著者
篠原 弘樹 坂本 優紀
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.253-266, 2020 (Released:2020-10-09)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

本稿は,メキシコ合衆国テキーラにおける観光地の形成プロセスを観光に関わるアクターの取組みと景観整備に着目しながら明らかにした.1990年代後半にツアー会社主導で始まったテキーラの観光は,2000年代に入り行政の観光促進プログラム導入や世界遺産登録,テレビドラマの舞台化などの外的要因を受け観光地としての整備がなされていった.観光地化のプロセスではツアー会社やガイド,蒸留所など観光に関わるアクターが登場し,積極的に観光を促進した.当初,各アクターはテキーラのローカル性を強調する事物や事象を積極的に採用していったが,観光が発展するに従いメキシコを象徴するような対象も利用するようになった.現在は大手蒸留所が大規模な観光施設を建設し,観光客を誘引する主要なアクターとなっている.
著者
矢野 正隆
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.160-165, 2016-04-01 (Released:2016-04-01)

本稿では,デジタル・メディアの保存に関する課題を踏まえて,メディア一般を対象とする保存の在り方を再検討する。まず,一般にメディアは,それが伝える意味内容(メッセージ)とこれを載せるモノ(キャリヤー)の二つの側面からなること,また,そのメッセージには,その内容に当たる側面だけでなく,発信・受信という伝達行為そのものに関わる側面も含まれることを指摘する。次に,メッセージをメディアのどこに見出すかは,受信者によって異なるが,その相異が,博物館・図書館・文書館が収集の対象とするメディアにおいてそれぞれどのように現れるかを考察する。これを通じて,メディア保存の現状に一石を投ずることを目的とする。
著者
ポルトフ アンドレイ V.
出版者
海人社
雑誌
世界の艦船
巻号頁・発行日
no.755, pp.187-193, 2012-02
著者
常石 秀市
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.69-73, 2008 (Released:2010-12-06)
参考文献数
10

ヒトにおいて視覚は最大の情報量を得る感覚器であり,その発達は胎児期から始まり幼児期にかけてめざましく進む.その過程には遺伝的要因のみならず,環境要因も大きな影響をもつ.視機能は視力だけでなく,両眼視(立体視),視野,視覚認知も含めたバランスのとれた発達が重要である.聴覚は出生時にはかなり完成しており,言語発達に不可欠なものである.視覚・聴覚中枢の発達にはそれぞれ臨界期があり,発達障害を早期発見しないと修正治療が不可能である.触覚も出生時にほぼ完成しているが,その有効な情報処理には視覚をはじめとした他の感覚との協調と経験が不可欠である.これら感覚器から得られた情報は,姿勢・運動の巧緻性のために不可欠なものである.
著者
須永 剛司 永井 由美子
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究特集号 (ISSN:09196803)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.4-12, 2014-03-31 (Released:2017-11-27)

「デザイン思考」という枠組みが提示され、今さまざまな学問が横断的な知として「デザイン」を教育プログラムとして設置しはじめている。しかし、デザインを「思考」の組み立てとしてのみ捉えることはその営みの本質を取り逃がすことになる。デザインすること、つまり「デザインニング」には思考とともにそれを駆動する表現行為がある。いまデザインの共同体に求められているのは、未知の物事を描き、創造し、具体に仕立て上げる力と、それを駆動している本物のデザインの知の成り立ちを明らかにすることだ。そんな思いから著者らはデザインの実践家たちが「デザインの知」を描き出す試みを実施した。本稿では、デザイナーたちが自らのデザイン実践を省察し、デザインをいかに「行い」、デザインすべき課題をいかに「知る」のかを語りその意味を探る試みを報告する。またそこから見出されたデザインの思考と行為を形づくっている3つ原理、「じゃない感」「結果と問いのカップリング」「3種類のコミュニケーション・モード」を、実践するデザイナーの「デザイン知」として考察する。
著者
端詰 勝敬 竹内 武昭 橋本 和明
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.671-674, 2020 (Released:2021-05-27)
参考文献数
10

Central sensitization is a neurophysiological state in which the central nervous system is overexcited in response to stimuli. It is thought to be associated with painful diseases such as migraine and fibromyalgia, as well as conditions that cause functional physical symptoms. In our study, we found that those with chronic headache had higher central sensitization and higher levels of central sensitization have been shown to reduce quality of life.
著者
佐々木 あや乃 藤井 守男
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

研究代表者は、『精神的マスナヴィー』の逸話部分の下訳を終え、出版に向け訳書の解説執筆に着手した。研究分担者は、ルーミー研究に不可欠な基本文献蒐集をおこない、『精神的マスナヴィー』全篇の翻訳も鋭意続行した。『精神的マスナヴィー』の数多の写本の存在が知られているが、本研究では、当初の予定通りニコルソン版を底本とし、データベースを作成する作業を進めるため、研究代表者はエンジニア班と校閲・入力班を組織し、本年度はほぼ毎月研究会を開催し、進捗状況を報告しあう機会をもった。作業途中で、イランの言語・文学アカデミー(ファルハンゲスターン)から最新のマスナヴィーが出版されたとの情報を得て最新版を入手したものの、ニコルソン版との差異がかなり激しいことが判明したため、この版は採用せず、当初の予定通りニコルソン版を底本としたデータベース作成を続行することとした。また、ニコルソン版では、冒頭から2835詩行までが、マスナヴィー最古の版であるコニヤ版を反映しきれていないという事実も判明した(ニコルソン版は2836詩行以降はコニヤ版を完全参照している)ため、本研究においては、ニコルソン版とコニヤ版を比較しながら、2835詩行までの完全版データベースを構築するという方針転換を強いられることとなった。よって、毎月の研究会開催により鋭意準備を進めた結果、今年度は1200詩行前後までの校閲と入力、修正作業にとりかかり、作業のペースを把握することとした。次年度(最終年度)でコニヤ版に基づいた、全2835詩行のデータベース構築が完成する予定である。
著者
山本 佳久 鎌野 衛 深水 啓朗 古石 誉之 鈴木 豊史 梅田 由紀子 牧村 瑞恵 伴野 和夫
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.8, pp.625-631, 2005-08-10 (Released:2011-03-04)
参考文献数
8
被引用文献数
2 1

A general method of administering powdered medicines to infants is to add a spoonful of water to the powder to make a paste and then making the paste into small dumpling-sized balls. We investigated the optimal amount of water for making a paste for 35 kinds of powdered medicine which included fine granules, granules and dry syrups. The optimal water amount was expressed as an amount per gram of powder. Approximately 80% of the powders examined in this study required 0.2-0.4 mL of water per gram of powder to make a paste that would form small balls. Optimal water amounts were calculated for amounts of powder ranging between 0.1 and 1.5 grams by proportion and when the calculated amounts of water were added, small dumpling sized balls could be formed. In the same way, we also calculated amounts of water required for powdered mixtures of several medicines for 6 prescriptions often prescribed in our pharmacy from corrected standard volumes for each medicine in the mixture. The amounts of water added on this basis achieved the required paste state for all of the powder mixtures used. These results suggest that the optimal water amount for powdered medicines of various weights can be estimated from standard volumes of water by proportion. Thus, optimal water amounts determined by our method may be useful for the administration of mixed powdered medicines to infants.
著者
風間 孝
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.348-364, 2002-12-31 (Released:2009-10-19)
参考文献数
21
被引用文献数
2 3

本稿の目的は, 同性愛者であることを公言するカミングアウトの実践が持つ政治性を明らかにすることにある.まず, 性について語ることによって解放された自然状態への移行を目指す解放主義者の言説が, 同性愛嫌悪に回収されることを指摘する.つぎに, 自己のセクシュアリティを公言するカミングアウトを告白と同一視する一部の社会構築主義者の主張は, セクシュアリティの装置の中における自らの位置を問いたださない点で, 当の装置と同延上にある点を指摘する.東京都が同性愛者団体の青年の家利用を拒絶したことに端を発する訴訟の分析を踏まえて, カミングアウトを, 権力関係のない状態を目指す解放にかわって, 権力の外部に立つのではなく権力の中にとどまりつつ, 同性愛嫌悪の社会における権力行使のあり方を変える抵抗の行為として位置付ける.そのうえで, カミングアウトが, 公/私を貫く規範として異性愛規範があることを顕在化させるとともに, セクシュアリティの装置が性的欲望を秘密として設定することを通じて自己の真理を生産していく知の枠組みを疑問に付す行為であることを明らかにする.
著者
森川 洋
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.421-441, 2011-09-01 (Released:2015-10-15)
参考文献数
46
被引用文献数
4 2

「平成の大合併」を通勤圏(日常生活圏)や国土集落システムとの関係から考察した結果,「昭和の大合併」では中心地システムへ適合するかたちの合併が多かったが,高度経済成長期を経て大きく変化した国土の中で実施された「平成の大合併」では,国土集落システムへの適合が基本的条件となった.過疎地域が広い面積を占める地方圏では小規模町村の多くが合併したが,市町の規模が大きく財政的にも豊かな大都市圏内の市町村では合併は比較的少ないままにとどまったので,住民生活における地域格差をむしろ拡大することとなった.通勤圏の未発達な山間僻地や離島には未合併町村が多く残されているが,通勤圏や日常生活圏を全く無視した市町村合併は少ない.
著者
李 善姫
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.4_26-4_33, 2015-04-01 (Released:2015-08-07)
参考文献数
9
被引用文献数
1
著者
山本 徳栄 近 真理奈 伊佐 拓也 根岸 努 森 芳紀 前野 直弘 小山 雅也 森嶋 康之
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.493-499, 2017-09-25 (Released:2017-09-30)
参考文献数
17

2008年1月から2016年11月の期間中,埼玉県動物指導センターに収容されたイヌとネコから直腸便を採取し,腸管寄生虫類の検索を行った。イヌは1,290頭中296頭(23.0%)が寄生虫類陽性で,検出種とその陽性率はイヌ鞭虫(15.0%),イヌ鉤虫(6.4%),イヌ回虫(2.1%),イヌ小回虫(0.2%),マンソン裂頭条虫(2.0%),瓜実条虫(0.2%),日本海裂頭条虫(0.1%),縮小条虫(0.1%),Isospora ohioensis(1.3%),ランブル鞭毛虫(0.5%),Cryptosporidium canis(0.5%),腸トリコモナス(0.2%)およびIsospora canis(0.1%)であった。ネコは422頭中216頭(51.2%)が寄生虫類陽性で,検出種とその陽性率はネコ鉤虫(25.1%),ネコ回虫(17.8%),毛細線虫類(1.7%),マンソン裂頭条虫(18.2%),瓜実条虫(1.9%),テニア科条虫(0.5%),壺形吸虫(6.9%),Isospora felis(5.2%),Isospora rivolta(1.4%),Cryptosporidium felis(0.7%)およびToxoplasma gondii(0.2%)であった。また,2000年4月から2015年10月の期間中,同施設に収容されたネコから採血し,T. gondiiに対する血清抗体価を測定した。ネコにおけるトキソプラズマ血清抗体は,1,435頭中75頭(5.2%)が陽性であった。

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1928年11月07日, 1928-11-07
著者
姜 鶯燕
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.163-200, 2008-03-31

本稿は、須藤由蔵の手記である『藤岡屋日記』を素材に武士身分の売買と思われる事例を抽出し、近世中後期における武士身分の売買の実態について検討したものである。『藤岡屋日記』の中で十七の武士株の売買の事例が見つかった。分析の結果を下記のようにまとめる。
著者
Satoshi Kobayashi Toshiya Osanai Taku Sugiyama Noriyuki Fujima Ryo Takagi Isao Yokota Akiyoshi Hamaguchi Toshitaka Nakamura Kazutoshi Hida Miki Fujimura
出版者
The Japanese Society for Neuroendovascular Therapy
雑誌
Journal of Neuroendovascular Therapy (ISSN:18824072)
巻号頁・発行日
pp.oa.2023-0001, (Released:2023-05-17)
参考文献数
20

Objective: In endovascular treatment, it is important to evaluate the access route for placing a catheter into the common carotid artery (CCA) promptly and safely prior to the procedure. We examined whether non-contrast MRA using time-spatial labeling inversion pulse (Time-SLIP) can be used in patients prior to endovascular thrombectomy for acute ischemic stroke. We compared Time-SLIP MRA to contrast-enhanced (CE) MRA and evaluated the efficacy in the evaluation of access routes.Methods: We retrospectively reviewed 31 patients admitted between October 2018 and December 2018 for cerebral infarction at our hospital. Blood vessels were imaged from the aortic arch to the CCA. A radiologist blindly evaluated quality score, stenosis, shape of the aorta, and degree of tortuosity.Results: There were no “non-diagnostic” images. The sensitivity, specificity, positive predictive value, and negative predictive value for stenosis were 83%, 96%, 83%, and 96%, respectively. The sensitivity for the aorta type classification was 100%. The sensitivity for mild tortuosity was 93%, for moderate was 100%, and for severe was 100%.Conclusion: Time-SLIP MRA can be an alternative to CE MRA in access route assessment for patients with cerebral infarction who are not eligible for acute thrombectomy therapy.