 勉 齋藤 智之 前原 紀敏 野口 麻穂子
出版者
東北森林科学会
雑誌
東北森林科学会誌 (ISSN:13421336)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.63-65, 2014-10-31 (Released:2017-07-26)

従来,カブトムシ(Trypoxylus dichotomus septentrionalis)が自ら樹皮を傷つけて樹液を得るという報告はなかったが,近年シマトネリコ(Fraxinus griffithii)の樹皮を傷つけて樹液をなめる例が報告された。しかし,シマトネリコは庭木や公園樹として導入された樹木で,本来の分布域は亜熱帯から熱帯であり,カブトムシの分布域とは重なっていない。そのため,この行動がカブトムシ本来のものであるのか不確実であった。本研究では,岩手県滝沢市において,在来種であるトネリコ(Fraxinus japonica)に,野生のカブトムシが傷をつけて樹液をなめる行動を観察した。これにより,この行動がカブトムシの分布域に存在する在来の樹種に対しても行われる,カブトムシ本来の行動であることが明らかになった。
著者
難波 祐三郎
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

性同一性障害に対する機能的再建手術の一つに異性間の生殖臓器移植が考えられる。精巣移植においては大動脈を犠牲にする従来の方法から、超微小外科を応用した移植法を開発した。同性間精巣移植ではテストステロンの分泌と精子形成を確認した。同性間卵巣移植ではエストロゲンの分泌と妊娠を確認した。異性間精巣移植ではテストステロンの分泌を確認したが celltrafficking は確認できなかった。